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第20話『曇天と溜息』
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自宅に帰ってきてすぐに、小春から1件のメッセージが届いた。
『今日はありがとう。とても楽しかったよ。また明日、学校でね』
そのメッセージを見て、きっと小春は大丈夫だと思えた。明日は優那と一緒に元気に登校してくるだろう。
自分の部屋に戻ると、そこには姉ちゃんが待ち構えており、今日のデートについてしつこく訊かれる羽目に。
途中、隠れて様子を見ていたんじゃないのかと訊き返すと、姉ちゃんは不機嫌そうな表情をして否定した。さすがの姉ちゃんもそこまではしなかったか。俺も誰かに見張られているような感じはしなかったし。
映画を観た、パスタを食べた、その後にショッピングをしたとスマートフォンの写真を見せながら小春とのデート内容のことを伝えると、
「へえ、そうだったんだ。写真を見ると、デートがとても楽しそうだったのが伝わってくるなぁ。……でも、それだけじゃない気がするんだよねぇ」
姉ちゃんは脅威の勘でそう指摘してきたのだ。俺の服の匂いを嗅いで、
「優那ちゃんの匂いとは違う。これが小春ちゃんの匂いなのかな。とてもいい匂いだけれど。ただ、相当な間密着しないと、服に匂いがしっかりと付かない気がするんだよねぇ……」
姉ちゃんは不敵な笑みを浮かべながらそう言ってきたのだ。何という推理力だろう。恐れ入った。
しょうがない、姉ちゃんには正直に言うか。
「実は小春に告白されて、キスもされた。だけど――」
「えええっ! そんなあああっ!」
衝撃があまりにも強すぎたのか、姉ちゃんはそう叫ぶと俺のベッドに仰向けに倒れ込んだ。姉ちゃんからは表情が消えて、涙を流していた。
「小春ちゃんも可愛い女の子みたいだけれど、その話を聞くとさすがにお姉ちゃんもショックだよ! もちろん、この事実を受け入れないといけないってことは分かっているの。でも……ううっ、颯ちゃんがお姉ちゃんから離れていっちゃうよ……」
「姉ちゃん、落ち着いて。この話には続きがあるんだ。小春の告白は断ったんだよ。俺は優那のことが一番好きだから」
「……本当なの?」
姉ちゃんは目をまん丸くさせる。だからか、涙が止まる。
「本当だよ。だから気を取り直して。あと、今の話で小春を悪く思ったりしないでね。小春はとても素敵な女の子だから、それは覚えておいてね」
「……颯ちゃんがそう言うなら分かったよ。勘違いしちゃってごめんね。あと、キスを解禁したんだから、お姉ちゃんともできるよね! お姉ちゃんのファーストキスを颯ちゃんにあげるよ!」
姉ちゃんは嬉しそうな様子で俺をぎゅっと抱きしめ、強引にキスをしようとしてくる。
「小春とのキスは特例です。今後、キスする可能性があるのは優那だけだから。さあ、姉ちゃんは自分の部屋へ帰りましょうね」
姉ちゃんの口を塞いで、彼女の部屋に追いやった。本当に、隙あらば弟と度を超えたことをしようとしてくる。もう溺愛という一言では済まされないレベルだ。
「優那にもデートのことを伝えておいた方がいいかな」
優那は今日、俺達がデートをすることをもちろん知っている。ただ、小春から告白とキスをされたことまで、優那には話した方がいいのかどうか。告白は俺だけのことじゃないし、振ったからな。俺からは何も言わない方がいいだろう。
部屋に戻ってすぐにスマホを手に取り、
『小春と映画を観たりして、楽しいデートになったよ。また明日ね』
というメッセージを優那に送っておいた。優那のことだから、もっと詳しく知りたいならそういった返信をしてくるだろう。
しかし、すぐに『既読』というマークはついたものの、優那からの返信がない。いつもなら何かしらの返事が返ってくるのに。もしかして、今は小春の方とメッセージをやり取りしているのかな。明日になれば学校で会える。そんな風に楽観的に考え、俺はいつも通りの休日の夜の時間を過ごした。
午後10時半過ぎ。
今日はデートをして疲れているし、明日は学校なので早めに寝ようとしたときだった。
――プルルッ。
スマートフォンが鳴ったので確認してみると、優那から新着のメッセージが1件届いていた。
『それなら良かったよ。小春も楽しかったって言っていたし。本当に良かった。おやすみ、また明日ね』
返事はないと思っていたので、そのメッセージを見てとても嬉しくなった。近いうちに優那ともデートをしたいな。
優那におやすみのメッセージを送って、俺は幸せな気分に包まれながら眠りにつくのであった。
4月23日、月曜日。
今日は朝から雲が広がっているけれど、天気予報によると雨が降る心配はなく涼しいので過ごしやすい一日になるそうだ。
登校すると、今日もいつも通り前川が既に登校しに来ていた。なので、彼に昨日の小春とのデートについて話す。ただし、小春に告白され、キスもされたことを除いて。
「おお、なかなかのデートだったんじゃないか。俺も奈々子と映画デートしたことは何度もあるよ。昨日、2人が観た劇場版シリーズも見に行ったこともあるぞ」
「面白いよね。ちなみに、カップルもなかなか多かったよ」
「そっか。2人が楽しかったんだったら良かったよ。今の話を聞いて、僕もゴールデンウィークには奈々子とデートしたくなったよ。映画も一つの選択肢に入れておこう」
そうか、今週末からゴールデンウィークか。学校は暦通りの休日だから、今週末は3連休で来週は木曜日から4連休になるのか。その間に俺も優那とデートをしたいところ。
「おっ、話をすれば何とやら。岡庭と大曲が来たぞ。2人ともおはよう」
後ろに振り返ると、そこには優那と小春の姿が。小春と目が合うと彼女はほんのりと頬が赤くなってはにかんでいる。彼女のことを見ると、どうしても昨日の告白とキスのことを思い出しちゃうな。
「おはよう、颯介君、前川君」
「おはよう、小春、優那」
「……おはよう、颯介、前川君」
小春と比べて、優那は元気がなさそうに思える。
「優那、あまり顔色が良くないけれど、大丈夫?」
「えっ? う、うん……実は昨日、アニメシリーズのDVDをたくさん借りちゃってね。面白いから全部観ちゃって、あまり眠れていないんだ」
「そうなんだね」
俺の送ったメッセージがすぐに既読になったけれど、数時間後に返信が来たのはレンタルしたDVDを観ていたからだったのか。
「優那ちゃん、たまにそういうことあるよね。気を付けて」
「うん。こういうことをするのは金曜か土曜の夜に限るね」
小春に注意されてしまったからか、優那はそう言って苦笑い。ただ、自分の席に座るとため息を漏らしている。寝不足だけだったらいいんだけれど。今日は優那のことを気にかけた方がいいかな。
「岡庭、真宮から話を聞いたけれど、昨日は楽しくデートできたみたいだな」
「うん! 映画を観たりして楽しかったよ。ね、颯介君」
「ああ、とても楽しかったよ。しっかりとお礼をしてもらった」
「でも、ゲームコーナーでぬいぐるみを取ってもらったりして、私がご褒美された感じがするよ」
「あのときの小春はとても嬉しそうだったもんね」
「ははっ、奈々子もぬいぐるみは好きだし、女の子ってぬいぐるみが好きな子が多いのかな。大曲はどうなんだ?」
「……えっ? うん……好きな方かな。部屋にはクマのぬいぐるみもあるし。まあ、小春ほどじゃないけどね」
へえ、優那もぬいぐるみが好きなのか。彼女の誕生日とか、気が早いけれどクリスマスプレゼントとかの参考にしよう。
今日も授業を受けていくけれど、いつもと違ってたまに優那のため息が聞こえてくる。寝不足だからだろうか。優那をチラッと見ると、眠いというよりは疲れているように見えた。
優那のことが心配になっていく中、昼休みになった。
「優那、疲れているようなら休んだ方がいいよ」
「うん、ありがとう。……気分転換するために、あたしは1人で外でお弁当を食べるよ」
「それなら、私や颯介君も。お天気もいいし」
「ごめん。今は……1人で食べたい気分なんだ。それに、小春と颯介は2人きりの方がいいだろうから」
優那はお弁当を持って、俺や小春から逃げるように教室から出て行ってしまった。今日の優那は何かがおかしい。気になるけれど、今はそっとしておいた方がいいだろう。
しょうがない、今日は小春と2人きりでお昼ご飯を食べるか。
俺は優那の席を借りて、小春と向かい合ってお昼ご飯を食べることに。こうしていると昨日のお昼を思い出すな。
「まさか、2日連続で颯介君と2人きりでお昼ご飯を食べるなんてね」
「うん。ただ、優那のことが心配だな」
「何度もため息をついていたもんね。……ところで、颯介君。一つ訊きたいことがあるんだけれど」
「何かな?」
小春は頬をほんのりと赤くして、
「……私が颯介君に告白して、キスもして、フラれたこと。優那ちゃんに話した?」
俺に顔を近づけ、俺にしか聞こえないような小さな声で問いかける。そのことで小春の甘い匂いがふんわりと香り、顔も近づけられていることもあって、昨日の告白とキスを思い出す。
「ううん、話していないよ。昨日の夜に映画を観たりして楽しかったとは言ったけど。小春の方は?」
「私も同じ。映画を観て、パスタ食べて、ショッピングしたことは話した。でも、告白してフラれたことは……話そうか迷ったけれど、私だけの話じゃないし、恥ずかしくてまだ話していないの」
「そっか……」
小春も、優那には告白してフラれたことについては話していないのか。そのことを知って、優那に対して抱く違和感の正体が分かった気がする。
「……小春。もしかしたら、優那は昨日の俺達のデートの様子を見ていたんじゃないかな」
俺がそう言っても、小春は特に驚いた様子は見せなかった。
「同じことを思った。昨日、誰かに見張られている感じは全くしなかったけれどね。ただ、さっき……颯介君と私は2人きりの方がいいだろうって言われたときに、何かおかしいなって思ったの」
「小春も俺と同じことを考えていたんだね。優那は小春が俺と付き合っていると勘違いしている」
「もし、それが本当だとしたら颯介君に告白して、口づけしたところも優那ちゃんに見られちゃったわけか……」
「そうなるね。その考えが正しいかどうか確かめるために、放課後……2人で昨日あったことを全部話そう」
「それがいいね」
仮にそうだとしたら、優那は俺や小春に対してどう思っているのだろうか。
何にせよ。優那を元気にするには、本当のことを知ってもらう必要があるだろう。今のままだと、あのとき見たような可愛らしい笑みが見られないと思うから。
『今日はありがとう。とても楽しかったよ。また明日、学校でね』
そのメッセージを見て、きっと小春は大丈夫だと思えた。明日は優那と一緒に元気に登校してくるだろう。
自分の部屋に戻ると、そこには姉ちゃんが待ち構えており、今日のデートについてしつこく訊かれる羽目に。
途中、隠れて様子を見ていたんじゃないのかと訊き返すと、姉ちゃんは不機嫌そうな表情をして否定した。さすがの姉ちゃんもそこまではしなかったか。俺も誰かに見張られているような感じはしなかったし。
映画を観た、パスタを食べた、その後にショッピングをしたとスマートフォンの写真を見せながら小春とのデート内容のことを伝えると、
「へえ、そうだったんだ。写真を見ると、デートがとても楽しそうだったのが伝わってくるなぁ。……でも、それだけじゃない気がするんだよねぇ」
姉ちゃんは脅威の勘でそう指摘してきたのだ。俺の服の匂いを嗅いで、
「優那ちゃんの匂いとは違う。これが小春ちゃんの匂いなのかな。とてもいい匂いだけれど。ただ、相当な間密着しないと、服に匂いがしっかりと付かない気がするんだよねぇ……」
姉ちゃんは不敵な笑みを浮かべながらそう言ってきたのだ。何という推理力だろう。恐れ入った。
しょうがない、姉ちゃんには正直に言うか。
「実は小春に告白されて、キスもされた。だけど――」
「えええっ! そんなあああっ!」
衝撃があまりにも強すぎたのか、姉ちゃんはそう叫ぶと俺のベッドに仰向けに倒れ込んだ。姉ちゃんからは表情が消えて、涙を流していた。
「小春ちゃんも可愛い女の子みたいだけれど、その話を聞くとさすがにお姉ちゃんもショックだよ! もちろん、この事実を受け入れないといけないってことは分かっているの。でも……ううっ、颯ちゃんがお姉ちゃんから離れていっちゃうよ……」
「姉ちゃん、落ち着いて。この話には続きがあるんだ。小春の告白は断ったんだよ。俺は優那のことが一番好きだから」
「……本当なの?」
姉ちゃんは目をまん丸くさせる。だからか、涙が止まる。
「本当だよ。だから気を取り直して。あと、今の話で小春を悪く思ったりしないでね。小春はとても素敵な女の子だから、それは覚えておいてね」
「……颯ちゃんがそう言うなら分かったよ。勘違いしちゃってごめんね。あと、キスを解禁したんだから、お姉ちゃんともできるよね! お姉ちゃんのファーストキスを颯ちゃんにあげるよ!」
姉ちゃんは嬉しそうな様子で俺をぎゅっと抱きしめ、強引にキスをしようとしてくる。
「小春とのキスは特例です。今後、キスする可能性があるのは優那だけだから。さあ、姉ちゃんは自分の部屋へ帰りましょうね」
姉ちゃんの口を塞いで、彼女の部屋に追いやった。本当に、隙あらば弟と度を超えたことをしようとしてくる。もう溺愛という一言では済まされないレベルだ。
「優那にもデートのことを伝えておいた方がいいかな」
優那は今日、俺達がデートをすることをもちろん知っている。ただ、小春から告白とキスをされたことまで、優那には話した方がいいのかどうか。告白は俺だけのことじゃないし、振ったからな。俺からは何も言わない方がいいだろう。
部屋に戻ってすぐにスマホを手に取り、
『小春と映画を観たりして、楽しいデートになったよ。また明日ね』
というメッセージを優那に送っておいた。優那のことだから、もっと詳しく知りたいならそういった返信をしてくるだろう。
しかし、すぐに『既読』というマークはついたものの、優那からの返信がない。いつもなら何かしらの返事が返ってくるのに。もしかして、今は小春の方とメッセージをやり取りしているのかな。明日になれば学校で会える。そんな風に楽観的に考え、俺はいつも通りの休日の夜の時間を過ごした。
午後10時半過ぎ。
今日はデートをして疲れているし、明日は学校なので早めに寝ようとしたときだった。
――プルルッ。
スマートフォンが鳴ったので確認してみると、優那から新着のメッセージが1件届いていた。
『それなら良かったよ。小春も楽しかったって言っていたし。本当に良かった。おやすみ、また明日ね』
返事はないと思っていたので、そのメッセージを見てとても嬉しくなった。近いうちに優那ともデートをしたいな。
優那におやすみのメッセージを送って、俺は幸せな気分に包まれながら眠りにつくのであった。
4月23日、月曜日。
今日は朝から雲が広がっているけれど、天気予報によると雨が降る心配はなく涼しいので過ごしやすい一日になるそうだ。
登校すると、今日もいつも通り前川が既に登校しに来ていた。なので、彼に昨日の小春とのデートについて話す。ただし、小春に告白され、キスもされたことを除いて。
「おお、なかなかのデートだったんじゃないか。俺も奈々子と映画デートしたことは何度もあるよ。昨日、2人が観た劇場版シリーズも見に行ったこともあるぞ」
「面白いよね。ちなみに、カップルもなかなか多かったよ」
「そっか。2人が楽しかったんだったら良かったよ。今の話を聞いて、僕もゴールデンウィークには奈々子とデートしたくなったよ。映画も一つの選択肢に入れておこう」
そうか、今週末からゴールデンウィークか。学校は暦通りの休日だから、今週末は3連休で来週は木曜日から4連休になるのか。その間に俺も優那とデートをしたいところ。
「おっ、話をすれば何とやら。岡庭と大曲が来たぞ。2人ともおはよう」
後ろに振り返ると、そこには優那と小春の姿が。小春と目が合うと彼女はほんのりと頬が赤くなってはにかんでいる。彼女のことを見ると、どうしても昨日の告白とキスのことを思い出しちゃうな。
「おはよう、颯介君、前川君」
「おはよう、小春、優那」
「……おはよう、颯介、前川君」
小春と比べて、優那は元気がなさそうに思える。
「優那、あまり顔色が良くないけれど、大丈夫?」
「えっ? う、うん……実は昨日、アニメシリーズのDVDをたくさん借りちゃってね。面白いから全部観ちゃって、あまり眠れていないんだ」
「そうなんだね」
俺の送ったメッセージがすぐに既読になったけれど、数時間後に返信が来たのはレンタルしたDVDを観ていたからだったのか。
「優那ちゃん、たまにそういうことあるよね。気を付けて」
「うん。こういうことをするのは金曜か土曜の夜に限るね」
小春に注意されてしまったからか、優那はそう言って苦笑い。ただ、自分の席に座るとため息を漏らしている。寝不足だけだったらいいんだけれど。今日は優那のことを気にかけた方がいいかな。
「岡庭、真宮から話を聞いたけれど、昨日は楽しくデートできたみたいだな」
「うん! 映画を観たりして楽しかったよ。ね、颯介君」
「ああ、とても楽しかったよ。しっかりとお礼をしてもらった」
「でも、ゲームコーナーでぬいぐるみを取ってもらったりして、私がご褒美された感じがするよ」
「あのときの小春はとても嬉しそうだったもんね」
「ははっ、奈々子もぬいぐるみは好きだし、女の子ってぬいぐるみが好きな子が多いのかな。大曲はどうなんだ?」
「……えっ? うん……好きな方かな。部屋にはクマのぬいぐるみもあるし。まあ、小春ほどじゃないけどね」
へえ、優那もぬいぐるみが好きなのか。彼女の誕生日とか、気が早いけれどクリスマスプレゼントとかの参考にしよう。
今日も授業を受けていくけれど、いつもと違ってたまに優那のため息が聞こえてくる。寝不足だからだろうか。優那をチラッと見ると、眠いというよりは疲れているように見えた。
優那のことが心配になっていく中、昼休みになった。
「優那、疲れているようなら休んだ方がいいよ」
「うん、ありがとう。……気分転換するために、あたしは1人で外でお弁当を食べるよ」
「それなら、私や颯介君も。お天気もいいし」
「ごめん。今は……1人で食べたい気分なんだ。それに、小春と颯介は2人きりの方がいいだろうから」
優那はお弁当を持って、俺や小春から逃げるように教室から出て行ってしまった。今日の優那は何かがおかしい。気になるけれど、今はそっとしておいた方がいいだろう。
しょうがない、今日は小春と2人きりでお昼ご飯を食べるか。
俺は優那の席を借りて、小春と向かい合ってお昼ご飯を食べることに。こうしていると昨日のお昼を思い出すな。
「まさか、2日連続で颯介君と2人きりでお昼ご飯を食べるなんてね」
「うん。ただ、優那のことが心配だな」
「何度もため息をついていたもんね。……ところで、颯介君。一つ訊きたいことがあるんだけれど」
「何かな?」
小春は頬をほんのりと赤くして、
「……私が颯介君に告白して、キスもして、フラれたこと。優那ちゃんに話した?」
俺に顔を近づけ、俺にしか聞こえないような小さな声で問いかける。そのことで小春の甘い匂いがふんわりと香り、顔も近づけられていることもあって、昨日の告白とキスを思い出す。
「ううん、話していないよ。昨日の夜に映画を観たりして楽しかったとは言ったけど。小春の方は?」
「私も同じ。映画を観て、パスタ食べて、ショッピングしたことは話した。でも、告白してフラれたことは……話そうか迷ったけれど、私だけの話じゃないし、恥ずかしくてまだ話していないの」
「そっか……」
小春も、優那には告白してフラれたことについては話していないのか。そのことを知って、優那に対して抱く違和感の正体が分かった気がする。
「……小春。もしかしたら、優那は昨日の俺達のデートの様子を見ていたんじゃないかな」
俺がそう言っても、小春は特に驚いた様子は見せなかった。
「同じことを思った。昨日、誰かに見張られている感じは全くしなかったけれどね。ただ、さっき……颯介君と私は2人きりの方がいいだろうって言われたときに、何かおかしいなって思ったの」
「小春も俺と同じことを考えていたんだね。優那は小春が俺と付き合っていると勘違いしている」
「もし、それが本当だとしたら颯介君に告白して、口づけしたところも優那ちゃんに見られちゃったわけか……」
「そうなるね。その考えが正しいかどうか確かめるために、放課後……2人で昨日あったことを全部話そう」
「それがいいね」
仮にそうだとしたら、優那は俺や小春に対してどう思っているのだろうか。
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