高嶺の花の高嶺さんに好かれまして。

桜庭かなめ

文字の大きさ
116 / 279
特別編6

第10話『久しぶりの夜-前編-』

しおりを挟む
 午後5時過ぎに福王寺先生の誕生日パーティーが終了した。
 今夜は結衣が俺の家に泊まりに来るため、俺は結衣と一緒に一旦、結衣の家へ。
 御両親と、女子テニス部の練習から帰ってきていた妹の柚月ゆづきちゃんに挨拶をし、福王寺先生の誕生日パーティーの様子を軽く話した。
 話の中で、タルト作りの基本は小さい頃に結衣が裕子さんから教わったのだと分かった。チョコレートタルトは、結衣が自分でネットや本でレシピを調べて練習したそうだ。それでも、娘の作ったタルトを担任が美味しく食べたことを知った裕子さんはとても嬉しそうにしていた。
 タルトにまつわる聞き、結衣の作ったタルトをまた食べたいと強く思った。


 結衣の荷物を持って、結衣と一緒に自宅に帰ると、既に芹花姉さんがバイトから帰ってきていた。
 芹花姉さんが上機嫌だったので理由を聞いてみると、福王寺先生から誕生日プレゼントのお礼のメッセージをもらったのだそうだ。結衣と俺で、プレゼントを渡した際に先生がとても興奮していたことを伝えると、姉さんは嬉しそうに、そして楽しそうに笑っていた。



「お風呂気持ち良かったね、悠真君」
「そうだな。7月になったけど、まだ温かいお湯が気持ちいいな」
「うんっ」

 夕食後。
 以前、結衣が泊まりに来たときと同じように、俺は結衣と一緒に一番風呂に入った。もちろん、今回も互いの髪と背中を洗って。
 この前は初めて一緒に入浴する緊張も結構あったけど、今回はとてもリラックスした状態で入浴できた。結衣も俺が洗っているときや、一緒に湯船に浸かっているとき中心に気持ち良さそうにしていた。

「悠真君。約束通り、昨日買った下着を持ってきたよ」

 目の前に、昨日購入した黒い下着を身につけた結衣が立っている。昨日、写真を見たときにも思ったけど、艶やかな雰囲気でとても似合っていると思う。思わず「おおっ……」と声を漏らしてしまった。

「凄く似合ってる。写真で見るより何倍もいいな」
「ありがとう、悠真君」

 嬉しそうに言うと、結衣は俺をぎゅっと抱きしめてきた。俺も下着しか穿いていないし、お風呂上がりだからか、普段よりも結衣の温かさや柔らかさ、ボディーソープやシャンプーの甘い匂いを強く感じる。

「抱きしめてくれるのは嬉しいけど、これじゃ結衣の下着姿が見えないよ」
「あははっ、そうだね。似合っているって言われたのが嬉しくて、つい抱きしめちゃった」

 そう言いながらも、結衣は俺への抱擁をさらに強くさせる。これじゃ、より結衣の下着姿が見えなくなるけど、結衣に抱きしめられるのは好きだからいいか。そう思いながら、両手を結衣の背中へ回した。



 俺の部屋に戻ると、結衣は化粧水や乳液を使ってスキンケアを行なう。
 その後にドライヤーを使い、お互いの髪を乾かしていく。結衣の髪を乾かし終わり、俺の髪を結衣に乾かしてもらっているときだった。

「いたたっ……」

 結衣のそんな声が聞こえたので振り返ると、結衣がいつになく表情を歪めている。

「どうしたんだ?」
「両肩が痛くて。試験勉強をして、昨日と今日はチョコレートタルト作りをしていたから、肩が凝っちゃったのかなぁ。ストレッチを習慣にしているんだけど」
「そうなのか。疲れが溜まったのかもしれないな。じゃあ、俺が結衣の肩をマッサージするよ。あと、肩が痛いなら、俺が自分で髪を乾かすよ」
「ううん、あとちょっとで終わるからやらせて。それに悠真君の金髪は凄く好きだし」

 えへへっ……と結衣は厭らしさも感じられる声で笑う。

「じゃあ、お願いするよ。でも、無理はするなよ」
「了解です!」

 敬礼してくる結衣が可愛らしい。以前、俺の髪は綺麗でサラサラしているから好きだと言ってくれたし、あと少しで終わるならこのまま任せよう。
 結衣は部活動が禁止となる先週から試験勉強を頑張っていた。俺、胡桃、伊集院さん、中野先輩と一緒に勉強するときは、分からないところを教えることが何度もあって。本人の気づかない間に、体に疲労が蓄積されていったのかもしれない。
 それから1、2分ほどで俺の髪を乾かし終わった。なので、俺は結衣の肩をマッサージすることに。

「じゃあ、肩揉むぞ」
「お願いします」

 どのくらい肩が凝っているのか未知数なので、まずは優しめに揉み始める。

「んっ……」

 肩揉みが気持ちいいのか、結衣はさっそく甘い声を漏らす。そんな反応が可愛くて、髪からシャンプーの甘い匂いが香ってくるのでドキドキしてくる。後ろから抱きしめたくなるほどに。そんな欲望を抑えて、俺は肩を揉み続ける。

「痛いって言っていただけあって、肩凝ってるな」

 芹花姉さんや母さんに比べればひどくないけど。普段は肩があまり凝らない体質だと、この程度の凝りでも辛いかもしれない。

「やっぱり凝ってるか。悠真君の揉み方が上手だから、凄く気持ちいいよ。進路希望調査のプリントに『マッサージ店に就職』って書き直したらいいんじゃない? 就職したら、私も定期的に行くし、お母さんや胡桃ちゃんにも紹介するよ」
「ははっ。そこまで言ってくれるのは嬉しいけど、俺は身近な人のマッサージができればいいさ」
「そっか。何だか悠真君らしいな」

 ふふっ、と結衣は上品に笑う。
 もし、結衣がマッサージ店に就職したら……きっと活躍しそうだな。肩を揉むのが凄く上手だし。リピーターが続々できそうだ。自分でお店を開いてもやっていけそう。

「話は変わるけど、今日の杏樹先生の誕生日パーティー楽しかったね」
「楽しかったな。福王寺先生も楽しんでくれて良かったよ」
「そうだねっ! 私の作ったチョコレートタルトも美味しそうに食べてくれたし。先生にとっていい誕生日になっていたら嬉しいな」
「なっているさ」

 パーティー中、福王寺先生はずっと笑顔を浮かべていたし。特にみんなからプレゼントをもらったときはとても嬉しそうだった。俺のプレゼントした猫のぬいぐるみも喜んでくれて安心したよ。

「半年後に迫る私の誕生日が楽しみになってきたよ!」
「半年後って……迫っているのか?」
「15歳の誕生日よりも16歳の誕生日の方が近いからね!」
「……なるほど」

 それなら、迫っていると言っても間違いでは……ないのかな? 俺の感覚では1ヶ月前くらいから使うけど。
 ちなみに、結衣の誕生日は1月1日。新年と共に新しい年齢を迎えるので、何ともめでたい日に生まれたなぁと思う。

「結衣はどんなものがほしい? 参考したい。もちろん、低変人としては新曲をプレゼントするつもりだけど」
「そうだね……迷っちゃうな。よほど変なものじゃない限り、悠真君がくれるものなら何でも嬉しいって思えそうだし」
「結衣らしいな」

 プレゼントをもらったときの結衣の笑顔が思い浮かぶ。

「ふふっ。1月1日が誕生日だから、私専用の手作りおせちとか、お年玉も兼ねて現金もいいかもしれない」
「手作りおせちはまだしも、現金って味気なくないか?」
「……確かに。色々なものを買えるけど、プレゼントとしては寂しいかも」
「じゃあ、プレゼントは現金以外にする」
「うん! 楽しみにしてるね」

 誕生日の1週間前にはクリスマスもある。早いうちから、結衣にあげるプレゼントを考えていくか。
 福王寺先生の誕生日パーティーのことや、およそ半年後の結衣の誕生日について話していたからか、気づけば結衣の肩がだいぶほぐれていた。

「結衣。結構ほぐれたと思うけど」
「どれどれ……」

 俺が手を離すと、結衣は両肩をゆっくりと回す。

「うん! 肩が軽くなったよ」
「それは良かった」
「……肩揉みが気持ち良かったから、次は胸をマッサージしてほしい気分だよ」

 普段よりも小さめの声でそう言うと、結衣はこちらに振り返ってくる。結衣の笑顔はとても艶やかで。

「……それは後にしよう。今、そんなことをしたら、気持ちが高ぶって、時間を忘れて結衣と色々なことをしちゃいそうだし。それに、『鬼刈剣』を芹花姉さんと3人でリアルタイムに観る約束をしているだろう?」
「そうだね。私も……胸をマッサージされたら、きっと悠真君に色々と求めて……最後までしちゃうと思うから」
「そうか。……期末試験も終わったんだし、『鬼刈剣』が始まるまでアニメを観まくるか」
「いいね! そうしよう!」

 それから、『鬼刈剣』が始まるまでは、結衣も俺も大好きな美少女日常アニメのBlu-rayを観た。そのときはもちろん結衣と隣り合って。
 たまに、俺の前に座る結衣を後ろから抱きしめることも。そのときはアニメよりも結衣の方に集中してしまった。
 家族に迷惑がかからない程度に、結衣と一緒に笑いまくる。
 期末試験から解放されたり、久しぶりに俺の家に泊まったりする嬉しさからか、結衣はとても楽しそうに笑っていた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。  とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。  ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。  お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!  ※特別編3が完結しました!(2025.12.18)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編6が完結しました!(2025.11.25)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました

藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。 次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。

ルピナス

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の藍沢直人は後輩の宮原彩花と一緒に、学校の寮の2人部屋で暮らしている。彩花にとって直人は不良達から救ってくれた大好きな先輩。しかし、直人にとって彩花は不良達から救ったことを機に一緒に住んでいる後輩の女の子。直人が一定の距離を保とうとすることに耐えられなくなった彩花は、ある日の夜、手錠を使って直人を束縛しようとする。  そして、直人のクラスメイトである吉岡渚からの告白をきっかけに直人、彩花、渚の恋物語が激しく動き始める。  物語の鍵は、人の心とルピナスの花。たくさんの人達の気持ちが温かく、甘く、そして切なく交錯する青春ラブストーリーシリーズ。 ※特別編-入れ替わりの夏-は『ハナノカオリ』のキャラクターが登場しています。  ※1日3話ずつ更新する予定です。

恋人、はじめました。

桜庭かなめ
恋愛
 紙透明斗のクラスには、青山氷織という女子生徒がいる。才色兼備な氷織は男子中心にたくさん告白されているが、全て断っている。クールで笑顔を全然見せないことや銀髪であること。「氷織」という名前から『絶対零嬢』と呼ぶ人も。  明斗は半年ほど前に一目惚れしてから、氷織に恋心を抱き続けている。しかし、フラれるかもしれないと恐れ、告白できずにいた。  ある春の日の放課後。ゴミを散らしてしまう氷織を見つけ、明斗は彼女のことを助ける。その際、明斗は勇気を出して氷織に告白する。 「これまでの告白とは違い、胸がほんのり温かくなりました。好意からかは分かりませんが。断る気にはなれません」 「……それなら、俺とお試しで付き合ってみるのはどうだろう?」  明斗からのそんな提案を氷織が受け入れ、2人のお試しの恋人関係が始まった。  一緒にお昼ご飯を食べたり、放課後デートしたり、氷織が明斗のバイト先に来たり、お互いの家に行ったり。そんな日々を重ねるうちに、距離が縮み、氷織の表情も少しずつ豊かになっていく。告白、そして、お試しの恋人関係から始まる甘くて爽やかな学園青春ラブコメディ!  ※夏休み小話編2が完結しました!(2025.10.16)  ※小説家になろう(N6867GW)、カクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想などお待ちしています。

処理中です...