高嶺の花の高嶺さんに好かれまして。

桜庭かなめ

文字の大きさ
224 / 279
2学期編2

第5話『コーヒーカップ』

しおりを挟む
「やっと出られたね……」

 出口に辿り着いて、お化け屋敷の外に出ると、結衣はほっとした様子でそう言った。結衣はお化けや幽霊役の人が出てくると絶叫して、俺の腕にしがみついていたからな。外に出てほっとするのは自然なことだろう。

「そうだな、結衣。おつかれ」
「うん。薄暗いところにいたから、外がちょっと眩しく感じるよ」
「20分くらいいたからな。俺も眩しい」
「だよね。あと、中が肌寒かったから、外の暑さが何だか心地いい」
「日差しの温もりが気持ち良く感じるよな」

 並んでいるときは結構暑く感じたのに。

「お化けは怖かったけど、悠真君がいたからゴールまで辿り着けたよ。お化けが出ても動じない悠真君がかっこよかったし、お化け屋敷もいいなって思った。薄暗い中で悠真君と密着できたしね」

 結衣は俺の目を見つめながらそう言うと、ニコッと笑いかけてくれた。恋人の結衣からかっこいいと言ってもらえて嬉しいな。お化け屋敷の中では怖がる場面が多かったけど、お化け屋敷がいいなって思ってくれたことも。
 あと、薄暗い中で密着できたからというのが理由の一つなのが結衣らしい。だから、気付けば「ははっ」と笑い声が漏れていた。

「そう言ってくれて嬉しいよ。結衣と一緒にお化け屋敷に入るのは初めてだったけど、結構楽しかったよ」
「良かった。いっぱい叫んだし、悠真君の腕にしがみついてばかりだったから」
「怖がる結衣も可愛かったし、俺も結衣と密着できて嬉しかったよ」
「……そう思ってくれて良かった」

 ほっとした様子でそう言うと、結衣は嬉しそうな笑顔を見せてくれる。何度も絶叫して、俺の腕をしがみついたことが嫌かもしれないと思っていたのかもしれない。
 ――ぐううっ。
 結構大きくお腹が鳴ってしまった。結衣にも聞こえたようで、結衣は「あははっ」と楽しそうに笑う。

「お腹空いた?」
「ああ、結構空いてる。ジェットコースターやフリーフォールではかなり絶叫したからかな」
「ふふっ、そうかもね。私もお腹空いたな。お化け屋敷中心にいっぱい叫んだし」
「そっか。じゃあ、フードエリアに昼ご飯を食べに行くか」
「うん、そうしよう!」

 それから、俺達は飲食店が集まっているフードエリアへ向かう。
 フードエリアにはハンバーグやステーキ専門店、ラーメン屋さん、鶏肉料理専門店、アイスクリーム屋さんなど、様々なジャンルのお店が揃っている。
 フードエリアでは結構な数のお客さんが食事を楽しんでいて。スマホで時刻を確認すると、午後0時半過ぎになっていた。廻ったアトラクションは3つだけど、どのアトラクションでも待機列で並んだからかな。お昼時だし、お腹が空くのは当然なのかも。
 俺達はフードコートの中にある鶏肉料理の専門店に入り、俺は唐揚げ定食、結衣は親子丼を食べた。唐揚げ定食はもちろん、結衣と一口交換した親子丼も美味しくて。満足な昼食になった。

「あぁ、親子丼美味しかった!」
「唐揚げも美味しかったよ。あと、親子丼、一口くれてありがとな。親子丼も美味しかった」
「いえいえ。こちらこそ唐揚げ一つくれてありがとう。美味しかったよ」
「いえいえ」

 結衣と一緒にお店でご飯を食べるときは一口交換をするのが恒例だ。一口交換をすると毎回いいなぁって思える。これからも結衣とは交換していくだろう。

「じゃあ、遊ぶのを再開しようか」
「そうだな。お化け屋敷は俺の希望だったから、次のアトラクションは結衣の行きたいところに行きたいな」
「分かった。どこがいいかなぁ……」

 う~ん、と結衣は腕を組みながら考える。その姿も可愛らしい。
 あと、組んでいる腕の上に胸が乗っているから、いつも以上に結衣の胸が大きく見える。それに、最近Fカップになって放課後デートで下着を選んだのもあり、本当に大きく見える。

「コーヒーカップに行きたいな」
「おぉ、コーヒーカップか」
「まだ行っていない定番アトラクションがいいかなと思って。その中でもコーヒーカップが結構好きで」
「そうなんだ。俺も好きだよ。これまで遊園地に行ったときも乗ってた」
「そうなんだね! じゃあ、コーヒーカップに行こうか!」
「ああ」

 結衣は嬉しそうな様子で俺の手を握ってくる。
 俺達はコーヒーカップに向かって歩き始める。
 お昼過ぎの時間帯に差し掛かったのもあってか、園内にいるお客さんはとても多い。午後から遊びに来たというお客さんもいるのかもしれない。
 園内の所々にある案内板を頼りに、コーヒーカップへ向かう。
 定番アトラクションなのもあってか、コーヒーカップの前にも列ができている。お化け屋敷の列よりも長いな。コーヒーカップだからか、午前中に行ったアトラクションよりも子供の割合が高い。俺達は列の最後尾に並んだ。

「コーヒーカップにも列ができてるね」
「遊園地の定番だからな。お昼ご飯を食べた後だから、並ぶのはちょうどいい食休みになっていいんじゃないか? もちろん、すぐにアトラクションを楽しめるのもいいけどさ」
「そうだね。それに、悠真君と並ぶのも好きだし」
「俺も好きだぞ」
「嬉しい」

 そう言うと、結衣は俺の手を離し、俺の右腕をそっと抱きしめてきた。それもあり、右腕に結衣の胸が当たって。その部分は柔らかくて特に気持ちがいい。

「ねえ、悠真君。さっき、私がどこのアトラクションがいいかって考えているとき、私の胸を見ていたでしょ?」

 結衣はいつもよりも小さめの声でそう問いかけてくる。ニヤリとした笑顔で俺のことを見ていて。

「き、気付いてたか」
「うん。視線がちょっと下がってたし」
「そっか。組んだ腕に乗っている胸が大きいなと思って」
「なるほどね。悠真君は本当に私の胸が好きだね」
「ああ。見られて嫌だったならごめん」
「悠真君なら全然嫌じゃないし、むしろ嬉しいよ。興奮もする」
「寛大なお気持ちに感謝します」
「ふふっ」

 楽しそうに笑うと、結衣は俺の右腕を抱きしめる力を強くして。そのことで、結衣の胸の柔らかさがよりはっきりと感じられた。
 これから行くコーヒーカップのことや、午前中に乗ったアトラクションのことについて結衣と話しながら、列での時間を過ごしていく。
 並び始めてから20分ほど。俺達も乗れる番が並んできた。
 いくつもあるコーヒーカップの中の一つに、俺達は向かい合う形で座る。もうすぐでコーヒーカップがスタートするからか、結衣はワクワクとした様子だ。

「思ったよりも早く座れたね!」
「そうだな。カップがいくつもあるし、一度に多くの人が遊べるからかな」

 周りを見てみると、他のカップには俺達のようにカップルもいれば、家族や小学生と思われる数人ほどのグループもいる。一度にたくさんの人が楽しめるから、20分ほどで俺達の番になったのだろう。

『それでは、コーヒーカップスタートです!』

 女性によるアナウンスが流れ、アトラクション全体が回り始めた。
 回り始めた瞬間、子供達中心にはしゃいだ声が聞こえてくる。これまでは絶叫系ばかりでアトラクションが始まると叫び声ばかり聞こえてきたのもあり、今のような声を聞くとほっこりとした気持ちになる。
 小学生の頃、家族でドームタウンに来たときにもコーヒーカップに乗ったので、ちょっと懐かしい気持ちになる。

「始まったね、悠真君!」

 俺の目の前にもはしゃいだ声を出す人が。コーヒーカップが好きだと言っていただけあって、結衣はさっそく楽しそうにしている。そんな結衣を見ていると俺も楽しい気持ちになる。

「ジェットコースターやフリーフォールを乗ってきたから、コーヒーカップの回り方が穏やかに思えるな」
「ふふっ、そうだね。結構ゆっくりな気がするよ」
「ああ。子供達が楽しめるだけあるよな」
「そうだね。じゃあ、一緒にハンドルを回して回転を速くしてみる?」
「やってみるか」
「うんっ! 悠真君との共同作業だね!」

 とっても楽しそうに結衣は言う。俺と一緒にハンドルを回すのを共同作業と言ってきたか。もしかしたら、それがしたいのもコーヒーカップに行きたいと言った理由の一つかもしれないな。
 結衣と俺はコーヒーカップのハンドルを両手で握る。

「じゃあ、いくよ!」
「ああ。せーの!」

 俺達はコーヒーカップのハンドルを回し始める。それに伴い、俺達の乗っているコーヒーカップの回転が速くなってきた。

「おっ、速くなってきたな!」
「そうだね! あと、さすがは男の子だね。友達と一緒に乗ったときよりもハンドルが軽く感じるよ」
「ははっ、そうか。俺も大きくなったし、昔よりも軽く感じる」
「そっか。……どんどん回しちゃうよ!」

 俺達はコーヒーカップのハンドルを回し続ける。高校生になって力が付いたから、昔に比べてハンドルが回しやすいな。
 俺達が乗っているコーヒーカップの回転がかなり速くなり、周りの景色がよく見えなくなってきたぞ。

「かなり速いな。周りが全然見えない」
「そうだね! 何だか2人きりの空間にいるみたい!」
「確かにそんな感じがするな!」
「うんっ。あと、結構速く回ってるから、ちょっとスリルある!」
「そうだな!」

 結衣、満面の笑みを浮かべているな。本当に可愛い。
 ジェットコースターやフリーフォールほどではないけど、ちょっとしたスリルを味わえることが、結衣がコーヒーカップを好きな理由の一つかもしれないな。
 それからも、俺達はハンドルを全力で回すという共同作業を続けていく。その間、結衣はめちゃくちゃ楽しそうにしていた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。  とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。  ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。  お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!  ※特別編3が完結しました!(2025.12.18)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編6が完結しました!(2025.11.25)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました

藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。 次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。

ルピナス

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の藍沢直人は後輩の宮原彩花と一緒に、学校の寮の2人部屋で暮らしている。彩花にとって直人は不良達から救ってくれた大好きな先輩。しかし、直人にとって彩花は不良達から救ったことを機に一緒に住んでいる後輩の女の子。直人が一定の距離を保とうとすることに耐えられなくなった彩花は、ある日の夜、手錠を使って直人を束縛しようとする。  そして、直人のクラスメイトである吉岡渚からの告白をきっかけに直人、彩花、渚の恋物語が激しく動き始める。  物語の鍵は、人の心とルピナスの花。たくさんの人達の気持ちが温かく、甘く、そして切なく交錯する青春ラブストーリーシリーズ。 ※特別編-入れ替わりの夏-は『ハナノカオリ』のキャラクターが登場しています。  ※1日3話ずつ更新する予定です。

恋人、はじめました。

桜庭かなめ
恋愛
 紙透明斗のクラスには、青山氷織という女子生徒がいる。才色兼備な氷織は男子中心にたくさん告白されているが、全て断っている。クールで笑顔を全然見せないことや銀髪であること。「氷織」という名前から『絶対零嬢』と呼ぶ人も。  明斗は半年ほど前に一目惚れしてから、氷織に恋心を抱き続けている。しかし、フラれるかもしれないと恐れ、告白できずにいた。  ある春の日の放課後。ゴミを散らしてしまう氷織を見つけ、明斗は彼女のことを助ける。その際、明斗は勇気を出して氷織に告白する。 「これまでの告白とは違い、胸がほんのり温かくなりました。好意からかは分かりませんが。断る気にはなれません」 「……それなら、俺とお試しで付き合ってみるのはどうだろう?」  明斗からのそんな提案を氷織が受け入れ、2人のお試しの恋人関係が始まった。  一緒にお昼ご飯を食べたり、放課後デートしたり、氷織が明斗のバイト先に来たり、お互いの家に行ったり。そんな日々を重ねるうちに、距離が縮み、氷織の表情も少しずつ豊かになっていく。告白、そして、お試しの恋人関係から始まる甘くて爽やかな学園青春ラブコメディ!  ※夏休み小話編2が完結しました!(2025.10.16)  ※小説家になろう(N6867GW)、カクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想などお待ちしています。

処理中です...