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夏休み編
第2話『カラオケ』
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ドニーズで昼食を食べた俺達は、北口にあるチェーンのカラオケ店に向かう。
相変わらず雨がシトシトと降っているなぁ。午後0時半という時間もあって、ドニーズに行ったときよりも蒸し暑い。ドニーズからカラオケ店まで近いのが幸いだ。
カラオケ店に入ると、学生服を着た人達がちらほらいる。俺達のように、1学期最後だからみんなで遊びに来たのかな。
カラオケに何度も来たことがある胡桃が受付をしてくれる。午後6時までのドリンクバー付きのフリータイムで、カラオケの機種は幅広いジャンルの曲が収録されているものを選択した。
ドリンクコーナーでグラスにドリンクを注ぎ、俺達は指定された部屋・205号室へ向かう。
「205号室……ここですね」
胡桃は205号室の扉を開ける。
5人で利用するからか、結構広い部屋を用意してくれたな。涼しいし、ソファーもふかふかしていそうだし、ここなら午後6時までの数時間を快適に過ごせそうだ。
「こういう個室に入ると……ドキドキしちゃうね、悠真君」
頬をほんのりと赤くし、俺を見つめながら言う結衣。今は胡桃達も一緒だからドキドキはしないけど、2人きりだったらドキドキしていたかも。あと、結衣はここで俺に何かするつもりなのだろうか。
部屋の中はテーブルを挟んで両側の壁にソファーがある形。なので、とりあえずはドニーズと同じ形で座ることに。
「カラオケに来るのは何年ぶりだろうなぁ。中学以降は一度も行っていないから……少なくとも3年は経っているか」
「そうなんだね。音楽の授業で歌うときとか、前に部屋で弾き語りしたときは上手だったから意外だな」
「そうか。久しぶりで緊張しているから、まずはみんなの歌を聞きたいな」
あと、今までカラオケは家族や親戚としか行ったことがなく、恋人や友人と行くのは今日が初めて。正直、それも緊張している理由の一つになっている。
「ふふっ、悠真君ったら可愛い」
楽しげに言い、結衣は俺の右太ももを優しくさすってくる。段々とドキドキしてきたぞ。
「じゃあ、とりあえずは私達が歌いましょうか」
「それがいいね、結衣ちゃん」
「あたしの友達にも、聞く方が好きな子がいるからね。歌いたくなったら曲を入れればいいんだよ、悠真」
「それがいいのです、低田君」
「ありがとうございます」
みんな優しいな。ただ、みんなが少なくとも1曲ずつ歌ってから、俺は曲を入れるつもりだ。中野先輩の歌声は聞いたことがないので興味がある。それに、音楽の授業とかで結衣の綺麗な歌声と、伊集院さんの可愛らしい歌声、胡桃の優しい歌声を知っているから。
「……あたし、ニジイロキラリの曲を歌おうかと思っているのです」
「いいね。私もそうしようかな」
伊集院さんが言うニジイロキラリとは、7人組の女性アイドルグループ。伊集院さんと結衣が物販バイトするコンサートは、このグループのコンサートのことだ。ニジイロキラリはここ2、3年人気が拡大し続けている、今、最も勢いのあるグループの1つである。俺もアニメタイアップ曲を中心に、何曲か知っている。
物販バイトという形ではあるけど、コンサートには関わる。だから、ニジイロキラリの曲を予習しようという考えなのかも。
2人が悩んでいる間に、胡桃、中野先輩の順番でそれぞれ曲を入れた。
「まずはあたしですね」
トップバッターは胡桃。胡桃はマイクを持つとソファーから立ち上がり、モニターの近くに立つ。
胡桃が歌うのは、現在放送されている朝ドラの主題歌。男性ロックバンドの曲だけど、ボーカルの声が透き通っているので、女性にも歌いやすいと思う。この曲は優しく爽やかな雰囲気だから、胡桃の優しい歌声がよく合っている。微笑みながら歌う胡桃が可愛らしい。聴覚だけでなく視覚でも癒されるなぁ。
歌う曲が決まっている中野先輩はもちろんのこと、まだ決めていない結衣と伊集院さんも胡桃の歌声に聴き入っているように見えた。
「……あぁ、気持ちよかった」
「華頂ちゃん上手だね! 凄く癒されたよ」
「俺も癒されたよ。中学時代の音楽の授業を思い出した」
「やっぱり、胡桃ちゃんは上手だね。虜になる歌声だよ」
「癒されるのです」
「ふふっ、ありがとう」
胡桃はとても嬉しそうだ。
ただ、今の結衣と伊集院さんの反応が気になったので、それについて訊いてみる。3人の話によると、4月にスイーツ部の1年生部員みんなで、このカラオケに来たことがあるとのこと。
それから程なくして、中野先輩が歌唱予約した曲のイントロが流れる。先輩は胡桃からマイクを受け取り、モニターの側に立った。
先輩が歌うのは、3年ほど前に大ヒットしたアニメ映画の主題歌。アップテンポの曲なのもあって、中野先輩は元気いっぱいに歌っている。サビの歌詞が印象的で、その部分はみんなで歌った。
「いやぁ、歌うのって楽しいね! みんなもサビで歌ってくれてありがとね」
「聞くのもいいですけど、一緒に歌うのも楽しいですね」
「そうだね、胡桃」
「あたし、歌うのが決まったのです」
「私も。姫奈ちゃんの次に歌うよ」
おっ、伊集院さんと結衣が歌う曲が決まったのか。2人がカラオケリモコンで歌唱の予約を入れると、明るい雰囲気のイントロが流れてきた。
伊集院さんが歌うのは、ニジイロキラリの代表曲のポップソング。伊集院さんの可愛らしい歌声によく合っている。
あと、Blu-rayや動画サイトで、ミュージックビデオやライブ映像を観たのだろうか。1番のサビから手振り中心に、伊集院さんは歌いながら踊っていた。楽しそうに歌うのでアイドルって感じがした。
「楽しく歌えたのです」
「姫奈ちゃん、可愛かったよ! 途中から踊り出したから、あたし驚いちゃった」
「この曲結構好きで、Blu-rayやYuTubuでMVとかライブ映像をたくさん観たのです。それで振り付けを覚えたのですよ」
「可愛い歌声だし、本物のアイドルって感じがしたよ、伊集院ちゃん」
「それは俺も思いましたね」
「中学時代から、姫奈ちゃんはニジイロキラリの曲を結構聴いているからね。可愛かったよ」
「ありがとう」
伊集院さんは可愛らしい笑顔でお礼を言った。
もしかしたら、ニジイロキラリのコンサート物販バイトに応募したのは、伊集院さんがニジイロキラリを結構好きだからかもしれない。
やがて、メロウな雰囲気のイントロが流れてくる。結衣は伊集院さんからマイクを受け取り、モニターの近くへ。
結衣が歌うのは、ニジイロキラリの人気曲のラブソング。アニメタイアップ曲なのでよく知っている。ミディアムテンポの曲なので、結衣の伸びやかで美しい歌声が映える。
また、手を振ったり、みんなに向かって投げキッスしたりするなど、本物のアイドルさながらのパフォーマンス。可愛らしい笑顔で歌っているし、実は現役か元アイドルじゃないんですか?
あと、この曲の売りはヤンデレな印象を与える女性目線の歌詞。それもあってか、結衣は2番を歌った後は、俺の目の前に立って、俺を見続けながら歌っていた。最初こそはいい意味でドキドキしたけど、歌詞の内容もあって、最後は恐怖のドキドキに変わったよ。
歌い終わった結衣はとても満足げな様子。
「あぁ、ラストは悠真君を見続けたからドキドキしちゃった!」
「……俺も色々な意味でドキドキしたよ」
「ゆう君への想いの強さが伝わったよ。歌詞の内容も凄かったし、終盤はゆう君のことをずっと見続けていたから」
「歌詞の内容を知っていたので、結衣なら低田君を見つめると思ったのです」
「高嶺ちゃんらしいよね」
胡桃達から好意的な感想が出てくるってことは、この曲の世界観と結衣が合っていたってことか。結衣の俺への想いの強さは凄まじいからな。……この曲の歌詞のように、結衣に閉じ込められちゃわないように気をつけよう。
「さてと。これで女性陣4人は1曲ずつ歌ったね。悠真君は歌う勇気出てきた?」
「……うん。みんなの歌を聞いたり、中野先輩の曲のサビを一緒に歌ったりしたら、俺も歌いたくなってきた」
「おおっ! じゃあ、次は悠真君が歌おう!」
「うん。初めて結衣が家に遊びに来たときに、弾き語りで歌った曲を歌うよ」
それなら、他の曲よりも緊張せずに歌えそうだから。
俺はカラオケリモコンで歌唱予約して、結衣からマイクを受け取る。
俺の歌う曲は亡くなった人に向けたミディアムナンバー。この曲を歌うと、結衣に弾き語りした日のことを思い出す。その日は休日で、起きたら結衣が笑顔を浮かべて俺を見ていたな。今ならそれでもキュンとするだろうけど、当時は約束せずに突然来たことにちょっと怒りを覚えたっけ。
2ヶ月ほど前のことを懐古しながら歌ったら、あっという間に曲が終わってしまった。
俺が歌い終わると、結衣達は「おおっ」と拍手をする。
「悠真、かなり上手じゃない!」
「ですよね! あたしも中学時代の音楽の授業を思い出したよ」
「気持ちがこもった歌唱だったのです。結衣に弾き語りしたときのことを思い出したのでしょうかね」
「その通りだよ、伊集院さん」
「私も悠真君が歌っている間はそのときのことを思い出していたよ。あのときは、悠真君と関わり始めてから日が浅かったからね。それから2ヶ月あまり。悠真君と恋人になって、色んなことをする関係になれて。当時の私に伝えてあげたいな」
感極まったのか、結衣は両目に涙を浮かべる。
弾き語りした頃の自分に、今の結衣との関係を話したら……信じてもらえるかなぁ。何があったんだと問い詰められるかもしれない。
自分の座っていた場所に戻り、ドリンクバーで注いだアイスコーヒーを飲む。熱唱した後だからとても美味しく感じられる。
「ねえ、悠真君。何かの曲で私とデュエットしない?」
「ああ、いいぞ。一度歌ったら緊張がなくなったし」
「それは良かった。時間はたっぷりあるし、みんなでたくさん歌いましょう!」
『おー!』
結衣の言葉に胡桃、伊集院さん、中野先輩は元気良く返事した。
それからは結衣達と一緒にデュエットや合唱をしたり、マイクを回して1フレーズずつ歌ったり、点数対決をしてみんなで食べるポテトの代金を出す人を決めたりするなど、フリータイムが終わる午後6時まで楽しいカラオケの時間を過ごした。
結衣達のおかげで、1学期最後の日はとても楽しく終わることができた。
相変わらず雨がシトシトと降っているなぁ。午後0時半という時間もあって、ドニーズに行ったときよりも蒸し暑い。ドニーズからカラオケ店まで近いのが幸いだ。
カラオケ店に入ると、学生服を着た人達がちらほらいる。俺達のように、1学期最後だからみんなで遊びに来たのかな。
カラオケに何度も来たことがある胡桃が受付をしてくれる。午後6時までのドリンクバー付きのフリータイムで、カラオケの機種は幅広いジャンルの曲が収録されているものを選択した。
ドリンクコーナーでグラスにドリンクを注ぎ、俺達は指定された部屋・205号室へ向かう。
「205号室……ここですね」
胡桃は205号室の扉を開ける。
5人で利用するからか、結構広い部屋を用意してくれたな。涼しいし、ソファーもふかふかしていそうだし、ここなら午後6時までの数時間を快適に過ごせそうだ。
「こういう個室に入ると……ドキドキしちゃうね、悠真君」
頬をほんのりと赤くし、俺を見つめながら言う結衣。今は胡桃達も一緒だからドキドキはしないけど、2人きりだったらドキドキしていたかも。あと、結衣はここで俺に何かするつもりなのだろうか。
部屋の中はテーブルを挟んで両側の壁にソファーがある形。なので、とりあえずはドニーズと同じ形で座ることに。
「カラオケに来るのは何年ぶりだろうなぁ。中学以降は一度も行っていないから……少なくとも3年は経っているか」
「そうなんだね。音楽の授業で歌うときとか、前に部屋で弾き語りしたときは上手だったから意外だな」
「そうか。久しぶりで緊張しているから、まずはみんなの歌を聞きたいな」
あと、今までカラオケは家族や親戚としか行ったことがなく、恋人や友人と行くのは今日が初めて。正直、それも緊張している理由の一つになっている。
「ふふっ、悠真君ったら可愛い」
楽しげに言い、結衣は俺の右太ももを優しくさすってくる。段々とドキドキしてきたぞ。
「じゃあ、とりあえずは私達が歌いましょうか」
「それがいいね、結衣ちゃん」
「あたしの友達にも、聞く方が好きな子がいるからね。歌いたくなったら曲を入れればいいんだよ、悠真」
「それがいいのです、低田君」
「ありがとうございます」
みんな優しいな。ただ、みんなが少なくとも1曲ずつ歌ってから、俺は曲を入れるつもりだ。中野先輩の歌声は聞いたことがないので興味がある。それに、音楽の授業とかで結衣の綺麗な歌声と、伊集院さんの可愛らしい歌声、胡桃の優しい歌声を知っているから。
「……あたし、ニジイロキラリの曲を歌おうかと思っているのです」
「いいね。私もそうしようかな」
伊集院さんが言うニジイロキラリとは、7人組の女性アイドルグループ。伊集院さんと結衣が物販バイトするコンサートは、このグループのコンサートのことだ。ニジイロキラリはここ2、3年人気が拡大し続けている、今、最も勢いのあるグループの1つである。俺もアニメタイアップ曲を中心に、何曲か知っている。
物販バイトという形ではあるけど、コンサートには関わる。だから、ニジイロキラリの曲を予習しようという考えなのかも。
2人が悩んでいる間に、胡桃、中野先輩の順番でそれぞれ曲を入れた。
「まずはあたしですね」
トップバッターは胡桃。胡桃はマイクを持つとソファーから立ち上がり、モニターの近くに立つ。
胡桃が歌うのは、現在放送されている朝ドラの主題歌。男性ロックバンドの曲だけど、ボーカルの声が透き通っているので、女性にも歌いやすいと思う。この曲は優しく爽やかな雰囲気だから、胡桃の優しい歌声がよく合っている。微笑みながら歌う胡桃が可愛らしい。聴覚だけでなく視覚でも癒されるなぁ。
歌う曲が決まっている中野先輩はもちろんのこと、まだ決めていない結衣と伊集院さんも胡桃の歌声に聴き入っているように見えた。
「……あぁ、気持ちよかった」
「華頂ちゃん上手だね! 凄く癒されたよ」
「俺も癒されたよ。中学時代の音楽の授業を思い出した」
「やっぱり、胡桃ちゃんは上手だね。虜になる歌声だよ」
「癒されるのです」
「ふふっ、ありがとう」
胡桃はとても嬉しそうだ。
ただ、今の結衣と伊集院さんの反応が気になったので、それについて訊いてみる。3人の話によると、4月にスイーツ部の1年生部員みんなで、このカラオケに来たことがあるとのこと。
それから程なくして、中野先輩が歌唱予約した曲のイントロが流れる。先輩は胡桃からマイクを受け取り、モニターの側に立った。
先輩が歌うのは、3年ほど前に大ヒットしたアニメ映画の主題歌。アップテンポの曲なのもあって、中野先輩は元気いっぱいに歌っている。サビの歌詞が印象的で、その部分はみんなで歌った。
「いやぁ、歌うのって楽しいね! みんなもサビで歌ってくれてありがとね」
「聞くのもいいですけど、一緒に歌うのも楽しいですね」
「そうだね、胡桃」
「あたし、歌うのが決まったのです」
「私も。姫奈ちゃんの次に歌うよ」
おっ、伊集院さんと結衣が歌う曲が決まったのか。2人がカラオケリモコンで歌唱の予約を入れると、明るい雰囲気のイントロが流れてきた。
伊集院さんが歌うのは、ニジイロキラリの代表曲のポップソング。伊集院さんの可愛らしい歌声によく合っている。
あと、Blu-rayや動画サイトで、ミュージックビデオやライブ映像を観たのだろうか。1番のサビから手振り中心に、伊集院さんは歌いながら踊っていた。楽しそうに歌うのでアイドルって感じがした。
「楽しく歌えたのです」
「姫奈ちゃん、可愛かったよ! 途中から踊り出したから、あたし驚いちゃった」
「この曲結構好きで、Blu-rayやYuTubuでMVとかライブ映像をたくさん観たのです。それで振り付けを覚えたのですよ」
「可愛い歌声だし、本物のアイドルって感じがしたよ、伊集院ちゃん」
「それは俺も思いましたね」
「中学時代から、姫奈ちゃんはニジイロキラリの曲を結構聴いているからね。可愛かったよ」
「ありがとう」
伊集院さんは可愛らしい笑顔でお礼を言った。
もしかしたら、ニジイロキラリのコンサート物販バイトに応募したのは、伊集院さんがニジイロキラリを結構好きだからかもしれない。
やがて、メロウな雰囲気のイントロが流れてくる。結衣は伊集院さんからマイクを受け取り、モニターの近くへ。
結衣が歌うのは、ニジイロキラリの人気曲のラブソング。アニメタイアップ曲なのでよく知っている。ミディアムテンポの曲なので、結衣の伸びやかで美しい歌声が映える。
また、手を振ったり、みんなに向かって投げキッスしたりするなど、本物のアイドルさながらのパフォーマンス。可愛らしい笑顔で歌っているし、実は現役か元アイドルじゃないんですか?
あと、この曲の売りはヤンデレな印象を与える女性目線の歌詞。それもあってか、結衣は2番を歌った後は、俺の目の前に立って、俺を見続けながら歌っていた。最初こそはいい意味でドキドキしたけど、歌詞の内容もあって、最後は恐怖のドキドキに変わったよ。
歌い終わった結衣はとても満足げな様子。
「あぁ、ラストは悠真君を見続けたからドキドキしちゃった!」
「……俺も色々な意味でドキドキしたよ」
「ゆう君への想いの強さが伝わったよ。歌詞の内容も凄かったし、終盤はゆう君のことをずっと見続けていたから」
「歌詞の内容を知っていたので、結衣なら低田君を見つめると思ったのです」
「高嶺ちゃんらしいよね」
胡桃達から好意的な感想が出てくるってことは、この曲の世界観と結衣が合っていたってことか。結衣の俺への想いの強さは凄まじいからな。……この曲の歌詞のように、結衣に閉じ込められちゃわないように気をつけよう。
「さてと。これで女性陣4人は1曲ずつ歌ったね。悠真君は歌う勇気出てきた?」
「……うん。みんなの歌を聞いたり、中野先輩の曲のサビを一緒に歌ったりしたら、俺も歌いたくなってきた」
「おおっ! じゃあ、次は悠真君が歌おう!」
「うん。初めて結衣が家に遊びに来たときに、弾き語りで歌った曲を歌うよ」
それなら、他の曲よりも緊張せずに歌えそうだから。
俺はカラオケリモコンで歌唱予約して、結衣からマイクを受け取る。
俺の歌う曲は亡くなった人に向けたミディアムナンバー。この曲を歌うと、結衣に弾き語りした日のことを思い出す。その日は休日で、起きたら結衣が笑顔を浮かべて俺を見ていたな。今ならそれでもキュンとするだろうけど、当時は約束せずに突然来たことにちょっと怒りを覚えたっけ。
2ヶ月ほど前のことを懐古しながら歌ったら、あっという間に曲が終わってしまった。
俺が歌い終わると、結衣達は「おおっ」と拍手をする。
「悠真、かなり上手じゃない!」
「ですよね! あたしも中学時代の音楽の授業を思い出したよ」
「気持ちがこもった歌唱だったのです。結衣に弾き語りしたときのことを思い出したのでしょうかね」
「その通りだよ、伊集院さん」
「私も悠真君が歌っている間はそのときのことを思い出していたよ。あのときは、悠真君と関わり始めてから日が浅かったからね。それから2ヶ月あまり。悠真君と恋人になって、色んなことをする関係になれて。当時の私に伝えてあげたいな」
感極まったのか、結衣は両目に涙を浮かべる。
弾き語りした頃の自分に、今の結衣との関係を話したら……信じてもらえるかなぁ。何があったんだと問い詰められるかもしれない。
自分の座っていた場所に戻り、ドリンクバーで注いだアイスコーヒーを飲む。熱唱した後だからとても美味しく感じられる。
「ねえ、悠真君。何かの曲で私とデュエットしない?」
「ああ、いいぞ。一度歌ったら緊張がなくなったし」
「それは良かった。時間はたっぷりあるし、みんなでたくさん歌いましょう!」
『おー!』
結衣の言葉に胡桃、伊集院さん、中野先輩は元気良く返事した。
それからは結衣達と一緒にデュエットや合唱をしたり、マイクを回して1フレーズずつ歌ったり、点数対決をしてみんなで食べるポテトの代金を出す人を決めたりするなど、フリータイムが終わる午後6時まで楽しいカラオケの時間を過ごした。
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