廻って異世界

フォウ

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ゲーム世界に転生?

第16話 金色の王

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 黄金の尾をたなびかせて疾走する巨大な四足獣。
 時に雷を撒き散らし、火の粉を吐き、通り過ぎた足跡には地割れと間欠泉のような水が噴き出す。
 無数の天変地異を従えた暴君の如き振る舞い。

 それは、7層の辺りから顕れ、8層、9層と破壊と殺戮を撒き散らして進む。
 10層の門番をしていた凶鳥は、出会い頭に喉を引き裂かれた。
 勢いは止まらない。
 11層、12層の数の暴力は、災害の前に屍山に変わり。
 13層、14層の魔獣達は、己の血河に溺れていった。
 15層の門番の巨人は、物言わぬ石像と化し。
 16層の大樹の前に来て、やっと歩みを止める。

「……これくらいの木なら、良い材料になりそうね?」

 金色の暴力は、その見た目と行いからは想像も出来ないような可愛らしい声で呟く。
 目の前の大樹にプレッシャーを掛けながら、

「うむ?
 目的はワシかね?
 良く分からないヤツじゃな?」

 ただの木の振りではやり過ごせないと判断したらしい大樹は観念して、目前の狐の化け物へと語り掛けた。
 文字通り幹の一部を顔に変え、その両眼で化け狐を見据えたのだが、大樹の感情の大半を占めるのは、困惑であった。

「ワシなんぞ、この周辺では珍しくもないただのトレントじゃぞ?
 上の階層を守っておったサイクロプスの方が遥かに良い素材になろう?」
「脳筋の鬼なんて役に立たないわ。
 私が必要としているのは、植物系魔物の一部なのよ」

 幾ら、ダンジョンの魔素で創られただけの存在とはいえ、自我の消滅を望むような願望はない。
 既に目前の妖狐が倒したはずの、15層フロアガーディアンのサイクロプスの方が、素材として価値が高いと、反意を促そうとするが、目的に合わないと一蹴される。

「拡がり続ける自我に耐えられる性質、根を介して、巨大なネットワークを生成する能力。
 どちらも植物の特徴でしょ?」
「何らかの疑似組織でも造るつもりか……。
 昨今の異界のものは、つくづく自由だな」

 単純に素材を持ち帰りたいとかではなく、ダンジョンの中に拠点を造りたいと言う傲慢に呆れる大樹。
 だが、それも自由ではある。

「……まあ、この地は力こそが正義。
 弱者はただ従うしかないからな」

 迷宮、ダンジョン等と大層な呼称がされることも多いが、所詮その本質は濃い魔素の溜まり場に過ぎず、そこに湧いた魔物が勝手に生きているだけの話。
 外様の魔物が、勝手にするのも仕方ない。

「最も……。
 それはお前が圧倒的な強者であった場合の話だがな!」

 周囲から群がるように、顕れる獣に鬼に悪魔。
 ……果ては竜と呼ばれる魔獣の強者も含まれる。
 そのどれもが、この階層に暮らす魔物。
 地上でなら、国を傾ける可能性すらある上位存在達。
 それが、ただ1体の狐の化け物へと、集中する異常。

「やり過ぎたのだよ。
 日頃、自分の縄張りから出てこないような連中も、危機感を覚えるような暴れぷり。
 実に愚かとしか……」

 普通の攻略者のように、1層に数日掛けるような攻略であれば、問題なかった。
 だが、数分で1層を攻略するような真似に、ダンジョンの意思のようなものが危機感を覚えた。
 その危機感が、普段はここに動く強者を、1ヵ所に集めると言う事態を招いた。
 しかし、

「……良いわね。
 ついでに幾つか、素材を持って帰ることにするわ」

 芯も凍るような雹風と共に、臆した様子もない言葉が響く。
 凍れる森のような世界の中心には、手間が省けたと嗤う九尾の狐。

「ば……かな……。
 6層のグレイトウルフに手こずるからと……、火属性の魔物を集めたのに……」

 顔の半分が凍ったトレントの恐怖に歪んだ表情。
 それを見て、眉を潜める妖狐。

「……残念ね。
 もう少し、潜る必要がありそう……」

 そこそこ知能の高そうな樹木の魔物と思ったが、ダンジョンの意思が宿っていただけのものだった。

「霊力の濃度的に、大分深いところまで来ているはずなのに……」

 残念そうに肩を落とす様を見る分には、そこまで強そうな覇気は見受けられない。
 巨大なビルのような体躯で、9本もの尾を靡かせているので、決して弱そうには見えないが……。

「いっそ、最深部とやらを拝みにいこうかしら?
 魔物を自由に創造する能力があるなら、その方が手っ取り早いわね……」

 こうして、ダンジョン勢による金色の王討伐作戦は、逆の結果をもたらすのだった。
 文字通り、触らぬ神に祟りなしと言ったところだろうか?
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