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2学期編2
第7話『遊園地デートからの帰り』
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観覧車を降りた俺達は、帰るためにドームタウンの出入口ゲートに向かって歩いていく。
日の入りの時間間近なのもあってか、観覧車に行こうと決めたときよりもさらに人の数は少なくなっている。俺達のように、ゲートの方に向かって歩く人もちらほらと見受けられる。
「ねえ、悠真君。ドームタウンを出る前に、お土産屋さんに行かない? 遊園地に行くと帰り際に寄ることが多くて」
「そうなんだ。俺もこれまで遊園地に行ったときは、帰るときにお土産屋さんに行くことが多かったな。よし、行くか」
「うんっ。ゲートの近くにお土産さんがあるよ」
「分かった」
お土産屋さんか。お菓子でもグッズでも、何かいいものがあったら買いたいな。
それから少しの間ドームタウンの中を歩くと、外に繋がるゲートが見えてきた。そのとき、結衣が「あそこがお土産さんだよ」と近くにあるお土産屋さんを指さしたので、俺達はお店の中に入る。
店内に入ると、東都ドームタウンのグッズやお菓子、すぐ近くにある東都ドームがホームグラウンドであるプロ野球チームのマスコットキャラクターを使ったグッズなど、様々なものが売られている。
俺達のように帰り際にお土産を買おうと考える人がいるのだろうか。店内にはそれなりにお客さんがおり、賑わっている。
「色々なものが売られてるなぁ」
「そうだね! お菓子とかグッズを買ったりするよ」
「そっか。そういえば、ここを含めて家族で遊園地に行ったときは、両親にクッキーやキャンディーとかお菓子中心に色々と買ってもらったな。旅行先にある遊園地だと、その地域限定の味のお菓子とかも」
「私も買ってもらったな。柚月と一緒にお願いして買ってもらうこともあったっけ」
「そうだったんだ。俺も芹花姉さんに頼まれて、両親にお菓子とかグッズを買ってって一緒にお願いしたことがあったな」
「ふふっ、そうだったんだね」
結衣に話したら、今まで行った遊園地のお土産屋さんでのことを次々と思い出してきた。結衣に話した通り、両親に色々と買ってもらったっけ。
「今まで親に買ってもらったし、感謝を込めて家族へのお土産にお菓子を買おうかな。今はバイトとか、あっちの活動でお金を稼いでいるし」
あっちの活動というのは、低変人という名前で動画サイトにインストゥルメンタルの曲を公開していることだ。正体が俺であることは家族や結衣達以外には一切明かしていないので、周りに人がいるこの場では「あっちの活動」と言った。
「いいね! 私も家族にお土産でお菓子を買おっと。夏休みに稼いだバイト代もまだまだあるし。それに、フリーパスのペアチケットおかげでタダで遊べたしね」
「ああ。そのチケットを俺達に譲ってくれたお礼に、結衣のご家族に何か買いたいな思ってる」
「そうだね、買っていこう。姫奈ちゃんや胡桃ちゃん達も買っていく?」
「買おうか。せっかくドームタウンに来たんだし」
「うんっ」
その後、俺と結衣はそれぞれの家族にクッキー。チケットを譲ってくれたお礼として結衣の家族にチョコクランチ。胡桃や伊集院さん達にはイチゴ味のキャンディーを買うことに。チョコクランチとキャンディーは割り勘で買うことに決めた。
お菓子コーナーを一通り見た後、俺達はグッズコーナーを見ていく。
日用品や文房具品、おもちゃなど幅広く展開されている。そんな中で、
「これいいな……」
黒、赤、青、緑の4色ボールペンに目が止まった。メタリックな素材で作られており、『TOTO DOME TOWN』と東都ドームタウンのロゴが入ったシンプルなデザインだ。ボールペン本体の色は銀、赤、青、ピンク、水色などたくさんある。
試しに銀のボールペンを持ってみると……うん、結構持ちやすいな。
「4色ボールペンだね」
「ああ。ボールペンは黒、赤、青を持っているけど、それぞれ違うペンだし。だから、こういう4色ボールペンを持つのもいいかなと思って」
「いいと思う。私も3色ボールペンを持っているけど、持ちかえずに色を変えられて便利だし。芯を自分で替えられるから何年も使ってる。見た感じ、このボールペンも芯を替えられるみたいだね」
「そうなんだ。じゃあ、この4色ボールペンを買おうかな。これ、持ちやすいし」
「いいね! ……私も買おうかな。シンプルなデザインで良さげだし、悠真君とお揃いのボールペンを持ちたいから」
「いいじゃないか。じゃあ、初めての遊園地デート記念にこの4色ボールペンを買うか」
「うんっ」
結衣は嬉しそうに返事した。可愛いな。
試しに結衣も4色ボールペンを持ってみると、結衣も持ちやすいという。良かった。
ボールペン本体の色はたくさんあるけど、俺は青、結衣は赤のボールペンを選んだ。普段から使うものが結衣とお揃いなのはいいなって思う。それに、お揃いのこのボールペンを使えば、これからの学校の勉強をより頑張れそうな気がする。
グッズも一通り見た後、俺達はレジでお土産やお揃いのボールペンを購入した。
お土産屋さんを後にして、俺達は東都ドームタウンのゲートを出た。その頃には日もだいぶ暮れて、空も結構暗くなってきていた。
「悠真君との初めての遊園地デート楽しかった!」
「楽しかったな、結衣」
「うんっ。楽しかったし、午前中からずっといたから、ドームタウンから離れるのが何だか寂しいな」
「俺もだよ」
そういえば、夏休み中に行った伊豆旅行から帰ってくるときも、結衣は寂しいって言っていたな。楽しい思い出ができた場所から離れると、寂しくなりやすい性格なのかもしれない。
「また、ここにデートしに来よう、結衣」
「……うんっ。そうだね!」
結衣はニコッと笑いながらそう言った。今日の遊園地デートが楽しかったから、これからのデートの定番になるだろう。今回来たドームタウンはもちろん、他の遊園地にもデートしに行ってみたいな。
「デートはもちろん、姫奈ちゃんや胡桃ちゃん、千佳先輩達とも来てみたいな」
「そうだな。みんなで遊ぶのも面白そうだよな」
ジェットコースターやフリーフォールなど、みんなで一緒に遊べるアトラクションはいっぱいあるし。みんなでワイワイと遊園地で遊ぶのも楽しそうだ。
最寄り駅の水車橋駅に行き、行きのルートを戻る形で武蔵金井駅へと帰っていく。
日曜日だけど、午後6時台は帰宅ラッシュなのだろうか。水車橋駅で乗った電車も、途中の五ツ谷駅で乗り換えた電車も座ることはできなかった。ただ、結衣と話しているし、遊園地デートが楽しかったのもあって、立っているのは全く苦に感じなかった。
武蔵金井駅に到着し、俺は結衣と一緒に結衣の家に行くことに。チケットのお礼に買ったチョコクランチを渡したいのと、金井に戻ってきたときには夜になり、暗くなっていたので結衣を家まで送りたいからだ。
「家に着くまで悠真君と一緒にいられて嬉しいよ!」
結衣は上機嫌な様子でそう言う。可愛いな。
「俺も嬉しいよ。少しでも長く、結衣と一緒にいられるから」
「悠真君がそう言ってくれることも嬉しいよ」
ふふっ、と結衣は声に出して笑った。
それから数分ほど歩いて、結衣の家に到着した。ご家族は在宅中ということもあって、家からは明かりが見える。
結衣は家の玄関を開けて、
「ただいまー! 悠真君も来たよー!」
家に入るや否や、結衣はとても元気のいい声でそう言った。
夕飯を作っているのだろうか。家に入った瞬間から、食欲をそそるいい匂いがしてくる。お昼ご飯を食べた後は、麦茶やレモン味の塩タブレットくらいしか口にしていないので、この匂いはとても魅力的に感じる。
「おかえり、お姉ちゃん! 悠真さん来たんだ!」
「おかえりなさい、結衣。低田君、いらっしゃい」
「おかえり、結衣。いらっしゃい、低田君」
ほぼ同じタイミングで、階段から結衣の妹の柚月ちゃんが降りてきて、リビングからは父親の卓哉さん、母親の裕子さんが出てきた。柚月ちゃんと裕子さんは嬉しそうで、卓哉さんはちょっと驚いた様子だ。
「まさか悠真さんが来るとは思わなかったよ」
「お母さんも予想外」
「父さんもだよ」
きっと、武蔵金井駅で俺と別れて、結衣は一人で帰宅すると思っていたのだろう。これまでのデートでもこういうことは何度もあったし。
「みなさん、こんばんは。フリーパスのペアチケットを使って、今日は結衣と一緒にドームタウンで一日楽しく過ごせました。ありがとうございました」
「みんなありがとう!」
結衣と俺は、結衣のご家族にフリーパスのペアチケットを譲ってくれたことについてお礼を言った。
「いえいえ。あのチケットを私にくれた同僚も喜ぶと思うよ」
「ペアチケットって聞いたときから、お姉ちゃんと悠真さんで使うのが一番いいんじゃないかと思ったんで」
「お母さんもよ」
卓哉さん、柚月ちゃん、裕子さんは優しい笑顔でそう言ってくれた。結衣のご家族はみんな優しいと改めて思う。
「チケットのお礼を言うことと、ささやかですがドームタウンのお土産屋さんで結衣と一緒にチョコクラフトを買ってきたので直接渡したくて」
「チョコクラフトですか! 嬉しいですっ!」
「柚月はチョコ系のお菓子が好きだものね。ありがとう」
「ありがとう、結衣、低田君」
俺はドームタウンのお土産屋さんの手提げからチョコクラフトを取り出し、一番喜んでいる柚月ちゃんに渡した。
3人は嬉しそうにしていて。お土産を買って、お礼を言いに結衣の家まで来て良かったな。
「じゃあ、俺はこれで帰ります」
「うん。悠真君、今日はとても楽しかったよ。また明日、学校でね」
「ああ、また明日な。俺も楽しかったよ。ありがとう」
「こちらこそ」
俺から結衣にキスをして、結衣の家を後にした。
今日は朝からずっと結衣と一緒にいたので、一人になるとちょっと寂しい気持ちになる。ただ、また明日学校で会えると思うと、寂しい気持ちも段々と和らいでいく。
帰宅して、両親と芹花姉さんにドームタウンのお土産のクッキーを渡すと、
「まさか、結衣ちゃんとのデートでお土産を買ってきてくれるとは思わなかったよ! 凄く嬉しいよ、ユウちゃん!」
「昔は遊園地に行くと、クッキーとかキャンディーとかお菓子中心にお土産を買ったわね」
「そうだなぁ。まさか、息子が遊園地のお土産を買ってきてくれる日が来るとは。嬉しいね」
と、芹花姉さん中心に喜んでくれた。
さっそく、夕食後のデザートとしてみんなでクッキーを食べる。結構美味しくて、家族みんなも美味しそうに食べていた。芹花姉さんは、
「凄く美味しいよ、ユウちゃん……!」
と、感涙するほどで。
また、結衣と柚月ちゃんから、家族みんなでチョコクラフトを美味しくいただいたとメッセージが届いた。お礼として渡したお菓子を気に入ってもらえて何よりだ。お土産やお礼のお菓子を買ってきて良かった。
結衣と初めての遊園地デートをした一日は、嬉しい気持ちの中で終わるのであった。
日の入りの時間間近なのもあってか、観覧車に行こうと決めたときよりもさらに人の数は少なくなっている。俺達のように、ゲートの方に向かって歩く人もちらほらと見受けられる。
「ねえ、悠真君。ドームタウンを出る前に、お土産屋さんに行かない? 遊園地に行くと帰り際に寄ることが多くて」
「そうなんだ。俺もこれまで遊園地に行ったときは、帰るときにお土産屋さんに行くことが多かったな。よし、行くか」
「うんっ。ゲートの近くにお土産さんがあるよ」
「分かった」
お土産屋さんか。お菓子でもグッズでも、何かいいものがあったら買いたいな。
それから少しの間ドームタウンの中を歩くと、外に繋がるゲートが見えてきた。そのとき、結衣が「あそこがお土産さんだよ」と近くにあるお土産屋さんを指さしたので、俺達はお店の中に入る。
店内に入ると、東都ドームタウンのグッズやお菓子、すぐ近くにある東都ドームがホームグラウンドであるプロ野球チームのマスコットキャラクターを使ったグッズなど、様々なものが売られている。
俺達のように帰り際にお土産を買おうと考える人がいるのだろうか。店内にはそれなりにお客さんがおり、賑わっている。
「色々なものが売られてるなぁ」
「そうだね! お菓子とかグッズを買ったりするよ」
「そっか。そういえば、ここを含めて家族で遊園地に行ったときは、両親にクッキーやキャンディーとかお菓子中心に色々と買ってもらったな。旅行先にある遊園地だと、その地域限定の味のお菓子とかも」
「私も買ってもらったな。柚月と一緒にお願いして買ってもらうこともあったっけ」
「そうだったんだ。俺も芹花姉さんに頼まれて、両親にお菓子とかグッズを買ってって一緒にお願いしたことがあったな」
「ふふっ、そうだったんだね」
結衣に話したら、今まで行った遊園地のお土産屋さんでのことを次々と思い出してきた。結衣に話した通り、両親に色々と買ってもらったっけ。
「今まで親に買ってもらったし、感謝を込めて家族へのお土産にお菓子を買おうかな。今はバイトとか、あっちの活動でお金を稼いでいるし」
あっちの活動というのは、低変人という名前で動画サイトにインストゥルメンタルの曲を公開していることだ。正体が俺であることは家族や結衣達以外には一切明かしていないので、周りに人がいるこの場では「あっちの活動」と言った。
「いいね! 私も家族にお土産でお菓子を買おっと。夏休みに稼いだバイト代もまだまだあるし。それに、フリーパスのペアチケットおかげでタダで遊べたしね」
「ああ。そのチケットを俺達に譲ってくれたお礼に、結衣のご家族に何か買いたいな思ってる」
「そうだね、買っていこう。姫奈ちゃんや胡桃ちゃん達も買っていく?」
「買おうか。せっかくドームタウンに来たんだし」
「うんっ」
その後、俺と結衣はそれぞれの家族にクッキー。チケットを譲ってくれたお礼として結衣の家族にチョコクランチ。胡桃や伊集院さん達にはイチゴ味のキャンディーを買うことに。チョコクランチとキャンディーは割り勘で買うことに決めた。
お菓子コーナーを一通り見た後、俺達はグッズコーナーを見ていく。
日用品や文房具品、おもちゃなど幅広く展開されている。そんな中で、
「これいいな……」
黒、赤、青、緑の4色ボールペンに目が止まった。メタリックな素材で作られており、『TOTO DOME TOWN』と東都ドームタウンのロゴが入ったシンプルなデザインだ。ボールペン本体の色は銀、赤、青、ピンク、水色などたくさんある。
試しに銀のボールペンを持ってみると……うん、結構持ちやすいな。
「4色ボールペンだね」
「ああ。ボールペンは黒、赤、青を持っているけど、それぞれ違うペンだし。だから、こういう4色ボールペンを持つのもいいかなと思って」
「いいと思う。私も3色ボールペンを持っているけど、持ちかえずに色を変えられて便利だし。芯を自分で替えられるから何年も使ってる。見た感じ、このボールペンも芯を替えられるみたいだね」
「そうなんだ。じゃあ、この4色ボールペンを買おうかな。これ、持ちやすいし」
「いいね! ……私も買おうかな。シンプルなデザインで良さげだし、悠真君とお揃いのボールペンを持ちたいから」
「いいじゃないか。じゃあ、初めての遊園地デート記念にこの4色ボールペンを買うか」
「うんっ」
結衣は嬉しそうに返事した。可愛いな。
試しに結衣も4色ボールペンを持ってみると、結衣も持ちやすいという。良かった。
ボールペン本体の色はたくさんあるけど、俺は青、結衣は赤のボールペンを選んだ。普段から使うものが結衣とお揃いなのはいいなって思う。それに、お揃いのこのボールペンを使えば、これからの学校の勉強をより頑張れそうな気がする。
グッズも一通り見た後、俺達はレジでお土産やお揃いのボールペンを購入した。
お土産屋さんを後にして、俺達は東都ドームタウンのゲートを出た。その頃には日もだいぶ暮れて、空も結構暗くなってきていた。
「悠真君との初めての遊園地デート楽しかった!」
「楽しかったな、結衣」
「うんっ。楽しかったし、午前中からずっといたから、ドームタウンから離れるのが何だか寂しいな」
「俺もだよ」
そういえば、夏休み中に行った伊豆旅行から帰ってくるときも、結衣は寂しいって言っていたな。楽しい思い出ができた場所から離れると、寂しくなりやすい性格なのかもしれない。
「また、ここにデートしに来よう、結衣」
「……うんっ。そうだね!」
結衣はニコッと笑いながらそう言った。今日の遊園地デートが楽しかったから、これからのデートの定番になるだろう。今回来たドームタウンはもちろん、他の遊園地にもデートしに行ってみたいな。
「デートはもちろん、姫奈ちゃんや胡桃ちゃん、千佳先輩達とも来てみたいな」
「そうだな。みんなで遊ぶのも面白そうだよな」
ジェットコースターやフリーフォールなど、みんなで一緒に遊べるアトラクションはいっぱいあるし。みんなでワイワイと遊園地で遊ぶのも楽しそうだ。
最寄り駅の水車橋駅に行き、行きのルートを戻る形で武蔵金井駅へと帰っていく。
日曜日だけど、午後6時台は帰宅ラッシュなのだろうか。水車橋駅で乗った電車も、途中の五ツ谷駅で乗り換えた電車も座ることはできなかった。ただ、結衣と話しているし、遊園地デートが楽しかったのもあって、立っているのは全く苦に感じなかった。
武蔵金井駅に到着し、俺は結衣と一緒に結衣の家に行くことに。チケットのお礼に買ったチョコクランチを渡したいのと、金井に戻ってきたときには夜になり、暗くなっていたので結衣を家まで送りたいからだ。
「家に着くまで悠真君と一緒にいられて嬉しいよ!」
結衣は上機嫌な様子でそう言う。可愛いな。
「俺も嬉しいよ。少しでも長く、結衣と一緒にいられるから」
「悠真君がそう言ってくれることも嬉しいよ」
ふふっ、と結衣は声に出して笑った。
それから数分ほど歩いて、結衣の家に到着した。ご家族は在宅中ということもあって、家からは明かりが見える。
結衣は家の玄関を開けて、
「ただいまー! 悠真君も来たよー!」
家に入るや否や、結衣はとても元気のいい声でそう言った。
夕飯を作っているのだろうか。家に入った瞬間から、食欲をそそるいい匂いがしてくる。お昼ご飯を食べた後は、麦茶やレモン味の塩タブレットくらいしか口にしていないので、この匂いはとても魅力的に感じる。
「おかえり、お姉ちゃん! 悠真さん来たんだ!」
「おかえりなさい、結衣。低田君、いらっしゃい」
「おかえり、結衣。いらっしゃい、低田君」
ほぼ同じタイミングで、階段から結衣の妹の柚月ちゃんが降りてきて、リビングからは父親の卓哉さん、母親の裕子さんが出てきた。柚月ちゃんと裕子さんは嬉しそうで、卓哉さんはちょっと驚いた様子だ。
「まさか悠真さんが来るとは思わなかったよ」
「お母さんも予想外」
「父さんもだよ」
きっと、武蔵金井駅で俺と別れて、結衣は一人で帰宅すると思っていたのだろう。これまでのデートでもこういうことは何度もあったし。
「みなさん、こんばんは。フリーパスのペアチケットを使って、今日は結衣と一緒にドームタウンで一日楽しく過ごせました。ありがとうございました」
「みんなありがとう!」
結衣と俺は、結衣のご家族にフリーパスのペアチケットを譲ってくれたことについてお礼を言った。
「いえいえ。あのチケットを私にくれた同僚も喜ぶと思うよ」
「ペアチケットって聞いたときから、お姉ちゃんと悠真さんで使うのが一番いいんじゃないかと思ったんで」
「お母さんもよ」
卓哉さん、柚月ちゃん、裕子さんは優しい笑顔でそう言ってくれた。結衣のご家族はみんな優しいと改めて思う。
「チケットのお礼を言うことと、ささやかですがドームタウンのお土産屋さんで結衣と一緒にチョコクラフトを買ってきたので直接渡したくて」
「チョコクラフトですか! 嬉しいですっ!」
「柚月はチョコ系のお菓子が好きだものね。ありがとう」
「ありがとう、結衣、低田君」
俺はドームタウンのお土産屋さんの手提げからチョコクラフトを取り出し、一番喜んでいる柚月ちゃんに渡した。
3人は嬉しそうにしていて。お土産を買って、お礼を言いに結衣の家まで来て良かったな。
「じゃあ、俺はこれで帰ります」
「うん。悠真君、今日はとても楽しかったよ。また明日、学校でね」
「ああ、また明日な。俺も楽しかったよ。ありがとう」
「こちらこそ」
俺から結衣にキスをして、結衣の家を後にした。
今日は朝からずっと結衣と一緒にいたので、一人になるとちょっと寂しい気持ちになる。ただ、また明日学校で会えると思うと、寂しい気持ちも段々と和らいでいく。
帰宅して、両親と芹花姉さんにドームタウンのお土産のクッキーを渡すと、
「まさか、結衣ちゃんとのデートでお土産を買ってきてくれるとは思わなかったよ! 凄く嬉しいよ、ユウちゃん!」
「昔は遊園地に行くと、クッキーとかキャンディーとかお菓子中心にお土産を買ったわね」
「そうだなぁ。まさか、息子が遊園地のお土産を買ってきてくれる日が来るとは。嬉しいね」
と、芹花姉さん中心に喜んでくれた。
さっそく、夕食後のデザートとしてみんなでクッキーを食べる。結構美味しくて、家族みんなも美味しそうに食べていた。芹花姉さんは、
「凄く美味しいよ、ユウちゃん……!」
と、感涙するほどで。
また、結衣と柚月ちゃんから、家族みんなでチョコクラフトを美味しくいただいたとメッセージが届いた。お礼として渡したお菓子を気に入ってもらえて何よりだ。お土産やお礼のお菓子を買ってきて良かった。
結衣と初めての遊園地デートをした一日は、嬉しい気持ちの中で終わるのであった。
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