廻って異世界

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地上での生活

第105話 穴堀は晴彦の仕事

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 とある山中。
 俺はホームセンターで購入したつるはしを懸命に振り下ろしていた。
 その様子を監督しているはずのミコトは、近くに椅子を用意して、スマホを弄ってる。
 カン! ガン! カツン! と言う音と共に手に伝わる振動。
 穴を掘ると言うよりも岩を削るような感じだ。

「ミコト。
 ここの地面がすごい固いんだけど?」
「地面は固いものよ?」

 休憩を取るために、つるはしを地面に置いた俺。
 袖で適当に汗を拭いつつ、文句を言うと、当たり前と言わんばかりの返答がされた。

「第6階層の穴堀はこんなに大変じゃなかったけど?」
「それはそうよ。
 聞いた感じじゃ、タマちゃんがあれこれ下準備してたみたいだし、簡単に掘れるようになっていたと思うわ」

 まさか、穴堀すらチュートリアル難易度だったとは……。

「この辺は、人の手が及んでいなかった辺りだし、元々岩のような地面でしょ?
 固くて大変なのは普通よ」
「……例えばだけど、ミコトも一緒に掘るとかはないの?」

 何処までも他人事のようなミコトへ、遠回しに手伝えと言ったが、

「無理ね。
 私は周囲を警戒しているの。
 それとも、晴彦は襲撃された時に対応出来るの?」
「それはそうだけど……」
「大体、晴彦がやっている作業は、龍脈に穴を開けてエネルギーの抜き取り口を取り付ける作業よ?
 穴開きと同時に吹き出すであろう呪力に、曝されたら私でも火傷くらいは負うわ。
 今のメンツで安全に掘削出来るのは、晴彦だけよ」

 堀始めの時に説明されたけど、いまいち納得できない。
 そもそも、

「その言い方だと、俺の方がよほど人外みたいなんだけど?」
「逆よ。
 私達は、人間よりも呪力で身体を構成する割合が多いの。
 固有の呪力を持っているから、別の波動を帯びた呪力を急に浴びると、炎症のようになるわけ。
 ……まあ、現代人なら吹き出した呪力で、即死する可能性もあるから、晴彦が一般人っての語弊があるわね」

 ペットボトルのお茶を飲みながら、ミコトの話に耳を傾ける。
 雛菊が最初に穴堀をやらせたわけが分かった。
 町を造る基礎。
 マジでチュートリアルだったわけだ。

「もうすぐ、朔? だったかしら?
 あなたの使い魔が、拠点を制御するための部品を運んでくるんでしょ?
 それまでには終わらせないと……」
「分かってる。
 けど、殆ど岩みたいな地盤だぞ?
 重機でも持ってきた方が早いんじゃ……。
 ……重機みたいな力があった」

 暗にサボるなと、言ってくるミコトへ抗議していて気付いた。
 折角、魔法と言う便利パワーがあると言うのだから、利用しようと……。

 雛菊が言っていたな。
 結局、魔法とはイメージだと。
 ドリルをイメージして、つるはしで開けた穴へ手を差し込む。

 目を閉じると、ガサガサと言う何かが遠ざかるような音が聞こえるが、それは放っておいて……。

 ……よし!

 高速回転するドリルをイメージして、魔素を解き放ち……。
 ブワッ! と風に煽られて、地面を転がる。
 ガンッ! と近くの木に背中を打って回転が止まると、

「やると思った。
 ……お疲れ様」

 ミコトが手を差し出してくる。
 擦り傷が出来てヒリつく手足、打ち身となった背中。
 その痛みを堪えつつ、ミコトの手を掴んで立ち上がると……。

 巨大な穴が1つ。
 位置的に、俺が掘っていた穴を中心とした範囲だと思うが……。

「これは?」
「無造作に岩盤を貫いた影響で、呪力が噴き出したの。
 そのうち、やるだろうなって思っていたけど、案外早かったわ」

 つまり、俺が我慢の限界を迎えることまで、折り込み済みだったと。

「せめて事前にこうなることも教えてほしかったけど?」
「教えたらやらなかったでしょ?
 さっさと片付けたかったのよ」

 酷い話だ。
 危険を説明されていないせいだと言っても、

「わざわざ、つるはしを渡した時点で危険は予想できたでしょ?
 呪術使用に問題がなければ、最初からそう言っていたわ」

 で終わるわな。
 確認なしで、勝手な行動を取った俺が悪いと言われればそれまでだ。

「……これはどうすれば良い?」

 気を取り直して訊ねる。
 大穴の底には、陽炎のような靄。
 可視化するほどの呪力が渦巻いているようだが、

「そのままで良いわ。
 下手に近付くバカはいないから。
 ……今は昼過ぎね?
 シャイ子達に迎えに来てもらって、外食にでも行きましょ?」

 ミコトは適当だった。
 下手に落ちようものなら、即死も免れないトラップだと思うけど……。

「誰が好き好んでこんな山の中に来るのよ?
 明日まで放置で十分よ」

 ……1番近い車道から10分。
 獣道さえ、外れて辿り着いた山の中。

「確かに」
「でしょ?
 行くわよ?」

 意図的に俺達を尾行しでもしない限りこんな所に来るやつもいないだろうし、放置も明日までだ。
 このままでも問題ないだろうと、ミコトの指示に従うことにした。
 ……変なフラグが立たないかとも、一瞬不安を感じたが、現実でそうそう起こるはずもない。
 下手に埋めるよりも良いだろうとミコトと共に山を降りることにした。
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