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本編
第27話『初恋の人だった。』
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――華頂さんは俺の……初恋の人だったんだ。
俺がその事実を伝えると、高嶺さんは真剣な様子で俺を見続ける。驚くかと思ったんだけど、意外と冷静そうだ。初恋の人"だった"と過去形だからだろうか。
「……うん?」
高嶺さん……俺を見続けているけど、何も言わないし、瞬きすらしていないぞ。もしかして、気を失っているのか?
「高嶺さん」
高嶺さんの肩を軽く叩くと、高嶺さんは体をビクつかせ、目をパチパチさせた。
「ご、ごめん。今の悠真君の言葉が衝撃的すぎて気を失ってた」
「……そうか」
「……胡桃ちゃんは悠真君の初恋の人だったんだね」
高嶺さんは寂しげな笑顔になる。自分の好きな人の初恋の人が自分の親友であることに複雑な想いを抱いているのだろう。
高嶺さんはミルクティーを一口飲み、「ふぅ……」と長く息を吐いた。
「中学時代に同じクラスだった年があるんだよね。クラスメイトだったときに好きになったの?」
「……ああ。ちょうど今ぐらいの時期だったかな。初めて席替えをしたら、華頂さんと隣同士の席になったんだ。温厚な性格の華頂さんは、当時の俺にもたまに話しかけてくれたんだ。優しい子だなって思った」
だから、昨日……華頂さんの隣で団子を丸くする作業をしているとき、中学生の頃のことをたまに思い出したのだ。
「そういった日々を積み重ねて、胡桃ちゃんに惹かれていったの?」
「……今振り返ると、それは恋する下地のようなものだと思う。きっかけはささいなことだった。俺が授業中に消しゴムを落としたんだ。華頂さんの方に転がっていったから、華頂さんが消しゴムを拾って渡してくれたんだよ。すぐ近くで見た華頂さんの笑顔と、消しゴムを渡されたときに触れた手の温もりにキュンときた。それをきっかけに、単なるクラスメイトから好きな人に変わったんだ。それが初恋の瞬間だった」
あのときの華頂さんの笑顔は今でも鮮明に覚えている。本当に可愛くて。思い出したら、少し体が温かくなった。
華頂さんに恋をしてからは特に、学校に行くのが楽しみだった。挨拶をするだけの日もあったけど、華頂さんの隣の席で学校生活を送ることが幸せに思えたのだ。
「……なるほどね。悠真君と胡桃ちゃんらしいエピソードだなって思う。キューピットの矢ならぬ、キューピットの消しゴムか……」
高嶺さんは感心している様子だった。初恋の人が華頂さんだからか、今の話をしても高嶺さんは不快な表情を見せない。あと、キューピットの矢が消しゴムに変わると急に庶民的な雰囲気になるな。
「気になることがあるの。初恋の人『だった』っていう言い方。ただ、胡桃ちゃんから付き合っている人がいるとか、誰かと付き合ったことがあるって話を聞いたことがないな。悠真君は胡桃ちゃんに好きだって告白したの?」
「……好きだって気持ちを伝えたことはある。でも、そのきっかけは華頂さんが俺に好きだって言ってきたからだったんだ」
「えええっ!」
高嶺さんは今までの中で一番と言っていいほどの大きな声で驚いた。
「胡桃ちゃんが先に好きだって言ったの? じゃあ、両想いじゃない!」
「……そう思うだろ?」
「もちろんだよ! ということは、2人は付き合ったんだよね。……いや、でもそれなら胡桃ちゃんを『元カノ』って言うか。どうして『初恋の人だった』って言うの?」
高嶺さんは腕を組みながら悩み始めた様子だ。
俺は華頂さんに恋をしていた。
俺が告白する前に、華頂さんから俺に好きだと言ってきた。
でも、そんな華頂さんのことを俺は高嶺さんに『初恋の人だった』と言う理由。それは、
「……華頂さんからの告白は嘘だったんだ」
俺がそう言った瞬間、高嶺さんの顔から表情が消えていき、まん丸くさせた目で俺のことを見る。
「ど、どうして? どうして、胡桃ちゃんが悠真君に嘘の告白なんて……」
「俺を笑いものにするために、あるクラスメイトが華頂さんに嘘の告白をしろって命令したからだよ」
「そのクラスメイトって?」
「……将野美玲だ」
「将野美玲……あっ、土曜日にムーンバックスで悠真君と千佳先輩に絡んでいたゲス女! 彼女が黒幕だったんだね!」
土曜日のことを思い出しているのか、高嶺さんはかなり怒った表情に。とても恐い。あのとき、将野さんは高嶺さんに色々言っていたからな。
「前にも話したけど、将野さんはクラス内のカーストトップだった。将野さんがリーダーのグループに、華頂さんが入っていたんだよ。4月中にはもうグループができていたな。華頂さんも当時から人気のある生徒だったけど、将野さんの方がカーストは上だった」
「お山の大将気取りだったんだね。そういえば、土曜日にも女子を何人か引き連れていたよね」
本人を目の前にしているわけじゃないのに、高嶺さんの言葉選びが鋭い。相当嫌っていると伺える。
「席が隣になるまで、華頂さんとは何度か挨拶をした程度だった。ただ、隣同士の席になってから、華頂さんとの関わりが増えて、俺は恋をした。きっと、将野さんは俺の様子を見てそれに気付いたんだと思う」
「だから、あのゲス女は胡桃ちゃんに……」
「多分な。華頂さんと隣同士になってから1ヶ月くらいか。6月の半ばだったと思う。放課後、華頂さんに体育館裏に呼び出された俺は、華頂さんから好きだと言われ、付き合ってほしいと言われた。俺は嬉しくて『俺も華頂さんが好きだ。恋人としてよろしく』ってその場で返事をした。……そのときは本当に嬉しかった。初恋の人から告白されて、その人と恋人になることができたんだから。本当に幸せだった」
好きだって言ってくれたときや、俺が恋人としてよろしくって返事したときの華頂さんの笑顔は可愛らしくて。華頂さんを好きになって本当に良かったと思ったほどだった。
「でも、嘘だったんだよね。その告白自体が」
「……ああ。束の間ってこういうことを言うのかなって思ったよ。翌日、学校に登校すると、華頂さんに好きだと言われたときの会話が流されていたんだ。それで、将野さんが言ったんだよ。『胡桃が低田を好きで、付き合うのは全てあたしの仕組んだ嘘。付き合えるわけがないって。恋された胡桃がかわいそう』ってね。カーストトップの将野さんの言葉に乗っかって、クラスメイトのほとんどが俺を嘲笑った」
「そんな……。そのとき、胡桃ちゃんは?」
「……華頂さんは笑わなかった。むしろ、申し訳なさそうで。そんな華頂さんに、『将野さんの言う通り、俺が好きなことも付き合うことも嘘なのか』って訊いた。華頂さんは頷いて、小さい声で『ごめん』って言ったんだ。その瞬間に俺の初恋は終わった」
だから、さっき華頂さんがイケメン男子に『ごめんなさい』って言ったときに、胸が凄く締め付けられたのだ。2年前のあのときと重なる部分があったから。
「俺にとって、あの出来事はとてもショックだった。気持ちが凄く沈んで、絶望すら感じたほどで。1学期の間は、毎日学校に行くので精一杯だったな」
その影響は低変人の活動にも影響した。ギターを弾いても楽しくないし、曲も思い浮かばなかった。だから、活動休止を発表したんだ。当時は休止期間を明記しなかったけど、実際には再開するまで3ヶ月近くかかった。
「昇降口で告白される胡桃ちゃんを見たとき、悠真君が切ない表情を浮かべていたのは、今話してくれた出来事があったからだったんだね。あと、私が告白したときに、これがドッキリじゃないかって言ったことや、悠真君に恋をした私を馬鹿にした高橋君にあんなに怒ったのも……」
「……ああ。高嶺さんは凄く人気だから、2年前と同じような目に遭うんじゃないかと思ってさ。それで、高橋については、誰かを好きになったのを嘲笑っていたのが許せなかった。将野さんに重なる部分もあって。それに、高嶺さんが俺に抱いた恋心は初恋だって知っていたから。だから、余計に許せなかったんだ」
誰かを好きになった気持ちを、第三者に嘲笑われることの苦しさや切なさ、惨めさとかを身を持って知っているから。高嶺さんに同じような気持ちを味わわせたくなかったから。
高嶺さんは優しい笑みを浮かべながら、俺の頭を撫でてきた。
「辛い想いをしたんだね、悠真君」
その優しい声と、頭から伝わる温もりが体の中に染み渡っていく気がして。高嶺さんに優しく包まれて、守ってくれている感じがして。頬に何かが伝っている感覚を覚えた。
「……あれが初恋だったから。華頂さんが本気で好きだったから凄く辛かった。華頂さんはごめんって言ってくれた。それまでの時間も楽しかったから、華頂さんのことは憎んでない。だけど、今でも華頂さんを見ると切なくなったり、胸が苦しくなったりするときがあるよ」
それが表情や態度などに表れていたのかもしれない。華頂さんもきっと、俺と接することの気まずさや戸惑いを感じる場面があったと思う。そんな俺達を見て、高嶺さんは俺達の間に距離があると感じたんじゃないだろうか。
高嶺さんは俺をそっと抱きしめてくる。
「今は私もいるから。遠慮なく私に甘えたり、頼ってくれたりしていいからね」
高嶺さんのその言葉がとても温かく響いた。
当時のクラスに……せめて、同じ学校に高嶺さんがいたら、何かが変わっていたのだろうか。そう思えるほどに高嶺さんの存在は心強く思えるのだ。
「……高嶺さん。しばらくの間、高嶺さんを抱かせてほしい」
俺がそう言うと、高嶺さんは頬を紅潮させながら俺を見つめてくる。ほえっ、と甘い声を漏らしていて可愛らしい。
「……うん。いいよ」
「……ありがとう」
俺はベッドを背にして座り、高嶺さんのことを抱きしめる。高嶺さんの温もりや匂い、柔らかさが今の俺にとってはとても癒やしになるのであった。
俺がその事実を伝えると、高嶺さんは真剣な様子で俺を見続ける。驚くかと思ったんだけど、意外と冷静そうだ。初恋の人"だった"と過去形だからだろうか。
「……うん?」
高嶺さん……俺を見続けているけど、何も言わないし、瞬きすらしていないぞ。もしかして、気を失っているのか?
「高嶺さん」
高嶺さんの肩を軽く叩くと、高嶺さんは体をビクつかせ、目をパチパチさせた。
「ご、ごめん。今の悠真君の言葉が衝撃的すぎて気を失ってた」
「……そうか」
「……胡桃ちゃんは悠真君の初恋の人だったんだね」
高嶺さんは寂しげな笑顔になる。自分の好きな人の初恋の人が自分の親友であることに複雑な想いを抱いているのだろう。
高嶺さんはミルクティーを一口飲み、「ふぅ……」と長く息を吐いた。
「中学時代に同じクラスだった年があるんだよね。クラスメイトだったときに好きになったの?」
「……ああ。ちょうど今ぐらいの時期だったかな。初めて席替えをしたら、華頂さんと隣同士の席になったんだ。温厚な性格の華頂さんは、当時の俺にもたまに話しかけてくれたんだ。優しい子だなって思った」
だから、昨日……華頂さんの隣で団子を丸くする作業をしているとき、中学生の頃のことをたまに思い出したのだ。
「そういった日々を積み重ねて、胡桃ちゃんに惹かれていったの?」
「……今振り返ると、それは恋する下地のようなものだと思う。きっかけはささいなことだった。俺が授業中に消しゴムを落としたんだ。華頂さんの方に転がっていったから、華頂さんが消しゴムを拾って渡してくれたんだよ。すぐ近くで見た華頂さんの笑顔と、消しゴムを渡されたときに触れた手の温もりにキュンときた。それをきっかけに、単なるクラスメイトから好きな人に変わったんだ。それが初恋の瞬間だった」
あのときの華頂さんの笑顔は今でも鮮明に覚えている。本当に可愛くて。思い出したら、少し体が温かくなった。
華頂さんに恋をしてからは特に、学校に行くのが楽しみだった。挨拶をするだけの日もあったけど、華頂さんの隣の席で学校生活を送ることが幸せに思えたのだ。
「……なるほどね。悠真君と胡桃ちゃんらしいエピソードだなって思う。キューピットの矢ならぬ、キューピットの消しゴムか……」
高嶺さんは感心している様子だった。初恋の人が華頂さんだからか、今の話をしても高嶺さんは不快な表情を見せない。あと、キューピットの矢が消しゴムに変わると急に庶民的な雰囲気になるな。
「気になることがあるの。初恋の人『だった』っていう言い方。ただ、胡桃ちゃんから付き合っている人がいるとか、誰かと付き合ったことがあるって話を聞いたことがないな。悠真君は胡桃ちゃんに好きだって告白したの?」
「……好きだって気持ちを伝えたことはある。でも、そのきっかけは華頂さんが俺に好きだって言ってきたからだったんだ」
「えええっ!」
高嶺さんは今までの中で一番と言っていいほどの大きな声で驚いた。
「胡桃ちゃんが先に好きだって言ったの? じゃあ、両想いじゃない!」
「……そう思うだろ?」
「もちろんだよ! ということは、2人は付き合ったんだよね。……いや、でもそれなら胡桃ちゃんを『元カノ』って言うか。どうして『初恋の人だった』って言うの?」
高嶺さんは腕を組みながら悩み始めた様子だ。
俺は華頂さんに恋をしていた。
俺が告白する前に、華頂さんから俺に好きだと言ってきた。
でも、そんな華頂さんのことを俺は高嶺さんに『初恋の人だった』と言う理由。それは、
「……華頂さんからの告白は嘘だったんだ」
俺がそう言った瞬間、高嶺さんの顔から表情が消えていき、まん丸くさせた目で俺のことを見る。
「ど、どうして? どうして、胡桃ちゃんが悠真君に嘘の告白なんて……」
「俺を笑いものにするために、あるクラスメイトが華頂さんに嘘の告白をしろって命令したからだよ」
「そのクラスメイトって?」
「……将野美玲だ」
「将野美玲……あっ、土曜日にムーンバックスで悠真君と千佳先輩に絡んでいたゲス女! 彼女が黒幕だったんだね!」
土曜日のことを思い出しているのか、高嶺さんはかなり怒った表情に。とても恐い。あのとき、将野さんは高嶺さんに色々言っていたからな。
「前にも話したけど、将野さんはクラス内のカーストトップだった。将野さんがリーダーのグループに、華頂さんが入っていたんだよ。4月中にはもうグループができていたな。華頂さんも当時から人気のある生徒だったけど、将野さんの方がカーストは上だった」
「お山の大将気取りだったんだね。そういえば、土曜日にも女子を何人か引き連れていたよね」
本人を目の前にしているわけじゃないのに、高嶺さんの言葉選びが鋭い。相当嫌っていると伺える。
「席が隣になるまで、華頂さんとは何度か挨拶をした程度だった。ただ、隣同士の席になってから、華頂さんとの関わりが増えて、俺は恋をした。きっと、将野さんは俺の様子を見てそれに気付いたんだと思う」
「だから、あのゲス女は胡桃ちゃんに……」
「多分な。華頂さんと隣同士になってから1ヶ月くらいか。6月の半ばだったと思う。放課後、華頂さんに体育館裏に呼び出された俺は、華頂さんから好きだと言われ、付き合ってほしいと言われた。俺は嬉しくて『俺も華頂さんが好きだ。恋人としてよろしく』ってその場で返事をした。……そのときは本当に嬉しかった。初恋の人から告白されて、その人と恋人になることができたんだから。本当に幸せだった」
好きだって言ってくれたときや、俺が恋人としてよろしくって返事したときの華頂さんの笑顔は可愛らしくて。華頂さんを好きになって本当に良かったと思ったほどだった。
「でも、嘘だったんだよね。その告白自体が」
「……ああ。束の間ってこういうことを言うのかなって思ったよ。翌日、学校に登校すると、華頂さんに好きだと言われたときの会話が流されていたんだ。それで、将野さんが言ったんだよ。『胡桃が低田を好きで、付き合うのは全てあたしの仕組んだ嘘。付き合えるわけがないって。恋された胡桃がかわいそう』ってね。カーストトップの将野さんの言葉に乗っかって、クラスメイトのほとんどが俺を嘲笑った」
「そんな……。そのとき、胡桃ちゃんは?」
「……華頂さんは笑わなかった。むしろ、申し訳なさそうで。そんな華頂さんに、『将野さんの言う通り、俺が好きなことも付き合うことも嘘なのか』って訊いた。華頂さんは頷いて、小さい声で『ごめん』って言ったんだ。その瞬間に俺の初恋は終わった」
だから、さっき華頂さんがイケメン男子に『ごめんなさい』って言ったときに、胸が凄く締め付けられたのだ。2年前のあのときと重なる部分があったから。
「俺にとって、あの出来事はとてもショックだった。気持ちが凄く沈んで、絶望すら感じたほどで。1学期の間は、毎日学校に行くので精一杯だったな」
その影響は低変人の活動にも影響した。ギターを弾いても楽しくないし、曲も思い浮かばなかった。だから、活動休止を発表したんだ。当時は休止期間を明記しなかったけど、実際には再開するまで3ヶ月近くかかった。
「昇降口で告白される胡桃ちゃんを見たとき、悠真君が切ない表情を浮かべていたのは、今話してくれた出来事があったからだったんだね。あと、私が告白したときに、これがドッキリじゃないかって言ったことや、悠真君に恋をした私を馬鹿にした高橋君にあんなに怒ったのも……」
「……ああ。高嶺さんは凄く人気だから、2年前と同じような目に遭うんじゃないかと思ってさ。それで、高橋については、誰かを好きになったのを嘲笑っていたのが許せなかった。将野さんに重なる部分もあって。それに、高嶺さんが俺に抱いた恋心は初恋だって知っていたから。だから、余計に許せなかったんだ」
誰かを好きになった気持ちを、第三者に嘲笑われることの苦しさや切なさ、惨めさとかを身を持って知っているから。高嶺さんに同じような気持ちを味わわせたくなかったから。
高嶺さんは優しい笑みを浮かべながら、俺の頭を撫でてきた。
「辛い想いをしたんだね、悠真君」
その優しい声と、頭から伝わる温もりが体の中に染み渡っていく気がして。高嶺さんに優しく包まれて、守ってくれている感じがして。頬に何かが伝っている感覚を覚えた。
「……あれが初恋だったから。華頂さんが本気で好きだったから凄く辛かった。華頂さんはごめんって言ってくれた。それまでの時間も楽しかったから、華頂さんのことは憎んでない。だけど、今でも華頂さんを見ると切なくなったり、胸が苦しくなったりするときがあるよ」
それが表情や態度などに表れていたのかもしれない。華頂さんもきっと、俺と接することの気まずさや戸惑いを感じる場面があったと思う。そんな俺達を見て、高嶺さんは俺達の間に距離があると感じたんじゃないだろうか。
高嶺さんは俺をそっと抱きしめてくる。
「今は私もいるから。遠慮なく私に甘えたり、頼ってくれたりしていいからね」
高嶺さんのその言葉がとても温かく響いた。
当時のクラスに……せめて、同じ学校に高嶺さんがいたら、何かが変わっていたのだろうか。そう思えるほどに高嶺さんの存在は心強く思えるのだ。
「……高嶺さん。しばらくの間、高嶺さんを抱かせてほしい」
俺がそう言うと、高嶺さんは頬を紅潮させながら俺を見つめてくる。ほえっ、と甘い声を漏らしていて可愛らしい。
「……うん。いいよ」
「……ありがとう」
俺はベッドを背にして座り、高嶺さんのことを抱きしめる。高嶺さんの温もりや匂い、柔らかさが今の俺にとってはとても癒やしになるのであった。
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