廻って異世界

フォウ

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村造りシミュレーション

第50話 チュートリアル(磯釣りからの……)

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「楽しいな!
 これ!」

 釣り針に、小さな練り餌を付けて、海へ投げ込む。
 数秒後、クイッと引く手応え。
 スッと釣竿を引き上げると、銀色の輝きと共に姿を表す魚影。

「アジなのだ!」
「……良い大きさ。
 今晩のおかずにしましょ」

 手伝いに付いてきた双子が、一緒に喜んでくれる。

「干物作りをするって話だったけど……。
 まあ、これくらいなら良いか!」
「入れ食いなのだ。
 問題ないのだ!」

 アジを針から外して、放り込んだクーラーボックスには軽く10匹以上の大振りな魚たち。
 前世合わせても、初めての釣りだけに強烈なビギナーズラックとしか思えない。

「けど、魚とかを食べるなら、やっぱり白い米が欲しいよな……」

 既に2ヶ月以上、果物メイン。
 たまの穀物は、じゃがいもやさつまいものような芋類ばかりで、米なんて全然食べていない。
 俺達が関桃平野へ向かったのが、秋だったし、しょうがないのかもしれない。
 ……。
 ……あれ?
 ……おかしい。

「……秋に都を追い出されたのに、まともな食料を持ってきてない?
 せめて、一冬越せるくらいの米は持ってくるんじゃないのか?」

 ゲームの世界だと思っていたから、考えが足らなかった。
 幾らなんでも、無茶苦茶だった。
 ゲームなら不思議じゃないかもしれないけど、現実の開拓なら、せめて食料確保出来る春に出発だろう。

「……ごめん、朧、朔。
 雛菊と話をして来る。
 後から魚を持ってきて」

 ……嫌な予感がするんだ。
 直ぐにでも追い出したかった。
 或いは……。
 
 心臓の鼓動が大きくなる。
 ……。
 忙しく働く妖精達を横目に、家路を急ぐ。
 途中、徐々に雪深くなる道に足を取られないように気を付けながら……。



「雛菊!」

 慌てて家の扉を開けると、驚いた顔の雛菊が椅子から腰を浮かすが、

「座ったままで良いから、聞いて欲しい。
 ……俺は本当に新都開拓を命じられたの?」
「……そうよ」

 俺の問いに座り直して答える。
 それから、

「少し待ってて」

 と断ってから、立ち上がり自身の椅子をひっくり返す。

「何を……」

 奇怪な行動を訊ねようとして、思い止まる。
 彼女の椅子の裏には小さな隠し棚が付いていた。

「……この椅子は見た目よりも重いの。
 人のハルには持ち上げられないはずよ。
 そして……」

 胸元のアクセサリーを取り出して隠し棚にセットすると、棚の取っ手になった。

「これが鍵と取っ手の両方として機能する」

 棚から取り出したのは、2つの封筒。
 1つはゲームの指令書と同じ印。
 ……朝廷の指令書だな。
 もう1つは、初めて見る紋章。
 杖と星の印章?

「まずこれね?」

 朝廷の指令書を出してくる雛菊。
 それを読むと、くどい言い回しながら、単純に新都開拓に直ぐさま出発しろ言う命令と、新都では治安安定のため、妖怪を妻とせよと言う命令。
 妖怪を妻にしろと言うのは初耳だが、おかしな話だ。
 わざわざ、そんな命令を出さなくても、妖怪しかいない土地に追放するのに?

「こっちを読めば、ハルの疑問は解決するわよ?」
「これは?」
「晴道《はるみち》伯父さん。
 つまり、ハルのお父さんの手紙。
 明母さんの式神が届けてくれたけど、本当にハルに見せるかは迷ってたの。
 都追放が、大分ショックだったみたいだし……」

 それでも、疑心暗鬼よりマシでしょうから渡すわ。
 と言って杖と星の印章が入った手紙を差し出してきた。
 そこには、俺の新都開拓が建前であること。
 皇巫女《すめらぎみこ》と言う都のトップの娘が、俺に惚れていたので俺を遠ざけ、あわよくば、明母さんのように女になってしまえば最良と企んでいること。
 雛菊は、そんな俺を守るために、同行してくれたことが記されていた。

「……雛菊。
 いつもありがとう……。
 こんなにも俺を思ってくれる従姉がいて、俺は幸せだ」

 感極まってしまった。
 涙を流しながら、雛菊を抱き締める。
 いつも一緒に寝ていたのに、花紐状のアクセサリーを常に身に付けていたことにも気付かない間抜けな俺を、こんなにも必死に守ってくれていたなんて……。
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