廻って異世界

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村造りシミュレーション

第75話 やぶ蛇の結果

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 第1階層の拠点は、重い空気が漂っていた。
 発生源は主に2つ。
 ……紅葉と琥珀だ。
 2人がいる一角だけが、妙に暗い。

「さてと、雛菊。
 新しい名字だけど、美尾ってのはどうかな?
 美尾晴彦に美尾雛菊。
 語呂も悪くないと思うんだ」
「どうしたの?
 まあ、私的には繋がりが強まった感が嬉しいのだけど」

 対して、平常運転の俺と、頬を押さえて喜色満面の雛菊。

「雛菊が言ったんだろ?
 俺の生存を隠した方が良いって!
 だから、しばらく偽名を名乗ろうかなって、思うんだ」

 暗い一角が闇を増した気もするが、無視して雛菊に笑い掛ける。
 ……いやいっそのこと!

「もうずっと美尾で通そうか!
 能義って名字に思い入れもないしさ!」
「……」

 俺の楽しそうな声に、何故か泣き笑い顔になる雛菊。

 多分、今の俺と同じ表情なんだろうな。
 だから、絶対に琥珀の方なんか見ない。
 声だけは明るさを出せるように集中する!

 ダンッ! 

 音を立てて誰かが走り出す音。

「琥珀!」

 続いて、響く紅葉の声と追い掛けていく足音。

「………………」
「………………」

 ひたすら、耐える。
 同じようにして、俺を見つめ続ける雛菊のお陰で耐えられるから……。
 大丈夫。

「……少なくとも、ハルの声は私が隠してあげるわ。
 もう良いよ?
 ……辛いよね。
 ごめんね?
 私が余計なことをしたせいで……」
「違う!
 違うよ!
 雛菊のお陰……。
 雛菊のお陰で俺……」

 雛菊に導かれるまま、彼女の胸に顔を埋める。
 頭を撫でる雛菊の手が優しくて……。
 目が熱い、そして痛い。

「……おでぶのハルくんなんて。
 バカにされてて……。
 嫌われてさ、いるんだろうなって……。
 ……違ったんだ。
 興味すらなかったんだ。
 雛菊の作ったあり得ない記憶で、容姿まで上書きされるくらい琥珀の中の俺はちっぽけでさ……。
 別にあんなやつ好きでもないのに……。
 なんか悔しくてさ……。
 これ、なんだよ?
 俺、訳が分からねぇ……」

 本当に訳が分からない、無駄に涙と悔しさだけが溢れてくるんだ。

「晴彦。
 辛かったよね?
 身体が弱いのは晴彦のせいじゃないのに、自分を責めてばかりいた。
 申し訳なさで潰れそうで、我が儘なんてとても言えなかった。
 嫌われないように必死だったのに、気にも止められていなかった。
 悔しいのが当たり前よ」

 何時になく優しい声。
 そして、何処かで感じた匂い。

「良い子でいれば嫌われないって思って、けど、良い子だと誰も興味がないのかな?
 父さんや母さんも俺には……」
「それはない!
 晴道は、晴彦が元気でいられますようにって、毎朝、社までお願いに来てから会社へ行くわ。
 美春は、晴彦のために栄養士の資格を取った。
 秋葉だって、月に1度はお兄が元気になりますように、一緒に遊べますようにって、私の社へお願いに来ていたのよ」
「……」

 ……信じられない。
 信じたいけど……。

「信じるのが怖い。
 ……でしょ?
 晴彦も期待しているのよ?
 期待するだけの何かを感じ取っていた。
 同じ家に住む家族だったんだから。
 年一で会う程度の他人とは、違うのよ?」
「……」

 今さら、雛菊を疑うなんてしないけど……。

「間違えていたら、私を……。
 ……なんでもない」
「いやそこは恨んでも良いとか言う場面じゃ?」

 こんなに自信満々なので、多分大丈夫なんだろうけど、そこで躊躇われると困る。

「億に1つでも可能性があるなら、ハルに恨まれるリスクは高過ぎるもの!
 ……そうね。ハル好みの歳上美女に化けた私を自由に出来るでどうかしら?」
「雛菊の場合、それだとわざと家族に嫌われているような工作をしないかい?」
「さすがの私でも、それが本当に不味いことは分かるわよ?
 ……あら、莧いたの?」

 冷静な第三者の声に、反論する雛菊。
 それに釣られると、妙に優しい目で俺を見ている莧と目が合う。

「ああ、琥珀には下手についていくよりも、紅葉に任せた方が良いと思ったのさ。
 まあお陰で、思いがけず晴彦のことを知れた。
 甘えたい時は私に言うと良い、これでも母性愛溢れる猪の魔物だからね?」

 そう言うと、わざとらしく腕を組んで胸を強調する莧。

「ウガァァ!
 腹が立つわね!」
「うむ。
 私は筆頭殿の雷が落ちる前にさっさと離れ、散歩でもしてこよう。
 それではな……」

 拠点を離れて行く莧。
 まあ、彼女なら心配はないだろうしな。
 ……それに、莧なりに励ましてくれた気がしないでもない。

 今すぐは無理だけど、孫の顔くらいは見せに行きたい。
 ついでに、妹を叔母さん呼びしてやるんだ。
 事実だし……。
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