廻って異世界

フォウ

文字の大きさ
106 / 139
地上での生活

第103話 鬼と狐の密談

しおりを挟む
 日本政府が用意したホテル。
 小さな子狐を抱く雛菊を前にして、呆れた表情の朔。

「その子がお兄ちゃんと雛菊の子供なのだ?」
「ええ。
 可愛いでしょ?」

 モコモコとした銀色の毛並みは、確かに可愛らしいが、ホテルの1室でそんな堂々として良いのだろうか?
 何よりも、

「まさか、子供自慢で私を呼んだ訳じゃないのだ?」
「もちろん、違うわよ。
 結から木の実は預かってきたでしょ?
 それをハルに届けてほしいの」
「これなのだ?」

 雛菊の言葉を聞いて、朔が取り出したのはゴルフボールくらいの球体。

「それね。
 上手く出来上がっているわ」
「これは何なのだ?」

 雛菊の確認から目的のものに間違いなさそうではあるが、木の実と言うより金属の玉に見える。

「結の受信機。
 本拠地の結とその受信機で、相互通信出来るようになるの。
 それを介すれば第6層と同じ感覚で、拠点作りが出来るわ。
 ……まあ、その受信機では現状維持は出来ても拠点の拡張は出来ないから、細かい設定をしてあげる必要があるのだけどね」
「なるほどなのだ。
 お兄ちゃんに第6層に拠点作りをさせていたのは、このためだったのだ?」

 雛菊は、膨大な情報処理能力がある結に、わざわざ指示を出させて街作りをさせていた。
 使用できる魔素量を制限して……。

「まさか、こんなに早く本番迎えるとは思っていなかったけどね……」

 ぼやく雛菊の気持ちも分かる。
 少なくとも第6層で、向こうの時間で1年くらいは生活する予定だった。
 それが幾つものトラブルの結果、3ヶ月程度で中断することになった。

「しょうがないのだ。
 それで住む予定の住人は、大江山の鬼達だけなのだ?」
「今のところはね。
 将来的には、他の住人も増えていくでしょうけど、変な人間は入れたくないから後々の話よ」

 居住者の選定基準も考えない、とぼやく雛菊。
 そこまで大きなコミュニティーを造る予定ではないので、変な人間を入れれば直ぐに崩壊しかねない。
 とは言え、それは朔に関係ない話なので、

「そうなると、家数件と各種設備で十分なのだ?」

 第2拠点の規模や設備の話を進める。
 雛菊も、蒸し返す気はなく、

「……そうね。
 第6層本拠地を一回り小さくした感じを想定してほしいわ。
 本宅が基本的な生活圏で、周囲の家は各自のプライベートエリアみたいな構想よ」

 バンガローと管理棟のあるキャンプ場のようなイメージを連想する朔。

「小さい集落なら、炊事や洗濯をまとめてやった方が効率的なのだ。
 けど、それなら旅館のような建物を1つ設置で十分なのだと思うけど?」
「住人が増える度に拠点を増築する気?
 独立した家を用意した方が良いでしょ?」

 場合によっては、大人数の移住者を受け入れる可能性もあるのだ。
 複数戸の家を用意し、常に数件の空き家を確保しておいた方が効率的だろう。

「それもそうなのだ。
 他に必要な施設は?」
「基本的に本拠地と同じね。
 温泉、果樹園、畑……。
 水田も欲しいわね。
 さすがに地上で、年中野菜や果物が実る状況は、不自然だから多角化しないと……」

 ……不自然だから。
 つまり、年中野菜や果物が実るようにすることも不可能じゃないと言うことなのだ、と認識する朔。
 だが、

「それなら家畜も導入するのだ?」
「それも後々で良いわ。
 しばらくは狩猟で肉を確保しましょ」

 深く突っ込むと怖そうなので、他の話題として、畜産はどうするのかと訊ねたが、しばらく狩りで対応するとのことだった。

「了解なのだ。
 後は……」
「ハルに名前を催促しておいて。
 私の用事はそれくらい」

 何かあるかと訊ねると、名前を催促するように伝えられ、苦笑する朔。
 街作りと言う大事よりも、晴彦から名前をもらうことの方が関心が高い辺り、雛菊らしいと苦笑するしかない朔であった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貞操逆転世界で出会い系アプリをしたら

普通
恋愛
男性は弱く、女性は強い。この世界ではそれが当たり前。性被害を受けるのは男。そんな世界に生を受けた葉山優は普通に生きてきたが、ある日前世の記憶取り戻す。そこで前世ではこんな風に男女比の偏りもなく、普通に男女が一緒に生活できたことを思い出し、もう一度女性と関わってみようと決意する。 そこで会うのにまだ抵抗がある、優は出会い系アプリを見つける。まずはここでメッセージのやり取りだけでも女性としてから会うことしようと試みるのだった。

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

転生?したら男女逆転世界

美鈴
ファンタジー
階段から落ちたら見知らぬ場所にいた僕。名前は覚えてるけど名字は分からない。年齢は多分15歳だと思うけど…。えっ…男性警護官!?って、何?男性が少ないって!?男性が襲われる危険がある!?そんな事言われても…。えっ…君が助けてくれるの?じゃあお願いします!って感じで始まっていく物語…。 ※カクヨム様にも掲載しております

男が少ない世界に転生して

美鈴
ファンタジー
※よりよいものにする為に改稿する事にしました!どうかお付き合い下さいますと幸いです! 旧稿版も一応残しておきますがあのままいくと当初のプロットよりも大幅におかしくなりましたのですいませんが宜しくお願いします! 交通事故に合い意識がどんどん遠くなっていく1人の男性。次に意識が戻った時は病院?前世の一部の記憶はあるが自分に関する事は全て忘れた男が転生したのは男女比が異なる世界。彼はどの様にこの世界で生きていくのだろうか?それはまだ誰も知らないお話。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
コミカライズ企画進行中です!! 2巻2月9日電子版解禁です!! 紙は9日に配送開始、12日発売! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&2巻出版!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 12日には、楽天koboにおいてファンタジー5位となりました!皆様のおかげです! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 オリコンランキングライトノベル 週間BOOKランキング 18位(2025年9月29日付)

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...