高嶺の花の高嶺さんに好かれまして。

桜庭かなめ

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2学期編2

第11話『ビデオ通話』

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 午後になってからも、芹花姉さんから旅行中の出来事のメッセージや写真が何度か送られてきた。それを見る限りでは、姉さんは北海道旅行を満喫しているようだ。
 授業間の10分休みや放課後にあるバイトの休憩で、芹花姉さんからのメッセージや写真があるかどうか見るのが習慣になった。姉さんの楽しげなメッセージや写真を見ると、学校やバイトの疲れが取れていった。



 夜。
 バイトから帰ってきた俺は夕食を食べ終え、今は自分の部屋で今日の授業で出た課題を片付けている。課題は今日の授業でやった範囲なので、ちょうどいい復習にもなる。

「……静かだな」

 普段、ファミレスのバイトで芹花姉さんが夜遅くにならないと帰ってこないこともある。ただ、旅行中で今日は帰ってくることはないと分かっているから、とても静かに感じるのだ。そんなことを思いながら、課題を進めていった。
 ――プルルッ。
 課題が一段落したとき、ローテーブルに置いてあるスマホが鳴った。この鳴り方だとメッセージか。今回も芹花姉さんかな。それとも結衣達かな。
 さっそくスマホを手に取り、スリープ状態を解除すると、LIMEを通じて芹花姉さんからメッセージが送られたと通知が。その通知をタップすると、姉さんとの個別トークが開き、

『ユウちゃん。今から通話していい? ビデオ通話で』

 とメッセージが表示された。離れた場所にいるから、普通の通話じゃなくて顔が見られるビデオ通話がいいと思ったのかも。
 そういえば、これまではメッセージと写真だけで、電話は一度もかかってこなかったな。昨日、旅行中はメッセージや電話をしてきていいと言ったけど。学校やバイトがあると思って、夜になるまで電話はしないと決めていたのかな。それとも、ようやく落ち着いて電話できる状況になったのか。
 いいぞ、と返信すると、直後に『既読』マークとなり、芹花姉さんからビデオ通話がかかってきた。物凄く早いな。さすがだ。
 応答ボタンをタップすると、画面には芹花姉さんが表示された。姉さんは浴衣を着ている。ホテルのものかな。温泉に入ってきたのか、姉さんの肌はほんのりと赤くなっており、髪型も普段のワンサイドアップではなくストレートになっている。
 芹花姉さん側も俺の顔が映ったようで、姉さんはニコッと笑って手を振ってくる。画面が全然ブレていないから、スマホ立てを使ってテーブルにでも置いているのかな。

『ユウちゃん! こんばんは!』
「こんばんは、姉さん」

 芹花姉さんに倣って、俺も手を振った。

「姉さん、ここまで旅行はどう? 楽しげな写真が結構送られてきているけど」
『凄く楽しんでるよ! 彩乃ちゃんとか友達が何人もいるし。ユウちゃんとも定期的にLIMEしてるし』
「ははっ、そっか。楽しめているなら良かったよ」

 昨日の夜は寂しそうにしていたし、今日も学校に行くときはちょっと寂しそうだったから。月読さんとか友達が一緒なのが大きいか。これまでと変わらず、芹花姉さんは俺と離れていても旅行をちゃんと楽しめているか。

「ちなみに、姉さんが今いるところって、泊まっているホテルの部屋か?」
『うんっ! 彩乃ちゃんと一緒に泊まっている部屋だよ。どんな部屋か見てみたい?』
「そうだな、せっかくだし」
『分かった。……彩乃ちゃん、部屋の中を映してもいい? ユウちゃんに見せたいの』
『いいよー』

 月読さんのそんな声が聞こえた直後、画面には部屋の中の様子が映っていく。どうやら、ツインルームのようだ。結構広そうで、雰囲気もいい感じで。姉さんと同じ浴衣を着ているベッドに座っている月読さんの姿も見えた。

「おおっ、いい感じの部屋だな」
『いいでしょう? 札幌にあるホテルで、ここに2泊するんだ。ちなみに、夜景はこんな感じ』

 芹花姉さんは部屋の窓から見える札幌の夜景を映してくれる。札幌市は北海道の県庁所在地だし、北海道一の都市だから結構明るいな。

「おっ、綺麗な夜景だ」
『綺麗だよね。今は夜でこういう景色だけど、10階にある部屋だから、結構広い景色なんだよ』
「そうなんだ。いいホテルに泊まっているんだな。見せてくれてありがとう」
『いえいえ』

 芹花姉さんがそう言うと、部屋の中を映す前と同じアングルの映像になる。

「浴衣姿だし、髪型もストレートになってるから、ホテルの温泉に入ったのか?」
『うんっ! さっきまで入ってたんだ。彩乃ちゃん達と一緒に入ったよ。凄く気持ち良かった! あと、こっちは日が暮れると結構寒くなるから、露天風呂は特に温泉の温かさが気持ち良かったよ』
「そうだったんだ。姉さん、温泉が楽しみだって言っていたから、温泉を楽しめたようで良かったよ」
『うんっ! 彩乃ちゃん達と初めて一緒に入ったしね』
『私も芹花ちゃんと一緒に温泉入れてが楽しかったよ』

 月読さんのそんな声が聞こえると、芹花姉さんの横に浴衣姿の月読さんが現れる。姉さんと同じく、肌がほんのりと赤くなっていて。大学1年生なのもあり、年上の女性の艶っぽさが感じられる。姉さんもいつもよりも大人っぽい雰囲気だ。

『悠真君、こんばんは。彩乃です』
「こんばんは、月読さん。悠真です」

 挨拶して軽く頭を下げると、月読さんはさっきの姉さんのように笑顔で手を振ってくる。なので、俺も月読さんに手を振った。

「姉さんは旅行をとても楽しんでいるそうですが、月読さんはどうですか?」
『凄く楽しいよ! 芹花ちゃんと初めての旅行だし。芹花ちゃん達と色々なグルメを楽しんで、札幌の観光をして、アニメで出た場所に行って、さっきは一緒に温泉に入って。凄く幸せな時間を過ごしてるよ』

 月読さんは言葉通りの幸せそうな笑顔でそう語る。月読さんも旅行を楽しめているか。良かった。また、すぐ横から、明るい笑顔で月読さんを見ている芹花姉さんが印象的で。

「月読さんも楽しめていて良かったです」
『うんっ。特に温泉が楽しかったよ。私もお風呂に入るのが好きだし。あと、芹花ちゃんは脱いでも綺麗だなって』
『ふふっ、ありがとう。彩乃ちゃんの体も綺麗だったよ。スタイルいいなって思った』
『ありがとう。ホテルの夕食をたくさん食べた後だったからちょっと不安だったけど、芹花ちゃんにそう言ってもらえて嬉しいな……』

 芹花姉さんと彩乃さんは笑い合っている。
 ただ、月読さんの笑顔はうっとりとしたもので。芹花姉さんのスタイルはかなりいいから、そんな姉さんから体のことを褒められて凄く嬉しいのかもしれない。
 ただ、このうっとりとした笑顔を見ていると、月読さんは芹花姉さんに対して恋愛的な気持ちがありそうにも見えて。……俺の考え過ぎかな。最近触れたガールズラブの漫画やアニメで、主人公の女子がヒロインの女子にうっとりと見つめるシーンがあったからその影響かも。

『ユウちゃんは今日はどうだった?』
「いつも通りの平日だったよ。ただ、姉さんがメッセージと写真を送ってくれたから、結衣達との話題は姉さんのことや北海道のことがメインだったな。昼休みは特に盛り上がったよ」
『そうだったんだ! あと、お昼にお弁当を持ってる写真を送ってくれたよね』
『私も見たよ。あれ、いい写真だよね。他の子達も見て、悠真君がかっこいいとか、結衣ちゃん達が可愛いって言っていたよ』
『言ってたね。姉として誇らしかったよ』
『芹花ちゃん、ドヤ顔になってたよね』
「ははっ、そうでしたか」

 俺がかっこいいと言われるのも嬉しいけど、結衣達が可愛いと言ってもらえることの方がより嬉しいと思える。あと、昼休みに撮った写真が芹花姉さん達の話のネタになったことも。

「メッセージと写真を送られてきましたけど、電話で姉さんと月読さんから旅行が楽しいって聞けて良かったです」
『そう言ってくれて良かった! 今はユウちゃんと離れているけど、ビデオ通話で話せて良かったよ。画面越しにユウちゃんの顔を見られたし』
『芹花ちゃん、今日一番の笑顔だね。本当に悠真君のことが好きなんだね』
『うんっ!』

 相手が月読さんだからなのもあるだろうけど、満面の笑顔で肯定できるところが芹花姉さんらしいと思う。そんな姉さんを見て頬が緩んでいくのが分かった。

『私も悠真君と話せて良かったよ』
「そうですか。俺も月読さんとも話せて良かったです。月読さん、明日以降も姉のことをよろしくお願いします。俺と離れているので寂しがるかもしれませんが……」
『ふふっ、分かりました。芹花ちゃんのことは任せてね。同じ部屋に泊まるから、私が一番一緒にいるし』
『ユウちゃんがいないのは寂しいけど、彩乃ちゃん達が一緒にいるから大丈夫だよっ』
「ははっ、そっか」

 送ってきてくれた写真の中には月読さん達と一緒に楽しそうに写っていた写真が何枚もあったし、今も月読さんと楽しそうにしているもんな。大丈夫そうか。

『明日も明後日もメッセージと写真送るからね。明日も夜にまた電話しようね、ユウちゃん』
「ああ、分かった。明日以降も旅行を楽しんでください」
『うんっ!』
『ありがとう、悠真君』
『じゃあ、早いけどおやすみ、ユウちゃん!』
『おやすみ、悠真君』
「おやすみなさい」

 俺がそう言うと、芹花姉さんの方から通話を切った。
 画面越しでも、芹花姉さんの顔を見ながら話すことができて良かった。月読さんとも久しぶりに話せたし。姉さんが旅行が楽しいと笑顔で話してくれることが嬉しくて。姉さんの笑顔を思い出すと胸が温かくなる。

「……寂しいのは姉さんだけじゃなかったんだな」

 俺も芹花姉さんがいなくて寂しく思っているんだ。一緒に住んでいる姉さんがいないから。学校では結衣達と、バイト先では中野先輩と一緒にいたから自覚してなかったけど。
 芹花姉さん。明日と明後日も旅行を楽しんでくれ。帰ってきたら、お土産話をたくさん聞かせてほしい。
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