廻って異世界

フォウ

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地上での生活

第92話 男が出歩くと言うことは……

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 京都駅を出て、直ぐの繁華街。
 ……だった場所。
 ようやく、満足に街歩き出来るようになった先が、まさかの京都駅周辺となったわけだけど、周囲は疎らにスーツ姿の女性が、歩く程度。
 人口減少で密度自体が、低いのもあるだろうけど、

「繁華街を出歩く人間が少ないんすよ。
 ファッションに気を遣う人間も減ってるんで、わざわざ流行を追いかける必要がないっす」
「そんなものかな?
 ファッションって、自分の好きなものを着る感じじゃないのか?」

 シャイ子さんが説明してくれるが、いまいち腑に落ちない。

「もちろん、そういう人もいるっすけど、そういう人は、繁華街にはあんまりこないっす。
 仲間内で作ったり、コアな店で購入するっすからね。
 繁華街で服を買う人間は、流行を追いかけるミーハー気質か、承認欲求の強い人間が、多いっすね。
 どちらも異性の目を、気にするタイプが多いっす」

 なるほど?
 ……まあ、そういうものなのだろうと納得しておく。

「ちなみ、そのタイプは歩き回ってる最中は、遭遇しないっすけど、1ヵ所に留まってると遭遇率がどんどん上がるっす。
 自分等みたいのを連れていない時は、1ヵ所に留まる外出は控えた方がいいっすよ?」
「どう言うことです?」
「私達では頼りないとでも?」

 ついでとばかりに注意されたが、浜名さんと夕蔓さんが、それに反発する。

「いやいや、嬢ちゃん達が頼りないとかそういう話じゃなくてね?
 今時の承認欲求マシマシな女性は、男見つけると、物陰で身なり整えて凸ってくるのよ。
 けど、私らみたいのとつるんでる男は、眼中にないわけ。
 対して、嬢ちゃん達みたいな、普通の女と行動しているなら、ワンチャン奪おうと絡んでくる」
「そういうものなんですか?」
「岐阜の方じゃ、男性自体見掛けないから……」

 シャイ子さんの説明で、トーンダウンする2人。
 理解は出来るけど……。

「大災害前は、女をトロフィーと勘違いしている男がいた。
 今は女の方が力があるから、男をトロフィーと勘違いしている女がいる。
 別に不思議な話じゃないっすね」
「問題は、そのトロフィーの価値と言うことですか?」

 良い男=素晴らしいトロフィー。
 だから、ギャルのような軍団を引き連れた男は、価値が下がるのか……。
 多分、1人を一途に愛するような男性が、モテるんだろうな。
 そう考えると、まるっと価値観も逆転かな?

「変な話ですけど。
 一途で貞淑な男と、複数の関係を持つ女に価値が出る社会になりそうですね?」
「そりゃそうですよ。
 誰彼構わず関係を持つ男と親しくなっても、誰も羨まないっす。
 身持ちの固い男を落とすことに価値が生まれるっすよね?
 逆に、沢山の男と関係を持てると言うことは、それだけの価値を、男サイドから認められている証拠になるっす」

 シャイ子さんの確認が取れた。
 取れたけど……。

「複数の男と関係を持てば、本命に嫌われるでしょ?
 まして、今の現状だと一夫多妻へ政策を変える可能性は、あっても逆はなさそうですよ?」
「そうっすね。
 だから、自分達と一緒でも、完璧な安全は保証できないっす。
 間違いなく、マシにはなるっすけど」

 同調圧力で、沢山の女性と付き合う男の方が価値がある、と言う方向へブレていく可能性もある。
 そうなれば、大江百花の人達といてもアプローチは受けるだろうな。

「どちらにしろ、今は出歩いてる男の数が少ないわ。
 ダンジョンの対応が進んで安全になれば、もっと出歩く男が増えていく。
 そうして新しい秩序が構築されていくまで、男も女も個々で、それぞれの距離を決めるでしょ」

 ミコトが言うようにダンジョンと言う脅威のせいで、男はバリケードの内側に保護されている感もある。
 けれど、

「地上じゃ、大災害から1年以上経つんだよな?
 未だに男女の距離感はバグってるのか……」
「距離感は、なくなってるが正しいと思うわよ?
 だって、会う機会が少ないんだもの」
「……怖いな」

 今の女性達は、男が少ない世界で生きている。
 ……1年以上も。
 これが続けば、本当に男が希少動物扱いされる世界になりかねない。

「ダンジョン探索を民間に開放するってのが、急務なのは、こういう事情もあるのか……」
「へぇ、結構進んでるのね?
 事なかれ主義のこの国にしては珍しいわ。
 今の首相は、本当に優秀ね」

 俺の呟きに、ミコトが感心する。
 永く生きてきたミコトが、珍しがるくらい日本は事なかれ主義なのだろうか。

「姐さん、ダンジョン探索が民間に開放されるってのは、良いこと何っすか?
 下手に刺激して、ダンジョン側から反撃されたら……」
「今だって、ダンジョンから攻撃されているようなもんでしょ?
 ダンジョンが、今より身近になる。
 そうなると、未知の恐怖は薄れて、ダンジョンを怖がらないようになるわね?
 未知の恐怖が減れば、希少な男が出歩いても安全かもしれないでしょ?」

 シャイ子さんの疑問は、多分ダンジョンの民間開放を嫌がる人の最もな反応じゃないだろうか。
 そして、ミコトの言い分、

「ダンジョンが危険。
 ダンジョンのある現代世界は、男を外に出せないって、状況を脱却しないと、どうせ遠からず現在の文明は滅ぶわよ?
 まあ、民間開放時にもう一度大混乱が起きるでしょうから、そこをうまく乗り越えられるかだけど……」
「……そうだな。
 そのための準備も進めているみたいだけど……」
「そうなのね?」

 探索者の学校は、そのためだろう。
 開放直後に多数の死人が出れば、頓挫するから、優秀な人材を多く準備しようとしている。
 そう考えると、ダンジョンの民間開放は数年以内の可能性が高そうだ。

「……すみません。
 ちょっと良いですか?」
「……ああん?!」

 近くを通り過ぎた女性が、引き返して声を掛けてきたのだが、シャイ子さんの睨み付けに一歩後ろへ下がる。

「……いや、あのぅ。
 先程、ダンジョンの民間開放がもうすぐって……」
「……」

 それでも、訊いてくる姿勢。
 内容的に男女のどうこうでもなさそうな様子に、シャイ子さんがこちらへ目配らせをしてくる。

「俺達が話してたのは、アメリカとかで、それで成功しているから始めるだろうって話ですけどね?」
「そうなんですね……。
 ……ごめんなさい」

 ひとまず、当たり障りなく対応しておく。
 向こうも引き下がりたかったようで、追及はないが、

「場所を変えるっす。
 祭り囃子に行くっすよ?」
「そうしましょ。
 街中で下手な話をしていると危険だわ」

 混乱を招きかねない会話は確かに危険だ。
 変な攻撃されたら、堪らない。

「自分らが溜まり場にしているカラオケ屋へ案内するっす。
 うちらの親戚がやってんで、情報も外へは漏れないっすよ」
「お馬鹿!
 シャイ子達はこっちよ!
 晴彦、私達は食べ物調達してくるわ。
 今のご時世、大所帯でカラオケ行っても食事が提供できないことが多いの」
 
 率先して案内しようとしたシャイ子さんを叱り付けるミコト。
 そして、

「晴彦の好みが分からないから、そっちの護衛どちらかも来て欲しいんだけど?」
「じゃあ私が!」

 ミコトの頼みに、ドヤ顔で前に出る夕蔓さん。
 そして、苦笑気味の浜名さん……。

「スタ子!
 あなたが案内しておきなさい」
「了解っす!
 自分は大川スターっす。
 星熊童子を襲名してます」

 ミコトに呼ばれて、子供のような女性が前に出る。
 なるほど……。

「言っとくっすけど、星熊童子だからスターじゃないっすよ?
 くそ親父がシャインさん達の命名聞いて、付けただけっす」
「……なるほど」

 肯定も否定も出来ないので、曖昧に流す。

「良いっすよ。
 それより、こっちっす。
 付いてきてください」

 スタ子さんの案内に従う俺と浜名さん。
 まあ、カラオケ屋と言っても歌目的じゃないしね……。
 歓迎会のノリで歌わされたりしないよね?

 病弱でしょっちゅう風邪を引く体質だった晴彦。
 喉が弱かったので、歌にはまったく自信がない。
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