廻って異世界

フォウ

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地上での生活

第111話 拠点設営

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 加工済みの木材や釘、ネジ等が巨木の根元から湧き出し、それを蝶の羽根を持つ妖精が運ぶ。
 目的地では大柄な妖精が受け取り、パズルを当て嵌めるように、図面もみないで家を組み上げていく。
 数時間前はなにもない更地だったのが、嘘のように今は3軒目の住宅が出来上がりつつあった。

「俺、要らなくない?」
「要るわよ。
 この子、晴彦の指示しか聞かないんだから……」

 手持ち無沙汰で、どんどん出来上がっていく家を観ていると、ここにいる必要ないだろうと言う気になるが、ミコトが否定する。

「それはそうなのだ。
 お兄ちゃんの血が、結の命令受諾コマンドになっているのだ。
 誰の命令でも聞くとか危険すぎるのだ」

 理由解説する朔に納得する。
 何せ、今朝時点では大きめの穴が1つあるだけの山地だったのに、たった半日で、ちょっとした家3軒が立つ村もどきだ。
 しかも、ここからは見えないが、海方面には崖に階段を設置する組や入り江を掘って養殖池を準備する連中もいる。
 強い龍穴が必要だから、場所の制約があるとはいえ、とんでもない開拓能力だ。

「暇なお兄ちゃんに、仕事があるのだ。
 スタ子達が買ってきた苗を植えて、急成長させるのだ。
 物々交換用だから、保存が利く果物を優先するのだ」
「わざわざ植えるのか?
 第6層みたいに果樹そのものを創造した方が早いんじゃ?」

 果樹なんて手に入らないダンジョン内で、果樹園を造っていたわけだし、直接果樹の創造も可能なはずだ。 

「その分、コストが掛かるのだ。
 それで言ったら、直接果物や野菜を創造すれば良いのだ」
「確かに……」

 直接、実や野菜を創造すれば、あの面倒な採取も不要だった。
 それが必要になったのは、魔素消費が多かったからだし……。

「まあ、そういうことなら……」
「それじゃあ、お願いするのだ」

 大勢が忙しなく動き回っている中で、1人だけ突っ立ってるのは、申し訳ないのでありがたいことでもあるし。
 直ぐそこの果樹園予定地へ行けば、色々な苗木が植えられるのを待っていた。

「リンゴにキウイ、みかんもあるのか……」
「近場のホームセンターで投げ売りされているのを掻き集めたからね」

 苗木の種類を確認していたら、スタ子さんが声を掛けてきた。

「私が植え付けの担当なのよ。
 種類ごとにまとめて植えるから、よろしくね」
「了解」

 大江百花の皆及び浜名さん、眞緒は手分けして、様々な作業をしている現状。
 果樹園担当はスタ子さんとのことなので、指示に従って、植え付けを進めていく。
 彼女の奥には、既に植えられた栗や柿の木が見える。
 栗や柿を植えて、また熊が来ないのだろうか?

「そういえば、熊が出る前にやって来ていた人達って、どんな感じ?」

 熊の前に来た厄介な人達を連想してしまった。
 将来、来襲するかどうかも不明な熊よりも、近々襲撃のありそうな連中の対処が先だろうし……。

「そうね……。
 ギャルって感じだったわ。
 化粧して香水も付けていたし、髪もブリーチ掛けてたわね……」

 スタ子の返答は、多分に呆れが含まれていた。
 まあ、化粧や香水を使う人間は多いらしい。
 何せ、燃料不足で薬品不足のご時世だから、風呂に入れる機会は減って、肌荒れや体臭が気になる人は多いから。
 しかし、髪を脱色ってのは珍しい。
 結構な労力の割りに、リターンが少ないからか、ブリーチや髪染めをする人間は、かなり減っているはずだし。

「まあ、私達の中に男がいることが、バレているせいでしょうけどね?
 それにしても、逆効果だと思わないのかしら?」
「自分も含めて、生きることに必死な時におしゃれに気を遣う人間なんて、自分は自己中ですって、宣言しているようなものだしね……」

 こっちが懸命に構築中のライフラインへ、ただ乗りする気にしか思えない。
 絶対に関わりたくないな。

「そうね。
 まだ、京都で会った連中の方が、協調性はあったんじゃないかしら?」
「……まあ、ミホさん達はあれで地元で働いているみたいだし」

 カラオケ屋の前で会ったミホさん達の方がマシだと言う意見には同意。

 疎開を否定するわけじゃないけど、何処もリソースが不足している現状で、それまでの生活圏を離れるなら、より多くの労力を掛ける必要が出るのは必然だろう?
 その労力を他人に押し付けようとすれば反発が起きるに決まっている。

「けれど、多分また来るよね?」
「絶対にね?
 しかも、ここには色々な設備が整いつつあるわけだし……」

 2人でため息を付きながら、黙々と苗木の植え込みを進める。
 これ以上、話題にすると直ぐにでも連中が現れそうだったから……。
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