高嶺の花の高嶺さんに好かれまして。

桜庭かなめ

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本編

第20話『高嶺さんの部屋』

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 高嶺さんがお昼ご飯の後片付けを済ませた後、いよいよ高嶺さんの部屋へ行くことに。高嶺さんの部屋がある2階へ向かう。
 高嶺さんの部屋はどんな感じなんだろう? シンプルな感じなのか。それとも、可愛らしい雰囲気なのか。俺のことが大好きだから、俺の写真が壁や天井にたくさん貼られていたりして。……それもあり得そうな気がする。行くのが怖くなってきたぞ。

「じゃあ、お姉ちゃん。悠真さんと2人きりの時間を楽しんでね」
「うんっ。ありがとう、柚月」
「もちろん、あたしと話したり、遊んだりしたくなったらいつでも言ってきてね。では、またです。悠真さん」
「……ま、またね」

 柚月ちゃんは自分の部屋に入っていってしまった。柚月ちゃんがいれば、まだ安全が確保できると思ったんだけどな。ただ、2人きりの時間を楽しんでと言われたので、柚月ちゃんを呼び止めることはできなかった。

「悠真君。こっちが私の部屋だよ」
「……お邪魔します」

 高嶺さんの部屋の中に入る。家が大きいだけあって、高嶺さんの部屋もかなり広い。俺の部屋の1.5倍くらいはありそうだ。
 ベッドの上に猫の大きなぬいぐるみがあったり、本棚に少女漫画が多く入っていたり、ドレッサーがあったりすること以外は、俺の部屋とそこまで変わりなかった。あと、部屋の中はとても綺麗だ。

「悠真君に部屋を見られるとドキドキしちゃうな。……どうかな?」
「とてもいい雰囲気の部屋だと思う」
「そう言ってくれて良かった。飲み物を持ってくるから、適当にくつろいでて」
「ああ、お構いなく」
「あと、そこのタンスの上から2段目に下着が入っているからね」

 そう言うと、高嶺さんは一旦、部屋から出て行った。
 あと、高嶺さん……下着をしまってある場所を普通に教えてくれたな。見てほしいのか? 絶対に見ないけど。

「もしかして、昨日、俺が寝ている間に下着がどこに入っているのか確認したのかな」

 寝間着から私服に着替えるところを見られているし、別にいいけど。あまり深く考えないでおこう。
 俺はベッドの側にあるクッションに腰を下ろす。
 改めて部屋の中を見渡すと、俺の部屋よりも広いな。正面にあるテレビも大きい。きっと、このテレビで大好きな『鬼刈剣』のアニメを観ているのだろう。戦闘シーンとか迫力を感じられそうだ。
 本棚を見ると、漫画や小説、ラノベが第1巻から順番に入っている。どうやら、几帳面な一面もあるようだ。

「あれは……」

 本棚の一番下の段に、青いアルバムが中途半端に入っている。

「せっかくだし、ちょっと見てみるか」

 芹花姉さんのアルバムだけど、昨日は俺の小さい頃の写真を高嶺さんにたくさん見せたからな。高嶺さんのアルバムを少しくらい見たって文句は言われまい。
 クッションから立ち上がって、俺は本棚から青いアルバムを手に取る。最近買ったかのように綺麗だ。本棚には赤いアルバムもあるから、これは2冊目なのかもしれない。

「どれどれ……」

 アルバムを開いてみると、金井高校の制服姿の俺の写真が貼られていた。その写真に写っている俺は自分の席に座っていて、イヤホンをしながらスマホを眺めている。背景からして、これは席替えをする前の席かな。

「こんな写真、撮られた記憶がないぞ」

 ページをめくってみると、1人でお弁当を食べている写真や、ムーンバックスで中野先輩と一緒にカウンターで接客をしている写真、私服姿の俺が自宅の門を入ろうとする写真など、撮られた覚えのない写真が続いていく。どんだけあるんだよ。
 そして、何枚もめくってようやく、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたときにメガネを外したときの写真や、昨日、高嶺さんの自己申告で判明したベッドで寝ているときの写真が貼られたページとなった。

「見つけたんだね、悠真君」

 高嶺さんのその声にゾクッとした。
 声がした扉の方にゆっくり顔を向ける。すると、扉の近くに、マグカップを乗せたトレイを持った高嶺さんの姿があった。
 高嶺さんは俺と目が合うとニッコリ笑って、トレイをテーブルに置いた。そして、後ろから俺の両肩を掴み、

「この青いアルバム……悠真君に恋をしてから撮った写真を貼っているの」

 俺の耳元でそう囁いた。高嶺さんの温かな吐息がくすぐったい。

「写真に写っている悠真君もいいけど、生の悠真君が一番いいな。温もりや匂いも感じられるから。日に日に悠真君のことが好きになってるよ」

 そう言って、高嶺さんは後ろから抱きしめてくる。
 背中から感じる温もりもいいもんだな。あと、服越しでもはっきりと胸の柔らかさが伝わってきて。結構ドキドキしてきた。ただ、それよりも、

「……高嶺さん。生の俺が一番いいんだったら……このアルバムに貼ってあるたくさんの隠し撮り写真を処分してもいいんだよな?」
「ひえっ!」

 俺は高嶺さんの抱擁を解き、高嶺さんの方に振り返る。
 高嶺さんの両肩をしっかりと掴むと、高嶺さんは苦笑いをして視線をちらつかせる。額には大粒の汗が浮かび上がる。

「高嶺さん、アルバムをパラパラめくったら、連休前の学校での写真や、連休中に家に帰ってくるときの私服姿の写真とかが貼ってあったぞ。これ、絶対にこっそりと撮った写真だよな。今日以外に写真を撮っていいかって俺に訊いたのは、昼休みに汚れたメガネを綺麗にしたときくらいだ。あとは、昨日の朝、俺が寝ている間に寝顔の写真を撮ったって言ったくらいだよな」
「……そ、そだねー」

 そう答えると、高嶺さんの視線のちらつきが激しさを増す。こりゃ図星だな。

「おしおきをする前に、弁解の機会を与えよう。何か言うことはあるかな、高嶺さん。もしあるなら、俺はちゃんと聞くぞ」

 さすがに、高嶺さんに何も言わせずにおしおきをするのは心苦しい。
 高嶺さんはゆっくりと視線を俺の方に向ける。

「悠真君への好意を自覚してから、いつでも悠真君の姿を見たくなって。それで、こっそりとスマホで写真を撮ってしまいました。そうしたら、もっと写真を撮りたくなって。気付いたら、たくさん写真を撮っていました。アルバムに貼ってあるのは、私が特に気に入った写真で、スマホやパソコンには大量の写真が保存されています。もちろん、ネットには上げていません。隠れて撮ってごめんなさい」

 高嶺さんは深く頭を下げる。
 やっぱり、俺への好意が原因でたくさん写真を撮っていたのか。まあ、俺の自宅の場所を特定していたほどだから予想はしていたけど。
 あと、アルバムに貼ってある写真が厳選されたものだというのが恐ろしいな。個人的に楽しむ範囲に留めているだけまだマシか。

「あと、おしおきって……どんなことをするつもりかな?」

 高嶺さんは頬を赤くしてもじもじする。

「私、悠真君からのおしおきなら何でも受け入れるよ? 何なら、ベッドの中でおしおきしてくれていいよ。悠真君のことを受け入れるから! ……あうっ」

 俺は高嶺さんの頭にチョップする。それが痛かったのか、高嶺さんはチョップされた部分に右手を当て、両眼に涙を浮かべる。

「ううっ、痛い……」
「こっそり撮った理由を説明して謝ってくれたから、昨日と同じように頬を抓もうと思ったけど、そのおしおきの話をされて気分が変わった」

 まったく、高嶺さんは変態過ぎる。元々、ここで2人きりになったら、ベッドの中で何かしようと考えていたんじゃないか? ……帰るまで気を付けよう。

「本当に反省しているか? 反省していないなら、俺が許可して撮ったものも含めて写真を全て処分してもらうよ」
「……反省しています。今後、隠し撮りはしません」
「今の言葉、ちゃんと覚えておくからな。今後、写真や動画を撮りたいときは、俺の許可を得ること。あと、今まで撮影した写真を不用意に人に見せびらかしたり、ネットにアップしたりしないこと。それらを守ると約束できるなら、今まで撮った写真は処分しなくていい」
「もちろん約束します」

 とても真剣な様子で言う高嶺さん。
 今回の隠し撮りが初犯ではなく、家の場所を突き止めて勝手に遊びに来たこともあるからな。厳しくしないと。

「分かった。ただし、約束を破った時点で、それまで撮った俺の写真は全部処分するよ」
「はい!」

 返事はとてもいいな。だから、自然と好印象になっていく。さっきチョップした部分を撫でると、高嶺さんは柔和な笑みを浮かべた。
 お昼ご飯を食べてからあまり時間も経っていないのにどっと疲れた。午前中にバイトがあったからかな。
 俺の写真が挟んだアルバムを本棚に入れ、さっき座ったクッションに戻ろうとする。

「やばっ!」
「きゃっ!」

 クッションに足を取られて、俺は高嶺さんを押し倒す形になってしまう。そのことで今までで一番と言っていいほど、高嶺さんとの顔の距離が近い。高嶺さんから甘い匂いもしてくるので、ドキドキしてしまう。
 少し体を起こすと、高嶺さんは顔を真っ赤にして俺を見つめてくる。

「ごめん、高嶺さん。クッションに足を取られちゃって。大丈夫か? ケガはないか?」
「……大丈夫だよ。むしろ、足を取られてくれてありがとう……だよ。悠真君に押し倒される妄想はこれまでに何度もしていたし……」
「……本当に大丈夫そうだな」

 高嶺さんは幸せそうな笑顔になっているし。

「この体勢から、私に色々してくれていいんだよ? とりあえず、顔を私の胸にダイブする?」
「……遠慮しておくよ」

 今でさえ、こんなにドキドキしているんだ。高嶺さんの胸に顔をダイブしたら、理性を保てなくなってしまうだろう。
 俺は高嶺さんから離れ、さっき座っていたクッションに腰を下ろす。
 高嶺さんが持ってきてくれた飲み物は冷たい緑茶か。一口飲むと、冷たさがちょうど良くてとても美味しく感じられた。
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