廻って異世界

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村造りシミュレーション

第60話 労狼顛末記

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 森へ入ろうとする小鬼を切り裂きながら、走り抜ける。
 その小鬼に追走する妹達が追い討ちを仕掛けて完全に消滅させる。
 相手は、自分達よりも格上。
 1対1では勝ち目はないが、群れでの狩りとなれば話は別だ。
 ましては、ここは障害物の多い森の中。
 不意打ちで、私が手傷を負わせれば、追走する妹達でも十分に仕留められる。
 しかし、

『筆頭様も、いい加減にしてはどうなのだ?
 どうみても、邪魔する気満々ではないか……』

 思わず、愚痴る。
 所詮は独り言だが、そうでもないとやってられない。

『話し相手が欲しいな……。
 妹達は私と違って、言葉を解するだけの知能も付与されていないし。
 紅葉様に、相方を求めるか』

 がさごそと雪道を歩く音を拾う。
 ……拠点の方から。

『また、筆頭様の使いか?』

 ひっそりと音の方へ向かう。
 我々に取って、雪道の隠行はお手の物。
 私を先頭に、10匹ほどで向かっても、風の音くらいの微かな音が森に溶けていくようなものだ。 
 音の発生源に近付きつつ、微かに首を振って個々を展開させる。

 暗がりの道を進む小柄な影。
 人間の子供くらいの体躯に、額に生える大きめの異物。
 ……なるほど、中継器程度の小物では対応出来ないと、隊長格の小鬼を向かわせたか。
 雑兵クラスでも、自分達よりも強いのだからあれの相手となると、全方位攻撃しかなさそうだ。

『一斉に仕掛ける。
 3、2、1、掛かれ……』

 四方の木の影は無論、跳躍して小鬼の頭上を取るものや、ひたすら低い位置から相手を転ばせるように向かうもの。
 森の中で、これに対応出来るものな……。

 目標は、軽く後ろに飛びつつ、宙返り。
 木を蹴って三角飛びで上に逃れられた?

『上!』

 即座に指示を出す。
 相手がわざわざ逃げ場のない空中へ、行ってくれたのだ。
 落ちてくるタイミングで噛み千切ってやる!
 勢い込んでいた私だが、相手は更に上手。
 噛み付こうとした私の鼻先を押して、ヒラリと方向転換。
 群れの側面へ抜けた所で着地。

『……強い。
 隊長格となるとこれほどか……』

 悔しいが筆頭様の眷属は、私よりも数段上の高みのようだ。
 しかし、刺し違えても!
 と、覚悟を決めようとしていた私に、

「……紅葉の眷属なのだ?」

 相手の小鬼は、呑気に声を掛けてきた。
 ……喋れる?
 念話のようなものならまだしも、可聴域の言葉を操れるのか?
 眷属にそんな無駄な拡張子を仕込むのか?
 ……眷属ではなく式神のようなもの?
 いや、それでもわざわざ話を出来るようにする必要が?

「自分は朔なのだ。
 別に、紅葉の邪魔をしに来たわけじゃないのだ」

 自分との性能差に混乱していた私を引き戻したのは、相手の小鬼。
 ではなくて、

『朔様?
 失礼いたしました!』

 慌てて妹達を集めて、謝罪のために顔を伏せる。
 まさか、主様の使い魔様を、自分達の同輩と勘違いするとは……。

「こっちこそ、先に声を掛けるべきだったのだ。
 すまんのだ」
『……朔様は私達に気付いておいででしたか?』
「うん?
 警告のために囲っているのだろうな、と思っていたのだが?」

 まさか完全に隠行が見破られていたとは……。
 すごい恥ずかしい。

「何かすまんのだ。
 それでなのだが……、馬鹿な雛菊はこっちで見張ってくし、結にも雛菊を手伝うなと釘を差したのだ。
 少なくとも、これ以上は悪さをするヤツはいないはずなのだ」
『……助かります。
 筆頭様の妨害を、紅葉様も懸念しておりましたので……』

 我々は、大した実力もない魔素の塊に過ぎない。
 生物をベースに造り出された使い魔様方には、到底及ばないのだ。
 筆頭様も、さすがに自ら乗り込んでくる可能性は低いとのことだったが、筆頭様ならやりかねないと言う不安もあった。

「じゃあ、自分も帰るのだ」
『承知しました』

 手を振って別れを告げる朔様に、軽く礼を取り、これからのことを考える。
 唯一の懸念が去った以上、あまり気を張る必要もないだろうが……。

『ひとまず散開させるか……』

 小鬼型の眷属を相手取るため、森の南側に妹の数が集中している。
 そのせいで北側はまばらな状態にあるのだ。

『まあ、拠点が森から見て南側にある以上、北から何か来る確率は低いが……』

 あの筆頭様の性格から言って、伏兵を迂回させることくらいやりかねない。

 魔素の塊である眷属にすら、信用がない雛菊。
 日頃の行いは大事である。
 そして、因果応報。
 悪さをすれば、それは自分に巡ってくる。
 ……雛菊の場合は、意外と直ぐに。
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