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続編
第47話『恋人との初めての目覚め』
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「うんっ……」
6月20日、日曜日。
とてもいい気持ちの中で目を開け……ようとするけど、いつもと比べて開けづらい。どうしてなんだ?
何とかして目を開けると、薄暗い中、白いものに視界が占拠されている。
ただ、意識がはっきりしてきたことで、視界の端の方に線が見えたり、甘い匂いが感じられたり、鼻から顎のあたりまで柔らかいものに触れていたりしているのが分かって。……もしかして、俺、氷織の胸に顔を埋めて寝ていたのかな。いや、頭や背中からも温もりを感じるから、氷織に抱き寄せられている可能性が高そうだ。
「あっ、起きましたか、明斗さん」
胸元から少し顔を離して視線を動かす。そこにはとても優しい笑顔で俺を見ている氷織がいた。今の氷織は聖母のようだ。
氷織と目が合うと、氷織はニッコリと笑ってくれて。笑顔の氷織を見ていると、幸せな気持ちが膨らんでいく。
「おはよう、氷織」
「おはようございます、明斗さん」
朝の挨拶を交わすと、氷織からおはようのキスをしてくる。一緒にベッドの中に入っており、肌が触れ合っているから、氷織の温もりをたくさん感じている。だけど、唇から感じる温もりには特別感があった。
数秒ほどキスすると、氷織の方から唇を離す。氷織は再びニコッと笑って。何て幸せな朝だろう。しかも日曜日だし。
「今までで一番早いおはようのキスですね。明斗さんのベッドの中でできて幸せです」
「俺もだよ。自分のベッドで氷織とおはようのキスができる日が来るなんて。幸せだ」
「ふふっ、そうですか。いつかは私のベッドの中で、明斗さんとおはようのキスがしたいですね」
「そうだね。氷織のベッドで一緒に寝て、起きて、キスしたいな」
「そうですね。ただ、そのときは寝る前に……肌を重ねましょうね」
「そうしよう。氷織がそう言ってくれて嬉しいな」
「だって……とても気持ち良くて、幸せな気持ちになれますから。たまにでもいいですから、これからもしていきたいです」
「もちろんいいぞ」
「ありがとうございます。では、そのことを含めて約束ですよ」
氷織はそっと目を閉じて、少しだけ口を突き出す。キスを求める顔も可愛いな。そんなことを思いながらキスをした。
少なくとも、夏休みまでの間に氷織の家に一度は泊まりたいな。きっと、氷織のベッドで氷織と一緒に寝たら気持ち良く眠れるのだろう。あと、そのときには一緒にお風呂にも入ってみたい。
「あと、目を覚ましたら、大好きな明斗さんが視界に入っていたことに幸せを感じました」
「そっか。俺は目覚めて最初に見えたのは氷織の胸元だったけど……氷織の胸の柔らかさとか、温もりとか、匂いとかが感じられたから幸せだったよ」
「ふふっ、そうですか。15分くらい前に目が覚めまして。明斗さんの額や頬にキスしたり、寝顔や匂いを堪能したりしました」
俺が寝ている間にそんなことをしていたのか。全然気づかなかったなぁ。ただ、氷織らしい行動だと思う。想像してみると……可愛いな。見てみたかったよ。無理だけど。
「それで……明斗さんを抱きしめて、明斗さんの顔を私の胸に埋めたんです。昨日、肌を重ねて明斗さんは私の胸が好きなんだって分かりましたし。胸に埋めれば明斗さんもいい夢が見やすくなるかと思いまして」
「そうだったんだね。……夢の内容は覚えていないけど、とてもいい気分の中で起きられたよ。きっと、氷織のおかげでいい夢が見られたんだと思う。ありがとう」
氷織の頭を優しく撫でると、氷織はやんわりとした笑みを浮かべる。
「明斗さんのおかげで、今までで一番幸せな朝を迎えることができました」
「俺も一番幸せな朝だと思っているよ。氷織と一緒に住むようになったら、こういう朝をたくさん迎えられるんだろうなって思う」
「きっとそうでしょうね。明斗さんと同棲したい気持ちがより強くなりました」
「そうだね」
同じベッドで寝て、そして起きたことで俺も氷織と一緒に住みたい気持ちが強くなった。
氷織はゆっくりと上体を起こして、「う~ん!」と可愛い声を出しながら体を伸ばしている。もちろん、今も一糸纏わぬ姿。薄暗くても、氷織の体が美しく見えて。今の氷織を見ていると、昨日の夜にしたことが本当だったのだと実感する。
「昨日の夜は体をたくさん動かしましたけど、疲れは全然ありませんね。きっと、明斗さんのベッドで明斗さんと一緒に寝たからでしょうね」
「それは良かった」
「明斗さんはどうですか? 明斗さんの方がたくさん体を動かしましたから」
「どれどれ……」
俺はゆっくりと体を起こして、体を伸ばしたり、軽く動かしたりしてみる。
「特に痛みはないな。氷織と一緒に寝たからか、疲れも感じない。これなら、午後からのバイトも大丈夫だよ」
「それは良かったです。明斗さん……昨晩はたまに激しく動くときがありましたから」
そのときのことを思い出しているのか。氷織はうっとりとした様子で俺をじっと見ている。昨日の夜のことを話されたので、頬が段々と熱くなっていく。
「き、気持ち良かったからね。そういう氷織こそ激しく動くときがあったよ」
「……き、気持ち良かったですから」
そう言うと、氷織は「ふふっ」と声に出して楽しそうに笑う。俺もそんな氷織につられて声に出して笑った。
体もスッキリしているし、結構寝たのだろうか。壁に掛かっている時計を見て、今の時刻を確認すると――。
「まだ6時半過ぎなんだ」
「早い時間ですよね。私もスッキリしていますから、もっと遅い時間だと思っていました」
「俺も同じようなことを思ったよ。まあ、体をたくさん動かしたから、6時間くらいの睡眠でスッキリ起きられたのかもね」
「ですね。……あの、お風呂に入りたいです。昨日はえっちなことをして、そのまま寝ましたから。できれば明斗さんと一緒に」
「……喜んで」
昨日の夜は一緒に入ろうと誘えなかった。だけど、ベッドの上で肌を晒して、肌を重ねた経験を経た今は、氷織のお誘いをすんなり受け入れられる。もちろん、ドキッとするけど。
「ありがとうございますっ」
嬉しそうにお礼を言うと、氷織は俺のことをぎゅっと抱きしめてきた。
こうして、裸同士で抱きしめ合うと、氷織の温もりや柔らかさがダイレクトに伝わってくる。匂いも普段よりも強く感じて。氷織の華奢さも分かって。裸で抱きしめ合う感覚もいいなと思った。
その後、下着や寝間着を着て、俺達は1階の洗面所へ向かう。
今日は日曜日で休日だからか、まだ家族は誰も起きておらず、1階も静かだった。なので、誰とも会うことなく洗面所に入った。
俺達は服を脱いで、一緒に浴室に入る。
氷織、俺の順番で髪と体を洗うことに。
氷織の体にキスマークや傷がついていないようで安心した。昨晩、肌を重ねているときに、氷織の体にキスしたり、強く抱きしめたりしたから。
また、お互いに相手の髪を洗ったり、背中を流したりした。俺の髪や背中を洗ってくれるとき、氷織はとても楽しそうにしていて。浴室の中で氷織の笑顔を見られることが嬉しい。
「じゃあ、失礼するよ」
「どうぞ、明斗さん」
髪を洗い終わったので、俺は氷織が入っている湯船に入り、氷織と向かい合う状態で浸かる。
「高校生2人だと、入れるけど脚とかは触れるか」
「もし窮屈なら、縮こまった体勢で座りますが」
「ううん、そのままでいいよ。むしろ、氷織なら触れている方がいいから」
「嬉しいです。では、お言葉に甘えますね」
氷織は嬉しそうに言った。数分ほど前から湯船に浸かっているから、氷織の顔は赤らんでいる。
それにしても、湯船に浸かっている氷織も綺麗だなぁ。ヘアクリップでまとめた髪型も似合っている。あと、胸の半分くらいまで浸かっているけど、それでも氷織の大きな胸が存在感を放っていて。
「ふふっ。明斗さん、胸見ていますね。本当に大好きなんですね。昨日も堪能していましたし」
「……お、男だからね。氷織の大きくて柔らかい胸が好きだよ。もし、見られるのが嫌だったならごめん」
「いえいえ、見てくれていいんですよ。恋人に自分の体が好きだって言われるのはいい気分ですし。あと、昨日の夜のことを通して、明斗さんは胸以外にも、腋に首筋に背中に太ももにお尻が好きだと分かりました」
「……た、確かにそうかも。特に腋は。……恋人にフェチ的なことを指摘されると、なかなか恥ずかしいものがあるね。楽しそうに言ってくれるけどさ」
「好きな箇所がいくつもあるのは嬉しいですから」
ふふっ、氷織の上品な笑い声が浴室の中に響き渡る。
以前、俺のお見舞いに来てくれた際、俺の汗の匂いが好きだと知られたときの氷織の気持ちってこんな感じだったのかもしれない。
「私も明斗さんの首筋や胸元、お腹、腕とか好きな箇所がたくさんありますよ」
「そうなんだ。ありがとう」
俺の体の好きな箇所を自分から言ったからか、氷織は特に恥ずかしがっている様子はない。汗の匂いが好きだとバレた経験もあるからかな。
お湯の気持ちよさと、目の前にいる氷織の可愛い笑顔もあり、気恥ずかしさは段々消えていった。
「氷織とのお風呂、気持ちいいなぁ」
「私も気持ちいいです。昨日の夜よりも気持ち良く感じられますね」
「それは嬉しいお言葉だ。昨日の夜は一人で入ったけど、氷織が入った湯船だと思うと凄くドキドキして、すぐに体が熱くなっちゃったんだ」
「それで、結構早く部屋に帰ってきたんですね」
「ああ。今は氷織が目の前にいるけど、心地よい温もりに包まれてる。もちろん、ドキドキはしているけどね」
「昨日の夜に素肌をたくさん見せ合って、触れ合ったからでしょうね。……明斗さんを抱きしめてもいいですか?」
「ああ、いいぞ」
「ありがとうございますっ」
俺が脚を広げると、氷織は俺の脚の間に入り、俺のことをそっと抱きしめてきた。その際、顔を俺の胸に当てて。
「……お湯と明斗さんの温もりを感じます。ですから、よりお風呂が気持ちいいです」
「そうか。俺も……気持ちいいよ」
俺は両手を氷織の背中に回す。ベッドの上で抱きしめ合ったときよりも、温かくて、柔らかくて、甘い匂いがする。だから、とても気持ち良くて。
「少しの間、このままでもいいかな」
「もちろんです。私も言おうとしていましたから、嬉しいです」
「……ありがとう」
至近距離で氷織の目を見つめながらお礼を言い、俺は氷織にキスをした。
それから少しの間はこのまま向かい合ったまま抱きしめ合って。その後は氷織を後ろから抱きしめる形で湯船に浸かって。氷織との初めての入浴をたっぷりと楽しむのであった。
その後、バイトのあるお昼過ぎまでは、氷織と一緒に『幼馴染が絶対に勝つラブコメ』のアニメを観たり、レースゲームをしたりして楽しんだ。
また、一緒にいるときに火村さんと葉月さんから『氷織と過ごした誕生日はどうだった?』という旨のメッセージが届いたので、俺は『最高だったよ』と返信した。そうしたら、2人ともすぐに『良かったね』と返信をくれた。
お昼過ぎになり、氷織と一緒にバイト先まで向かい、17歳最初のバイトに臨んだ。
カウンターに立ってから少しして、氷織がお客様として来店してくれた。もちろん、俺が接客する。
氷織はアイスコーヒーとかぼちゃのタルトを注文。カウンター席で夕方まで本を読んだり、スマホを見たりして過ごしていた。たまに、俺の方を向いて笑顔で手を振ってくれて。そのおかげで、俺は17歳の初バイトを難なくこなすことができた。
6月20日、日曜日。
とてもいい気持ちの中で目を開け……ようとするけど、いつもと比べて開けづらい。どうしてなんだ?
何とかして目を開けると、薄暗い中、白いものに視界が占拠されている。
ただ、意識がはっきりしてきたことで、視界の端の方に線が見えたり、甘い匂いが感じられたり、鼻から顎のあたりまで柔らかいものに触れていたりしているのが分かって。……もしかして、俺、氷織の胸に顔を埋めて寝ていたのかな。いや、頭や背中からも温もりを感じるから、氷織に抱き寄せられている可能性が高そうだ。
「あっ、起きましたか、明斗さん」
胸元から少し顔を離して視線を動かす。そこにはとても優しい笑顔で俺を見ている氷織がいた。今の氷織は聖母のようだ。
氷織と目が合うと、氷織はニッコリと笑ってくれて。笑顔の氷織を見ていると、幸せな気持ちが膨らんでいく。
「おはよう、氷織」
「おはようございます、明斗さん」
朝の挨拶を交わすと、氷織からおはようのキスをしてくる。一緒にベッドの中に入っており、肌が触れ合っているから、氷織の温もりをたくさん感じている。だけど、唇から感じる温もりには特別感があった。
数秒ほどキスすると、氷織の方から唇を離す。氷織は再びニコッと笑って。何て幸せな朝だろう。しかも日曜日だし。
「今までで一番早いおはようのキスですね。明斗さんのベッドの中でできて幸せです」
「俺もだよ。自分のベッドで氷織とおはようのキスができる日が来るなんて。幸せだ」
「ふふっ、そうですか。いつかは私のベッドの中で、明斗さんとおはようのキスがしたいですね」
「そうだね。氷織のベッドで一緒に寝て、起きて、キスしたいな」
「そうですね。ただ、そのときは寝る前に……肌を重ねましょうね」
「そうしよう。氷織がそう言ってくれて嬉しいな」
「だって……とても気持ち良くて、幸せな気持ちになれますから。たまにでもいいですから、これからもしていきたいです」
「もちろんいいぞ」
「ありがとうございます。では、そのことを含めて約束ですよ」
氷織はそっと目を閉じて、少しだけ口を突き出す。キスを求める顔も可愛いな。そんなことを思いながらキスをした。
少なくとも、夏休みまでの間に氷織の家に一度は泊まりたいな。きっと、氷織のベッドで氷織と一緒に寝たら気持ち良く眠れるのだろう。あと、そのときには一緒にお風呂にも入ってみたい。
「あと、目を覚ましたら、大好きな明斗さんが視界に入っていたことに幸せを感じました」
「そっか。俺は目覚めて最初に見えたのは氷織の胸元だったけど……氷織の胸の柔らかさとか、温もりとか、匂いとかが感じられたから幸せだったよ」
「ふふっ、そうですか。15分くらい前に目が覚めまして。明斗さんの額や頬にキスしたり、寝顔や匂いを堪能したりしました」
俺が寝ている間にそんなことをしていたのか。全然気づかなかったなぁ。ただ、氷織らしい行動だと思う。想像してみると……可愛いな。見てみたかったよ。無理だけど。
「それで……明斗さんを抱きしめて、明斗さんの顔を私の胸に埋めたんです。昨日、肌を重ねて明斗さんは私の胸が好きなんだって分かりましたし。胸に埋めれば明斗さんもいい夢が見やすくなるかと思いまして」
「そうだったんだね。……夢の内容は覚えていないけど、とてもいい気分の中で起きられたよ。きっと、氷織のおかげでいい夢が見られたんだと思う。ありがとう」
氷織の頭を優しく撫でると、氷織はやんわりとした笑みを浮かべる。
「明斗さんのおかげで、今までで一番幸せな朝を迎えることができました」
「俺も一番幸せな朝だと思っているよ。氷織と一緒に住むようになったら、こういう朝をたくさん迎えられるんだろうなって思う」
「きっとそうでしょうね。明斗さんと同棲したい気持ちがより強くなりました」
「そうだね」
同じベッドで寝て、そして起きたことで俺も氷織と一緒に住みたい気持ちが強くなった。
氷織はゆっくりと上体を起こして、「う~ん!」と可愛い声を出しながら体を伸ばしている。もちろん、今も一糸纏わぬ姿。薄暗くても、氷織の体が美しく見えて。今の氷織を見ていると、昨日の夜にしたことが本当だったのだと実感する。
「昨日の夜は体をたくさん動かしましたけど、疲れは全然ありませんね。きっと、明斗さんのベッドで明斗さんと一緒に寝たからでしょうね」
「それは良かった」
「明斗さんはどうですか? 明斗さんの方がたくさん体を動かしましたから」
「どれどれ……」
俺はゆっくりと体を起こして、体を伸ばしたり、軽く動かしたりしてみる。
「特に痛みはないな。氷織と一緒に寝たからか、疲れも感じない。これなら、午後からのバイトも大丈夫だよ」
「それは良かったです。明斗さん……昨晩はたまに激しく動くときがありましたから」
そのときのことを思い出しているのか。氷織はうっとりとした様子で俺をじっと見ている。昨日の夜のことを話されたので、頬が段々と熱くなっていく。
「き、気持ち良かったからね。そういう氷織こそ激しく動くときがあったよ」
「……き、気持ち良かったですから」
そう言うと、氷織は「ふふっ」と声に出して楽しそうに笑う。俺もそんな氷織につられて声に出して笑った。
体もスッキリしているし、結構寝たのだろうか。壁に掛かっている時計を見て、今の時刻を確認すると――。
「まだ6時半過ぎなんだ」
「早い時間ですよね。私もスッキリしていますから、もっと遅い時間だと思っていました」
「俺も同じようなことを思ったよ。まあ、体をたくさん動かしたから、6時間くらいの睡眠でスッキリ起きられたのかもね」
「ですね。……あの、お風呂に入りたいです。昨日はえっちなことをして、そのまま寝ましたから。できれば明斗さんと一緒に」
「……喜んで」
昨日の夜は一緒に入ろうと誘えなかった。だけど、ベッドの上で肌を晒して、肌を重ねた経験を経た今は、氷織のお誘いをすんなり受け入れられる。もちろん、ドキッとするけど。
「ありがとうございますっ」
嬉しそうにお礼を言うと、氷織は俺のことをぎゅっと抱きしめてきた。
こうして、裸同士で抱きしめ合うと、氷織の温もりや柔らかさがダイレクトに伝わってくる。匂いも普段よりも強く感じて。氷織の華奢さも分かって。裸で抱きしめ合う感覚もいいなと思った。
その後、下着や寝間着を着て、俺達は1階の洗面所へ向かう。
今日は日曜日で休日だからか、まだ家族は誰も起きておらず、1階も静かだった。なので、誰とも会うことなく洗面所に入った。
俺達は服を脱いで、一緒に浴室に入る。
氷織、俺の順番で髪と体を洗うことに。
氷織の体にキスマークや傷がついていないようで安心した。昨晩、肌を重ねているときに、氷織の体にキスしたり、強く抱きしめたりしたから。
また、お互いに相手の髪を洗ったり、背中を流したりした。俺の髪や背中を洗ってくれるとき、氷織はとても楽しそうにしていて。浴室の中で氷織の笑顔を見られることが嬉しい。
「じゃあ、失礼するよ」
「どうぞ、明斗さん」
髪を洗い終わったので、俺は氷織が入っている湯船に入り、氷織と向かい合う状態で浸かる。
「高校生2人だと、入れるけど脚とかは触れるか」
「もし窮屈なら、縮こまった体勢で座りますが」
「ううん、そのままでいいよ。むしろ、氷織なら触れている方がいいから」
「嬉しいです。では、お言葉に甘えますね」
氷織は嬉しそうに言った。数分ほど前から湯船に浸かっているから、氷織の顔は赤らんでいる。
それにしても、湯船に浸かっている氷織も綺麗だなぁ。ヘアクリップでまとめた髪型も似合っている。あと、胸の半分くらいまで浸かっているけど、それでも氷織の大きな胸が存在感を放っていて。
「ふふっ。明斗さん、胸見ていますね。本当に大好きなんですね。昨日も堪能していましたし」
「……お、男だからね。氷織の大きくて柔らかい胸が好きだよ。もし、見られるのが嫌だったならごめん」
「いえいえ、見てくれていいんですよ。恋人に自分の体が好きだって言われるのはいい気分ですし。あと、昨日の夜のことを通して、明斗さんは胸以外にも、腋に首筋に背中に太ももにお尻が好きだと分かりました」
「……た、確かにそうかも。特に腋は。……恋人にフェチ的なことを指摘されると、なかなか恥ずかしいものがあるね。楽しそうに言ってくれるけどさ」
「好きな箇所がいくつもあるのは嬉しいですから」
ふふっ、氷織の上品な笑い声が浴室の中に響き渡る。
以前、俺のお見舞いに来てくれた際、俺の汗の匂いが好きだと知られたときの氷織の気持ちってこんな感じだったのかもしれない。
「私も明斗さんの首筋や胸元、お腹、腕とか好きな箇所がたくさんありますよ」
「そうなんだ。ありがとう」
俺の体の好きな箇所を自分から言ったからか、氷織は特に恥ずかしがっている様子はない。汗の匂いが好きだとバレた経験もあるからかな。
お湯の気持ちよさと、目の前にいる氷織の可愛い笑顔もあり、気恥ずかしさは段々消えていった。
「氷織とのお風呂、気持ちいいなぁ」
「私も気持ちいいです。昨日の夜よりも気持ち良く感じられますね」
「それは嬉しいお言葉だ。昨日の夜は一人で入ったけど、氷織が入った湯船だと思うと凄くドキドキして、すぐに体が熱くなっちゃったんだ」
「それで、結構早く部屋に帰ってきたんですね」
「ああ。今は氷織が目の前にいるけど、心地よい温もりに包まれてる。もちろん、ドキドキはしているけどね」
「昨日の夜に素肌をたくさん見せ合って、触れ合ったからでしょうね。……明斗さんを抱きしめてもいいですか?」
「ああ、いいぞ」
「ありがとうございますっ」
俺が脚を広げると、氷織は俺の脚の間に入り、俺のことをそっと抱きしめてきた。その際、顔を俺の胸に当てて。
「……お湯と明斗さんの温もりを感じます。ですから、よりお風呂が気持ちいいです」
「そうか。俺も……気持ちいいよ」
俺は両手を氷織の背中に回す。ベッドの上で抱きしめ合ったときよりも、温かくて、柔らかくて、甘い匂いがする。だから、とても気持ち良くて。
「少しの間、このままでもいいかな」
「もちろんです。私も言おうとしていましたから、嬉しいです」
「……ありがとう」
至近距離で氷織の目を見つめながらお礼を言い、俺は氷織にキスをした。
それから少しの間はこのまま向かい合ったまま抱きしめ合って。その後は氷織を後ろから抱きしめる形で湯船に浸かって。氷織との初めての入浴をたっぷりと楽しむのであった。
その後、バイトのあるお昼過ぎまでは、氷織と一緒に『幼馴染が絶対に勝つラブコメ』のアニメを観たり、レースゲームをしたりして楽しんだ。
また、一緒にいるときに火村さんと葉月さんから『氷織と過ごした誕生日はどうだった?』という旨のメッセージが届いたので、俺は『最高だったよ』と返信した。そうしたら、2人ともすぐに『良かったね』と返信をくれた。
お昼過ぎになり、氷織と一緒にバイト先まで向かい、17歳最初のバイトに臨んだ。
カウンターに立ってから少しして、氷織がお客様として来店してくれた。もちろん、俺が接客する。
氷織はアイスコーヒーとかぼちゃのタルトを注文。カウンター席で夕方まで本を読んだり、スマホを見たりして過ごしていた。たまに、俺の方を向いて笑顔で手を振ってくれて。そのおかげで、俺は17歳の初バイトを難なくこなすことができた。
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