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夏休み編
第11話『私に塗って?』
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俺はスリッパからビーチサンダルに履き替え、更衣室の側にある出入口から、俺達は旅館の外へ出る。今は2時半過ぎだけど蒸し暑い。肌に直接日差しが当たっているからかな。胡桃と伊集院さん、芹花姉さん、福王寺先生は水着の上からTシャツやパーカーを着ているけど、それは正解かも。
ちなみに、伊集院さんが着ているのは、ニジイロキラリの物販ブースのバイトの際に着用していたスタッフTシャツだ。もらえたんだな。あれもバイト代だったりして。
潮風見の敷地を出てすぐのところに横断歩道がある。なので、そこを渡って俺達は海水浴場へ向かう。
『おおっ……』
賑わっている海水浴場を目の前にして、全員がそんな声を漏らす。
金曜日だけど、今は夏休みの真っ最中。今日はよく晴れているので、海水浴場には多くの人が遊びに来ている。パッと見た感じ、家族連れやカップル、学生と思われる若年層数人のグループが多い。
海の家などが並ぶ中心部分は、既に多くの人達によって陣取られている。なので、俺達は人がまばらな端の方を陣取ることにした。ここなら落ち着けるし、いい場所だと思う。個人的にはお手洗いが近いのもポイント高い。
ビーチパラソルは低田家と高嶺家から持ってきたので、俺と芹花姉さん、結衣と柚月ちゃんでビーチパラソルを設置する。デザインは違うけど大きさや高さは結構近いので、2つ並べて設置するといい感じの日陰スペースができた。
2つのビーチパラソルによってできた日陰のところに、胡桃と伊集院さん、中野先輩、福王寺先生がレジャーシートを敷いた。結構広々としたスペースになったな。8人全員が座っても大丈夫そうだ。
「完成だね! 悠真君!」
「そうだな。さっそく入ってみるか」
結衣と俺はビーチサンダルを脱いで、低田家のレジャーシートの部分に腰を下ろす。
「日なたで作業していたから、日陰に入るだけで涼しく感じるな」
「風もちょっと吹いているもんね。泳いだり、遊んだりした後はここで休憩すれば大丈夫そうだね」
「ああ」
これからは夕方になって、段々と涼しくなっていくし。
胡桃達もレジャーシートの中に入ってゆったりとしている。福王寺先生に至っては仰向けになってくつろいでいて。途中、休憩を挟んだとはいえ、金井からここまで1人で運転したからな。疲れがあるのかも。
「福王寺先生。運転お疲れ様でした。俺達をここまで連れてきてくれてありがとうございます」
『ありがとうございます』
俺がお礼を言ったからか、結衣達も福王寺先生に対してお礼の言葉を言う。そんな俺達に、先生は落ち着いた笑顔を向ける。
「いえいえ。自然の中で運転できて楽しかったよ。特に海沿いの道の運転は気持ち良かったし。みんながいるから、学生時代の夏休みを思い出したよ。こちらこそありがとう。ちょっと疲れはあるけど、こうして仰向けになって潮風に当たっていればすぐになくなると思うから」
優しい声で福王寺先生はそう言ってくれた。話している中で、先生の笑顔は柔らかなものに変わっていった。本人もこう言っているし、このレジャーシートで休んでいれば疲れは取れそうか。
「ねえ、悠真君」
「うん?」
「……背中に日焼け止め塗ってくれる?」
「ああ、いいよ」
先日のショッピングデートで、結衣は海水浴向けの日焼け止めを買った。そのときから、海に来たら日焼け止めを塗ってほしいと頼まれるだろうと予想していた。
「まあ、悠真君さえよければ、悠真君が出してくれる生温かいものでもいいけど……」
「……それは予想してなかったな。やらないやらない」
うっとりした様子で何を言っているんだか。ただ、よく考えると結衣らしい言葉だ。
結衣は楽しげに笑いながら「分かったよ」と言い、自分のバッグから、先日のデートで購入した日焼け止めを取り出す。
「はい、悠真君」
日焼け止めのボトルを俺に渡すと、結衣はその場でうつぶせの状態になる。水着姿だから、こういう姿勢も凄く艶やかに見えるなぁ。
ボトルの蓋を開けて、左手に日焼け止めを出す。ちょっと冷たい。
「ねえ、ユウちゃん。結衣ちゃんの後に、私の背中も塗ってくれる?」
「分かった」
「ありがとう!」
芹花姉さん、凄く嬉しそうだ。結衣ほどではないけど、姉さんも俺に塗ってくれと頼みそうだと思っていた。
「結衣。背中に塗っていくよ。ちょっと冷たいかもしれない」
「うん! お願いします!」
いいお返事だ。
俺は日焼け止めを乗せた左手を、結衣の背中の中心部分にそっと置く。その瞬間、
「ひゃあっ」
と、結衣は可愛らしい声を漏らし、体をビクつかせた。
「冷たいかもって予告されても、ちょっとビックリしちゃうね」
「今の結衣の反応、可愛かったぞ」
「……もう」
結衣は顔をこちらに向け、頬を少し膨らませる。そんな姿も可愛らしい。
俺は両手を使って、結衣の背中に日焼け止めを塗り始める。
サラッとしている日焼け止めだな。結構塗りやすい。あとは、結衣の肌がスベスベしているのも塗りやすさの一因かもしれない。
結衣の綺麗な背中に触れていると、お風呂に入ったり、ベッドの中でイチャイチャしたりしたときのことを思い出す。
「あぁ、気持ちいい。悠真君、上手だね……」
時折、結衣のそんな甘い声も聞こえ、うっとりした表情でこちらに振り返ってきて。本当に可愛いな。
あぁ、段々と体が熱くなってきた。このままだと、俺……熱中症になってしまうかも。今は結衣や芹花姉さんの日焼け止め塗り師なんだと自己暗示を掛け、クールダウンさせる。あと、日焼け止めを塗る仕事って実際にあるのかね。
「姫奈ちゃん……気持ちいい……」
「柚月ちゃん……テクニシャ~ン……」
「芹花さん……上手ですねぇ……」
近くから、胡桃と福王寺先生と中野先輩のそんな甘い声が聞こえてくる。声がした方を見てみると、胡桃は伊集院さんに、福王寺先生は柚月ちゃん、中野先輩は芹花姉さんにそれぞれ日焼け止めを塗ってもらっている。塗られている3人は気持ちよさそうだ。
結衣と胡桃、福王寺先生、中野先輩の甘い声を聞いていると、何だか集団で厭らしいことをしている感じがする。良かったよ、周りにあまり人がいない端の方に陣取って。
「……よし、背中はこれでOKかな」
「ありがとう、悠真君。……脚やお尻の方も塗ってもらえるともっと嬉しいな」
「分かったよ」
再び左手に日焼け止めを出して、結衣の両脚とお尻に塗っていく。特に太ももの裏とお尻については特に丁寧に塗る。俺の好きな箇所だから。
こうして塗っていると、結衣の脚は細くて、お尻もほどよく引き締まっているな。腰にはちゃんとくびれもあるし。ストレッチが習慣だそうなので、きっとその賜物だろう。
「……よし、脚とお尻も塗ったよ」
「ありがとう、悠真君。あとは自分で塗るね。お姉様に日焼け止めを塗ったら、お礼に悠真君に日焼け止めを塗るからね」
結衣はゆっくりと顔を起こし、俺にキスしてきた。お礼はこのキスで十分だけど、結衣のご厚意を甘えることにしよう。
芹花姉さんの方を見ると、姉さんは中野先輩に日焼け止めを塗るのを終えており、ワクワクした様子でこちらを見ていた。自分の使う日焼け止めのボトルを持っている。
「結衣に塗り終わったから、ここに俯せになって。芹花姉さん」
「はーい。ユウちゃん、この日焼け止めを塗ってくれるかな。結衣ちゃんと同じく、背中から足先まで」
「了解」
俺に日焼け止めを塗られている結衣を羨ましく思い、同じように塗ってもらいたいと思ったのだろう。さすがはブラコン。
芹花姉さんは俺に日焼け止めのボトルを渡し、結衣と同じ場所で俯せになる。
結衣のときと同じく、左手に日焼け止めを出して、背中から塗り始めていく。姉さんの肌もスベスベして塗りやすいな。
「どうだ、芹花姉さん」
「気持ちいいよ。この調子で塗っていって」
「了解」
「お姉様。肌ツヤとかとてもいいですよね」
そう言う結衣は体の前面に自分で日焼け止めを塗っている。その仕草がとても艶っぽく見えた。
「結衣ちゃんほどじゃないよ。あと、結衣ちゃんはくびれがしっかりあって凄いなぁ。私、今は大丈夫だけど、お菓子とかを食べ過ぎるとすぐに太っちゃうし。旅館での食事はきっと美味しいだろうから気をつけないとなぁ」
「前に来たとき、食事はとっても美味しかったですよ」
「そうなんだ。気をつけなきゃ」
あははっ、と結衣と芹花姉さんは楽しそうに笑っている。そんな2人の笑い声もあって、頬が緩んだのが分かった。
俺の記憶の限りでは、今まで芹花姉さんが特に太っていることはなかったけどな。結衣ほどではないかもしれないけど、芹花姉さんにもくびれはあるし。それでも、本人にとっては気になるときがあるのだろう。
背中を塗り終わって、今度は脚やお尻の方を塗っていく。
「あぁ、気持ちいい。ユウちゃんに日焼け止めを塗ってもらえるなんて幸せ。大学の期末試験頑張って良かった」
「それほどかよ」
「私はお姉様の言うこと分かりますよ。悠真君に塗られるのは本当に気持ちよくて、幸せな時間でした」
「だよねっ!」
俺のことだと特に気が合うなぁ、結衣と芹花姉さん。これからもとても長い付き合いになるだろうし、それはいいことか。
「姉さん、背中から足先まで塗り終わったよ」
「ありがとう、ユウちゃん」
「じゃあ、今度は悠真君の番だね!」
「私もユウちゃんに日焼け止め塗りたいな……」
「では、私が背中でお姉様が脚を塗るのはどうでしょう?」
「それいいね!」
結衣だけじゃなくて、芹花姉さんも一緒に塗るのか。正直、不安な気持ちもあるけど……やる気になっている芹花姉さんを見たら、姉さんの気持ちを無碍にできない。今までも海水浴に来ると、姉さんに塗ってもらうことは多かった。2人に任せるか。
俺は自分のバッグから日焼け止めを取り出し、それを結衣に渡した。そして、さっきまで芹花姉さんがいたところに俯せになる。レジャーシートから芹花姉さんはもちろんのこと、結衣の甘い匂いもちょっと感じられるな。
「さあ、悠真君。背中に日焼け止めを塗っていくね」
「お姉ちゃんは脚に塗るね!」
「お願いします。……おっ」
背中の真ん中あたりと右脚に冷たさを感じたので、思わず声が漏れてしまった。それが面白かったのだろうか。結衣と芹花姉さんがクスクス笑っている。
それから、結衣と芹花姉さんに日焼け止めを塗ってもらう。背中か脚のどちらか一カ所なら普通に塗られていると思えるけど、二カ所同時だと何だか変な感じだ。
「悠真君に日焼け止めを塗るの楽しい!」
「ふふっ。ユウちゃんに日焼け止めを塗ると、海水浴に来たんだって実感できるよ」
「それだけ、悠真君にたくさん日焼け止めを塗ってきたんですね。羨ましいです。よし、念入りに塗ろうっと」
そう言った直後、背中の方の塗られ方が段々と丁寧になっていく。気持ちいいし、結衣に任せることにしよう。暑いけど、結衣や芹花姉さんのおかげで、まったりとした気分になれたのであった。
ちなみに、伊集院さんが着ているのは、ニジイロキラリの物販ブースのバイトの際に着用していたスタッフTシャツだ。もらえたんだな。あれもバイト代だったりして。
潮風見の敷地を出てすぐのところに横断歩道がある。なので、そこを渡って俺達は海水浴場へ向かう。
『おおっ……』
賑わっている海水浴場を目の前にして、全員がそんな声を漏らす。
金曜日だけど、今は夏休みの真っ最中。今日はよく晴れているので、海水浴場には多くの人が遊びに来ている。パッと見た感じ、家族連れやカップル、学生と思われる若年層数人のグループが多い。
海の家などが並ぶ中心部分は、既に多くの人達によって陣取られている。なので、俺達は人がまばらな端の方を陣取ることにした。ここなら落ち着けるし、いい場所だと思う。個人的にはお手洗いが近いのもポイント高い。
ビーチパラソルは低田家と高嶺家から持ってきたので、俺と芹花姉さん、結衣と柚月ちゃんでビーチパラソルを設置する。デザインは違うけど大きさや高さは結構近いので、2つ並べて設置するといい感じの日陰スペースができた。
2つのビーチパラソルによってできた日陰のところに、胡桃と伊集院さん、中野先輩、福王寺先生がレジャーシートを敷いた。結構広々としたスペースになったな。8人全員が座っても大丈夫そうだ。
「完成だね! 悠真君!」
「そうだな。さっそく入ってみるか」
結衣と俺はビーチサンダルを脱いで、低田家のレジャーシートの部分に腰を下ろす。
「日なたで作業していたから、日陰に入るだけで涼しく感じるな」
「風もちょっと吹いているもんね。泳いだり、遊んだりした後はここで休憩すれば大丈夫そうだね」
「ああ」
これからは夕方になって、段々と涼しくなっていくし。
胡桃達もレジャーシートの中に入ってゆったりとしている。福王寺先生に至っては仰向けになってくつろいでいて。途中、休憩を挟んだとはいえ、金井からここまで1人で運転したからな。疲れがあるのかも。
「福王寺先生。運転お疲れ様でした。俺達をここまで連れてきてくれてありがとうございます」
『ありがとうございます』
俺がお礼を言ったからか、結衣達も福王寺先生に対してお礼の言葉を言う。そんな俺達に、先生は落ち着いた笑顔を向ける。
「いえいえ。自然の中で運転できて楽しかったよ。特に海沿いの道の運転は気持ち良かったし。みんながいるから、学生時代の夏休みを思い出したよ。こちらこそありがとう。ちょっと疲れはあるけど、こうして仰向けになって潮風に当たっていればすぐになくなると思うから」
優しい声で福王寺先生はそう言ってくれた。話している中で、先生の笑顔は柔らかなものに変わっていった。本人もこう言っているし、このレジャーシートで休んでいれば疲れは取れそうか。
「ねえ、悠真君」
「うん?」
「……背中に日焼け止め塗ってくれる?」
「ああ、いいよ」
先日のショッピングデートで、結衣は海水浴向けの日焼け止めを買った。そのときから、海に来たら日焼け止めを塗ってほしいと頼まれるだろうと予想していた。
「まあ、悠真君さえよければ、悠真君が出してくれる生温かいものでもいいけど……」
「……それは予想してなかったな。やらないやらない」
うっとりした様子で何を言っているんだか。ただ、よく考えると結衣らしい言葉だ。
結衣は楽しげに笑いながら「分かったよ」と言い、自分のバッグから、先日のデートで購入した日焼け止めを取り出す。
「はい、悠真君」
日焼け止めのボトルを俺に渡すと、結衣はその場でうつぶせの状態になる。水着姿だから、こういう姿勢も凄く艶やかに見えるなぁ。
ボトルの蓋を開けて、左手に日焼け止めを出す。ちょっと冷たい。
「ねえ、ユウちゃん。結衣ちゃんの後に、私の背中も塗ってくれる?」
「分かった」
「ありがとう!」
芹花姉さん、凄く嬉しそうだ。結衣ほどではないけど、姉さんも俺に塗ってくれと頼みそうだと思っていた。
「結衣。背中に塗っていくよ。ちょっと冷たいかもしれない」
「うん! お願いします!」
いいお返事だ。
俺は日焼け止めを乗せた左手を、結衣の背中の中心部分にそっと置く。その瞬間、
「ひゃあっ」
と、結衣は可愛らしい声を漏らし、体をビクつかせた。
「冷たいかもって予告されても、ちょっとビックリしちゃうね」
「今の結衣の反応、可愛かったぞ」
「……もう」
結衣は顔をこちらに向け、頬を少し膨らませる。そんな姿も可愛らしい。
俺は両手を使って、結衣の背中に日焼け止めを塗り始める。
サラッとしている日焼け止めだな。結構塗りやすい。あとは、結衣の肌がスベスベしているのも塗りやすさの一因かもしれない。
結衣の綺麗な背中に触れていると、お風呂に入ったり、ベッドの中でイチャイチャしたりしたときのことを思い出す。
「あぁ、気持ちいい。悠真君、上手だね……」
時折、結衣のそんな甘い声も聞こえ、うっとりした表情でこちらに振り返ってきて。本当に可愛いな。
あぁ、段々と体が熱くなってきた。このままだと、俺……熱中症になってしまうかも。今は結衣や芹花姉さんの日焼け止め塗り師なんだと自己暗示を掛け、クールダウンさせる。あと、日焼け止めを塗る仕事って実際にあるのかね。
「姫奈ちゃん……気持ちいい……」
「柚月ちゃん……テクニシャ~ン……」
「芹花さん……上手ですねぇ……」
近くから、胡桃と福王寺先生と中野先輩のそんな甘い声が聞こえてくる。声がした方を見てみると、胡桃は伊集院さんに、福王寺先生は柚月ちゃん、中野先輩は芹花姉さんにそれぞれ日焼け止めを塗ってもらっている。塗られている3人は気持ちよさそうだ。
結衣と胡桃、福王寺先生、中野先輩の甘い声を聞いていると、何だか集団で厭らしいことをしている感じがする。良かったよ、周りにあまり人がいない端の方に陣取って。
「……よし、背中はこれでOKかな」
「ありがとう、悠真君。……脚やお尻の方も塗ってもらえるともっと嬉しいな」
「分かったよ」
再び左手に日焼け止めを出して、結衣の両脚とお尻に塗っていく。特に太ももの裏とお尻については特に丁寧に塗る。俺の好きな箇所だから。
こうして塗っていると、結衣の脚は細くて、お尻もほどよく引き締まっているな。腰にはちゃんとくびれもあるし。ストレッチが習慣だそうなので、きっとその賜物だろう。
「……よし、脚とお尻も塗ったよ」
「ありがとう、悠真君。あとは自分で塗るね。お姉様に日焼け止めを塗ったら、お礼に悠真君に日焼け止めを塗るからね」
結衣はゆっくりと顔を起こし、俺にキスしてきた。お礼はこのキスで十分だけど、結衣のご厚意を甘えることにしよう。
芹花姉さんの方を見ると、姉さんは中野先輩に日焼け止めを塗るのを終えており、ワクワクした様子でこちらを見ていた。自分の使う日焼け止めのボトルを持っている。
「結衣に塗り終わったから、ここに俯せになって。芹花姉さん」
「はーい。ユウちゃん、この日焼け止めを塗ってくれるかな。結衣ちゃんと同じく、背中から足先まで」
「了解」
俺に日焼け止めを塗られている結衣を羨ましく思い、同じように塗ってもらいたいと思ったのだろう。さすがはブラコン。
芹花姉さんは俺に日焼け止めのボトルを渡し、結衣と同じ場所で俯せになる。
結衣のときと同じく、左手に日焼け止めを出して、背中から塗り始めていく。姉さんの肌もスベスベして塗りやすいな。
「どうだ、芹花姉さん」
「気持ちいいよ。この調子で塗っていって」
「了解」
「お姉様。肌ツヤとかとてもいいですよね」
そう言う結衣は体の前面に自分で日焼け止めを塗っている。その仕草がとても艶っぽく見えた。
「結衣ちゃんほどじゃないよ。あと、結衣ちゃんはくびれがしっかりあって凄いなぁ。私、今は大丈夫だけど、お菓子とかを食べ過ぎるとすぐに太っちゃうし。旅館での食事はきっと美味しいだろうから気をつけないとなぁ」
「前に来たとき、食事はとっても美味しかったですよ」
「そうなんだ。気をつけなきゃ」
あははっ、と結衣と芹花姉さんは楽しそうに笑っている。そんな2人の笑い声もあって、頬が緩んだのが分かった。
俺の記憶の限りでは、今まで芹花姉さんが特に太っていることはなかったけどな。結衣ほどではないかもしれないけど、芹花姉さんにもくびれはあるし。それでも、本人にとっては気になるときがあるのだろう。
背中を塗り終わって、今度は脚やお尻の方を塗っていく。
「あぁ、気持ちいい。ユウちゃんに日焼け止めを塗ってもらえるなんて幸せ。大学の期末試験頑張って良かった」
「それほどかよ」
「私はお姉様の言うこと分かりますよ。悠真君に塗られるのは本当に気持ちよくて、幸せな時間でした」
「だよねっ!」
俺のことだと特に気が合うなぁ、結衣と芹花姉さん。これからもとても長い付き合いになるだろうし、それはいいことか。
「姉さん、背中から足先まで塗り終わったよ」
「ありがとう、ユウちゃん」
「じゃあ、今度は悠真君の番だね!」
「私もユウちゃんに日焼け止め塗りたいな……」
「では、私が背中でお姉様が脚を塗るのはどうでしょう?」
「それいいね!」
結衣だけじゃなくて、芹花姉さんも一緒に塗るのか。正直、不安な気持ちもあるけど……やる気になっている芹花姉さんを見たら、姉さんの気持ちを無碍にできない。今までも海水浴に来ると、姉さんに塗ってもらうことは多かった。2人に任せるか。
俺は自分のバッグから日焼け止めを取り出し、それを結衣に渡した。そして、さっきまで芹花姉さんがいたところに俯せになる。レジャーシートから芹花姉さんはもちろんのこと、結衣の甘い匂いもちょっと感じられるな。
「さあ、悠真君。背中に日焼け止めを塗っていくね」
「お姉ちゃんは脚に塗るね!」
「お願いします。……おっ」
背中の真ん中あたりと右脚に冷たさを感じたので、思わず声が漏れてしまった。それが面白かったのだろうか。結衣と芹花姉さんがクスクス笑っている。
それから、結衣と芹花姉さんに日焼け止めを塗ってもらう。背中か脚のどちらか一カ所なら普通に塗られていると思えるけど、二カ所同時だと何だか変な感じだ。
「悠真君に日焼け止めを塗るの楽しい!」
「ふふっ。ユウちゃんに日焼け止めを塗ると、海水浴に来たんだって実感できるよ」
「それだけ、悠真君にたくさん日焼け止めを塗ってきたんですね。羨ましいです。よし、念入りに塗ろうっと」
そう言った直後、背中の方の塗られ方が段々と丁寧になっていく。気持ちいいし、結衣に任せることにしよう。暑いけど、結衣や芹花姉さんのおかげで、まったりとした気分になれたのであった。
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