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第31話『アニメショップ』
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午後3時過ぎ。
利用時間である60分が終わったので、俺達は受付で猫耳カチューシャを返却し、猫カフェ・にゃんじゅくを後にする。
「あっという間の60分だったな」
「そうでしたね! 今日も猫ちゃんとたくさん戯れることができましたし、和真君との初めての猫カフェでしたからね。カチューシャを付けた和真君を見たり、頭を撫でてくれたりもしたので大満足です!」
「俺も可愛い猫達だけじゃなくて、猫優奈とも戯れられて満足だよ。俺に近寄ってくれた猫が何匹もいたし。凄く癒やされた。このお店に連れてきてくれてありがとな」
「そう言ってくれて嬉しいです! こちらこそありがとうございます!」
優奈はとても嬉しそうな笑顔でお礼を言ってくれる。その笑顔は猫カフェにいた猫達に負けず劣らずの可愛さだ。
優奈と猫カフェで過ごすのが楽しかったから、高野にあるにゃかのに行きたい気持ちが膨らんだ。
「優奈。俺と行きたい琴宿のお店って他にもあるのか?」
「はい、あります。今日はそこで最後のつもりです。行きたいのはアニメショップです。アニメイクというお店なのですが、和真君は行ったことはありますか?」
「うん。行ったことあるよ」
アニメイクはアニメ、漫画、ラノベ、ゲーム、ボカロなどの全国チェーンの専門ショップだ。それらのジャンルの商品を幅広く取り扱っており、アニメイク限定の購入特典が付く商品も多い。
「高野にはアニメ系のショップがあまりないからさ。同人メインのショップとかグッズ専門店くらいで。琴宿に行ったときにはアニメイクに行くことが多いんだ」
「そうなんですね! 和真君はアニメや漫画やラノベが好きなので、アニメイクに行くのも良さそうだと思っていたんです。映画を観るときは琴宿と聞いていたので、もしかしたら行ったことがあるかもしれないとも思っていました」
「ご名答だ。……じゃあ、アニメイクに行こうか」
「はいっ。道順はお任せください」
「ありがとう」
お礼を言うと、優奈はニコッと笑って俺に手を繋いできた。
俺達はアニメイク琴宿店に向かって歩き始める。優奈曰く、にゃんじゅくからアニメイクが入っている商業施設・琴宿カクイまでは7、8分ほどかかるという。
「アニメイクが入っているのって、琴宿にあるカクイなんだよな」
「ええ。高野にあるカクイには入っていないですよね」
「ああ。まあ、本屋は品揃えが良くて、特典としてイラストカードやペーパーが付く本が多いし、音楽ショップはアニソンやボカロ関連も充実しているから満足してるよ。それでも、アニメイクのようなアニメショップがあるのはいいなって思う」
「そうですか。琴宿のアニメイクは駅の東口の方にあるので実家からは少し遠いですが、学校帰りや休日に行きました。漫画やラノベ、アニメ関連のCDをよく買っていました」
「そうだったんだ」
優奈の部屋の本棚には漫画やラノベがたくさん入っている。きっと、そのうちの大半はアニメイクで買ったのだろう。
漫画やアニメのことを話しながら琴宿の街を歩いていく。
土曜日の午後だし、ジャンルや規模を問わず様々なお店があるから、とても多くの人が歩いている。中には飲み食いしながら歩いている人もいて。高野も休日の駅周辺は人がいっぱいいるけど、ここはそれ以上。さすがは都心の中心地域の一つだ。
優奈の案内もあって、俺達は迷うことなくアニメイク琴宿店の入っている琴宿カクイに到着する。琴宿カクイは高野カクイと同じくらいの大きさだ。
アニメイクは7階にある。入口近くに上りのエスカレーターがあるので、エスカレーターで7階へ向かう。
7階に到着し、専門店街の通路を歩きながらアニメイクへ向かった。
「到着です!」
アニメイクの入口前に到着し、優奈は元気良くそう言った。ここからでも、入口近くにある新刊の漫画コーナーが見えている。
「着いたな。アニメイクに行くと、琴宿に来たんだって実感するよ」
「ふふっ、そうですか。では、さっそく入りましょうか」
「ああ」
俺達はアニメイクの店内に入る。
店内に入ってまずあるのは新刊の漫画コーナーだ。最近発売された少年漫画や少女漫画、青年漫画が陳列されている。また、近くには現在アニメで放送されている作品の特設コーナーがある。
今日も品揃えが良く、『特典あり』というシールが貼られている作品がいっぱいだ。特典はイラストカードやペーパーはもちろん、クリアファイル、しおり、アニメイク限定カバーなど様々だ。
「やっぱりアニメイクは凄いな。品揃えもいいし、特典の種類も豊富で」
「そうですね。アニメショップならではかもしれませんね。……あっ、読んでいる少女漫画の最新巻がありました! しおりの特典付きですっ」
優奈はそう言うと、平積みされている少女漫画を一冊手にした。好きな漫画の新刊が売られていると嬉しいよな。特典があったら尚更に。
「良かったな、優奈」
「はいっ」
優奈はニコッと笑って返事する。優奈が嬉しそうにしていると、俺も嬉しくなってくるよ。
新刊の漫画コーナーを一通り見た後は、ライトノベルとライト文芸の新刊コーナーを見ていく。
ラノベやライト文芸も品揃えが良く、特典の種類が充実しているなぁ。さすがはアニメショップだと思いながら眺めていると、
「あっ、何か良さそう」
タイトルと表紙に描かれた黒髪ロングヘアの女性キャラのイラストに惹かれて、文庫のライトノベルを手に取る。裏表紙に書いてあるあらすじを見てみると……この作品は学園ラブコメか。
「ラブコメですか?」
「ああ。タイトルと表紙もいいし、あらすじを見て面白そうだから買って読んでみる。この作者の本は初めてだけど」
「そうですか。スマホで電子書籍を読むこともありますが、お店に行くと作品とのふとした出会いがあるのがいいですよね」
「いいよな。だから、本屋に行くと、とりあえず新刊コーナーは見ることが多いよ」
「私もです」
優奈の本棚にはたくさん本が入っているけど、その中にはふとした出会いで購入した作品がいくつもあるんだろうな。
その後はグッズや音楽CDコーナー、女性向け同人誌コーナーも見ていく。
同人誌コーナーでは優奈が『新作』とシールが貼られた同人誌を1冊手に取っていた。表紙を見ると……美麗な男性2人が描かれている。どうやらBLのようだ。優奈に話を聞くと、好きな少女漫画家のサークルの新刊とのことだ。
店内を一通り廻り、俺はラブコメのライトノベル、優奈は少女漫画とBL同人誌を購入した。
「漫画と同人誌を買えて嬉しいです!」
「良かったな。俺も面白そうなラノベを買えて良かった」
「良かったですねっ」
優奈は機嫌良く言ってくれる。好きな漫画の最新巻と、好きな漫画家の新しい同人誌を買えたのがよほど嬉しいのだろう。
今買ったライトノベル、家に帰ったら読んでみるか。
「……今は午後4時近くですか」
「もうそんな時間か。確か、優奈はここが最後って言っていたよな」
「そうです。和真君は他に行ってみたいお店や場所はありますか? 場所によっては私が案内できますが」
「そうだな……今日はこれで満足かな。映画を観て、ラーメンを食べて、猫カフェとアニメイクに行って盛りだくさんだったから」
「確かに、こうして言われると盛りだくさんなデートをしたんだって思いますね」
ふふっ、と優奈は楽しそうに笑う。今日のことを思い出しているのかな。優奈の笑顔を見ると温かい気持ちになっていく。
「では、今日は帰りましょうか」
「ああ」
こうして、俺達は帰路に就くことに。
アニメイクの入っている琴宿カクイを後にして、カクイから一番近い東口から琴宿駅に入る。行きの南口とは違うけど、つい最近まで琴宿に住んでいて電車通学していた優奈のおかげで、迷子にならずに高野方面へ向かう東京中央線各駅停車のホームまで行くことができた。
行きと同じく、進行方向の先頭車両に乗る。そのおかげで、俺達は隣同士に座ることができた。
「座れましたね」
「座れたな。優奈のおかげだ。駅の中でも迷わなかったし、優奈は凄く頼りになるなぁ」
「褒めてもらえて嬉しいです。これまで電車通学で良かったです」
「ありがとな」
「いえいえ」
もし、俺一人だったら、ホームに辿り着くまで時間がかかっていたことだろう。
それから程なくして、俺達の乗る電車は琴宿駅を発車する。
同じ路線だから、車窓から見える景色は行くときと変わらない。ただ、方向が違うだけで新鮮に感じられて。まあ、年に数えるほどしか乗らないからかもしれないけど。
「今日のデートが楽しかったですし、つい先日まで住んでいた街ですから、琴宿を離れるのはちょっと寂しいですね」
「……そうか」
「ただ、帰る間もずっと和真君がいて。帰ってからも和真君といられることがとても嬉しいです」
優奈らしい柔らかい笑顔で俺を見つめながら、優奈はそう言ってくれる。
優奈とのデートを楽しんだ場所だから、琴宿から去るのは俺も寂しい。
ただ、優奈は「ちょっと」と言ったけど、俺よりも寂しい思いが強いんじゃないだろうか。でも、俺が隣にいて、デートから帰っても一緒にいるから優奈を笑顔にできているのだと思うと、とても嬉しい気持ちになる。
「嬉しいな。優奈がそう言ってくれて。それに、俺も帰ってから優奈と一緒にいられることが……本当に嬉しいよ」
優奈の目を見ながらそう言い、右手で優奈の頭を優しく撫でる。
俺の言葉が嬉しかったのか。それとも、頭を撫でられているのが気持ちいいのか。優奈の笑顔が嬉しそうなものに変わって。その瞬間、優奈の頭から伝わってくる熱が強くなった気がした。
「和真君も同じ気持ちで嬉しいです」
優奈は甘い声でそう言うと、俺に寄り掛かってきて、俺の右肩に頭をそっと乗せてきた。その瞬間に、優奈から甘い匂いがふんわりと香ってくる。
「高野駅に到着するまで、こうしていいですか?」
上目遣いで俺を見つめながら、さっき以上に甘い声で俺に問いかけてくる。仕草も声も可愛すぎるから、ドキッとして体が熱くなっていく。
「もちろんさ」
「ありがとうございますっ」
えへへっ、と優奈は小声で嬉しそうに笑った。本当に可愛いな、俺のお嫁さん。
それから、高野駅に着くまでの間、優奈と俺は寄り添った。ただ、優奈と寄り添う感覚が良すぎて、高野駅まであっという間に感じられた。
駅からは真っ直ぐ帰宅して、今日のデートはこれにて終わった。ただ、俺達が一緒にいる時間はこれからも続いていく。
利用時間である60分が終わったので、俺達は受付で猫耳カチューシャを返却し、猫カフェ・にゃんじゅくを後にする。
「あっという間の60分だったな」
「そうでしたね! 今日も猫ちゃんとたくさん戯れることができましたし、和真君との初めての猫カフェでしたからね。カチューシャを付けた和真君を見たり、頭を撫でてくれたりもしたので大満足です!」
「俺も可愛い猫達だけじゃなくて、猫優奈とも戯れられて満足だよ。俺に近寄ってくれた猫が何匹もいたし。凄く癒やされた。このお店に連れてきてくれてありがとな」
「そう言ってくれて嬉しいです! こちらこそありがとうございます!」
優奈はとても嬉しそうな笑顔でお礼を言ってくれる。その笑顔は猫カフェにいた猫達に負けず劣らずの可愛さだ。
優奈と猫カフェで過ごすのが楽しかったから、高野にあるにゃかのに行きたい気持ちが膨らんだ。
「優奈。俺と行きたい琴宿のお店って他にもあるのか?」
「はい、あります。今日はそこで最後のつもりです。行きたいのはアニメショップです。アニメイクというお店なのですが、和真君は行ったことはありますか?」
「うん。行ったことあるよ」
アニメイクはアニメ、漫画、ラノベ、ゲーム、ボカロなどの全国チェーンの専門ショップだ。それらのジャンルの商品を幅広く取り扱っており、アニメイク限定の購入特典が付く商品も多い。
「高野にはアニメ系のショップがあまりないからさ。同人メインのショップとかグッズ専門店くらいで。琴宿に行ったときにはアニメイクに行くことが多いんだ」
「そうなんですね! 和真君はアニメや漫画やラノベが好きなので、アニメイクに行くのも良さそうだと思っていたんです。映画を観るときは琴宿と聞いていたので、もしかしたら行ったことがあるかもしれないとも思っていました」
「ご名答だ。……じゃあ、アニメイクに行こうか」
「はいっ。道順はお任せください」
「ありがとう」
お礼を言うと、優奈はニコッと笑って俺に手を繋いできた。
俺達はアニメイク琴宿店に向かって歩き始める。優奈曰く、にゃんじゅくからアニメイクが入っている商業施設・琴宿カクイまでは7、8分ほどかかるという。
「アニメイクが入っているのって、琴宿にあるカクイなんだよな」
「ええ。高野にあるカクイには入っていないですよね」
「ああ。まあ、本屋は品揃えが良くて、特典としてイラストカードやペーパーが付く本が多いし、音楽ショップはアニソンやボカロ関連も充実しているから満足してるよ。それでも、アニメイクのようなアニメショップがあるのはいいなって思う」
「そうですか。琴宿のアニメイクは駅の東口の方にあるので実家からは少し遠いですが、学校帰りや休日に行きました。漫画やラノベ、アニメ関連のCDをよく買っていました」
「そうだったんだ」
優奈の部屋の本棚には漫画やラノベがたくさん入っている。きっと、そのうちの大半はアニメイクで買ったのだろう。
漫画やアニメのことを話しながら琴宿の街を歩いていく。
土曜日の午後だし、ジャンルや規模を問わず様々なお店があるから、とても多くの人が歩いている。中には飲み食いしながら歩いている人もいて。高野も休日の駅周辺は人がいっぱいいるけど、ここはそれ以上。さすがは都心の中心地域の一つだ。
優奈の案内もあって、俺達は迷うことなくアニメイク琴宿店の入っている琴宿カクイに到着する。琴宿カクイは高野カクイと同じくらいの大きさだ。
アニメイクは7階にある。入口近くに上りのエスカレーターがあるので、エスカレーターで7階へ向かう。
7階に到着し、専門店街の通路を歩きながらアニメイクへ向かった。
「到着です!」
アニメイクの入口前に到着し、優奈は元気良くそう言った。ここからでも、入口近くにある新刊の漫画コーナーが見えている。
「着いたな。アニメイクに行くと、琴宿に来たんだって実感するよ」
「ふふっ、そうですか。では、さっそく入りましょうか」
「ああ」
俺達はアニメイクの店内に入る。
店内に入ってまずあるのは新刊の漫画コーナーだ。最近発売された少年漫画や少女漫画、青年漫画が陳列されている。また、近くには現在アニメで放送されている作品の特設コーナーがある。
今日も品揃えが良く、『特典あり』というシールが貼られている作品がいっぱいだ。特典はイラストカードやペーパーはもちろん、クリアファイル、しおり、アニメイク限定カバーなど様々だ。
「やっぱりアニメイクは凄いな。品揃えもいいし、特典の種類も豊富で」
「そうですね。アニメショップならではかもしれませんね。……あっ、読んでいる少女漫画の最新巻がありました! しおりの特典付きですっ」
優奈はそう言うと、平積みされている少女漫画を一冊手にした。好きな漫画の新刊が売られていると嬉しいよな。特典があったら尚更に。
「良かったな、優奈」
「はいっ」
優奈はニコッと笑って返事する。優奈が嬉しそうにしていると、俺も嬉しくなってくるよ。
新刊の漫画コーナーを一通り見た後は、ライトノベルとライト文芸の新刊コーナーを見ていく。
ラノベやライト文芸も品揃えが良く、特典の種類が充実しているなぁ。さすがはアニメショップだと思いながら眺めていると、
「あっ、何か良さそう」
タイトルと表紙に描かれた黒髪ロングヘアの女性キャラのイラストに惹かれて、文庫のライトノベルを手に取る。裏表紙に書いてあるあらすじを見てみると……この作品は学園ラブコメか。
「ラブコメですか?」
「ああ。タイトルと表紙もいいし、あらすじを見て面白そうだから買って読んでみる。この作者の本は初めてだけど」
「そうですか。スマホで電子書籍を読むこともありますが、お店に行くと作品とのふとした出会いがあるのがいいですよね」
「いいよな。だから、本屋に行くと、とりあえず新刊コーナーは見ることが多いよ」
「私もです」
優奈の本棚にはたくさん本が入っているけど、その中にはふとした出会いで購入した作品がいくつもあるんだろうな。
その後はグッズや音楽CDコーナー、女性向け同人誌コーナーも見ていく。
同人誌コーナーでは優奈が『新作』とシールが貼られた同人誌を1冊手に取っていた。表紙を見ると……美麗な男性2人が描かれている。どうやらBLのようだ。優奈に話を聞くと、好きな少女漫画家のサークルの新刊とのことだ。
店内を一通り廻り、俺はラブコメのライトノベル、優奈は少女漫画とBL同人誌を購入した。
「漫画と同人誌を買えて嬉しいです!」
「良かったな。俺も面白そうなラノベを買えて良かった」
「良かったですねっ」
優奈は機嫌良く言ってくれる。好きな漫画の最新巻と、好きな漫画家の新しい同人誌を買えたのがよほど嬉しいのだろう。
今買ったライトノベル、家に帰ったら読んでみるか。
「……今は午後4時近くですか」
「もうそんな時間か。確か、優奈はここが最後って言っていたよな」
「そうです。和真君は他に行ってみたいお店や場所はありますか? 場所によっては私が案内できますが」
「そうだな……今日はこれで満足かな。映画を観て、ラーメンを食べて、猫カフェとアニメイクに行って盛りだくさんだったから」
「確かに、こうして言われると盛りだくさんなデートをしたんだって思いますね」
ふふっ、と優奈は楽しそうに笑う。今日のことを思い出しているのかな。優奈の笑顔を見ると温かい気持ちになっていく。
「では、今日は帰りましょうか」
「ああ」
こうして、俺達は帰路に就くことに。
アニメイクの入っている琴宿カクイを後にして、カクイから一番近い東口から琴宿駅に入る。行きの南口とは違うけど、つい最近まで琴宿に住んでいて電車通学していた優奈のおかげで、迷子にならずに高野方面へ向かう東京中央線各駅停車のホームまで行くことができた。
行きと同じく、進行方向の先頭車両に乗る。そのおかげで、俺達は隣同士に座ることができた。
「座れましたね」
「座れたな。優奈のおかげだ。駅の中でも迷わなかったし、優奈は凄く頼りになるなぁ」
「褒めてもらえて嬉しいです。これまで電車通学で良かったです」
「ありがとな」
「いえいえ」
もし、俺一人だったら、ホームに辿り着くまで時間がかかっていたことだろう。
それから程なくして、俺達の乗る電車は琴宿駅を発車する。
同じ路線だから、車窓から見える景色は行くときと変わらない。ただ、方向が違うだけで新鮮に感じられて。まあ、年に数えるほどしか乗らないからかもしれないけど。
「今日のデートが楽しかったですし、つい先日まで住んでいた街ですから、琴宿を離れるのはちょっと寂しいですね」
「……そうか」
「ただ、帰る間もずっと和真君がいて。帰ってからも和真君といられることがとても嬉しいです」
優奈らしい柔らかい笑顔で俺を見つめながら、優奈はそう言ってくれる。
優奈とのデートを楽しんだ場所だから、琴宿から去るのは俺も寂しい。
ただ、優奈は「ちょっと」と言ったけど、俺よりも寂しい思いが強いんじゃないだろうか。でも、俺が隣にいて、デートから帰っても一緒にいるから優奈を笑顔にできているのだと思うと、とても嬉しい気持ちになる。
「嬉しいな。優奈がそう言ってくれて。それに、俺も帰ってから優奈と一緒にいられることが……本当に嬉しいよ」
優奈の目を見ながらそう言い、右手で優奈の頭を優しく撫でる。
俺の言葉が嬉しかったのか。それとも、頭を撫でられているのが気持ちいいのか。優奈の笑顔が嬉しそうなものに変わって。その瞬間、優奈の頭から伝わってくる熱が強くなった気がした。
「和真君も同じ気持ちで嬉しいです」
優奈は甘い声でそう言うと、俺に寄り掛かってきて、俺の右肩に頭をそっと乗せてきた。その瞬間に、優奈から甘い匂いがふんわりと香ってくる。
「高野駅に到着するまで、こうしていいですか?」
上目遣いで俺を見つめながら、さっき以上に甘い声で俺に問いかけてくる。仕草も声も可愛すぎるから、ドキッとして体が熱くなっていく。
「もちろんさ」
「ありがとうございますっ」
えへへっ、と優奈は小声で嬉しそうに笑った。本当に可愛いな、俺のお嫁さん。
それから、高野駅に着くまでの間、優奈と俺は寄り添った。ただ、優奈と寄り添う感覚が良すぎて、高野駅まであっという間に感じられた。
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