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第21話:ユエルゴアの森
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レンヌからカンペールに向かったとき。
しおらしくティートンがお願いをしてきた。
「…お願いがある…」
「俺にか」
「ユエルゴアの森に寄ってもらえないだろうか?」
「ユエルゴアの森?」
俺はペトロナを見た。
「………」
ペトロナにしてはめすしく言いにくそうにしている。何かあるのだろうか?
「妖精の森です…」
バシリアが呟くように教えてくれる。
「何か聞いてはいけない事なのか?」
「いえ…そういうわけではないのですが……」
バシリアも言いにくそうだ。
「…行かれますか?」
ペトロナが俺に尋ねる、表情はどちらかというと俺を心配しているような感じだ。
「ティートン。行きたいのか?」
「できればでいい。無理にとは言わない」
「ペトロナ、バシリア、ジャンネット。できれば連れてってやりたいがダメか?」
「アニェス様が良いならば従います」
「いや、命令ではないんだが…」
「行きましょう、お連れします」
バシリアが、馬を操る俺の手に手を重ねた。
ペトロナとジャンネットも頷いてくれた。
因みに今日の騎乗は、前からティートン・俺・バシリアという順だ。前が見えるのかというと普通に座られると見えない。俺が真ん中で騎手をする場合は、前の人はうつ伏せ気味にしてもらっている…ゴメンネ。
***
「ユエルゴア、ブルトン語で“高い森”を意味します。
森の景観を特徴づける巨石は、数億年前の地下深くのマグマの冷却と固化によるものです。数千年前からの風化と河川の浸食によって形作られた巨石と木々の古の森です。
この地に住む人々は、太古の昔、巨人たちが神々や敵対する巨人と戦ったときの投石の残骸だと信じて疑いません」
バシリアが、森に視線を向け教えてくれた。
ここはユエルゴア、湖と森に抱かれた地のようだ。
村にはサン・イヴ教会と教会を訪れる巡礼者のための宿屋が存在していた。
「あの教会は…古代ケルトの聖地、特に聖なる泉の上に建っているの…」
ティートンが悲しそうに俺に言う。責めてる感じではなく、ただ悲しんでいる感じだ。
「悲しいのか?」
「今更よ、私たちと泉は深く係わりがあるからちょっとだけ…」
「そうか」
ジャンネットが十字を切ろうとしてやめたのが目に入る。
「人のやることだ」とジャンネットに声をかける。
「今日はもう遅い、宿を探そう」
俺が提案すると皆が頷き、近くに見えた宿屋に部屋をとった。
宿屋では相変わらず視線が痛い。俺はいつまでも慣れないが、バシリアとペトロナはどうなのかと気になったから聞いてみた。
「アリス様の言いつけなので…」
「何事にも動じない精神力を養うためです…」
無理していることは解った。
夕食を摂ったあと、俺とバシリアとティートンで部屋で休んでいると、ティートンが
「アニェス。コリガンの洞窟に行きたいんだけど許可してほしい」
目の端でバシリアが緊張している。
「夜はコリガンが出るから行くなって宿屋の娘が言ってたぞ?」
「そのコリガンに会いに行くの」
「…興味本位では無いみたいだが…」
ティートンは俺の言葉にクスリと笑う。
「そんなわけないじゃない」
「…俺も行っていいなら許可しよう」
「アニェス様」
ティートンは顎に手をやって考え。バシリアは俺とティートンを交互に見ている。
「いいわよ、一緒に行きましょう」
「わ、私もお供します」
ティートンは少し驚いた表情をする。
(んーなんか皆へんな感じがする…)
俺たちは、宿屋を抜け出しユエルゴアの森に足を踏み入れる。鬱蒼と茂った木々は月明かりを通さず、ただただ暗い。
《ライト》
俺は魔法を唱え周囲を照らす光球を頭上に出す。
「……まあ、良いけど…」
明るくなったことでティートンがちょっと不愉快そうにする。なんだよ暗いから見えるようにしたのに。
「アニエス様…」
あれ?バシリアも不服そうだ。
「明るくして不味かった?」
「ここまで来たのでお話しします」
「ティートンはお墓参りに来たのかと…」
「お墓参り?」
「妖精って何だと思います?」
「え?あの世界ではそういう種族がいたぞ」
「…」バシリアが複雑な顔をする。
「俺の元の時代では、空想上の物語の中だけの存在だな」
「え…っと」
軽くカルチャーショックらしい。
「ホントに変な存在だなお前は」
ティートンが振り返る。
巨大な岩の塊が折り重なる場所に出た。
あたかも巨人が無造作に積み上げたかのようだ。
「なるほど巨人の戦跡か…」
言いえて妙である。
積み重なった岩の隙間が洞窟のようになっている。
何箇所かある隙間のひとつにティートンは迷うこと無く身体を滑り込ませる。
バシリアと見つめ合った後、俺たちも続く。
岩と岩の隙間を縫うように、石舞台古墳の玄室のような密閉された空間が、不規則に連なっている。しかも足元は湿っており、轟音を立てる川の水がすぐ近くを流れている。
基本、中は狭い。俺くらいの身長なら立てる場所もあるが、中腰を強いられ場所がほとんどだ。
「悪いけど明かりを消して…」
ほんの少しだけ開けた場所に入ると、ティートンにお願いされ、俺は明かりを解除した。
すると、ボンヤリと洞窟内が薄緑色の光りに包まれる。
光の元は、小さな光の粒だ、他にも色々なサイズの光が漂っている。
ひとつの光が俺に近づき、違う~みたいな漂い方でバシリアの下へ行く。バシリアは
その光に寄り添っている。
一際大きな光が、何かを形作ると人の姿を模していく。
どこかティートンに似た容姿だ。
「お久しぶりです」
ティートンが光に語りかけると、光は笑顔になる。
胸で手を組み目を閉じる。会話でもしているのだろうか?
とても幻想的なシーンだ。
「アニェス様。先程の話の続きですが…」
「うん」
「魔女は長命ですが、不滅ではありません。肉体の滅んだ魔女の残滓が妖精と呼ばれる存在です。力の強かったものは人の形をし、弱かったものは、光や小さな姿にしかなれない魔女の成れの果て。
いつかは消えて無くなる存在。稀にこの場から魔女に戻る者もいます」
「なんでペトロナは俺を心配するような目で見たんだ?」
「アニェス様には、あまり知られたくない話だからだと思います」
「…そうなのか?」
「魔女は…この世界にあって、まったく異質な存在です。それを知られて同じように接していただけるか心配なのです」
「…バシリアもか?」
「はい…」
俺はバシリアに寄り添って頭をなでて
「変わらないよ、俺は」と言ってやる。
ただ俺が爪先立ちなのが悲しい。
「ティートンに似たあの人は誰だか解るか?」
「この方は、先代のティートンです…」
ティートンがこちらを向いていた。
(先代?)
先代のティートンが俺を見てお辞儀する。
『アヴァロンが動いているのですね…』
「…知り合いが攫われた」
『モルガン様がアーサー様を受け入れたときよりアヴァロンは公正さを欠いております。申し訳ありません』
「いや、貴方のせいじゃないだろ。謝らないでくれ。ただ取り戻すだけだ」
少し微笑んだように見える。
『…力が理を超えていますね。世界が悲鳴を上げそうな力を感じます』
「そんなことはない、俺は神でも悪魔でもない、人だ」
『トゥアールはアーサーでなくあなたを選びました。力の使い方をお間違えなきようお願いします……』
「トゥアール?」
ティートンが胸元で小さく手を挙げる。
「アヴァロン九姉妹はモルガンを覗き、永久(とこしえ)の時間を過ごしますが代替わりすると聞いています。トゥアールとはティートンの真名なのでしょう」バシリアが呟くように声を震わせた。
「アーサー?選んだ?」
「世界に干渉しないのも、干渉するのもアヴァロンの魔女の使命だが……アヴァロンに死の淵だったアーサーを招き入れ、再生の眠りの中についたアーサー……モルガン姉と三相の姉妹は、アーサー中心、イングランド中心にアヴァロンをしてしまった…私はそれが正しくない気がしている…」
「ティートン…」
「トゥアールだ……今夜だけは…」
「トゥアール…了解だ」
「ただ、アヴァロン自体に害するときは敵対するからな、覚えとけ」
「わかった、心得よう」
『昔はここからアヴァロンに繋がる道があったのですが…今はもう閉ざされています』
「大丈夫だ、貴方やトゥアールに迷惑をかける気は毛頭ない。自力で行くさ。それならトゥアールも協力しやすいだろ」
トゥアールがフッと息をはく。
「先代。こういうヤツなんだ」
と笑っている。
おなじ笑顔で先代ティートンも笑っているようだ。
俺たちは、先代ティートンに見送られ古の魔女たちの集う安寧の地を後にした。
「先代さん、優しそうな人だったな」
「そうでしたね」
「まるで私が優しくないみたいだな」
「トゥアールの優しさは方向性が違うんだ。俺はそう思ってるぞ」
「そ…そうか……」
なんかトゥアールが黙ってしまった。
「ふーん…ティートンは裏切るんですね…」
突然頭上から声がかけられる。
今まで感知できていなかった。トゥアールもそうだったが、こいつら俺の認識が利かないのか?そう言えばペトロナも突然現れたな、何か魔女特有の秘訣があるのだろうか?
「ティーテン!」
トゥアールが叫ぶ。
「遅いから、迎えに来ましたが…まさか真名まで教えるほどの関係になられているとは…」
「あなたも、今のアヴァロン、いえモルガン姉と三相はおかしいと気づいているでしょ…」
「それは、歴史を変える、そちらの方たちとは別の問題です」
「全て報告させて頂きます」
「まってティーテン…」
「きゃあ」
と、かわいい声を出してティーテンは俺の腕の中で暴れている。
「「え?」」
トゥアールとバシリアが同時に声を出す。
俺は、捕獲したティーテン?を抱いて地上へと戻った。
ティーテンは、ブラウンの髪を三つ編みポニーテールにした少女だった。少女と言っても見た目は俺より上だけど…
「え…っと、捕獲してきた…」
俺は罰が悪そうに報告した。
「なんなんですか、どういうことですか、理不尽です」
「ティーテン…可哀想だけど、貴方じゃバトル系の話にならないみたい…」
こんな悲しそうに語る、トゥアールは初めて見た気がする…
「……リリースしようか?」
「「「………」」」
(どうしよう、いたたまれない…)
仕方ないので、そのまま宿に連れ帰った…
***
翌朝、ペトロナさんと、ジャンネットが口を聞いてくれなかった。
「アニェス様。これ、どうしますか?」
バシリアが手足を縛り猿ぐつわされたティーテンを指さす。
活きのいいまま捕獲したので、結構うるさい。
取り扱いに非常に困っていた。
俺はティートンを見る。ティートンはこっち見ないでよみたいな顔をする。
「懐柔するか、逃げるに任せるか…そんなところ?」
「懐柔可能なのか?」
「五分五分かな…彼女は私に近しい考えの方なんだけど。アヴァロン第一主義なので…」
「頼めないか?」
「……うん…おいおいで良いなら」
ふたりで頷きあった。
しおらしくティートンがお願いをしてきた。
「…お願いがある…」
「俺にか」
「ユエルゴアの森に寄ってもらえないだろうか?」
「ユエルゴアの森?」
俺はペトロナを見た。
「………」
ペトロナにしてはめすしく言いにくそうにしている。何かあるのだろうか?
「妖精の森です…」
バシリアが呟くように教えてくれる。
「何か聞いてはいけない事なのか?」
「いえ…そういうわけではないのですが……」
バシリアも言いにくそうだ。
「…行かれますか?」
ペトロナが俺に尋ねる、表情はどちらかというと俺を心配しているような感じだ。
「ティートン。行きたいのか?」
「できればでいい。無理にとは言わない」
「ペトロナ、バシリア、ジャンネット。できれば連れてってやりたいがダメか?」
「アニェス様が良いならば従います」
「いや、命令ではないんだが…」
「行きましょう、お連れします」
バシリアが、馬を操る俺の手に手を重ねた。
ペトロナとジャンネットも頷いてくれた。
因みに今日の騎乗は、前からティートン・俺・バシリアという順だ。前が見えるのかというと普通に座られると見えない。俺が真ん中で騎手をする場合は、前の人はうつ伏せ気味にしてもらっている…ゴメンネ。
***
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森の景観を特徴づける巨石は、数億年前の地下深くのマグマの冷却と固化によるものです。数千年前からの風化と河川の浸食によって形作られた巨石と木々の古の森です。
この地に住む人々は、太古の昔、巨人たちが神々や敵対する巨人と戦ったときの投石の残骸だと信じて疑いません」
バシリアが、森に視線を向け教えてくれた。
ここはユエルゴア、湖と森に抱かれた地のようだ。
村にはサン・イヴ教会と教会を訪れる巡礼者のための宿屋が存在していた。
「あの教会は…古代ケルトの聖地、特に聖なる泉の上に建っているの…」
ティートンが悲しそうに俺に言う。責めてる感じではなく、ただ悲しんでいる感じだ。
「悲しいのか?」
「今更よ、私たちと泉は深く係わりがあるからちょっとだけ…」
「そうか」
ジャンネットが十字を切ろうとしてやめたのが目に入る。
「人のやることだ」とジャンネットに声をかける。
「今日はもう遅い、宿を探そう」
俺が提案すると皆が頷き、近くに見えた宿屋に部屋をとった。
宿屋では相変わらず視線が痛い。俺はいつまでも慣れないが、バシリアとペトロナはどうなのかと気になったから聞いてみた。
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「何事にも動じない精神力を養うためです…」
無理していることは解った。
夕食を摂ったあと、俺とバシリアとティートンで部屋で休んでいると、ティートンが
「アニェス。コリガンの洞窟に行きたいんだけど許可してほしい」
目の端でバシリアが緊張している。
「夜はコリガンが出るから行くなって宿屋の娘が言ってたぞ?」
「そのコリガンに会いに行くの」
「…興味本位では無いみたいだが…」
ティートンは俺の言葉にクスリと笑う。
「そんなわけないじゃない」
「…俺も行っていいなら許可しよう」
「アニェス様」
ティートンは顎に手をやって考え。バシリアは俺とティートンを交互に見ている。
「いいわよ、一緒に行きましょう」
「わ、私もお供します」
ティートンは少し驚いた表情をする。
(んーなんか皆へんな感じがする…)
俺たちは、宿屋を抜け出しユエルゴアの森に足を踏み入れる。鬱蒼と茂った木々は月明かりを通さず、ただただ暗い。
《ライト》
俺は魔法を唱え周囲を照らす光球を頭上に出す。
「……まあ、良いけど…」
明るくなったことでティートンがちょっと不愉快そうにする。なんだよ暗いから見えるようにしたのに。
「アニエス様…」
あれ?バシリアも不服そうだ。
「明るくして不味かった?」
「ここまで来たのでお話しします」
「ティートンはお墓参りに来たのかと…」
「お墓参り?」
「妖精って何だと思います?」
「え?あの世界ではそういう種族がいたぞ」
「…」バシリアが複雑な顔をする。
「俺の元の時代では、空想上の物語の中だけの存在だな」
「え…っと」
軽くカルチャーショックらしい。
「ホントに変な存在だなお前は」
ティートンが振り返る。
巨大な岩の塊が折り重なる場所に出た。
あたかも巨人が無造作に積み上げたかのようだ。
「なるほど巨人の戦跡か…」
言いえて妙である。
積み重なった岩の隙間が洞窟のようになっている。
何箇所かある隙間のひとつにティートンは迷うこと無く身体を滑り込ませる。
バシリアと見つめ合った後、俺たちも続く。
岩と岩の隙間を縫うように、石舞台古墳の玄室のような密閉された空間が、不規則に連なっている。しかも足元は湿っており、轟音を立てる川の水がすぐ近くを流れている。
基本、中は狭い。俺くらいの身長なら立てる場所もあるが、中腰を強いられ場所がほとんどだ。
「悪いけど明かりを消して…」
ほんの少しだけ開けた場所に入ると、ティートンにお願いされ、俺は明かりを解除した。
すると、ボンヤリと洞窟内が薄緑色の光りに包まれる。
光の元は、小さな光の粒だ、他にも色々なサイズの光が漂っている。
ひとつの光が俺に近づき、違う~みたいな漂い方でバシリアの下へ行く。バシリアは
その光に寄り添っている。
一際大きな光が、何かを形作ると人の姿を模していく。
どこかティートンに似た容姿だ。
「お久しぶりです」
ティートンが光に語りかけると、光は笑顔になる。
胸で手を組み目を閉じる。会話でもしているのだろうか?
とても幻想的なシーンだ。
「アニェス様。先程の話の続きですが…」
「うん」
「魔女は長命ですが、不滅ではありません。肉体の滅んだ魔女の残滓が妖精と呼ばれる存在です。力の強かったものは人の形をし、弱かったものは、光や小さな姿にしかなれない魔女の成れの果て。
いつかは消えて無くなる存在。稀にこの場から魔女に戻る者もいます」
「なんでペトロナは俺を心配するような目で見たんだ?」
「アニェス様には、あまり知られたくない話だからだと思います」
「…そうなのか?」
「魔女は…この世界にあって、まったく異質な存在です。それを知られて同じように接していただけるか心配なのです」
「…バシリアもか?」
「はい…」
俺はバシリアに寄り添って頭をなでて
「変わらないよ、俺は」と言ってやる。
ただ俺が爪先立ちなのが悲しい。
「ティートンに似たあの人は誰だか解るか?」
「この方は、先代のティートンです…」
ティートンがこちらを向いていた。
(先代?)
先代のティートンが俺を見てお辞儀する。
『アヴァロンが動いているのですね…』
「…知り合いが攫われた」
『モルガン様がアーサー様を受け入れたときよりアヴァロンは公正さを欠いております。申し訳ありません』
「いや、貴方のせいじゃないだろ。謝らないでくれ。ただ取り戻すだけだ」
少し微笑んだように見える。
『…力が理を超えていますね。世界が悲鳴を上げそうな力を感じます』
「そんなことはない、俺は神でも悪魔でもない、人だ」
『トゥアールはアーサーでなくあなたを選びました。力の使い方をお間違えなきようお願いします……』
「トゥアール?」
ティートンが胸元で小さく手を挙げる。
「アヴァロン九姉妹はモルガンを覗き、永久(とこしえ)の時間を過ごしますが代替わりすると聞いています。トゥアールとはティートンの真名なのでしょう」バシリアが呟くように声を震わせた。
「アーサー?選んだ?」
「世界に干渉しないのも、干渉するのもアヴァロンの魔女の使命だが……アヴァロンに死の淵だったアーサーを招き入れ、再生の眠りの中についたアーサー……モルガン姉と三相の姉妹は、アーサー中心、イングランド中心にアヴァロンをしてしまった…私はそれが正しくない気がしている…」
「ティートン…」
「トゥアールだ……今夜だけは…」
「トゥアール…了解だ」
「ただ、アヴァロン自体に害するときは敵対するからな、覚えとけ」
「わかった、心得よう」
『昔はここからアヴァロンに繋がる道があったのですが…今はもう閉ざされています』
「大丈夫だ、貴方やトゥアールに迷惑をかける気は毛頭ない。自力で行くさ。それならトゥアールも協力しやすいだろ」
トゥアールがフッと息をはく。
「先代。こういうヤツなんだ」
と笑っている。
おなじ笑顔で先代ティートンも笑っているようだ。
俺たちは、先代ティートンに見送られ古の魔女たちの集う安寧の地を後にした。
「先代さん、優しそうな人だったな」
「そうでしたね」
「まるで私が優しくないみたいだな」
「トゥアールの優しさは方向性が違うんだ。俺はそう思ってるぞ」
「そ…そうか……」
なんかトゥアールが黙ってしまった。
「ふーん…ティートンは裏切るんですね…」
突然頭上から声がかけられる。
今まで感知できていなかった。トゥアールもそうだったが、こいつら俺の認識が利かないのか?そう言えばペトロナも突然現れたな、何か魔女特有の秘訣があるのだろうか?
「ティーテン!」
トゥアールが叫ぶ。
「遅いから、迎えに来ましたが…まさか真名まで教えるほどの関係になられているとは…」
「あなたも、今のアヴァロン、いえモルガン姉と三相はおかしいと気づいているでしょ…」
「それは、歴史を変える、そちらの方たちとは別の問題です」
「全て報告させて頂きます」
「まってティーテン…」
「きゃあ」
と、かわいい声を出してティーテンは俺の腕の中で暴れている。
「「え?」」
トゥアールとバシリアが同時に声を出す。
俺は、捕獲したティーテン?を抱いて地上へと戻った。
ティーテンは、ブラウンの髪を三つ編みポニーテールにした少女だった。少女と言っても見た目は俺より上だけど…
「え…っと、捕獲してきた…」
俺は罰が悪そうに報告した。
「なんなんですか、どういうことですか、理不尽です」
「ティーテン…可哀想だけど、貴方じゃバトル系の話にならないみたい…」
こんな悲しそうに語る、トゥアールは初めて見た気がする…
「……リリースしようか?」
「「「………」」」
(どうしよう、いたたまれない…)
仕方ないので、そのまま宿に連れ帰った…
***
翌朝、ペトロナさんと、ジャンネットが口を聞いてくれなかった。
「アニェス様。これ、どうしますか?」
バシリアが手足を縛り猿ぐつわされたティーテンを指さす。
活きのいいまま捕獲したので、結構うるさい。
取り扱いに非常に困っていた。
俺はティートンを見る。ティートンはこっち見ないでよみたいな顔をする。
「懐柔するか、逃げるに任せるか…そんなところ?」
「懐柔可能なのか?」
「五分五分かな…彼女は私に近しい考えの方なんだけど。アヴァロン第一主義なので…」
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「……うん…おいおいで良いなら」
ふたりで頷きあった。
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