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地上での生活
第78話 お使い
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「少し悪いのだけど、お使いに行ってきてくれないかしら?」
鈴木さんが帰った翌日。
朝から急に雛菊が言い出す。
「……まあ良いけど。
ホテルコンシェルジュさんに頼むのは……」
支払いは日本国が持っているが、客であることに変わりない。
コンシェルジュに頼んでも問題ないと思うのだが……。
「……無理ね。
莧に直接手紙を渡してほしいの」
「……ああ、確かに無理だわ。
最高級ホテルのスーパーコンシェルジュでも、無理だ」
ダンジョン脱出から4日。
莧は、このホテルで最初の1泊した後、翌日には自衛官の女性と滋賀県自衛隊協力本部? とやらに向かった。
今頃は、琵琶湖の周辺辺りで食料増産計画の遂行中だろう。
「でしょ?
ついでに今の地上の様子を見学してきなさい」
「けど、身重の雛菊を置いて……」
全然妊婦と言う見た目ではないが、身重ではあるはずなのだ。
そんな時に呑気に旅行なんて……。
「大丈夫よ。
私は人間じゃないのだから」
「それでも……」
……雛菊の近くにいたいんだ。
と言う本音は隠して、
「出産すれば赤ん坊の世話もあるだろう?」
と言うが、
「高校生で男のハルよりも、式神の方が遥かに使えるわね?
父親になるための教育なんて受けていないでしょ?」
ダメだった。
そりゃ、雛菊の式神なんてアンドロイドみたいなものだし、そういうモノとして造れば、本職並みに動けるだろうけど……。
「……はっきり言うとね?
ハルは周囲への魔素影響力が強いのよ。
出産時に、近くにいられると子供に障害が出るかもしれないから、出産から生後10日くらいは近付けられないの。
もうすぐ産まれそうだから、半月ぐらい莧と行動してなさい」
「……そうなのか?
……分かった」
俺の不満を顔から読み取ったらしい雛菊にダメ出しをされる。
……しょうがない。
「それと名前を考えてきてよ?
私とこの子の2人分」
「……あ、そうだね。
ごめん……」
そうだった。
……大事な仕事だよな。
「……分かればよろしい。
それと、案内役兼護衛役の人を呼んでいるから、その人達とは常に一緒に行動しなさい。
恥ずかしい思いをするかもしれないけど、お互い様だからね?」
「……はい?」
満足げな顔の雛菊が、真剣な顔で忠告する。
しかし、恥ずかしい思いって?
そんなことを思っている俺をよそに、雛菊がスマホを操作する。
……九尾の狐が、スマホを操作って、ある意味シュールだよな。
何とも言えない気分で雛菊を眺めていた俺の耳に、部屋の扉が開く音が聞こえる。
「お邪魔します」
「こら、失礼しますでしょ?」
入ってきたのは、2人の女性。
見覚えがあるんだけど……。
「久し振り!
浜名優歌《はまなゆうか》だけど分かる?」
「だ、か、ら!
少しは礼儀良くしなさい!
優歌がごめんなさい。
夕蔓眞緒《ゆうづるまお》よ。
私達にとっては、2年くらい振りになるんだけど……」
やはり、高校の元同級生だった。
ただ、
「もちろん覚えているけど、変わりすぎじゃないかな?」
少なくとも俺が風邪で休む前は、見るからに女子高生だったのに、今じゃ下手な大学生より、大人っぽい気がする。
「能義君が言う台詞?
すっごい痩せたじゃない!」
「……それはまあ」
それを言われると苦笑するしかない。
「何であなたはそう失礼なのよ!
……ごめんなさいね。
優歌が……」
「……いやいや、大丈夫だから」
本当に大丈夫。
学級委員長だった浜名さんと副委員長の夕蔓さん。
2人とは殆ど接点なんて……。
覚えていてくれただけで嬉しい。
「それなら良いけど……。
これから私達が、能義君じゃなかった、美尾君の案内役兼護衛役をするわ。
外出したい時は、事前に連絡をしてね?」
「そうそう。
ちょっとした散歩とかでも、どんどん呼んで!」
ちょっと色々ありすぎて、事情が飲み込めないんだけど……。
「……地上に出た後、私が連絡を取ったの。
大災害前の時代でも、ハルに陰口を叩かなかった良い娘を見繕ったわ。
もちろん追加試験もパスしているから」
「驚きました。
急に能義君の夢を見たと思ったら、翌朝、ウィスで合格通知が届いて……」
「ええ。
まあ高校がなくなったせいで、最終学歴高校中退と言う状況になっていたので、助かったのも事実ですけどね」
相変わらず、規格外だ。
2人の話を聞く感じ、夢に干渉してなんかのテストをしたらしい。
そして、2人の高校がなくなったと言う事実。
つまり、俺の母校もなくなったわけだ。
いや今は、
「それで雛菊がスカウトしたと言うわけだね?」
「そうよ。
衣食住完備、退職時の再就職支援まで盛り込んだ就労契約よ。
本当はもう2人ほど、雇用したかったんだけど、断られたり、……音信不通」
雛菊を持ってしても、音信不通状態……。
つまりは、大災害かその後くらいにってことか。
つまりあの子も……。
「……あの大柳《おおやなぎ》さんは?
彼女も良い娘だったし、音信不通とかじゃないですよね?」
耳をそばだてる。
浜名さんが挙げた大柳さんとは、俺と親しかった大柳敦美《おおやなぎあつみ》さんのことだろう。
誰にでも優しくて良い娘で……。
「選考外。
論外の論外よ」
てっきり、断られたものとばかり思ったが、そもそも雛菊がスカウトしなかったと言う。
まあ裏表がある娘だったと言うことか?
「そんな悪い娘じゃなかったと思いますけど?」
反論したのは、夕蔓さん。
女子から見ても悪い娘じゃなかった?
なら、
「俺含め、男子も敦美さんを悪く言うヤツはいなかった。
雛菊、選考外の理由はなんだよ?」
雛菊を問い詰める。
険しい顔の雛菊を……。
この表情、実は裏ではすごい性格が悪かったのか?
「……」
「……うん。
俺は訊くのをやめる。
ごめん、浜名さん夕蔓さん。
これだけ、雛菊が言いたくないと言うことは、結構な理由があると思うんだ。
多分、俺に訊かせたくない何かが。
だから、どうしても納得いっていないなら、俺がいないところで訊いてくれる?」
正直、敦美さんには夏休み前に告白しよう、と考えていたほど、好意を持っていた。
そんな彼女に、酷い裏の顔があれば、琥珀以上にショックを受けるだろうから……。
そう考えると、雛菊の頑なな態度も分かるのだ。
「……まあ、雇い主の意向に異議を立てるのは、私達の仕事じゃないか」
「……そうね」
2人は2人で矛を納めてくれた。
……正直、ホッとしている。
多分、2人が真相を知ってしまえば、多少なりとも態度に出るだろう。
そうなると、気になってしょうがない気がするんだ。
「さて、2人にとっても初仕事となる話よ?
明日の朝、岐阜駅から米原駅まで移動、米原駅で乗り換えて石山駅で行くと良いわ。
石山駅からは、向こうの人間が車で迎えに来るように指示しておくから……」
気を取り直したらしい雛菊がお使いについて説明を始める。
だが、
「意外ですね。
安全を考えるなら、車の方がよいのでは?」
「電車、それも在来線で向かうのは……」
2人から反対される。
まあ、俺も同意見なのだが、
「別に世界的VIPを護衛しろと言ってるわけじゃないのよ?
大体、車で移動するのに、護衛2人とか無謀でしょ?
人の目が多い電車移動の方がよほど安心よ」
「……まあ、信用できる運転手が必要ですものね」
確かに、2人が免許を取っているとしても、そこまで熟練と言うわけじゃないよな。
「納得いったかしら?
運賃他の費用は、現金とカードで渡すわ」
「了解です」
「いつの間にそんなものを造ったんだ?」
ダンジョン脱出から4日だぞ?
クレジットカードなんて、そんな短期間で用意できるはずが……。
「鈴木さんから受け取ったカードよ。
30万まで引き出せるようになってるそうよ?
パスワードは、後で私の部屋で教えるわ」
「いや、俺が訊いていても良いんじゃないか?」
雛菊がこっちを見た上で、パスワードをここでは教えないと言う。
微妙に俺に対する信頼度が低いような……。
「……別に、ハルを信用していないわけじゃないわ。
ただ、金融情報は少数管理の方が良いでしょ?」
「それは……。
そうだけど」
まあ、良い……。
のだろうか?
良く分からない。
「さて、私達は打ち合わせをするから、ハルも旅行の準備をしておきなさいよ?」
「うん。了解」
半月の大旅行だし洗濯を考慮しても、中々の大荷物になりそうだ。
結構、時間が掛かるな。
……半月も雛菊と会えないのか。
正直、キツいな……。
鈴木さんが帰った翌日。
朝から急に雛菊が言い出す。
「……まあ良いけど。
ホテルコンシェルジュさんに頼むのは……」
支払いは日本国が持っているが、客であることに変わりない。
コンシェルジュに頼んでも問題ないと思うのだが……。
「……無理ね。
莧に直接手紙を渡してほしいの」
「……ああ、確かに無理だわ。
最高級ホテルのスーパーコンシェルジュでも、無理だ」
ダンジョン脱出から4日。
莧は、このホテルで最初の1泊した後、翌日には自衛官の女性と滋賀県自衛隊協力本部? とやらに向かった。
今頃は、琵琶湖の周辺辺りで食料増産計画の遂行中だろう。
「でしょ?
ついでに今の地上の様子を見学してきなさい」
「けど、身重の雛菊を置いて……」
全然妊婦と言う見た目ではないが、身重ではあるはずなのだ。
そんな時に呑気に旅行なんて……。
「大丈夫よ。
私は人間じゃないのだから」
「それでも……」
……雛菊の近くにいたいんだ。
と言う本音は隠して、
「出産すれば赤ん坊の世話もあるだろう?」
と言うが、
「高校生で男のハルよりも、式神の方が遥かに使えるわね?
父親になるための教育なんて受けていないでしょ?」
ダメだった。
そりゃ、雛菊の式神なんてアンドロイドみたいなものだし、そういうモノとして造れば、本職並みに動けるだろうけど……。
「……はっきり言うとね?
ハルは周囲への魔素影響力が強いのよ。
出産時に、近くにいられると子供に障害が出るかもしれないから、出産から生後10日くらいは近付けられないの。
もうすぐ産まれそうだから、半月ぐらい莧と行動してなさい」
「……そうなのか?
……分かった」
俺の不満を顔から読み取ったらしい雛菊にダメ出しをされる。
……しょうがない。
「それと名前を考えてきてよ?
私とこの子の2人分」
「……あ、そうだね。
ごめん……」
そうだった。
……大事な仕事だよな。
「……分かればよろしい。
それと、案内役兼護衛役の人を呼んでいるから、その人達とは常に一緒に行動しなさい。
恥ずかしい思いをするかもしれないけど、お互い様だからね?」
「……はい?」
満足げな顔の雛菊が、真剣な顔で忠告する。
しかし、恥ずかしい思いって?
そんなことを思っている俺をよそに、雛菊がスマホを操作する。
……九尾の狐が、スマホを操作って、ある意味シュールだよな。
何とも言えない気分で雛菊を眺めていた俺の耳に、部屋の扉が開く音が聞こえる。
「お邪魔します」
「こら、失礼しますでしょ?」
入ってきたのは、2人の女性。
見覚えがあるんだけど……。
「久し振り!
浜名優歌《はまなゆうか》だけど分かる?」
「だ、か、ら!
少しは礼儀良くしなさい!
優歌がごめんなさい。
夕蔓眞緒《ゆうづるまお》よ。
私達にとっては、2年くらい振りになるんだけど……」
やはり、高校の元同級生だった。
ただ、
「もちろん覚えているけど、変わりすぎじゃないかな?」
少なくとも俺が風邪で休む前は、見るからに女子高生だったのに、今じゃ下手な大学生より、大人っぽい気がする。
「能義君が言う台詞?
すっごい痩せたじゃない!」
「……それはまあ」
それを言われると苦笑するしかない。
「何であなたはそう失礼なのよ!
……ごめんなさいね。
優歌が……」
「……いやいや、大丈夫だから」
本当に大丈夫。
学級委員長だった浜名さんと副委員長の夕蔓さん。
2人とは殆ど接点なんて……。
覚えていてくれただけで嬉しい。
「それなら良いけど……。
これから私達が、能義君じゃなかった、美尾君の案内役兼護衛役をするわ。
外出したい時は、事前に連絡をしてね?」
「そうそう。
ちょっとした散歩とかでも、どんどん呼んで!」
ちょっと色々ありすぎて、事情が飲み込めないんだけど……。
「……地上に出た後、私が連絡を取ったの。
大災害前の時代でも、ハルに陰口を叩かなかった良い娘を見繕ったわ。
もちろん追加試験もパスしているから」
「驚きました。
急に能義君の夢を見たと思ったら、翌朝、ウィスで合格通知が届いて……」
「ええ。
まあ高校がなくなったせいで、最終学歴高校中退と言う状況になっていたので、助かったのも事実ですけどね」
相変わらず、規格外だ。
2人の話を聞く感じ、夢に干渉してなんかのテストをしたらしい。
そして、2人の高校がなくなったと言う事実。
つまり、俺の母校もなくなったわけだ。
いや今は、
「それで雛菊がスカウトしたと言うわけだね?」
「そうよ。
衣食住完備、退職時の再就職支援まで盛り込んだ就労契約よ。
本当はもう2人ほど、雇用したかったんだけど、断られたり、……音信不通」
雛菊を持ってしても、音信不通状態……。
つまりは、大災害かその後くらいにってことか。
つまりあの子も……。
「……あの大柳《おおやなぎ》さんは?
彼女も良い娘だったし、音信不通とかじゃないですよね?」
耳をそばだてる。
浜名さんが挙げた大柳さんとは、俺と親しかった大柳敦美《おおやなぎあつみ》さんのことだろう。
誰にでも優しくて良い娘で……。
「選考外。
論外の論外よ」
てっきり、断られたものとばかり思ったが、そもそも雛菊がスカウトしなかったと言う。
まあ裏表がある娘だったと言うことか?
「そんな悪い娘じゃなかったと思いますけど?」
反論したのは、夕蔓さん。
女子から見ても悪い娘じゃなかった?
なら、
「俺含め、男子も敦美さんを悪く言うヤツはいなかった。
雛菊、選考外の理由はなんだよ?」
雛菊を問い詰める。
険しい顔の雛菊を……。
この表情、実は裏ではすごい性格が悪かったのか?
「……」
「……うん。
俺は訊くのをやめる。
ごめん、浜名さん夕蔓さん。
これだけ、雛菊が言いたくないと言うことは、結構な理由があると思うんだ。
多分、俺に訊かせたくない何かが。
だから、どうしても納得いっていないなら、俺がいないところで訊いてくれる?」
正直、敦美さんには夏休み前に告白しよう、と考えていたほど、好意を持っていた。
そんな彼女に、酷い裏の顔があれば、琥珀以上にショックを受けるだろうから……。
そう考えると、雛菊の頑なな態度も分かるのだ。
「……まあ、雇い主の意向に異議を立てるのは、私達の仕事じゃないか」
「……そうね」
2人は2人で矛を納めてくれた。
……正直、ホッとしている。
多分、2人が真相を知ってしまえば、多少なりとも態度に出るだろう。
そうなると、気になってしょうがない気がするんだ。
「さて、2人にとっても初仕事となる話よ?
明日の朝、岐阜駅から米原駅まで移動、米原駅で乗り換えて石山駅で行くと良いわ。
石山駅からは、向こうの人間が車で迎えに来るように指示しておくから……」
気を取り直したらしい雛菊がお使いについて説明を始める。
だが、
「意外ですね。
安全を考えるなら、車の方がよいのでは?」
「電車、それも在来線で向かうのは……」
2人から反対される。
まあ、俺も同意見なのだが、
「別に世界的VIPを護衛しろと言ってるわけじゃないのよ?
大体、車で移動するのに、護衛2人とか無謀でしょ?
人の目が多い電車移動の方がよほど安心よ」
「……まあ、信用できる運転手が必要ですものね」
確かに、2人が免許を取っているとしても、そこまで熟練と言うわけじゃないよな。
「納得いったかしら?
運賃他の費用は、現金とカードで渡すわ」
「了解です」
「いつの間にそんなものを造ったんだ?」
ダンジョン脱出から4日だぞ?
クレジットカードなんて、そんな短期間で用意できるはずが……。
「鈴木さんから受け取ったカードよ。
30万まで引き出せるようになってるそうよ?
パスワードは、後で私の部屋で教えるわ」
「いや、俺が訊いていても良いんじゃないか?」
雛菊がこっちを見た上で、パスワードをここでは教えないと言う。
微妙に俺に対する信頼度が低いような……。
「……別に、ハルを信用していないわけじゃないわ。
ただ、金融情報は少数管理の方が良いでしょ?」
「それは……。
そうだけど」
まあ、良い……。
のだろうか?
良く分からない。
「さて、私達は打ち合わせをするから、ハルも旅行の準備をしておきなさいよ?」
「うん。了解」
半月の大旅行だし洗濯を考慮しても、中々の大荷物になりそうだ。
結構、時間が掛かるな。
……半月も雛菊と会えないのか。
正直、キツいな……。
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