廻って異世界

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地上での生活

第101話 鬼々怪々

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 ホテルへ泊まった朝早く。
 シャイ子が、起きる気配を感じた私は、声を掛ける。

「おはよう、シャイ子。
 起き抜けに悪いけど、明日までに伊勢へ行くから、準備しておいて」
「姐さん。
 おはようございます。
 ……おはようございますは良いんですけど、いきなり過ぎません?
 朝起きて直ぐに、明日伊勢の方へ移動は酷いっすよ?」

 頭を掻きながら、困惑しているシャイ子。
 気持ちは分かるわ。
 けど、

「私達が夕食から戻った時には、眠りこけていたあなた達が悪いんじゃないの?
 あんな早く寝てるから、もう一度起きるかと期待したのだけどね?」

 寝りこけていたシャイ子達が悪いの。
 まさかあんなに熟睡するとは思わなかったわ。

「……。
 誰かさんがお酒の蒸気を吸わせたせいっすよ?
 ほろ酔い状態で満腹になれば誰でも寝ますって!」
「仮にも酒呑童子が情けない……」

 シャイ子の抗議へ呆れつつ、別の要因に思い至る。
 酒に混ぜた食人花の蜜、その呪毒が影響していた可能性。
 その場合、手持ちの薬草や薬も効能が増している可能性があるし、要注意な話になるわね。

「……まあ良いわ。
 マー子を除く、全員で伊勢の方へ移動するわ。
 このホテルを引き払う段階で、マー子は里に返しましょ」
「……そうっすね」
「マー子のことはしょうがないわ」

 ショボくれた顔のシャイ子を慰める。
 マー子の気質的にどう考えても、これ以上の方策はなかった。

「本当にそうっすかね?
 夕蔓眞緒との交渉の時に見張りをやらせず、眞緒の足止め役をやらせていれば……。」
「そうしたら、晴彦へ事前に話して、ご破算にしたかもしれないわ。
 そんなリスクが高い真似は出来なかったの」

 よくもわるくも直情的な気質のマー子のことだもの。
 晴彦を無理矢理囲い込むような真似に、反発した可能性が高いわ。

「もちろん、姐さんを否定する気はないっす。
 自分は大江百花を、次代へ繋げる責務があるっすし……」
「その割に協力的じゃなかったわよね?」

 シャイ子は、最初複数の女性と関係を持つ男が嫌われるとか、面倒臭い方向へ進みそうな話題を振っていたのだ。

「昨日はしょうがないっすよ?
 姐さんが、急に連絡入れてきたかと思ったら、良い獲物がいたから今日中に囲い込む。
 少なくとも、シャイ子は肉体関係持ちなさいなんて……。
 自分なりに見定めたいと思うっす!」
「……まあ良いわ。
 祭り囃子に誘ったりとか、良いチョイスだったし、いきなりホテル直行よりは、警戒心も薄れていたでしょうし……」

 情けない台詞のシャイ子に気を使って、褒めてやる。
 しかし、

「姐さん。
 その都合が悪くなったら直ぐに話題を替える癖は治した方がいいっすよ?」
「違うわよ!」

 シャイ子のやつ、言うに事欠いて私の都合が悪くなったからだと!

「全く!
 とにかく、マー子以外のメンツで伊勢方面へ移動するから、車を準備してちょうだい」
「……何故伊勢方面に?」

 腹を立てながら指示を出したら、疑問を投げ掛けられた。
 何故か、って?

「京都を離れたいなら、大江の里やその向こうの宮津の方でもいいっすよね?
 縁も所縁もない伊勢に?」

 そりゃ気になるわよね。

「まず、大江は論外。
 交通に不便だし、大人数で押し寄せたら迷惑でしょ?
 宮津とかは岐阜や名古屋から遠いので、除外。
 状況から静岡、愛知、三重の海沿いが望ましくて、その中で伊勢が1番良さげだったのよ」
「良さげっすか?」
「伊勢神宮のお膝元だけあって、龍脈の整備がきっちりしてあるの。
 少し拝借すれば、生活基盤が整うわ」

 特に、晴彦がいるのが大きい。
 豊穣の力と組み合わせれば、他所へ回せるくらいの食料生産も出来そうなレベルになるはず。

「拝借って、そんなことして良いんすか?」
「問題ないわ。
 これまでは大して使われていなかった余剰エネルギーよ?
 それで問題が起きていないのだから。
 それに龍脈のエネルギーってのは膨大なの。
 少し拝借した程度で、影響するようなものじゃないから」

 尚心配を続けるシャイ子へ説明を続ける。

「ダンジョンとかも近場にないし、いい土地よ?
 ……何より、ご飯が美味しい」
「大方、それが本音っすね……」

 呆れた顔をするシャイ子だけどね?

「じゃあ、シャイ子はあの食事で我慢できるの?
 薄味って言っても限度があるでしょ?」
「そりゃ、自分達も田舎育ちっすから、よほどお腹が空いていないとキツいなっと思うっすけど……」

 やはり、シャイ子なりに味が薄いとは思っていたようね?

「でしょ?
 分かったら、他のメンツに話を通しておいて。
 それと、車の手配だけど……」
「私とムー子が1台ずつ持ってるっすけど、軽自動車っすね。
 どうするっすか?」

 これまでは3人と4人で分乗すれば軽自動車でも余裕だったのよね。
 けど、今後のことを考えると、

「積載量のある車を用意しましょ?
 中古で安く手に入るし」
「了解っす!」
「本当は莧がやったみたいに、呪力で動く車に改造したいところだけど、そっちは後々ね。
 ガソリンは満タンにしときなさい。
 費用は、優歌を連れて行って、タマちゃんのカードで支払えば良いわ」

 その辺は、タマちゃんと打ち合わせ済み。
 ……良さげな土地を買い上げても良いとか、タマちゃんらしいけど、よくそんなお金が捻出出来るものだわ。

「さて、急で悪いけど準備をお願いね?」
「……了解です」

 伊勢の方で良さげな土地を見付けて、拠点作り。
 制限時間は、今月末までの3週間。
 ……忙しくなるわね。
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