廻って異世界

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地上での生活

第94話 猪と狐の密談

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「……良い感じね?
 電車を使わせて正解だったわ」
「どこまで計画の内だったんだい?」

 助手席に座る小さな狐が、クスクスと笑う様に、呆れた顔の莧。

「そうね。
 ……全部かしら?
 電車を使えば、米原駅で乗り換えるでしょ?
 璞蔵主の棲む勝楽寺が近いから、あのお人好しなら晴彦を気に掛けてくれると思ったのよ」

 胡散臭い見た目に反して、律儀にホテルまで戻ってきて晴彦の居場所と、理由を説明してくれたお人好しの妖狐を思い出す莧。

「大津近郊のホテルに泊まれば、遅かれ早かれ近くのダンジョンから、魔物は出てくる。
 璞蔵主がハルを守るなら、伏見の結界を使うしかないでしょ?」

 良いように、掌で踊らされたらしいと理解する莧。

「やって来たのが、サニーだったのは意外だったわ。
 グランと和解したのかしら?」
「グランとは?
 ミコトも出していた名前だけど?」
「あなた達には鞍馬天狗の方が伝わりやすいかしら?
 鞍馬山周辺を縄張りにしている元広域保安ユニットよ。
 本体は、貴船神社の更に奥に設置されてる機械で、周囲に出張ってくるのは治安維持端末だけどね?」

 器用に肩を竦めてみせる小狐に、やはり京都は魔境だと呆れ気味の莧。

「それで、ミコトが来たのを意外と言ったが、君は誰が来ると思ったんだい?」
「そうね?
 候補は、3人。
 1番可能性が高そうだと思ったのは、六合《りくごう》。
 安倍晴明の式神をしていた私達の同類。
 2番手は、貴人《きじん》。
 同じく安倍晴明の式神をしていた同類だけど、こっちは晴明大好きだったから、直系筋と行動を共にしている可能性が高い。
 1番可能性が低いと思ったのが、サニーこと大江御前、改めミコトね」

 一応、候補にはあったわけだと納得する莧だったが、

「候補の2名が、安倍晴明縁の式神なのかい?」
「ああ、ハルは安倍晴明の傍系子孫なのよ。
 正確には能義家がね?」
「なるほど、それで……。
 その2名を挙げた理由は?」

 安倍晴明十二天将と呼ばれるように、十二柱の式神がいたはずだが、その中の2体を挙げる雛菊に、質問を続ける莧。

「十二天将の中で私達の同類が、その2体なの。
 後は、安倍晴明、六合、貴人の誰かが魔素を固めて作った疑似生命体」
「……なるほど。
 ちなみに、雛菊的には誰が来ても問題なかったんだろう?」

 そこまで考えていて、最後の詰めを誤るとも思えない莧。

「そうね。
 六合も貴人も、眞緒を焚き付けると言う仕事はこなしてくれたでしょうね?
 まあ、六合は男性の減った世の中を是正する目的、貴人は晴彦の子供を増やしたいだけと言う違いはあったでしょうけど」
「……」

 類友かと肩を竦める莧。
 そんなことを気にする雛菊ではないので、言うだけ徒労感が増すのだ。

「さて、大当たりを引くことが、出来たのはありがたいわ。
 京都付近でサニー達敵に回すのはあまりいないだろうし、莧は手が空くわね?」
「……そうだね。
 自衛隊には晴彦の護衛を優先すると言ってある。
 僕達みたいに、盗聴器を仕掛けるような真似をしていなければ、大丈夫だと思う」
「心外ね?
 盗聴器なんて付けていないわよ?
 ただの護衛よ」

 莧の言葉を心外だと、言い切る小狐。

「その割には、あの状況で助けなかったみたいだけど?」

 あの眞緒の状況で、手を貸さずに護衛と言われても疑問だと考える莧だが、

「サニーのあれはハッタリよ。
 すぐ近くに莧がいるし、第2陣は私が控えているのよ?
 サニー1人なら逃げ切れるかもしれないけど、大江百鬼を抱えている以上は無理」
「本末転倒になるね?」

 莧の言葉にそういうことと笑う小狐。

「真面目な話だけどね?
 兵庫県のジュエルズサファイアの実家を探って欲しいわ」
「ジュエルズサファイア?
 彼女が何かを?」

 オタク女子で、大それた陰謀をするようにも思えなかったし、こちらにも友好的な女性だったはず。
 雛菊は何に目を付けたといぶかしむが、

「ただの確認よ?
 彼女の出身は、兵庫県の作用ってところだけどね?
 芦屋道満の出身地が近いのよ」
「芦屋道
 サファイアの本名は明兼寺子だったっけ?
 満子って古風な名前だなと思ったけど……」

 彼女自身もその名でからかわれていたと証言していたので、今時のメジャーな名前ではないはずだった。

「で?
 偉人の子孫集めゲームがしたい訳じゃないだろう?
 目的は?」
「予想通りなら、近くにダンジョンがあるだろうと思うの。
 未発見のダンジョンがね?」

 芦屋道満、そして明兼寺満子の魔素適性を考えると、晴彦のようにダンジョンを追い出された古代人の末裔のケースがあり得る。

「目的はダンジョンかい?
 古代人じゃなくて?」
「別に、私は古代人だの現代人だのとかれこれ言う輩じゃないの。
 重要なのはハルかどうかだけだもの」

 いい加減に子離れしなよ、と内心呆れつつも、

「ひとまず、調査するよ。
 京都の北から山に入って、山中を迂回して作用へ向かおう」
「助かるわ」

 猪の姿で、山中を全力で駆けれるのは楽しみな莧。
 そんな様子に目を細める小狐だった。
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