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本編-ARIA-
第25話『懐かしゲーム』
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テーブルに僕、羽賀、美来、有紗さんで囲むのが個人的な理想形なんだけれど、
「美来、有紗さん。羽賀がいるから、僕ら3人が羽賀と向き合う形に座るのは分かりますけど、2人とも僕にくっつきすぎじゃないですか?」
僕は美来と有紗さんに挟まれるように座っていた。しかも、美来と有紗さんが僕に寄り添うような形で。
「ふっ、それだけ愛されている証拠ではないか」
羽賀は微笑んでコーヒーを一口飲む。こいつ、どこまでもクールな男だな。
「しかし、1人暮らしになっても部屋の中は綺麗だな。氷室らしいが」
「美来に掃除してもらったおかげでもあるよ」
「なるほど。岡村がいたら恨みを買いそうな言葉だ」
「確かにそうかもしれないなぁ。こんなに可愛らしいメイド服姿の女性2人に挟まれているからね」
「智也さん……」
「智也君……」
僕に可愛いと言われたことが嬉しいからか、美来と有紗さんは嬉しそうに僕と腕を絡ませてくる。右に美来、左に有紗さん。まさに両手に花だ。
「氷室、お前は意外とそういうことをさらりと言える男だったな。氷室は気付いていないかもしれないが、女子からの評判は良かったのだぞ」
「えっ、そうだったのか? 男子からなんて、名前がかっこよすぎて、お前は名前負けしているって言われたこともあったくらいだ。名前がかっこいいことだけがお前の取り柄だって言われたことがあるくらいで」
それを言われたときは、少しの間『氷室智也』という自分の名前が嫌いになったくらいだった。普通に過ごしていただけなのに、突然そういうことを言われたから。別の名前ならこんなことは言われなかったのかなって。
「何ということでしょう……」
美来は有紗さんとキスしたときよりも低い声で呟く。まさか、女子からの評判が良かったということに怒っているのか?
「智也さんにそんなことを言う人がいたなんて! 許せることではありません。目の前にいたら頬を思いっきり叩きますよ!」
僕のことを馬鹿にした男子生徒に対してか。美来らしいな。
「美来、怒ってくれるのは嬉しいけど落ち着いて。僕が学生のときの話だから」
「智也さんがそう言うのであれば許しますが」
「当時から、朝比奈さんのような女子がいれば違っていたのかもしれない。さすがにあのときはあまり元気がなかったからな」
確かに、美来や有紗さんのような人が側にいれば、あそこまでヘコんで……自分の名前が嫌いになってしまうことはなかったかもしれないな。
「ううっ、智也さんと同い年が良かったです」
「同級生に美来や有紗さんがいれば、すぐに元気になれたかもね。実際は羽賀や岡村のおかげで何とか立ち直ることができたけれど」
「岡村さんというのは?」
「金髪の方だ。あいつは高校を卒業したら土木業の方に就職して、今日も仕事に精を出していると思うよ」
「ああ、金髪のお方ですね。本当に智也さんはお友達に恵まれていていいですね」
美来は羨ましそうにそう言う。ただ、その言葉には「女性の方に言い寄られなくて良かったですね」という内容が隠れていると思う。
「そういえば、岡村と一緒に氷室の家に遊びに来たときは、色々なゲームをやっていたな。一番やっていたのは『御乱闘スプラッシュブラザーズ』かな」
「やってたなぁ。羽賀は強かったよなぁ」
御乱闘スプラッシュブラザーズというのは、僕の子供時代からあったテレビゲームシリーズで、中学生くらいまでは羽賀や岡村と一緒に3人でよく遊んでいた。たまに父さんも混じって4人で対戦してたっけなぁ。
「個人戦なのに氷室と協力して岡村を倒したな」
「やったやった。あいつ、まんまと騙されてたよな……」
「懐かしいわね。スプラッシュブラザーズ。DXはよく友達や妹と一緒に遊んでいたわ」
そういえば、有紗さんは僕や羽賀と1つしか年齢が違わないんだった。だから、ハマっていたゲームは同じ可能性が高いんだよな。
「美来はスプラッシュブラザーズをやってた?」
「DXは私が幼稚園とか小学校の低学年のときにやっていました。お父さんとお母さんがかなりのゲーム好きで」
「……なるほど」
「あたし達の時は小学校の高学年とか中学生だったのにね……」
社会人2、3年目の人達と高校に入学したばかりの子では、同じゲームでもプレイした年齢はやっぱり違ってくるか。僕達3人と美来に年の差を感じた瞬間だった。
「ここに引っ越してくるとき、ゲームも持ってきていたからみんなでする? DXもあったはずだし、コントローラも4つあったと……」
といっても、1人暮らしを初めてテレビゲームは1度もしていない。というか、ゲーム自体もほとんどやらなくなってしまった。休日の暇つぶしに、スマホのゲームをたまにするくらいで。
「いいですね! 是非、やりましょう!」
「あたしの実力見せてあげるわ!」
「久しぶりにゲームをするのもいいだろう」
みんな、すっかりやる気になっている。
まさか、スプラッシュブラザーズを有紗さんや美来がプレイしていると思わなかった。僕と同年代の有紗さんならまだしも、美来までもプレイヤーだとは。さすがは人気シリーズ。
テレビの下にゲーム機を置いてあるので、そこを漁ってみるとちゃんとゲーム機とソフト、コントローラ4つあった。これでみんなと一緒に遊べる。
ゲーム機をテレビに接続し、スイッチを入れる。
「懐かしいなぁ」
ホームメニュー画面を観て、BGMが流れた瞬間にそう漏らす。どれもこれもが懐かしい。隣にコントローラを持った羽賀が座っているからか、一気に童心に帰ってしまう。
「僕達はよく個人戦で、ストック3。ゲーム中に出てくるアイテムはなしっていうルール設定にしてやっていました。美来や有紗さんはどういう設定にしていました?」
「私は同じ感じです。ただ、たくさん試合ができるように時間制でやっていました」
「ストックルールは一緒だけど、あたし達は爆弾系アイテムばかり出るようにしていたわね。でも、4人で個人戦ならアイテム無しでも十分に面白いね」
「では、まずは氷室と私がよくやっていたルールでやりましょうか」
「そうしよっか」
ひさしぶりだから、上手くできるかなぁ。僕達のよくやっていたルールだし、僕の一番得意としているキャラクターで対戦するので4位になることはないはず。
「よし、対戦を始めよう!」
数年ぶりにスプラッシュブラザーズDXをプレーするけれど……他の3人が強すぎる。いや、僕が弱すぎるのか? あっけなく最初に脱落してしまった。得意なキャラで挑んだんだけれど。
僕の次に脱落したのは羽賀。これでも途中までは美来や有紗さんと互角に渡り合っていたんだけれど、2番目に脱落してしまった。
「最後に残るのは美来ちゃんなんだね」
「私はてっきり羽賀さんだと思っていました」
「あたしも!」
僕だとは思わないのか。まあ、さっき羽賀は強かったと僕は言ったけれど、少しでも僕だって強いと思ってくれたっていいじゃないか。お世辞でも。
女性プレイヤー同士の激闘の末、勝ったのは美来だった。
「やりました!」
「ううっ、あと少しだったのに……」
「受験生になる直前まで、両親や妹と結構やっていましたので。受験勉強の合間にも気分転換にしていましたし」
なるほど、それなら美来が1番になるのは自然なのか。
「ええっ、あたしだって社会人になってもたまに妹とやるのに……」
有紗さんにも勝つということは、美来はかなり強いってことか。まさか、2人が結構なゲーマーだったなんて。
「私は高校以来だったのだが、見事に女性陣……もといメイド陣に負けてしまったな。氷室に勝てたのがせめてもの救いか」
「おい、人を弱い者みたいに言うんじゃない。……最初に負けちゃったけれど」
「ふっ、例え昔はいくら強かったとしても、今もコツコツ続けている人には勝てないということか。過去の栄光に囚われず、ひたすら努力し続けることが大切なのかもしれない」
羽賀は微笑んで何かいいことを言った雰囲気になっているけれど、2人に負けたことには変わりないんだぞ。一瞬、岡村以上の小者に見えてしまった。
「次も同じルールでやっていいわよね、美来ちゃん」
「ええ、私は別にかまいませんよ」
美来と有紗さんは僕と羽賀に勝ったからか、余裕の表情を浮かべていた。
「……チームでやれば勝てるかもしれないぞ、羽賀」
「それは名案だ」
「あたしは別にそれでいいけれど、美来ちゃんはどう?」
「いいですよ。チームでやった方が更に圧倒してしまうかもしれませんけど」
「……絶対に倒してやろう」
「私も同じことを考えていた」
僕と羽賀、美来と有紗さんに別れてチーム戦をしたけど、美来の言うとおり、個人戦以上に美来と有紗さんに差を付けられ、負けてしまった。
その後も何度も何度も対戦するけれど、僕と羽賀は一度も美来と有紗さんよりも上の順位になることはできなかった。それでも、みんな楽しそうなのがとても印象的だった。
ゲームに夢中になっていたら、あっという間に時刻は正午近くになっていた。羽賀はこれから大学時代の友人と食事をするため帰る予定だ。
「まさか、大人になっても、ゲームでここまで盛り上がれるとは思わなかったな。とても楽しかった」
あそこまで熱くなっていた羽賀を見るのは久しぶりだった。
「今度は岡村も誘うか」
「朝比奈さんや月村さんのいるところに誘うのは危険な匂いがするが、彼がいれば更に楽しくなるだろう。では、私はこれで失礼します」
「またな、羽賀」
「今日は楽しかったです。また、遊びましょう」
「次遊ぶときはもう少し強くなっていなさいよ」
有紗さん、すっかりと羽賀と対戦する気でいるんだな。羽賀には1度も負けなかったけれど、彼はいい対戦相手だと思ったのだろうか。
羽賀は爽やかに笑って、
「……では、また」
そう言って僕の家を後にした。今後来るときは……昔のように岡村と一緒だといいな。
「では、お昼ご飯を作りますね」
「あ、あたしも一緒に作るわ! 智也君、楽しみにしててね!」
「分かりました」
みんなでゲームをするという昔のような時間は終わっても、美来や有紗さんのいるおかげで楽しい時間はまだまだ終わらない。今は土曜日のお昼だ。この楽しい時間はまだまだ続いていくのであった。
「美来、有紗さん。羽賀がいるから、僕ら3人が羽賀と向き合う形に座るのは分かりますけど、2人とも僕にくっつきすぎじゃないですか?」
僕は美来と有紗さんに挟まれるように座っていた。しかも、美来と有紗さんが僕に寄り添うような形で。
「ふっ、それだけ愛されている証拠ではないか」
羽賀は微笑んでコーヒーを一口飲む。こいつ、どこまでもクールな男だな。
「しかし、1人暮らしになっても部屋の中は綺麗だな。氷室らしいが」
「美来に掃除してもらったおかげでもあるよ」
「なるほど。岡村がいたら恨みを買いそうな言葉だ」
「確かにそうかもしれないなぁ。こんなに可愛らしいメイド服姿の女性2人に挟まれているからね」
「智也さん……」
「智也君……」
僕に可愛いと言われたことが嬉しいからか、美来と有紗さんは嬉しそうに僕と腕を絡ませてくる。右に美来、左に有紗さん。まさに両手に花だ。
「氷室、お前は意外とそういうことをさらりと言える男だったな。氷室は気付いていないかもしれないが、女子からの評判は良かったのだぞ」
「えっ、そうだったのか? 男子からなんて、名前がかっこよすぎて、お前は名前負けしているって言われたこともあったくらいだ。名前がかっこいいことだけがお前の取り柄だって言われたことがあるくらいで」
それを言われたときは、少しの間『氷室智也』という自分の名前が嫌いになったくらいだった。普通に過ごしていただけなのに、突然そういうことを言われたから。別の名前ならこんなことは言われなかったのかなって。
「何ということでしょう……」
美来は有紗さんとキスしたときよりも低い声で呟く。まさか、女子からの評判が良かったということに怒っているのか?
「智也さんにそんなことを言う人がいたなんて! 許せることではありません。目の前にいたら頬を思いっきり叩きますよ!」
僕のことを馬鹿にした男子生徒に対してか。美来らしいな。
「美来、怒ってくれるのは嬉しいけど落ち着いて。僕が学生のときの話だから」
「智也さんがそう言うのであれば許しますが」
「当時から、朝比奈さんのような女子がいれば違っていたのかもしれない。さすがにあのときはあまり元気がなかったからな」
確かに、美来や有紗さんのような人が側にいれば、あそこまでヘコんで……自分の名前が嫌いになってしまうことはなかったかもしれないな。
「ううっ、智也さんと同い年が良かったです」
「同級生に美来や有紗さんがいれば、すぐに元気になれたかもね。実際は羽賀や岡村のおかげで何とか立ち直ることができたけれど」
「岡村さんというのは?」
「金髪の方だ。あいつは高校を卒業したら土木業の方に就職して、今日も仕事に精を出していると思うよ」
「ああ、金髪のお方ですね。本当に智也さんはお友達に恵まれていていいですね」
美来は羨ましそうにそう言う。ただ、その言葉には「女性の方に言い寄られなくて良かったですね」という内容が隠れていると思う。
「そういえば、岡村と一緒に氷室の家に遊びに来たときは、色々なゲームをやっていたな。一番やっていたのは『御乱闘スプラッシュブラザーズ』かな」
「やってたなぁ。羽賀は強かったよなぁ」
御乱闘スプラッシュブラザーズというのは、僕の子供時代からあったテレビゲームシリーズで、中学生くらいまでは羽賀や岡村と一緒に3人でよく遊んでいた。たまに父さんも混じって4人で対戦してたっけなぁ。
「個人戦なのに氷室と協力して岡村を倒したな」
「やったやった。あいつ、まんまと騙されてたよな……」
「懐かしいわね。スプラッシュブラザーズ。DXはよく友達や妹と一緒に遊んでいたわ」
そういえば、有紗さんは僕や羽賀と1つしか年齢が違わないんだった。だから、ハマっていたゲームは同じ可能性が高いんだよな。
「美来はスプラッシュブラザーズをやってた?」
「DXは私が幼稚園とか小学校の低学年のときにやっていました。お父さんとお母さんがかなりのゲーム好きで」
「……なるほど」
「あたし達の時は小学校の高学年とか中学生だったのにね……」
社会人2、3年目の人達と高校に入学したばかりの子では、同じゲームでもプレイした年齢はやっぱり違ってくるか。僕達3人と美来に年の差を感じた瞬間だった。
「ここに引っ越してくるとき、ゲームも持ってきていたからみんなでする? DXもあったはずだし、コントローラも4つあったと……」
といっても、1人暮らしを初めてテレビゲームは1度もしていない。というか、ゲーム自体もほとんどやらなくなってしまった。休日の暇つぶしに、スマホのゲームをたまにするくらいで。
「いいですね! 是非、やりましょう!」
「あたしの実力見せてあげるわ!」
「久しぶりにゲームをするのもいいだろう」
みんな、すっかりやる気になっている。
まさか、スプラッシュブラザーズを有紗さんや美来がプレイしていると思わなかった。僕と同年代の有紗さんならまだしも、美来までもプレイヤーだとは。さすがは人気シリーズ。
テレビの下にゲーム機を置いてあるので、そこを漁ってみるとちゃんとゲーム機とソフト、コントローラ4つあった。これでみんなと一緒に遊べる。
ゲーム機をテレビに接続し、スイッチを入れる。
「懐かしいなぁ」
ホームメニュー画面を観て、BGMが流れた瞬間にそう漏らす。どれもこれもが懐かしい。隣にコントローラを持った羽賀が座っているからか、一気に童心に帰ってしまう。
「僕達はよく個人戦で、ストック3。ゲーム中に出てくるアイテムはなしっていうルール設定にしてやっていました。美来や有紗さんはどういう設定にしていました?」
「私は同じ感じです。ただ、たくさん試合ができるように時間制でやっていました」
「ストックルールは一緒だけど、あたし達は爆弾系アイテムばかり出るようにしていたわね。でも、4人で個人戦ならアイテム無しでも十分に面白いね」
「では、まずは氷室と私がよくやっていたルールでやりましょうか」
「そうしよっか」
ひさしぶりだから、上手くできるかなぁ。僕達のよくやっていたルールだし、僕の一番得意としているキャラクターで対戦するので4位になることはないはず。
「よし、対戦を始めよう!」
数年ぶりにスプラッシュブラザーズDXをプレーするけれど……他の3人が強すぎる。いや、僕が弱すぎるのか? あっけなく最初に脱落してしまった。得意なキャラで挑んだんだけれど。
僕の次に脱落したのは羽賀。これでも途中までは美来や有紗さんと互角に渡り合っていたんだけれど、2番目に脱落してしまった。
「最後に残るのは美来ちゃんなんだね」
「私はてっきり羽賀さんだと思っていました」
「あたしも!」
僕だとは思わないのか。まあ、さっき羽賀は強かったと僕は言ったけれど、少しでも僕だって強いと思ってくれたっていいじゃないか。お世辞でも。
女性プレイヤー同士の激闘の末、勝ったのは美来だった。
「やりました!」
「ううっ、あと少しだったのに……」
「受験生になる直前まで、両親や妹と結構やっていましたので。受験勉強の合間にも気分転換にしていましたし」
なるほど、それなら美来が1番になるのは自然なのか。
「ええっ、あたしだって社会人になってもたまに妹とやるのに……」
有紗さんにも勝つということは、美来はかなり強いってことか。まさか、2人が結構なゲーマーだったなんて。
「私は高校以来だったのだが、見事に女性陣……もといメイド陣に負けてしまったな。氷室に勝てたのがせめてもの救いか」
「おい、人を弱い者みたいに言うんじゃない。……最初に負けちゃったけれど」
「ふっ、例え昔はいくら強かったとしても、今もコツコツ続けている人には勝てないということか。過去の栄光に囚われず、ひたすら努力し続けることが大切なのかもしれない」
羽賀は微笑んで何かいいことを言った雰囲気になっているけれど、2人に負けたことには変わりないんだぞ。一瞬、岡村以上の小者に見えてしまった。
「次も同じルールでやっていいわよね、美来ちゃん」
「ええ、私は別にかまいませんよ」
美来と有紗さんは僕と羽賀に勝ったからか、余裕の表情を浮かべていた。
「……チームでやれば勝てるかもしれないぞ、羽賀」
「それは名案だ」
「あたしは別にそれでいいけれど、美来ちゃんはどう?」
「いいですよ。チームでやった方が更に圧倒してしまうかもしれませんけど」
「……絶対に倒してやろう」
「私も同じことを考えていた」
僕と羽賀、美来と有紗さんに別れてチーム戦をしたけど、美来の言うとおり、個人戦以上に美来と有紗さんに差を付けられ、負けてしまった。
その後も何度も何度も対戦するけれど、僕と羽賀は一度も美来と有紗さんよりも上の順位になることはできなかった。それでも、みんな楽しそうなのがとても印象的だった。
ゲームに夢中になっていたら、あっという間に時刻は正午近くになっていた。羽賀はこれから大学時代の友人と食事をするため帰る予定だ。
「まさか、大人になっても、ゲームでここまで盛り上がれるとは思わなかったな。とても楽しかった」
あそこまで熱くなっていた羽賀を見るのは久しぶりだった。
「今度は岡村も誘うか」
「朝比奈さんや月村さんのいるところに誘うのは危険な匂いがするが、彼がいれば更に楽しくなるだろう。では、私はこれで失礼します」
「またな、羽賀」
「今日は楽しかったです。また、遊びましょう」
「次遊ぶときはもう少し強くなっていなさいよ」
有紗さん、すっかりと羽賀と対戦する気でいるんだな。羽賀には1度も負けなかったけれど、彼はいい対戦相手だと思ったのだろうか。
羽賀は爽やかに笑って、
「……では、また」
そう言って僕の家を後にした。今後来るときは……昔のように岡村と一緒だといいな。
「では、お昼ご飯を作りますね」
「あ、あたしも一緒に作るわ! 智也君、楽しみにしててね!」
「分かりました」
みんなでゲームをするという昔のような時間は終わっても、美来や有紗さんのいるおかげで楽しい時間はまだまだ終わらない。今は土曜日のお昼だ。この楽しい時間はまだまだ続いていくのであった。
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