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千客万来?
第35話 狼少女の帰還
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数日ぶりに帰ってきた紅葉。
彼女は帰ってくるなり、皆に食堂へ集まるように言って回った。
「慌ただしいけど、何があったの?」
俺が食堂に着いた時には、4人の仲間が険しい顔で沈黙していた。
「……ハルも来たのね。
それじゃあ、改めて報告してくれる?」
「はいですの。
この拠点から、東の方に数人の妖怪とその眷属らしき獣が数十ほど集まってますの」
俺に気付いた雛菊が、紅葉を促す。
どうやら、俺が来る前に連絡を受けているらしい。
それにしても、
「……いよいよか」
「どうかしたの?」
思わず、呟いてしまった言葉を聞いていた雛菊に、疑問を持たれてしまった。
「いや、なんでもないよ……」
ひとまず、誤魔化しておく。
俺にとっては、既知のゲーム内イベントかもしれないが、雛菊達にとっては未知の現実だ。
変なことは言えない。
だが、初めての拠点襲撃、それはつまり。
……誰かが拐われることになるイベント。
そんなことは絶対にさせない。
「明日には襲撃が予想されますの」
「……そうなのか。
どうしたものかな?」
けれども、絶望的な情報が紅葉からもたらされる。
こっちは、俺を含めてもたったの5人しかいない。
『夢幻千年京』の中でも、1パーティーには1人足りないくらいの少人数だ。
しかも、その中の1人は俺だ。
全く戦えなかったゲーム主人公よりは、ましかもしれないが、生産職の雛菊よりもはるかに弱い。
つまり、襲ってくる武道派妖怪相手じゃ大した役にも立てないと言うことだろう。
その上、ここは現実。
ゲームみたいに、真っ正面から全員で向かってくるような真似はしないだろうから、拠点の各所にバラけての防衛になる。
各個撃破とかされたら……。
ゲームみたいに拐われるだけならまだしも、死ぬ可能性だって。
……いっそのこと!
「……提案なんだけどさ、皆で逃げない?
せっかくの拠点が取られるのは惜しいけど、怪我とかするよりも……」
「無理よ……。
見ての通り、外は雪でしょ?
こんな状況で逃亡劇なんて、それこそ全滅だわ」
「それは……」
逃げようと提案したが、雛菊によって駄目出しされる。
……そうだよな。
拠点の中は雪も少なく比較的暖かいけど、それはあくまで、龍穴エネルギーを利用してのものだった。
冷静にならないと……。
「……結の力があるから、そう滅多なことは起きないわよ。
敵の眷属には、こっちも妖精を当てる。
生産型の妖精じゃあ足止めが精一杯だろうだけど……」
「そんな!」
雛菊の言い分だと、妖精達の役割はその身を使った肉壁。
「元々、妖精は生き物じゃないわ。
そう見えるだけの機械のようなもの。
経験により、個体毎の違いが出てきているけど、結がいれば、再び再現も出来る。
……私だって愛着がない訳じゃないけど、それしかないのよ」
うつむき加減に話す雛菊。
……そう。
……だよな。
だって、元々妖精を用意したのは雛菊だから、俺よりも愛着があるはずで……。
「……良い?
本当に不幸中の幸いだけど、こちらには朧と朔がいる。
見た目はこんなでも、戦闘系ではトップクラスの鬼族。
普通の妖怪なら1対1で遅れを取ることはないわ」
話を進めるように、話題を変える雛菊。
しかし、その目は赤く充血気味。
……涙をこらえるように。
「……確かに」
そういう設定だった。
『夢幻千年京』において、大半の妖怪や霊術は木火土金水《もくかどごんすい》に分類される。
これは陰陽五行からきているので、五行相克と五行相生の2つの特性が適用される。
よって、1つの属性に対して2つの優位属性があるのだ。
それを複合することで、上位の相手を圧倒できる。
例えば、炎の最上級妖怪相手でも水と土の複合である土砂系の術なら、下級術で大ダメージが期待できる。
そんな法則に支配されている。
しかし、鬼族は五行より上の陰属性。
故に陰陽道に置ける陰の象徴たる月が関わる名前なのだ。
陰属性は、全ての五行属性に優位。
唯一の弱点は、陽属性のみと言う最強属性だ。
その陽属性も、神の力だから人間や妖怪が使う時には、陣を敷いて儀式魔法みたいにしか使用できない。
……対鬼族系のイベントは、儀式用アイテム収集や儀式陣構築時間を稼ぐ系のイベントばかりだった。
「だから、敵が来ると予想される東側は、朧。
念のため、逆側の西を朔に任せるわ。
元々、この拠点の出入り口も東西にあるしね。
念のため遊撃として、拠点の北の方に紅葉。
南の方に私と結が付くわ。
ハルは……」
……配置は妥当としか言えないよな。
後は、俺はどうなるのかだけど……。
「ここで留守番よ。
正直、この襲撃がハルを炙り出すためのものと言う疑いがある。
下手に出ていって、見付かると更なる危険を呼び込みかねない」
「……分かった」
正直、納得できちゃいない。
けれども、ゲームと違って、この関桃平野では、人間の男は希少価値の高い獲物だって話だし……。
歯痒いけど、頑張って堪えるのが皆を守ることに繋がるんだから。
彼女は帰ってくるなり、皆に食堂へ集まるように言って回った。
「慌ただしいけど、何があったの?」
俺が食堂に着いた時には、4人の仲間が険しい顔で沈黙していた。
「……ハルも来たのね。
それじゃあ、改めて報告してくれる?」
「はいですの。
この拠点から、東の方に数人の妖怪とその眷属らしき獣が数十ほど集まってますの」
俺に気付いた雛菊が、紅葉を促す。
どうやら、俺が来る前に連絡を受けているらしい。
それにしても、
「……いよいよか」
「どうかしたの?」
思わず、呟いてしまった言葉を聞いていた雛菊に、疑問を持たれてしまった。
「いや、なんでもないよ……」
ひとまず、誤魔化しておく。
俺にとっては、既知のゲーム内イベントかもしれないが、雛菊達にとっては未知の現実だ。
変なことは言えない。
だが、初めての拠点襲撃、それはつまり。
……誰かが拐われることになるイベント。
そんなことは絶対にさせない。
「明日には襲撃が予想されますの」
「……そうなのか。
どうしたものかな?」
けれども、絶望的な情報が紅葉からもたらされる。
こっちは、俺を含めてもたったの5人しかいない。
『夢幻千年京』の中でも、1パーティーには1人足りないくらいの少人数だ。
しかも、その中の1人は俺だ。
全く戦えなかったゲーム主人公よりは、ましかもしれないが、生産職の雛菊よりもはるかに弱い。
つまり、襲ってくる武道派妖怪相手じゃ大した役にも立てないと言うことだろう。
その上、ここは現実。
ゲームみたいに、真っ正面から全員で向かってくるような真似はしないだろうから、拠点の各所にバラけての防衛になる。
各個撃破とかされたら……。
ゲームみたいに拐われるだけならまだしも、死ぬ可能性だって。
……いっそのこと!
「……提案なんだけどさ、皆で逃げない?
せっかくの拠点が取られるのは惜しいけど、怪我とかするよりも……」
「無理よ……。
見ての通り、外は雪でしょ?
こんな状況で逃亡劇なんて、それこそ全滅だわ」
「それは……」
逃げようと提案したが、雛菊によって駄目出しされる。
……そうだよな。
拠点の中は雪も少なく比較的暖かいけど、それはあくまで、龍穴エネルギーを利用してのものだった。
冷静にならないと……。
「……結の力があるから、そう滅多なことは起きないわよ。
敵の眷属には、こっちも妖精を当てる。
生産型の妖精じゃあ足止めが精一杯だろうだけど……」
「そんな!」
雛菊の言い分だと、妖精達の役割はその身を使った肉壁。
「元々、妖精は生き物じゃないわ。
そう見えるだけの機械のようなもの。
経験により、個体毎の違いが出てきているけど、結がいれば、再び再現も出来る。
……私だって愛着がない訳じゃないけど、それしかないのよ」
うつむき加減に話す雛菊。
……そう。
……だよな。
だって、元々妖精を用意したのは雛菊だから、俺よりも愛着があるはずで……。
「……良い?
本当に不幸中の幸いだけど、こちらには朧と朔がいる。
見た目はこんなでも、戦闘系ではトップクラスの鬼族。
普通の妖怪なら1対1で遅れを取ることはないわ」
話を進めるように、話題を変える雛菊。
しかし、その目は赤く充血気味。
……涙をこらえるように。
「……確かに」
そういう設定だった。
『夢幻千年京』において、大半の妖怪や霊術は木火土金水《もくかどごんすい》に分類される。
これは陰陽五行からきているので、五行相克と五行相生の2つの特性が適用される。
よって、1つの属性に対して2つの優位属性があるのだ。
それを複合することで、上位の相手を圧倒できる。
例えば、炎の最上級妖怪相手でも水と土の複合である土砂系の術なら、下級術で大ダメージが期待できる。
そんな法則に支配されている。
しかし、鬼族は五行より上の陰属性。
故に陰陽道に置ける陰の象徴たる月が関わる名前なのだ。
陰属性は、全ての五行属性に優位。
唯一の弱点は、陽属性のみと言う最強属性だ。
その陽属性も、神の力だから人間や妖怪が使う時には、陣を敷いて儀式魔法みたいにしか使用できない。
……対鬼族系のイベントは、儀式用アイテム収集や儀式陣構築時間を稼ぐ系のイベントばかりだった。
「だから、敵が来ると予想される東側は、朧。
念のため、逆側の西を朔に任せるわ。
元々、この拠点の出入り口も東西にあるしね。
念のため遊撃として、拠点の北の方に紅葉。
南の方に私と結が付くわ。
ハルは……」
……配置は妥当としか言えないよな。
後は、俺はどうなるのかだけど……。
「ここで留守番よ。
正直、この襲撃がハルを炙り出すためのものと言う疑いがある。
下手に出ていって、見付かると更なる危険を呼び込みかねない」
「……分かった」
正直、納得できちゃいない。
けれども、ゲームと違って、この関桃平野では、人間の男は希少価値の高い獲物だって話だし……。
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