高嶺の花の高嶺さんに好かれまして。

桜庭かなめ

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夏休み編4

第1話『結衣と姫奈のメイドバイト-②-』

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「5名様、ご案内いたします」

 結衣が俺達5人を席まで案内してくれることに。それと同時に、伊集院さんは俺達の元から離れる。
 店内を見てみると……多くの席にお客さんが座っている。結構繁盛しているんだなぁ。これなら、結衣と伊集院さんに助っ人としてバイトを頼んだのも納得だ。
 お客さん達を見てみると、俺達のような学生や福王寺先生のような若い世代と思われる人が多い。俺達のような数人のグループもいれば、1人客、男女のカップルもいる。メイドカフェなので男性ばかりかと思っていたけど、女性も結構いるんだな。パッと見、半分近くは女性客だ。
 可愛いからなのか。それとも今日限定だからなのか。男女問わず結衣のことを見ているお客さんが多い。あと、今いるお客さん達は俺よりも先に結衣のメイド服姿を見たのか。それは当たり前のことだけど、ちょっと嫉妬。
 それにしても、メイド服の結衣の後ろ姿もそそられる。後ろから抱きしめたいけど……我慢しなければ。

「こちらの席にどうぞ」

 結衣が案内してくれたのは、窓側にある大きめのテーブル席。このテーブル席には6つ椅子が用意されている。
 俺と芹花姉さんが隣同士に座り、向かい合う形で胡桃と中野先輩、福王寺先生が座った。ちなみに、俺の正面の席には胡桃が座っている。

「ご主人様。お嬢様。お冷やをお持ちいたしました」

 俺達が椅子に座ってから程なくして、お冷やを持ってきた伊集院さんがこちらにやってくる。結衣が席を案内したと同時にいなくなったのは、スムーズにお冷やを出すためだったのか。
 伊集院さんは俺達の前にお水の入ったコップを置いてくれる。落ち着いているし、微笑んでいるから本物のメイドさんのようだ。優しい笑顔で見守る結衣もまた然り。
 伊集院さんが全員にお冷やを置いた頃、俺達のテーブルに3人目のメイドさんが。ショートボブの茶髪と、幼さも感じられる可愛らしい顔立ちが特徴的な女の子。名札には『ともみ』と書かれている。そう、彼女こそが2人をバイトに誘った志田朋実しだともみさんだ。

「お久しぶりです、彼氏君、中野さん」
「久しぶり、志田さん。メイド服、似合ってるね」
「悠真の言う通りだね。似合ってるよ。そして、久しぶり、志田ちゃん」
「ありがとうございます!」

 俺と中野先輩が志田さんとこういう風に挨拶する理由。志田さんとは1ヶ月ほど前、俺がムーンバックスでバイトをしているとき、志田さんが結衣と伊集院さんと一緒に来店して少し話したことがあるのだ。また、その際に結衣が俺を彼氏と紹介したため、志田さんは俺のことを「彼氏君」と呼んでいる。

「胡桃ちゃん、お姉様、杏樹先生。こちらの茶髪の女の子が姫奈ちゃんと私の中学時代の友人の志田朋実ちゃんです」
「結衣とあたしをバイトに誘ってくれた子なのです。武蔵金井駅の2つ隣の駅の近くにある武蔵栄むさしさかえ高校に通っているのです」

 結衣と伊集院さんが、初めて会う胡桃と姉さんと杏樹先生に志田さんのことを紹介する。
 志田さんは明るくて可愛い笑みを浮かべ、軽く頭を下げる。

「初めまして、志田朋実といいます。ゆーゆとひなっちとは、中学1年で同じクラスになったのをきっかけに知り合って仲良くなりました。1ヶ月くらい前から、ここカナイ~ノでバイトを始めました。よろしくお願いします」

 志田さんはそう自己紹介すると、再び頭を軽く下げた。

「華頂胡桃です。結衣ちゃんと姫奈ちゃんとは金井高校のスイーツ部で知り合って。それ以来、ずっと友達です。よろしくね」
「うん、よろしく!」
「低田芹花です、初めまして。ユウちゃんのお姉ちゃんで、東都科学大学理学部生命科学科の1年だよ。あと、高1から駅の南口の側にあるドニーズでバイトしているよ。よろしくね」
「よろしくお願いします。あと、ドニーズでバイト……もしかして、黄金色の天使さんですか? 見覚えあるなぁと思っていましたけど」
「ふふっ、そうだよ。ちなみに、聖母は私達のお母さん」
「そうなんですね!」

 志田さん……ちょっと興奮した様子で芹花姉さんを見ている。志田さんも地元民だから、ドニーズで働いている黄金色の天使と聖母のことを知っていたか。

「初めまして、私は2人のクラス担任兼スイーツ部顧問の福王寺杏樹です。数学を教えているわ。いやぁ、類は友を呼ぶってこういうことを言うのかな。志田さんも凄く可愛いわね。よろしくね」
「よろしくお願いします。うちの高校にはここまで綺麗で可愛い先生はいないですよ」
「ありがとう。可愛い子に可愛いって言われて嬉しいわ」

 うふふっ、と福王寺先生はとても嬉しそうに笑っている。そんな先生はとても可愛くて。俺も今まで出会った先生の中では福王寺先生が一番可愛いかも。

「ところで、結衣、伊集院さん。ここでのバイトはどうだ?」
「楽しくやれているよ。メイド服も可愛いし」
「先月に結衣と一緒にした物販バイトの経験が活かされているのです。物販バイトとは違ってここは涼しいですし」
「そうか。それなら良かった」

 伊集院さんの話した物販バイトというのは、先月下旬に都心で開催されたアイドルグループのコンサート物販の接客バイトのことだ。2人は屋外に設置された物販ブースで2日間接客した。暑い中でのバイトを経験したので、涼しい店内でバイトするのは楽に感じられるのだろう。

「ゆーゆとひなっちには助けてもらっているよ。しっかり接客しているし、2人のメイド服姿も評判いいし」
「2人を見ているお客さんは結構いるもんな。2人のことを頼むよ、志田さん」
「うんっ。……ご主人様、お嬢様。ゆっくりしていってくださいねっ」

 甘い雰囲気の声でメイドさんらしく言うと、志田さんは俺達にお辞儀をしてテーブルを離れていった。さっそく他の席に座るお客さんの接客をしている。

「では、あたし達もこれで」
「メニューが決まったら呼んでくださいね! ご主人様、お嬢様!」

 結衣と伊集院さんも俺達にお辞儀をして、テーブルを後にした。
 俺達5人はテーブルに置いてあるメニューを見て、何を注文するか考えることに。メニューが2つあるので、芹花姉さんと一緒に見る。
 コーヒーや紅茶などのドリンクメニューはもちろんのこと、フードメニューもなかなか充実している。オムライスにカレー、ナポリタン、パンケーキ、ガトーショコラ……色々あるな。
 ちなみに、オムライスを注文すると、ケチャップで指定した文字を描いてくれるサービスが。また、どのフードメニューを頼んでも、美味しくなるおまじないをかけてくれるサービスがあるとのこと。メイドカフェってオムライスのイメージがあるし、俺はオムライスにしようかな。アイスコーヒーをセットで。結衣達にサービスしてほしい。

「俺は決まりました」
「お姉ちゃんも決まったよ。胡桃ちゃん達はどうですか?」
「先生はすぐに決まったわ」
「あたしは……迷ったけど今決まった。華頂ちゃんはどう?」
「あたしも食べたいもの決まりました」
「みんな決まったんですね。じゃあ、俺が呼びますよ。できれば、結衣か伊集院さんか志田さんに……」

 そう言って、俺は店内の中を見渡す。
 3人の中に一番近くにいるのは……結衣だな。他のテーブルからちょうど離れるところだ。

「すみませーん。注文したいのですが」

 少し大きめな声でそう言うと、結衣はすぐにこちらを向いてくる。俺の声だと分かっているようで、結衣は振り向いたときにはニッコリと笑っていて。

「は~い!」

 元気良く返事して、結衣は俺達の座っているテーブル席にやってくる。

「ご注文、お伺いします!」
「さっき、決まったって言った順番で言っていきましょう」
「分かりました、先生。じゃあ、俺から。オムライスのアイスコーヒーセットで」
「お姉ちゃんはパンケーキのアイスティーセット!」
「私も低田君と同じでオムライスのアイスコーヒーセットで」
「あたしはビーフカレーのアイスコーヒーセット」
「あたしはオムライスのアイスティーセットをお願いします」

 俺達の注文したメニューを、結衣は注文票に書き込んでいる。お昼の時間帯で仕事に慣れてきたのか、落ち着いた様子だ。何だか、できるメイドさんって感じだ。

「かしこまりました! 少々お待ちくださいませ」

 微笑みながらそう言うと、結衣は俺達に頭を下げてテーブルを後にしていった。

「低田君と胡桃ちゃんもオムライスにしたんだ」
「メイドカフェといったらオムライスなイメージがありまして」
「以前、お姉ちゃんと来たときはパンケーキを食べたので、今回はオムライスにしようかと」
「ふふっ、そうなのね。オムライスは凄く美味しいわよ。また食べたいと思って、先生もオムライスにしたの」

 その味を思い出しているのか、可愛らしい笑顔で話す福王寺先生。また食べたいと思わせるほどの味だと知ると期待度が上がる。

「あと、オムライスはケチャップで好きなものを描いてもらえるから、何にするか考えないとね」

 楽しげにそう言う先生。
 ケチャップで何を描いてもらおうか。結衣が描いてくれるなら『LOVE』とか『だいすき』って描いてほしいな。それ以外のメイドさんなら……ハートマークや星マークを描いてほしいかな。

「パンケーキも美味しかったですし、カレーも美味しいって言っていた友達がいましたよ」
「そうなんだね、胡桃ちゃん!」
「カレーも期待できるんだね」

 どうやら、フードメニューのクオリティはなかなか高いらしい。それも、カナイ~ノが人気な理由の一つなのかも。
 改めて店内の中を見渡すと……店員さんはみんな可愛いメイドさんばかりだ。ただ、その中でも……やっぱり結衣はひときわ可愛い。伊集院さんと志田さんもかなり可愛いと思う。
 結衣と伊集院さんは4人の女性グループのテーブル席に料理を運ぶ。そして、

『美味しくな~れ。美味しくな~れ。萌え萌えきゅん!』

 そんな言葉を唱えていた。おそらく、あれが美味しくなるおまじないなのだろう。女性のお客さん達も「可愛い!」と大喜び。……料理が運ばれてくるのが凄く楽しみになってきたぞ。
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