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夏休み小話編
『結衣がひっ、と可愛くしゃっくりをして。』
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『結衣がひっ、と可愛くしゃっくりをして。』
8月も終盤となったある日のこと。
今日は結衣の家でお家デートをしている。
お家デートでは現在放送中のアニメを録画したものや、2人とも好きなアニメのDVDやBlu-rayを観ることが多い。
ただ、今日はいつもと違い、結衣が駅近くのレンタルショップで借りてきた劇場アニメのDVDを観ることになった。
この劇場アニメは恋愛系の少女漫画が原作。原作の漫画は結衣の部屋の本棚にあるので、俺はタイトルを知っているくらいだ。
結衣曰く、原作漫画は結構ドキドキする内容らしい。
結衣と一緒にアニメを観てみると……キスシーンが多く、終盤には肌を重ねるシーンもある。結衣と隣同士に座り、体を寄せ合いながら観ているのもあり、かなりドキドキした。主人公の女の子と相手の男の子を結衣と俺に重ねるときもあったから。
「アニメになっても、ドキドキしてキュンとなる内容だったよ!」
アニメの出来に満足したようで、結衣はニッコリとした笑顔でそう言った。ドキドキすると言っただけあって、結衣の笑顔は頬を中心に赤らんでいる。
「結衣の言う通り、ドキドキする内容だったな。キスしたり、肌を重ねたりするシーンもあったし。そういうことを結衣とはたくさんしているから」
「そうだね。そういうシーンになると、悠真君とのことを思い出すときがあったよ」
「俺もだ」
「そっか」
ふふっ、と嬉しそうに笑う結衣。きっと、俺と同じだったことが嬉しいのだろう。
体が熱いので、結衣が淹れてくれたアイスコーヒーを飲む。コーヒーの苦味が美味しくて、冷たさが全身に伝わっていく感覚が心地いい。
結衣も自分のマグカップに入っているアイスコーヒーを飲んでいる。俺と同じで体が熱く感じているのだろうか。ゴクゴクと飲んでいて。その姿は美しくて絵になるなぁ……と見入っていると、
「ごほっ! けほっ、けほっ……」
結衣が急に咳き込んだのだ。激しく咳き込んでいるから、苦しそうにも見えて。俺は結衣の背中を優しくさすった。
「大丈夫か、結衣」
「……う、うん。何とか。コーヒーを勢い良く飲んだら……肺の方に行きそうになって。それでむせちゃった……」
はあっ、はあっ……と、結衣の息が荒くなっている。
「そうだったのか。俺もそういうことあるよ。苦しいよな」
俺がそう言うと、結衣は小さく頷く。あんなに咳き込んで、呼吸が乱れるほどだ。やっぱり苦しいか。
結衣の呼吸が落ち着くまで、俺は結衣の背中を優しくさすり続けた。
「……もう大丈夫だよ、悠真君。背中をさすってくれてありがとう」
「いえいえ。呼吸が落ち着いて良かったよ」
「うん。あと、咳き込んだから、コーヒーを飲む前よりも体が熱くなっちゃった」
「激しく咳き込んでいたもんな」
俺も咳き込んだ後は体が結構熱くなる。咳き込むのって体力を使うからかな。
幸いにも今はお家デート中だ。涼しい部屋の中にいて、アイスコーヒーを少しずつ飲んでいけば、結衣の体の熱も次第に収まっていくんじゃ――。
「ひっ」
うん? 今、凄く可愛い声が聞こえたな。俺が出したわけじゃないから、これは結衣の発した声か。
「ひっ」
また同じ声が聞こえた。結衣の方から聞こえる。なので、結衣の方を見ると、
「ひっ」
結衣はそんな声を上げながら、体をピクッと震わせた。俺の推理通り、この可愛い声の主は結衣だったか。この感じからして、しゃっくりが出たのかな。
結衣は俺と目が合うと、頬をほんのりと赤くしてはにかむ。
「しゃっくり……出ちゃったみたい」
「そうか」
やっぱり、しゃっくりだったか。
結衣がしゃっくりをするところを見るのは初めてだから新鮮だな。しゃっくりでさえも可愛く見えるのはさすがは結衣というか。
「さっき咳き込んだことが原因かな」
「そうだと思う……ひっ。激しく咳き込んだから、横隔膜が痙攣しちゃったのかも」
ひっ、と結衣は語尾のようにしゃっくりをした。さっきは結構咳き込んでいたから、何度もしゃっくりが出ているな。
結衣の言う通り、何度も咳き込んでいたから、それが響いて横隔膜が痙攣し、しゃっくりが出てしまったのだろう。そんなことを考えている間にも結衣は「ひっ」としゃっくりしている。
「結構出てるな」
「うん。咳き込むよりは全然マシだけど、早く止めたいな」
「そうか。しゃっくりが出たとき、俺は一口分の水を飲んで止めることが多いよ。結衣はどうだ?」
「ひっ、私も飲み物があるときにはそれを試すよ。止まることもある」
「そうなんだ。そもそもの原因がコーヒーをゴクゴク飲んだことだけど、まずはそうするか?」
「うん。私のマグカップにまだ残っているし、ひっ、試してみる」
結衣は自分のマグカップを手にとって、アイスコーヒーをゴクッと飲む。いい飲み方だ。このやり方で止まることもあるみたいだし、今回のしゃっくりも止まってほしい――。
「ひっ」
俺の願いは届かず、結衣はしゃっくりが出てしまった。結衣がしゃっくりする姿はこれが初めてだけど、なかなか厄介な気がする。
「止まらない……ひっ」
「……そ、そうだな。絶賛痙攣中だな。他に結衣のしゃっくりが止まることのある方法ってあるか?」
「ひっ。そうだね……誰かと一緒にいるときには驚かせてもらったり、ひっ、くすぐってもらったりもするよ」
「そうか。王道な方法だな」
驚いて体が震えたり、くすぐられてたくさん笑ったりすることで、横隔膜の痙攣が止まるメカニズムなのだろう。
そういえば、小さい頃に芹花姉さんのいる前でしゃっくりが出たとき、芹花姉さんに体中をくすぐられてしゃっくりが収まった経験があったっけ。あのときの姉さん、凄く楽しそうにしていたな。思い出を振り返っている中、結衣のしゃっくりが可愛く響く。
「じゃあ、俺が結衣をくすぐろう。俺も芹花姉さんにくすぐられて止まった経験あるし」
「ありがとう。悠真君にくすぐられることは全然ないからドキドキしちゃうな……ひっ」
しゃっくりをしながらも、結衣はドキドキとした様子で言う。
思い返せば、これまでに結衣の体にはいっぱい触れてきたけど、くすぐることって全然ないな。そう思うと、俺もドキドキしてきたぞ。
「ゆ、結衣はどこをくすぐられるのが弱い? そこをくずられるのは嫌だろうけど、しゃっくりを止められる確率が高い気がするから」
「なるほど……ひっ。足の裏と腋と脇腹が弱いね。あと、首筋もビックリすることが多いかな」
「足の裏、腋、脇腹、首筋か……」
足の裏にキスしたことはないけど、それ以外の三カ所にキスすると結衣は体をピクッと震わせることはあるな。弱点として申告してくるのも納得だ。
「分かった。くすぐられてほしい場所ってある?」
「そうだね……腋かな。ひっ。悠真君の好きな場所だし」
「そ、そうだな。俺は腋が好きだ」
だから、結衣が今日着ているブラウスがノースリーブであることを嬉しく思っている。
「分かった。じゃあ、腋をくすぐるぞ」
「うんっ。ひっ。お願いします」
結衣は両腕を少し上げて、俺に腋を見せてくる。
今日も結衣の腋は綺麗で素敵だなぁ。そう思いつつ、俺は結衣の目の前に膝立ちして結衣の腋に両手を添える。その瞬間、結衣は「んっ」と可愛らしい声を漏らして、体を震わせる。これはくすぐったら効果がありそうだ。
結衣の腋に触れていることにドキドキしながら、俺は腋をくすぐり始めた。
「あははっ!」
弱点なだけあってか、くすぐり始めてさっそく結衣は大きな笑い声を出す。緩んだ笑顔からして、腋をくすぐられることに嫌だとは思っていないようだ。今の笑顔も凄く可愛いな。
さっき、結衣は誰かと一緒にいるときにしゃっくりが出るとき、驚かされることで止めてもらったとも言っていた。なので、不意打ちで首筋や脇腹をくすぐることも。そのときは、
「ひゃあっ!」
「んっ!」
といった甘い声を出し、体を大きく震わせて。結衣のその反応にドキッとさせられた。
くすぐり効果は覿面のようだ。くすぐり始めたときは定期的に出ていたしゃっくりも、段々と少なくなってきている。
「くすぐったいけど、気持ちいいくすぐりは初めてだよ……」
ふふっ、と笑いながら結衣はそう言ってくる。くすぐりは大抵いたずらや何かの罰ゲームですることだからな。今はしゃっくりを止めるためだから、結衣も気持ち良く感じられるのかもしれない。
結衣が笑う中で時折出ていたしゃっくりがすっかりと止まっていた。もう大丈夫だろう。そう判断し、結衣へのくすぐりを止める。
「止まったみたいだ」
「うん……ありがとう……」
普段よりも弱々しい声でそう言うと、結衣は前方に倒れ込む。そのことで顔が俺の胸に当たる形になる。きっと、俺にくすぐられ、たくさん笑ったことで疲れてしまったのだろう。息もそれなりに荒くなっているし。
俺は両手を結衣の背中の方に回し、結衣をそっと抱きしめる。右手で結衣の背中を優しくさする。いつも抱きしめるときよりも結衣の体が熱い。
「悠真君のくすぐり効果抜群だね。途中で首とか脇腹もくすぐられたし」
「驚かせてもらうって言っていたからさ。不意打ちでやってみた」
「なるほどね。それもあってか止まったよ……」
「止まって良かった。しゃっくりも可愛かったけどな」
「ふふっ。ありがとう、悠真君」
「いえいえ」
結衣の役に立てて、彼氏として嬉しいよ。
「くすぐられるのもいい感じだったし、今後も悠真君のいる場でしゃっくりが出たらくすぐってもらおうかな」
「結衣が笑っても大丈夫そうな場所だったらな」
「結構大きな声で笑っちゃったもんね」
そう言うと、結衣は俺の胸から顔を離し、俺を見上げながら「えへへっ」と笑う。その笑顔が本当に可愛くて。俺がくすぐって、しゃっくりを止めたから引き出せた笑顔なのだと思うと嬉しくもなって。
「止めてくれてありがとう、悠真君」
お礼を言い、結衣は俺にキスしてきた。
しゃっくりを止めるためにコーヒーを飲んでいたのもあって、結衣の唇からコーヒーの味が感じられる。止めてくれてありがとう、というお礼もあり、その苦味がとても美味しく感じられたのであった。
『結衣がひっ、と可愛くしゃっくりをして。』 おわり
□後書き□
読んでいただきありがとうございます。これにて夏休み小話編は終わりです。
次の話から、2学期の内容となる2学期編になります。
8月も終盤となったある日のこと。
今日は結衣の家でお家デートをしている。
お家デートでは現在放送中のアニメを録画したものや、2人とも好きなアニメのDVDやBlu-rayを観ることが多い。
ただ、今日はいつもと違い、結衣が駅近くのレンタルショップで借りてきた劇場アニメのDVDを観ることになった。
この劇場アニメは恋愛系の少女漫画が原作。原作の漫画は結衣の部屋の本棚にあるので、俺はタイトルを知っているくらいだ。
結衣曰く、原作漫画は結構ドキドキする内容らしい。
結衣と一緒にアニメを観てみると……キスシーンが多く、終盤には肌を重ねるシーンもある。結衣と隣同士に座り、体を寄せ合いながら観ているのもあり、かなりドキドキした。主人公の女の子と相手の男の子を結衣と俺に重ねるときもあったから。
「アニメになっても、ドキドキしてキュンとなる内容だったよ!」
アニメの出来に満足したようで、結衣はニッコリとした笑顔でそう言った。ドキドキすると言っただけあって、結衣の笑顔は頬を中心に赤らんでいる。
「結衣の言う通り、ドキドキする内容だったな。キスしたり、肌を重ねたりするシーンもあったし。そういうことを結衣とはたくさんしているから」
「そうだね。そういうシーンになると、悠真君とのことを思い出すときがあったよ」
「俺もだ」
「そっか」
ふふっ、と嬉しそうに笑う結衣。きっと、俺と同じだったことが嬉しいのだろう。
体が熱いので、結衣が淹れてくれたアイスコーヒーを飲む。コーヒーの苦味が美味しくて、冷たさが全身に伝わっていく感覚が心地いい。
結衣も自分のマグカップに入っているアイスコーヒーを飲んでいる。俺と同じで体が熱く感じているのだろうか。ゴクゴクと飲んでいて。その姿は美しくて絵になるなぁ……と見入っていると、
「ごほっ! けほっ、けほっ……」
結衣が急に咳き込んだのだ。激しく咳き込んでいるから、苦しそうにも見えて。俺は結衣の背中を優しくさすった。
「大丈夫か、結衣」
「……う、うん。何とか。コーヒーを勢い良く飲んだら……肺の方に行きそうになって。それでむせちゃった……」
はあっ、はあっ……と、結衣の息が荒くなっている。
「そうだったのか。俺もそういうことあるよ。苦しいよな」
俺がそう言うと、結衣は小さく頷く。あんなに咳き込んで、呼吸が乱れるほどだ。やっぱり苦しいか。
結衣の呼吸が落ち着くまで、俺は結衣の背中を優しくさすり続けた。
「……もう大丈夫だよ、悠真君。背中をさすってくれてありがとう」
「いえいえ。呼吸が落ち着いて良かったよ」
「うん。あと、咳き込んだから、コーヒーを飲む前よりも体が熱くなっちゃった」
「激しく咳き込んでいたもんな」
俺も咳き込んだ後は体が結構熱くなる。咳き込むのって体力を使うからかな。
幸いにも今はお家デート中だ。涼しい部屋の中にいて、アイスコーヒーを少しずつ飲んでいけば、結衣の体の熱も次第に収まっていくんじゃ――。
「ひっ」
うん? 今、凄く可愛い声が聞こえたな。俺が出したわけじゃないから、これは結衣の発した声か。
「ひっ」
また同じ声が聞こえた。結衣の方から聞こえる。なので、結衣の方を見ると、
「ひっ」
結衣はそんな声を上げながら、体をピクッと震わせた。俺の推理通り、この可愛い声の主は結衣だったか。この感じからして、しゃっくりが出たのかな。
結衣は俺と目が合うと、頬をほんのりと赤くしてはにかむ。
「しゃっくり……出ちゃったみたい」
「そうか」
やっぱり、しゃっくりだったか。
結衣がしゃっくりをするところを見るのは初めてだから新鮮だな。しゃっくりでさえも可愛く見えるのはさすがは結衣というか。
「さっき咳き込んだことが原因かな」
「そうだと思う……ひっ。激しく咳き込んだから、横隔膜が痙攣しちゃったのかも」
ひっ、と結衣は語尾のようにしゃっくりをした。さっきは結構咳き込んでいたから、何度もしゃっくりが出ているな。
結衣の言う通り、何度も咳き込んでいたから、それが響いて横隔膜が痙攣し、しゃっくりが出てしまったのだろう。そんなことを考えている間にも結衣は「ひっ」としゃっくりしている。
「結構出てるな」
「うん。咳き込むよりは全然マシだけど、早く止めたいな」
「そうか。しゃっくりが出たとき、俺は一口分の水を飲んで止めることが多いよ。結衣はどうだ?」
「ひっ、私も飲み物があるときにはそれを試すよ。止まることもある」
「そうなんだ。そもそもの原因がコーヒーをゴクゴク飲んだことだけど、まずはそうするか?」
「うん。私のマグカップにまだ残っているし、ひっ、試してみる」
結衣は自分のマグカップを手にとって、アイスコーヒーをゴクッと飲む。いい飲み方だ。このやり方で止まることもあるみたいだし、今回のしゃっくりも止まってほしい――。
「ひっ」
俺の願いは届かず、結衣はしゃっくりが出てしまった。結衣がしゃっくりする姿はこれが初めてだけど、なかなか厄介な気がする。
「止まらない……ひっ」
「……そ、そうだな。絶賛痙攣中だな。他に結衣のしゃっくりが止まることのある方法ってあるか?」
「ひっ。そうだね……誰かと一緒にいるときには驚かせてもらったり、ひっ、くすぐってもらったりもするよ」
「そうか。王道な方法だな」
驚いて体が震えたり、くすぐられてたくさん笑ったりすることで、横隔膜の痙攣が止まるメカニズムなのだろう。
そういえば、小さい頃に芹花姉さんのいる前でしゃっくりが出たとき、芹花姉さんに体中をくすぐられてしゃっくりが収まった経験があったっけ。あのときの姉さん、凄く楽しそうにしていたな。思い出を振り返っている中、結衣のしゃっくりが可愛く響く。
「じゃあ、俺が結衣をくすぐろう。俺も芹花姉さんにくすぐられて止まった経験あるし」
「ありがとう。悠真君にくすぐられることは全然ないからドキドキしちゃうな……ひっ」
しゃっくりをしながらも、結衣はドキドキとした様子で言う。
思い返せば、これまでに結衣の体にはいっぱい触れてきたけど、くすぐることって全然ないな。そう思うと、俺もドキドキしてきたぞ。
「ゆ、結衣はどこをくすぐられるのが弱い? そこをくずられるのは嫌だろうけど、しゃっくりを止められる確率が高い気がするから」
「なるほど……ひっ。足の裏と腋と脇腹が弱いね。あと、首筋もビックリすることが多いかな」
「足の裏、腋、脇腹、首筋か……」
足の裏にキスしたことはないけど、それ以外の三カ所にキスすると結衣は体をピクッと震わせることはあるな。弱点として申告してくるのも納得だ。
「分かった。くすぐられてほしい場所ってある?」
「そうだね……腋かな。ひっ。悠真君の好きな場所だし」
「そ、そうだな。俺は腋が好きだ」
だから、結衣が今日着ているブラウスがノースリーブであることを嬉しく思っている。
「分かった。じゃあ、腋をくすぐるぞ」
「うんっ。ひっ。お願いします」
結衣は両腕を少し上げて、俺に腋を見せてくる。
今日も結衣の腋は綺麗で素敵だなぁ。そう思いつつ、俺は結衣の目の前に膝立ちして結衣の腋に両手を添える。その瞬間、結衣は「んっ」と可愛らしい声を漏らして、体を震わせる。これはくすぐったら効果がありそうだ。
結衣の腋に触れていることにドキドキしながら、俺は腋をくすぐり始めた。
「あははっ!」
弱点なだけあってか、くすぐり始めてさっそく結衣は大きな笑い声を出す。緩んだ笑顔からして、腋をくすぐられることに嫌だとは思っていないようだ。今の笑顔も凄く可愛いな。
さっき、結衣は誰かと一緒にいるときにしゃっくりが出るとき、驚かされることで止めてもらったとも言っていた。なので、不意打ちで首筋や脇腹をくすぐることも。そのときは、
「ひゃあっ!」
「んっ!」
といった甘い声を出し、体を大きく震わせて。結衣のその反応にドキッとさせられた。
くすぐり効果は覿面のようだ。くすぐり始めたときは定期的に出ていたしゃっくりも、段々と少なくなってきている。
「くすぐったいけど、気持ちいいくすぐりは初めてだよ……」
ふふっ、と笑いながら結衣はそう言ってくる。くすぐりは大抵いたずらや何かの罰ゲームですることだからな。今はしゃっくりを止めるためだから、結衣も気持ち良く感じられるのかもしれない。
結衣が笑う中で時折出ていたしゃっくりがすっかりと止まっていた。もう大丈夫だろう。そう判断し、結衣へのくすぐりを止める。
「止まったみたいだ」
「うん……ありがとう……」
普段よりも弱々しい声でそう言うと、結衣は前方に倒れ込む。そのことで顔が俺の胸に当たる形になる。きっと、俺にくすぐられ、たくさん笑ったことで疲れてしまったのだろう。息もそれなりに荒くなっているし。
俺は両手を結衣の背中の方に回し、結衣をそっと抱きしめる。右手で結衣の背中を優しくさする。いつも抱きしめるときよりも結衣の体が熱い。
「悠真君のくすぐり効果抜群だね。途中で首とか脇腹もくすぐられたし」
「驚かせてもらうって言っていたからさ。不意打ちでやってみた」
「なるほどね。それもあってか止まったよ……」
「止まって良かった。しゃっくりも可愛かったけどな」
「ふふっ。ありがとう、悠真君」
「いえいえ」
結衣の役に立てて、彼氏として嬉しいよ。
「くすぐられるのもいい感じだったし、今後も悠真君のいる場でしゃっくりが出たらくすぐってもらおうかな」
「結衣が笑っても大丈夫そうな場所だったらな」
「結構大きな声で笑っちゃったもんね」
そう言うと、結衣は俺の胸から顔を離し、俺を見上げながら「えへへっ」と笑う。その笑顔が本当に可愛くて。俺がくすぐって、しゃっくりを止めたから引き出せた笑顔なのだと思うと嬉しくもなって。
「止めてくれてありがとう、悠真君」
お礼を言い、結衣は俺にキスしてきた。
しゃっくりを止めるためにコーヒーを飲んでいたのもあって、結衣の唇からコーヒーの味が感じられる。止めてくれてありがとう、というお礼もあり、その苦味がとても美味しく感じられたのであった。
『結衣がひっ、と可愛くしゃっくりをして。』 おわり
□後書き□
読んでいただきありがとうございます。これにて夏休み小話編は終わりです。
次の話から、2学期の内容となる2学期編になります。
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