廻って異世界

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地上での生活

第88話 鬼の名は……

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 当たり屋だったのか?
 或いは、不幸な行き違いだったのか?
 膝の上に座る鬼少女の顔は無邪気そのもので、

「……」

 ……判断が付かない。
 何か話題がほしいのだけど、

「そう言えば、自己紹介がまだだったよね?
 と言っても、名前なんて必要もなかったからなぁ……。
 大昔はサニーって、渾名を名乗っていたわね。
 大江御前なんて呼ばれてた時期もあるけど……」
「サニー?
 確かに日本人離れした容姿だけど……」

 改めてみると、金髪碧眼に白い肌の見るからに白人の容姿だ。

「……けど、大江御前って、名前からして鎌倉時代とかの人っぽいけど」
「そもそもお姉さん、人じゃないからね?
 君のところのタマちゃんは、君に……。
 そう言えば名前は?」

 まあ、鬼だしな。
 額からちょこんと出ている小さな角が、人外アピールしてる。

「……一応、美尾晴彦って名乗ってます」
「へ?
 能義の苗字は捨てたの?
 ……長い年月の間に、木気属性が薄まったのかしら?」

 ……うん。雛菊の知り合い確定だわ。
 タマちゃんは、玉藻前ってことだろうな。
 けど、うちって結構古い家柄なのか?
 とりあえず、

「訳あって、美尾って名乗ってますけど、本名は能義です」

 素直に答えた。
 間違いなく敵じゃないだろうから。

「そうなんだ。
 びっくりしたわ。
 能義はね? 本当は濃木、濃い木って書くの。
 安倍晴明の孫の1人が興した家よ。
 まあ、記録は抹消されていたはずだけど……」
「安倍晴明の子孫!」

 びっくりしたわ。
 超有名人じゃないか!
 けど、

「記録の抹消って?」
「安倍晴峯《あべはるみね》くん、能義家の始祖ね?
 彼は異常に木気と相性が良かったのよ。
 近くにいるだけで、五穀豊穣待ったなし。
 けどね?
 そんな子が、京の都にいても勿体無いでしょ?
 だから、美濃へ移住を命じられたの。
 だけど、自分達の目が届かないところで、他の権力者に目を付けられても困るから、記録を消した訳。
 唯一の名残は、代々受け継がれた'晴'の一字」

 そりゃ、米が年貢だった時代に、問答無用で豊穣をもたらす奴を都会で遊ばせるのは勿体無いわな。
 そう言えば、琥珀も植物を操る魔法が得意なんだっけ……。
 自分のルーツが知れたのは嬉しいけど、琥珀との、血の繋がりを感じて微妙な気分。

「完全に話題が逸れたわね?
 タマちゃんは今流行りのダンジョンとかと……」
「古代兵器ですよね」
「聞いてるのかぁ……。
 それでタマちゃんと一緒にいれるのはすごいなぁ。
 私はね?
 タマちゃんの母親達と同じ時期に造られた生体適性改造生体ユニット。
 ……平たく言うと、人を改造人間に作り替える生物機械ね」

 まあ、途中からこの人も、妖怪と呼ばれていた古代人の遺産だろうなとは、思っていたけど……。

「……簡単に言うとね?
 住めるところが減ってきたなら、常人が住めない所でも、居住出来るように改造してやれば、良いじゃん!
 って、酷い発想のプロジェクトで、造られたのが私」
「ダンジョンの秘密を聞いた時から思ってましたけど、古代人、かなりヤバい連中だったんですね……」

 そんな感想しか出てこない。
 この感じだと、絶対他にも妖怪や魔物として扱われている、古代遺産の皆さんがいるだろう。

「まあ、環境を自分達に合わせる現代人も、ヤバさは変わらないよ?
 それより、私の新しい名前を決めてもらえる?
 ユーザー登録みたいなものだから、呼びやすくて気軽なもので良いよ?」

 命名ノルマが増えた!
 正直、古代人どうこうよりこっちの方が、俺には問題だ。
 とりあえず、

「……好きなものってある?」
「好きなもの?」
「うん。
 好きなものから取った名前なら、愛着も沸くだろ?」

 俺としても、まったくのゼロよりはマシだしね!
 ……そうだよな!
 雛菊達もこの作戦で行こう。

「そうね……。
 生き物かな?
 生物は全般的に好きよ?」
「生き物、生き物か……」

 下がったハードルがごく僅かだった。
 いや、まだだ。

「生き物って言っても、色々あるだろう?
 ゴキブリだって生き物だよ?」

 誘導する。
 より、細かい好みを訊き出すんだ。

「ゴキブリ、良いわね。
 あのしぶとさは有用だわ……。
 私の名前、ゴキちゃんとかで良いわよ?」
「俺が嫌だよ!」

 何が悲しくて、身近な女性をゴキブリ呼ばわり、しなきゃならないんだ。
 ここは生き物、命から連想しよう。
 この娘、一般的に嫌われてる生き物でも、オールOKしそうだし。
 ……命、良いじゃん。

「決めた!
 ミコト。
 命と書いてミコトだ」
「ミコト?
 悪くはないけど、この容姿的に似合わないわよ?
 ゴキちゃんの方が可愛い気が……」

 何でだよ!
 名前なんて記号だ、みたいに言っておいて、よりによって、気に入ったのがゴキちゃんとか!

「とにかく!
 ミコトで確定!
 異論は認めません!」
「しょうがないわね……」

 強権で押し切った。
 女性をゴキブリ呼ばわりする奴にはなりたくないんでね!
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