194 / 279
夏休み編5
エピローグ『季節が変わっても』
しおりを挟む
9月1日、日曜日。
ゆっくりと目を開け……ようとするけど、何かが顔全体に当たっていてなかなか目を開けることができない。
いったい何が顔に当たっているんだ……と一瞬思ったけど、この心地良い柔らかさとよく知っている甘い匂い。それに前面や背中から伝わってくる優しい温もり。きっと、結衣が俺を抱きしめて、顔を自分の胸に埋めさせているのだろう。
何とかして目を開けると……肌色の世界が広がっていた。ただ、その中に一本の黒い線らしきものが見える。これはきっと谷間だろう。
「あっ、起こしちゃったかな、悠真君」
結衣のそんな声が聞こえると、結衣の体が俺から少し離れる。そのことで、結衣の綺麗な体がよく見えるように。素敵だ。
見上げると、そこには優しい笑顔で俺を見ている結衣の姿があった。
目を覚ました瞬間から、結衣のことを感じられて。その後すぐに結衣の笑顔を見られて。何て幸せな一日の始まりだろう。それに、今日から秋がスタートするから、今年の秋はとてもいい季節になりそうな気がした。
「ううん、そんなことないぞ。気持ち良く起きられたから」
「……良かった」
安堵した様子になる結衣。
「おはよう、悠真君」
「おはよう、結衣」
朝の挨拶を交わして、俺から結衣におはようのキスをする。起きてすぐに結衣とキスできるなんて。本当に幸せだ。
俺から唇を離すと、目の前にはニッコリと可愛く笑う結衣の顔があって。そのことに心が温まる。
「目を覚ましたら悠真君がいて、抱きしめて、キスできて。凄く幸せな朝だなって思うよ」
「俺も同じことを思ったよ」
「ふふっ、そっか。裸の悠真君を見たら、昨日の夜のことを思い出して。悠真君は変わらず胸が大好きだから、顔を胸に埋める形で抱きしめたんだ」
「そうだったのか。そのおかげで気持ち良く起きられたんだろうな」
「さすがは悠真君。昨日は私の胸を色々な形で堪能したもんね。そのときは本当に気持ち良かったな……」
そういったときのことを思い出しているのか、結衣の頬がほんのりと赤くなる。そんな結衣を見ていると……結衣がメイド服を着ていたときのことを思い出す。
「あと、寝ている悠真君を見て思ったんだけど、今年の夏はえっちで始まって、えっちで終わる夏だったね!」
元気良くそう言う結衣。それが結衣らしくて微笑ましい。
「俺達が付き合い始めたのは6月1日で、その日の夜に初めてしたから……結衣の言う通りだな」
「でしょう? この夏の間に何度もえっちしたね」
「そうだな。お泊まりのときを中心に何度もしたな。ただ、俺達らしいか」
「そうだねっ」
「あと、今日で付き合い始めてからちょうど3ヶ月なのか」
「3ヶ月だね! これからもよろしくね!」
「ああ、よろしく」
俺がそう言うと、結衣はニコッと笑ってキスしてきた。
今日のように、付き合い始めてから節目の記念日になると、こういう風に改めて「よろしく」と言って、キスするのが習慣となっている。あとは、結衣の好きな飲み物やスイーツを買って一緒に楽しむときもあったか。
「高校最初の夏は結衣と付き合い始めた夏でもあったんだな」
「そうだね! 悠真君のおかげで、楽しくて素敵な夏と夏休みになったよ!」
「ああ。俺も素敵で楽しい夏になったって思うよ。夏休みも結衣達のおかげで、今までで一番楽しかったなぁ」
「私も今年の夏休みが一番楽しかった! 悠真君っていう恋人もいて、高校では胡桃ちゃんや千佳先輩、杏樹先生っていう素敵な人達とも出会えたから。それ以外にもお姉様や彩乃さん達とも出会えたし」
「結衣がそう言ってくれて嬉しいよ」
結衣のことをそっと抱きしめて、結衣の頭を優しく撫でる。結衣の体の温もりや柔らかさがとても気持ちいい。頭を撫でることで、シャンプーの甘い匂いも香ってきて。そのことでとても心地良く感じる。
「夏休み……振り返ると色々なことがあったよね。7月中に課題を一緒に片付けて。姫奈ちゃんと一緒にコンサートの物販バイトをして」
「接客する様子を初めて見たけど、しっかりやっていて凄いって思ったよ。その後は旅行のために水着買ったな」
「悠真君に選んでもらった水着、本当に気に入ったよ! 姫奈ちゃんや胡桃ちゃん達と行った伊豆への旅行……本当に楽しかったな。海水浴も温泉もお食事、恋人岬でのこと……いい旅行だったな」
「良かったよな。俺達の泊まった潮風見……いい旅館だったな。あと、近くにある足湯で結衣と混浴できたし」
「そうだね! でも、一番印象に残っているのは、夜に部屋で悠真君とえっちしたことかな」
「ははっ、結衣らしい。俺もだけど」
「悠真君もじゃん」
あははっ、と結衣と楽しく笑い合う。
結衣が裸なのもあって、旅行の日の夜のことを鮮明に思い出す。ふとんの上で横になっている結衣……本当に綺麗だった。
旅行に行ったのは1ヶ月近く前なのか。ただ、夏休み中は色々なことがあったから、もっと前のことのように感じる。
「帰ってきた日の夜に、悠真君がお姉様にキスマークを付けられるとは思わなかったよ」
「久しぶりに一緒に寝たからな。首筋のキスマークに気付いて、結衣とキスマークを付け合ったんだよな」
「そうだったね」
そう言う結衣はうっとりとした表情になっているけど、キスマークが見つかったときの結衣は結構恐かったな。浮気はもちろんだけど、浮気と勘違いされるようなことはしないように気をつけないと。
「お盆の時期になると、杏樹先生の買いたい同人誌の代理購入のために、先生と胡桃ちゃんと4人でコアマに行ったよね」
「結衣は初コアマだったよな。今年も暑かったけど、結衣も一緒だったから一番楽しかったよ」
「私も楽しかったよ。杏樹先生が頼まれていたものの大半も買えたし、いいと思える同人誌とも出会えたからね。これからも同人イベントに行こうね」
「ああ。……その直後に結衣は伊集院さんと一緒にメイド喫茶のバイトをしたんだよな」
「中学時代の友達のバイト先の助っ人でね。メイド服を着て接客するのを楽しかったな。悠真君達も来てくれたし」
「凄く可愛かったよ」
ただ、昨日の夜のご奉仕の影響で、メイド服姿の結衣の印象はとても艶やかなものになったかな。友達の助っ人バイトよりも、昨日の夜のことばかり思い出してしまう。ただ、仕事がちゃんとできて、俺に気持ちいいご奉仕もできるって考えると……最強のメイドかもしれない。
「初めて2人きりで映画を観たよね」
「『天晴な子』か。あれ、面白かったな。これからも面白そうな作品があったら観に行きたいな」
「そうだね! その日の帰りに胡桃ちゃんのプレゼントを買ったんだよね」
「そうだったな。誕生日会での胡桃はとても楽しそうで、嬉しそうだったな」
「そうだったね」
「ネット上では誕生日を祝っていたけど、リアルで祝えたことから嬉しかったな」
「良かったね。私の16歳の誕生日を楽しみしてるよ~」
目を細めた笑顔でそう言うと、結衣は俺の胸に頭をスリスリしてきた。
結衣の誕生日は1月1日。あと4ヶ月か。福王寺先生や胡桃のときのように、低変人として新曲をもちろん作るつもりだ。低田悠真としても、結衣に喜んでもらえるようなプレゼントを贈りたい。もちろん、1週間前にあるクリスマスのプレゼントは別に用意したい。
「楽しみにしていてくれ。胡桃の誕生日の後は……お泊まり女子会をしたのか」
「うん! 胡桃ちゃんと一緒にお風呂に入れたり、胡桃ちゃんや千佳先輩と初めて同じ部屋で眠れたりして楽しかったな。悠真君と芹花お姉様とテレビ電話したことも」
「みんなが画面に映ったときはビックリしたな」
「いいリアクションだったよ。女子会だけど、悠真君と話せて良かったよ」
「そっか」
楽しんでいるかって結衣にメッセージを送ったときは、女子会中に送って良かったのかとちょっと不安だった。だけど、結果的にあの楽しいテレビ通話の時間に繋がったので良かった。
「初めてオープンキャンパスにも行ったな。芹花姉さんの通う東都科学大学に」
「高校生向けなのもあるだろうけど、2つの模擬授業がとても楽しかったよ。理系もいいなって、いい意味で進路に悩み始めた」
「ははっ、そっか」
「あと、私服姿で授業を受けたり、教室移動したり、お姉様と彩乃さんと一緒にお昼ご飯を食べたり、キャンパスの中を案内してもらったり。ちょっとしたキャンパスライフを味わえて楽しかったな」
「楽しかったよな。結衣と一緒に同じ大学に通ったらこんな感じなのかなって思った」
「私も!」
自分も学びたいものが学べるところへ行くのが一番だと思う。それでも、結衣と一緒に大学生活を送りたい気持ちも強くなったオープンキャンパスだった。
「もう一度あの水着を着たくてプールに誘ったけど、プールデートも楽しかったな」
「ああ。もう一度、結衣の水着姿を見られて嬉しかったな。ウォータースライダーでたくさん滑ったよな」
「うんっ! 凄く楽しかった! あと、悠真君がナンパから助けてくれたのも嬉しかった。私の恋人は優しくて頼りになる人だって改めて実感したよ」
「……そう言ってくれると恋人として嬉しいよ」
結衣は見た目も中身もとても魅力的な持ち主だ。だから、これからもナンパされることは何度もあると思う。俺の助けられるときにはちゃんと助けていきたい。
来年以降も、夏には結衣と一緒にプールや海に遊びに行きたいな。
「それで、昨日の花火大会でお泊まり。夏休みのいい締めくくりができそうだよ」
「そうだな。……こうして振り返ると、色々なことがあった夏休みだったな」
「そうだね! 凄く楽しかったよ!」
「俺も楽しかった」
去年までのように、家にいて、一人で趣味に没頭する夏休みも楽しかった。
だけど、結衣と一緒にデートして、お泊まりして。みんなで課題をしたり、旅行に行ったり、コアマに参加したり。バイトする日も多かったけど、その中で結衣達に接客して。趣味を楽しみつつも、家族以外の誰かと一緒に過ごせたこの夏が本当に楽しかったな。
明日から始まる2学期も楽しみだな。こういう感覚になるのは今年が初めてだ。
「結衣のおかげで、今年の夏休みはとても楽しかったよ。ありがとう」
「いえいえ! こちらこそありがとう! この夏休みを通じて、悠真君のことがもっと好きになったよ!」
「俺も結衣のことがもっと好きになったよ」
「嬉しいっ。今から来年の夏休みが楽しみだよっ!」
「ははっ。俺も楽しみだ」
来年はまだ高校2年。受験に向けて夏期講習に行っている可能性はあるけど、結衣とデートやお泊まりをたくさんしたり、みんなと一緒に遊んだりすることもできるだろう。
「悠真君。今日から始まる秋も、その先も……ずっとよろしくね!」
「ああ、よろしくな」
「約束だよ!」
結衣は目を瞑って唇を少しだけ突き出す。キスしてってことか。可愛いな。
俺は今一度、結衣のことをぎゅっと抱きしめて、結衣に約束のキスをする。いつまでも、結衣とキスして幸せだと思えるような関係でありたい。
今日はバイトのシフトに入っていないので、日中の間はずっと結衣の部屋で結衣と一緒にアニメを観てゆっくりと過ごした。
高校最初の夏休みはとても楽しい形で幕を下ろすことができた。結衣と付き合い始めてから初めて過ごした今年の夏休みのことはずっと忘れないだろう。
夏休み編5 おわり
次の話から夏休み小話編(夏休み中の内容の短編エピソード集)になります。
ゆっくりと目を開け……ようとするけど、何かが顔全体に当たっていてなかなか目を開けることができない。
いったい何が顔に当たっているんだ……と一瞬思ったけど、この心地良い柔らかさとよく知っている甘い匂い。それに前面や背中から伝わってくる優しい温もり。きっと、結衣が俺を抱きしめて、顔を自分の胸に埋めさせているのだろう。
何とかして目を開けると……肌色の世界が広がっていた。ただ、その中に一本の黒い線らしきものが見える。これはきっと谷間だろう。
「あっ、起こしちゃったかな、悠真君」
結衣のそんな声が聞こえると、結衣の体が俺から少し離れる。そのことで、結衣の綺麗な体がよく見えるように。素敵だ。
見上げると、そこには優しい笑顔で俺を見ている結衣の姿があった。
目を覚ました瞬間から、結衣のことを感じられて。その後すぐに結衣の笑顔を見られて。何て幸せな一日の始まりだろう。それに、今日から秋がスタートするから、今年の秋はとてもいい季節になりそうな気がした。
「ううん、そんなことないぞ。気持ち良く起きられたから」
「……良かった」
安堵した様子になる結衣。
「おはよう、悠真君」
「おはよう、結衣」
朝の挨拶を交わして、俺から結衣におはようのキスをする。起きてすぐに結衣とキスできるなんて。本当に幸せだ。
俺から唇を離すと、目の前にはニッコリと可愛く笑う結衣の顔があって。そのことに心が温まる。
「目を覚ましたら悠真君がいて、抱きしめて、キスできて。凄く幸せな朝だなって思うよ」
「俺も同じことを思ったよ」
「ふふっ、そっか。裸の悠真君を見たら、昨日の夜のことを思い出して。悠真君は変わらず胸が大好きだから、顔を胸に埋める形で抱きしめたんだ」
「そうだったのか。そのおかげで気持ち良く起きられたんだろうな」
「さすがは悠真君。昨日は私の胸を色々な形で堪能したもんね。そのときは本当に気持ち良かったな……」
そういったときのことを思い出しているのか、結衣の頬がほんのりと赤くなる。そんな結衣を見ていると……結衣がメイド服を着ていたときのことを思い出す。
「あと、寝ている悠真君を見て思ったんだけど、今年の夏はえっちで始まって、えっちで終わる夏だったね!」
元気良くそう言う結衣。それが結衣らしくて微笑ましい。
「俺達が付き合い始めたのは6月1日で、その日の夜に初めてしたから……結衣の言う通りだな」
「でしょう? この夏の間に何度もえっちしたね」
「そうだな。お泊まりのときを中心に何度もしたな。ただ、俺達らしいか」
「そうだねっ」
「あと、今日で付き合い始めてからちょうど3ヶ月なのか」
「3ヶ月だね! これからもよろしくね!」
「ああ、よろしく」
俺がそう言うと、結衣はニコッと笑ってキスしてきた。
今日のように、付き合い始めてから節目の記念日になると、こういう風に改めて「よろしく」と言って、キスするのが習慣となっている。あとは、結衣の好きな飲み物やスイーツを買って一緒に楽しむときもあったか。
「高校最初の夏は結衣と付き合い始めた夏でもあったんだな」
「そうだね! 悠真君のおかげで、楽しくて素敵な夏と夏休みになったよ!」
「ああ。俺も素敵で楽しい夏になったって思うよ。夏休みも結衣達のおかげで、今までで一番楽しかったなぁ」
「私も今年の夏休みが一番楽しかった! 悠真君っていう恋人もいて、高校では胡桃ちゃんや千佳先輩、杏樹先生っていう素敵な人達とも出会えたから。それ以外にもお姉様や彩乃さん達とも出会えたし」
「結衣がそう言ってくれて嬉しいよ」
結衣のことをそっと抱きしめて、結衣の頭を優しく撫でる。結衣の体の温もりや柔らかさがとても気持ちいい。頭を撫でることで、シャンプーの甘い匂いも香ってきて。そのことでとても心地良く感じる。
「夏休み……振り返ると色々なことがあったよね。7月中に課題を一緒に片付けて。姫奈ちゃんと一緒にコンサートの物販バイトをして」
「接客する様子を初めて見たけど、しっかりやっていて凄いって思ったよ。その後は旅行のために水着買ったな」
「悠真君に選んでもらった水着、本当に気に入ったよ! 姫奈ちゃんや胡桃ちゃん達と行った伊豆への旅行……本当に楽しかったな。海水浴も温泉もお食事、恋人岬でのこと……いい旅行だったな」
「良かったよな。俺達の泊まった潮風見……いい旅館だったな。あと、近くにある足湯で結衣と混浴できたし」
「そうだね! でも、一番印象に残っているのは、夜に部屋で悠真君とえっちしたことかな」
「ははっ、結衣らしい。俺もだけど」
「悠真君もじゃん」
あははっ、と結衣と楽しく笑い合う。
結衣が裸なのもあって、旅行の日の夜のことを鮮明に思い出す。ふとんの上で横になっている結衣……本当に綺麗だった。
旅行に行ったのは1ヶ月近く前なのか。ただ、夏休み中は色々なことがあったから、もっと前のことのように感じる。
「帰ってきた日の夜に、悠真君がお姉様にキスマークを付けられるとは思わなかったよ」
「久しぶりに一緒に寝たからな。首筋のキスマークに気付いて、結衣とキスマークを付け合ったんだよな」
「そうだったね」
そう言う結衣はうっとりとした表情になっているけど、キスマークが見つかったときの結衣は結構恐かったな。浮気はもちろんだけど、浮気と勘違いされるようなことはしないように気をつけないと。
「お盆の時期になると、杏樹先生の買いたい同人誌の代理購入のために、先生と胡桃ちゃんと4人でコアマに行ったよね」
「結衣は初コアマだったよな。今年も暑かったけど、結衣も一緒だったから一番楽しかったよ」
「私も楽しかったよ。杏樹先生が頼まれていたものの大半も買えたし、いいと思える同人誌とも出会えたからね。これからも同人イベントに行こうね」
「ああ。……その直後に結衣は伊集院さんと一緒にメイド喫茶のバイトをしたんだよな」
「中学時代の友達のバイト先の助っ人でね。メイド服を着て接客するのを楽しかったな。悠真君達も来てくれたし」
「凄く可愛かったよ」
ただ、昨日の夜のご奉仕の影響で、メイド服姿の結衣の印象はとても艶やかなものになったかな。友達の助っ人バイトよりも、昨日の夜のことばかり思い出してしまう。ただ、仕事がちゃんとできて、俺に気持ちいいご奉仕もできるって考えると……最強のメイドかもしれない。
「初めて2人きりで映画を観たよね」
「『天晴な子』か。あれ、面白かったな。これからも面白そうな作品があったら観に行きたいな」
「そうだね! その日の帰りに胡桃ちゃんのプレゼントを買ったんだよね」
「そうだったな。誕生日会での胡桃はとても楽しそうで、嬉しそうだったな」
「そうだったね」
「ネット上では誕生日を祝っていたけど、リアルで祝えたことから嬉しかったな」
「良かったね。私の16歳の誕生日を楽しみしてるよ~」
目を細めた笑顔でそう言うと、結衣は俺の胸に頭をスリスリしてきた。
結衣の誕生日は1月1日。あと4ヶ月か。福王寺先生や胡桃のときのように、低変人として新曲をもちろん作るつもりだ。低田悠真としても、結衣に喜んでもらえるようなプレゼントを贈りたい。もちろん、1週間前にあるクリスマスのプレゼントは別に用意したい。
「楽しみにしていてくれ。胡桃の誕生日の後は……お泊まり女子会をしたのか」
「うん! 胡桃ちゃんと一緒にお風呂に入れたり、胡桃ちゃんや千佳先輩と初めて同じ部屋で眠れたりして楽しかったな。悠真君と芹花お姉様とテレビ電話したことも」
「みんなが画面に映ったときはビックリしたな」
「いいリアクションだったよ。女子会だけど、悠真君と話せて良かったよ」
「そっか」
楽しんでいるかって結衣にメッセージを送ったときは、女子会中に送って良かったのかとちょっと不安だった。だけど、結果的にあの楽しいテレビ通話の時間に繋がったので良かった。
「初めてオープンキャンパスにも行ったな。芹花姉さんの通う東都科学大学に」
「高校生向けなのもあるだろうけど、2つの模擬授業がとても楽しかったよ。理系もいいなって、いい意味で進路に悩み始めた」
「ははっ、そっか」
「あと、私服姿で授業を受けたり、教室移動したり、お姉様と彩乃さんと一緒にお昼ご飯を食べたり、キャンパスの中を案内してもらったり。ちょっとしたキャンパスライフを味わえて楽しかったな」
「楽しかったよな。結衣と一緒に同じ大学に通ったらこんな感じなのかなって思った」
「私も!」
自分も学びたいものが学べるところへ行くのが一番だと思う。それでも、結衣と一緒に大学生活を送りたい気持ちも強くなったオープンキャンパスだった。
「もう一度あの水着を着たくてプールに誘ったけど、プールデートも楽しかったな」
「ああ。もう一度、結衣の水着姿を見られて嬉しかったな。ウォータースライダーでたくさん滑ったよな」
「うんっ! 凄く楽しかった! あと、悠真君がナンパから助けてくれたのも嬉しかった。私の恋人は優しくて頼りになる人だって改めて実感したよ」
「……そう言ってくれると恋人として嬉しいよ」
結衣は見た目も中身もとても魅力的な持ち主だ。だから、これからもナンパされることは何度もあると思う。俺の助けられるときにはちゃんと助けていきたい。
来年以降も、夏には結衣と一緒にプールや海に遊びに行きたいな。
「それで、昨日の花火大会でお泊まり。夏休みのいい締めくくりができそうだよ」
「そうだな。……こうして振り返ると、色々なことがあった夏休みだったな」
「そうだね! 凄く楽しかったよ!」
「俺も楽しかった」
去年までのように、家にいて、一人で趣味に没頭する夏休みも楽しかった。
だけど、結衣と一緒にデートして、お泊まりして。みんなで課題をしたり、旅行に行ったり、コアマに参加したり。バイトする日も多かったけど、その中で結衣達に接客して。趣味を楽しみつつも、家族以外の誰かと一緒に過ごせたこの夏が本当に楽しかったな。
明日から始まる2学期も楽しみだな。こういう感覚になるのは今年が初めてだ。
「結衣のおかげで、今年の夏休みはとても楽しかったよ。ありがとう」
「いえいえ! こちらこそありがとう! この夏休みを通じて、悠真君のことがもっと好きになったよ!」
「俺も結衣のことがもっと好きになったよ」
「嬉しいっ。今から来年の夏休みが楽しみだよっ!」
「ははっ。俺も楽しみだ」
来年はまだ高校2年。受験に向けて夏期講習に行っている可能性はあるけど、結衣とデートやお泊まりをたくさんしたり、みんなと一緒に遊んだりすることもできるだろう。
「悠真君。今日から始まる秋も、その先も……ずっとよろしくね!」
「ああ、よろしくな」
「約束だよ!」
結衣は目を瞑って唇を少しだけ突き出す。キスしてってことか。可愛いな。
俺は今一度、結衣のことをぎゅっと抱きしめて、結衣に約束のキスをする。いつまでも、結衣とキスして幸せだと思えるような関係でありたい。
今日はバイトのシフトに入っていないので、日中の間はずっと結衣の部屋で結衣と一緒にアニメを観てゆっくりと過ごした。
高校最初の夏休みはとても楽しい形で幕を下ろすことができた。結衣と付き合い始めてから初めて過ごした今年の夏休みのことはずっと忘れないだろう。
夏休み編5 おわり
次の話から夏休み小話編(夏休み中の内容の短編エピソード集)になります。
0
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。
桜庭かなめ
恋愛
高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。
とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。
ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。
お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!
※特別編3が完結しました!(2025.12.18)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
まずはお嫁さんからお願いします。
桜庭かなめ
恋愛
高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。
4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。
総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。
いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。
デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!
※特別編6が完結しました!(2025.11.25)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしております。
【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました
藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。
次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。
ルピナス
桜庭かなめ
恋愛
高校2年生の藍沢直人は後輩の宮原彩花と一緒に、学校の寮の2人部屋で暮らしている。彩花にとって直人は不良達から救ってくれた大好きな先輩。しかし、直人にとって彩花は不良達から救ったことを機に一緒に住んでいる後輩の女の子。直人が一定の距離を保とうとすることに耐えられなくなった彩花は、ある日の夜、手錠を使って直人を束縛しようとする。
そして、直人のクラスメイトである吉岡渚からの告白をきっかけに直人、彩花、渚の恋物語が激しく動き始める。
物語の鍵は、人の心とルピナスの花。たくさんの人達の気持ちが温かく、甘く、そして切なく交錯する青春ラブストーリーシリーズ。
※特別編-入れ替わりの夏-は『ハナノカオリ』のキャラクターが登場しています。
※1日3話ずつ更新する予定です。
恋人、はじめました。
桜庭かなめ
恋愛
紙透明斗のクラスには、青山氷織という女子生徒がいる。才色兼備な氷織は男子中心にたくさん告白されているが、全て断っている。クールで笑顔を全然見せないことや銀髪であること。「氷織」という名前から『絶対零嬢』と呼ぶ人も。
明斗は半年ほど前に一目惚れしてから、氷織に恋心を抱き続けている。しかし、フラれるかもしれないと恐れ、告白できずにいた。
ある春の日の放課後。ゴミを散らしてしまう氷織を見つけ、明斗は彼女のことを助ける。その際、明斗は勇気を出して氷織に告白する。
「これまでの告白とは違い、胸がほんのり温かくなりました。好意からかは分かりませんが。断る気にはなれません」
「……それなら、俺とお試しで付き合ってみるのはどうだろう?」
明斗からのそんな提案を氷織が受け入れ、2人のお試しの恋人関係が始まった。
一緒にお昼ご飯を食べたり、放課後デートしたり、氷織が明斗のバイト先に来たり、お互いの家に行ったり。そんな日々を重ねるうちに、距離が縮み、氷織の表情も少しずつ豊かになっていく。告白、そして、お試しの恋人関係から始まる甘くて爽やかな学園青春ラブコメディ!
※夏休み小話編2が完結しました!(2025.10.16)
※小説家になろう(N6867GW)、カクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想などお待ちしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる