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2学期編4
第2話『いつもと違うこと。同じこと。』
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「いってきます、母さん、芹花姉さん」
「いってらっしゃい、悠真」
「いってらっしゃい、ユウちゃん!」
10月18日、金曜日。
午前8時過ぎ。
俺は通っている東京都立金井高等学校に向けて家を出発する。
文化祭の代休が明け、今日から再び学校生活が始まる。といっても、金曜日なので今日登校すれば明日と明後日はお休みだけど。なので、いつもの連休明けとはちょっと違った感覚だ。
あと、授業があるのは……先週の水曜日以来か。登校自体は文化祭の片付けをした今週の月曜日以来だけど、結構久しぶりな感じがする。
「日差しが温かいなぁ」
今日は朝からよく晴れており、今も日差しが直接当たっている。ブレザーのジャケットを着ているけど、暑苦しさはなく、むしろ心地良く感じられる。着々と秋が深まっているのだと実感する。今後は日差しの温もりがもっと気持ち良くなって、やがて恋しくも思えてくるのだろう。
季節の進みを実感しながら、俺は金井高校に向かって歩いていく。
数分ほど歩くと、金井高校が見えてきた。
文化祭のときは校門にアーケードがあったり、アーケードの奥に屋台が見えたり、校舎のところどころに装飾がなされたりしていたけど、それらは全て片付けられており、通常の金井高校の風景が見える。文化祭が終わって、いつも通りの高校生活に戻ったのだと実感する。
また、今は登校する生徒の時間帯なので、周りには金井高校の制服を着た人が多い。それはいつも通りだ。
ただ、歩いている生徒達の中には、俺のことを見ている生徒がちらほらと。これはいつもとは違った光景だ。ただ、不機嫌そうだったり、馬鹿にした笑顔だったりする生徒はいないので悪い理由ではなさそうだ。
校門に入ると、俺を見てくる生徒の数が増える。そんな中、
「あっ、低田君だ。文化祭の執事喫茶での接客凄く良かったし、かっこよかった~!」
「かっこよかったよね! 接客も執事の口調も様になっていたもんね」
「1年の低田君だ。弾き語りライブ良かったよね!」
「良かったよね! 歌もギターの演奏も上手かったもんね! あと、最後に恋人の高嶺さんに好きだって言ったのもキュンとなったよね!」
「分かるっ! 高嶺さんが凄く羨ましいよぉ~」
「弾き語りライブをやった低田だ。あのライブ良かったなぁ」
「良かったよな。俺、体育館でのステージで一番良かったと思ってる」
「俺も。凄いパフォーマンスだったよな。それに、あの場で恋人の高嶺に好きだって言った度胸も凄いと思う。さすがは高嶺の花の高嶺と付き合ってるだけのことはあるぜ」
などといった会話がいくつも聞こえてきた。クラスの出し物であるメイド&執事喫茶での接客や、2日目に行なった弾き語りライブを良かったと思ってもらえて嬉しいな。今年の文化祭の思い出になっていることも。
あと、俺のことを見てくる生徒が多い理由は文化祭でのメイド&執事喫茶の接客と、弾き語りライブによるものだろう。その推理はどうやら当たっているようで、「良かった」「最高だった」「かっこよかった」といった声が聞こえてきて。
また、「ライブ良かったよ」「最高だったよ」「執事さんかっこよかったよ」などと俺に向けられた声もあって。そういえば、代休の間のバイトでも、接客の際に「ライブ良かった」と言われたな。文化祭で俺がやったことの評判が本当に良かったのだと実感する。
これまで、俺一人でいるときに、いい意味で生徒達から注目されたことなんて全然なかった。だから……落ち着かないな。お褒めの感想も言われるから照れくささもあって。あと、注目されることが多いけど、特に気にする様子もなくいつも通りでいられる結衣が凄いなって思う。
俺に向けて言ってくれる生徒達もいるので、ちゃんとお礼を言おう。
「みなさん、ありがとうございます」
俺のクラスの教室がある第2教室棟の近くで立ち止まり、周りにいる生徒達にお礼を言って、四方に頭を下げた。
――パチパチ。
俺がお礼を言ったからか、俺に向かって笑顔で拍手してくれる生徒達が何人もいて。そのことで嬉しい気持ちが膨らんだ。
いつも登校するときとは違った体験をした俺は、第2教室棟の中に入る。
昇降口で上履きに履き替えて、2階にある1年2組の教室へと向かっていく。その中でも、生徒達に注目され、中には「ライブ良かったぞ」とか「喫茶店での執事さんかっこよかったよ」などと言葉を掛けられた。
1年2組の教室に入ると、
「あっ、悠真君来た! おはよう!」
「おはよう、ゆう君」
「低田君、おはようございます」
教室の中には結衣と胡桃と伊集院さんがいて、笑顔で朝の挨拶をしてくれる。
「結衣、胡桃、伊集院さん、おはよう」
俺は結衣達に向かって挨拶をして、教室後方の窓側にある自分の席へ向かう。ちなみに、3人は俺の席の近くにいる。
クラスメイト達と「おはよう」と挨拶を交わしながら自分の席に到着し、スクールバッグを机に置いた。
結衣達のところに行くと、
「おはよう、悠真君!」
結衣は俺に改めて挨拶をすると、俺のことをぎゅっと抱きしめておはようのキスをしてきた。
結衣達と「おはよう」と挨拶を交わして、結衣とおはようのキスをする……いつも通りの朝だ。教室に入るまではいつもとは違ったことがあったので、何だか安心できる。
少しして、結衣の方から唇を離した。目の前には持ち前のニコニコとした結衣の笑顔があって。そのことで安堵の気持ちがより膨らんだ。
「悠真君、とても穏やかな笑顔になってるね」
「確かに、いつも以上に落ち着いた感じがするね」
「お二人の言う通りなのです」
結衣達が俺のことを見ながらそんなことを言ってくる。おそらく、安心した気持ちが顔に出ているのだと思う。
「何かあった? 悠真君」
「こうして教室で結衣達やクラスメイトと挨拶して、結衣とおはようのキスをするっていういつも通りのことができて安心してさ。……実は登校したときに、文化祭の影響で、俺のことを見てくる生徒達が何人もいてさ。執事としての接客とか弾き語りライブを褒める感想を言ってきた生徒もいたし。これまで、一人でいるときにいい意味で注目された経験が全然なかったから落ち着かなくて」
「なるほどね。だから、いつも通りのことをして安心したんだね。……接客もライブも凄く良かったもんね。注目されるのも納得だよ」
「ですね。あと、結衣と一緒に登校したときも、低田君の接客やライブの話をしている生徒達の話を小耳に挟んだのです」
「そうだったね。恋人として嬉しかったよ」
「あたしも登校するときに聞こえたよ、文化祭でのゆう君のこと」
「そうだったんだ」
俺がいない場でも、文化祭での俺のことを話す生徒がいるとは。メイド&執事喫茶での接客や弾き語りライブを良く思ってくれた人が多かったのだと分かる。
あと、結衣は俺のことを話されるのを聞いて嬉しかったんだ。それを知って嬉しい気持ちになる。
「もしかして、さっき外から拍手の音が聞こえたのって悠真君が理由?」
「そうだよ。感想を俺に言ってくれる生徒が何人もいたからお礼を言ったんだ。そうしたら拍手された」
「そうだったんだね! ちょっと気になっていたからスッキリしたよ。あと、今の話を聞いてもっと嬉しい気持ちになったよ!」
結衣は言葉通りの嬉しそうな笑顔で言う。俺ももっと嬉しい気持ちになるよ。
嬉しさのあまり、気付けば結衣の頭を優しく撫でていた。今日も結衣の髪は柔らかくていい撫で心地だ。
俺に頭を撫でられるのが気持ちいいのか、結衣の笑顔は柔らかいものに変わった。変化する流れも柔らかい笑顔も可愛い。
それから、朝礼の時間の直前まで、4人で文化祭のことや代休のことで談笑した。
胡桃が自分のクラスである隣の3組の教室に戻ったタイミングで、俺と結衣と伊集院さんは自分の席に戻る。俺の前の席が結衣で、結衣の右斜め前の席が伊集院さんなので、席に座ってからも3人で談笑を続けた。
――キーンコーンカーンコーン。
「はーい、みんな席に着いてね」
朝礼のチャイムが鳴ったタイミングで福王寺先生が教室に入ってきた。
そして、学校生活が始まる。
授業を受けて、休み時間には結衣や伊集院さんと話して、昼休みには胡桃と4人でお昼を一緒に食べて。いつも通りの学校での時間を過ごす。ただ、通常の日程での学校生活は先週の水曜日以来なので、久しぶりに感じて、日常に戻ったのだと実感する。そして、その日常がいいなって思った。
「いってらっしゃい、悠真」
「いってらっしゃい、ユウちゃん!」
10月18日、金曜日。
午前8時過ぎ。
俺は通っている東京都立金井高等学校に向けて家を出発する。
文化祭の代休が明け、今日から再び学校生活が始まる。といっても、金曜日なので今日登校すれば明日と明後日はお休みだけど。なので、いつもの連休明けとはちょっと違った感覚だ。
あと、授業があるのは……先週の水曜日以来か。登校自体は文化祭の片付けをした今週の月曜日以来だけど、結構久しぶりな感じがする。
「日差しが温かいなぁ」
今日は朝からよく晴れており、今も日差しが直接当たっている。ブレザーのジャケットを着ているけど、暑苦しさはなく、むしろ心地良く感じられる。着々と秋が深まっているのだと実感する。今後は日差しの温もりがもっと気持ち良くなって、やがて恋しくも思えてくるのだろう。
季節の進みを実感しながら、俺は金井高校に向かって歩いていく。
数分ほど歩くと、金井高校が見えてきた。
文化祭のときは校門にアーケードがあったり、アーケードの奥に屋台が見えたり、校舎のところどころに装飾がなされたりしていたけど、それらは全て片付けられており、通常の金井高校の風景が見える。文化祭が終わって、いつも通りの高校生活に戻ったのだと実感する。
また、今は登校する生徒の時間帯なので、周りには金井高校の制服を着た人が多い。それはいつも通りだ。
ただ、歩いている生徒達の中には、俺のことを見ている生徒がちらほらと。これはいつもとは違った光景だ。ただ、不機嫌そうだったり、馬鹿にした笑顔だったりする生徒はいないので悪い理由ではなさそうだ。
校門に入ると、俺を見てくる生徒の数が増える。そんな中、
「あっ、低田君だ。文化祭の執事喫茶での接客凄く良かったし、かっこよかった~!」
「かっこよかったよね! 接客も執事の口調も様になっていたもんね」
「1年の低田君だ。弾き語りライブ良かったよね!」
「良かったよね! 歌もギターの演奏も上手かったもんね! あと、最後に恋人の高嶺さんに好きだって言ったのもキュンとなったよね!」
「分かるっ! 高嶺さんが凄く羨ましいよぉ~」
「弾き語りライブをやった低田だ。あのライブ良かったなぁ」
「良かったよな。俺、体育館でのステージで一番良かったと思ってる」
「俺も。凄いパフォーマンスだったよな。それに、あの場で恋人の高嶺に好きだって言った度胸も凄いと思う。さすがは高嶺の花の高嶺と付き合ってるだけのことはあるぜ」
などといった会話がいくつも聞こえてきた。クラスの出し物であるメイド&執事喫茶での接客や、2日目に行なった弾き語りライブを良かったと思ってもらえて嬉しいな。今年の文化祭の思い出になっていることも。
あと、俺のことを見てくる生徒が多い理由は文化祭でのメイド&執事喫茶の接客と、弾き語りライブによるものだろう。その推理はどうやら当たっているようで、「良かった」「最高だった」「かっこよかった」といった声が聞こえてきて。
また、「ライブ良かったよ」「最高だったよ」「執事さんかっこよかったよ」などと俺に向けられた声もあって。そういえば、代休の間のバイトでも、接客の際に「ライブ良かった」と言われたな。文化祭で俺がやったことの評判が本当に良かったのだと実感する。
これまで、俺一人でいるときに、いい意味で生徒達から注目されたことなんて全然なかった。だから……落ち着かないな。お褒めの感想も言われるから照れくささもあって。あと、注目されることが多いけど、特に気にする様子もなくいつも通りでいられる結衣が凄いなって思う。
俺に向けて言ってくれる生徒達もいるので、ちゃんとお礼を言おう。
「みなさん、ありがとうございます」
俺のクラスの教室がある第2教室棟の近くで立ち止まり、周りにいる生徒達にお礼を言って、四方に頭を下げた。
――パチパチ。
俺がお礼を言ったからか、俺に向かって笑顔で拍手してくれる生徒達が何人もいて。そのことで嬉しい気持ちが膨らんだ。
いつも登校するときとは違った体験をした俺は、第2教室棟の中に入る。
昇降口で上履きに履き替えて、2階にある1年2組の教室へと向かっていく。その中でも、生徒達に注目され、中には「ライブ良かったぞ」とか「喫茶店での執事さんかっこよかったよ」などと言葉を掛けられた。
1年2組の教室に入ると、
「あっ、悠真君来た! おはよう!」
「おはよう、ゆう君」
「低田君、おはようございます」
教室の中には結衣と胡桃と伊集院さんがいて、笑顔で朝の挨拶をしてくれる。
「結衣、胡桃、伊集院さん、おはよう」
俺は結衣達に向かって挨拶をして、教室後方の窓側にある自分の席へ向かう。ちなみに、3人は俺の席の近くにいる。
クラスメイト達と「おはよう」と挨拶を交わしながら自分の席に到着し、スクールバッグを机に置いた。
結衣達のところに行くと、
「おはよう、悠真君!」
結衣は俺に改めて挨拶をすると、俺のことをぎゅっと抱きしめておはようのキスをしてきた。
結衣達と「おはよう」と挨拶を交わして、結衣とおはようのキスをする……いつも通りの朝だ。教室に入るまではいつもとは違ったことがあったので、何だか安心できる。
少しして、結衣の方から唇を離した。目の前には持ち前のニコニコとした結衣の笑顔があって。そのことで安堵の気持ちがより膨らんだ。
「悠真君、とても穏やかな笑顔になってるね」
「確かに、いつも以上に落ち着いた感じがするね」
「お二人の言う通りなのです」
結衣達が俺のことを見ながらそんなことを言ってくる。おそらく、安心した気持ちが顔に出ているのだと思う。
「何かあった? 悠真君」
「こうして教室で結衣達やクラスメイトと挨拶して、結衣とおはようのキスをするっていういつも通りのことができて安心してさ。……実は登校したときに、文化祭の影響で、俺のことを見てくる生徒達が何人もいてさ。執事としての接客とか弾き語りライブを褒める感想を言ってきた生徒もいたし。これまで、一人でいるときにいい意味で注目された経験が全然なかったから落ち着かなくて」
「なるほどね。だから、いつも通りのことをして安心したんだね。……接客もライブも凄く良かったもんね。注目されるのも納得だよ」
「ですね。あと、結衣と一緒に登校したときも、低田君の接客やライブの話をしている生徒達の話を小耳に挟んだのです」
「そうだったね。恋人として嬉しかったよ」
「あたしも登校するときに聞こえたよ、文化祭でのゆう君のこと」
「そうだったんだ」
俺がいない場でも、文化祭での俺のことを話す生徒がいるとは。メイド&執事喫茶での接客や弾き語りライブを良く思ってくれた人が多かったのだと分かる。
あと、結衣は俺のことを話されるのを聞いて嬉しかったんだ。それを知って嬉しい気持ちになる。
「もしかして、さっき外から拍手の音が聞こえたのって悠真君が理由?」
「そうだよ。感想を俺に言ってくれる生徒が何人もいたからお礼を言ったんだ。そうしたら拍手された」
「そうだったんだね! ちょっと気になっていたからスッキリしたよ。あと、今の話を聞いてもっと嬉しい気持ちになったよ!」
結衣は言葉通りの嬉しそうな笑顔で言う。俺ももっと嬉しい気持ちになるよ。
嬉しさのあまり、気付けば結衣の頭を優しく撫でていた。今日も結衣の髪は柔らかくていい撫で心地だ。
俺に頭を撫でられるのが気持ちいいのか、結衣の笑顔は柔らかいものに変わった。変化する流れも柔らかい笑顔も可愛い。
それから、朝礼の時間の直前まで、4人で文化祭のことや代休のことで談笑した。
胡桃が自分のクラスである隣の3組の教室に戻ったタイミングで、俺と結衣と伊集院さんは自分の席に戻る。俺の前の席が結衣で、結衣の右斜め前の席が伊集院さんなので、席に座ってからも3人で談笑を続けた。
――キーンコーンカーンコーン。
「はーい、みんな席に着いてね」
朝礼のチャイムが鳴ったタイミングで福王寺先生が教室に入ってきた。
そして、学校生活が始まる。
授業を受けて、休み時間には結衣や伊集院さんと話して、昼休みには胡桃と4人でお昼を一緒に食べて。いつも通りの学校での時間を過ごす。ただ、通常の日程での学校生活は先週の水曜日以来なので、久しぶりに感じて、日常に戻ったのだと実感する。そして、その日常がいいなって思った。
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