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第71話『時とお湯をかける-前編-』
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明日香と一緒にお風呂に入ることになった。彼女と共に浴室前の脱衣室に向かう。明日香は分からないけど、僕は服を脱ぐ彼女の姿を見るとどうにかなってしまいそうだったので、彼女に背を向けて服を脱ぐことにした。
ただ、背後から聞こえる布の擦れる音や明日香の漏らす声が、興奮を掻き立てていく。
「つーちゃんと2人でお風呂に入るなんていつ以来だろうね」
「中学生以降では初めてかもしれないな」
「最低でもそのくらいは経っているよね。ひさしぶりだからか、とっても嬉しい」
そういえば、咲希が帰ってきてすぐに明日香が泊まりに来たとき、明日香は一緒にお風呂に入ろうかって言っていたな。
家に来てから明日香は「昔のように」とか「ひさしぶり」という言葉を何度も口にしている。毎日一緒に登校して、ずっと同じクラスなので彼女とは一緒に過ごしているように思っていたけど、案外そうではないのかもしれない。中学生になってからは、明日香は放課後やこうした長期休暇のときは部活中心の生活になっていて、小学生のときまでと比べると一緒に過ごす時間がかなり減っていた。
「つーちゃん、お風呂に入ったらさっそく髪と体を洗うね」
「明日香からでいいよ」
「そんなわけにはいかないよ。つーちゃんは恋人だけれど、お客様だし……それに、つーちゃんの髪と体をひさしぶりに洗いたいから」
「そういうことなら、お言葉に甘えさせてもらうね」
恋人になったんだし、明日香のやりたいことはできるだけ叶えさせたい。僕の髪や体を洗って少しでも元気になれるなら協力しようじゃないか。それに、高校生になった明日香が洗ってくれると、きっと気持ち良さそうだという期待もあって。
服を着替え終わり、タオルを腰に巻いて浴室の方に振り向くと、そこには後ろ姿だけれど生まれたままの姿の明日香がいて。思わず右手で両眼を覆う。
「どうしたの、つーちゃん」
「いや、何というか……条件反射って言えばいいのかな。裸の明日香を見たらまずいと思って」
「ふふっ、つーちゃんったらかわいい。10歳くらいまではめーちゃんと3人で一緒にお風呂に入るのも平気だったのにね。不思議だよね。高校3年になると緊張しちゃうなんて。これも恋人になったから……なのかな」
「それもあるだろうけど、咲希や常盤さん、鈴音さんだとしても緊張するよ。ただ、明日香だと恋人だからか特別緊張するかな」
理性が保てるかどうか心配だ。旅行で明日香の水着姿や、大浴場で湯船に浸かる姿を間近で見ているけど、その程度で慣れるわけがなく。
「……そっか。でも、つーちゃんになら見られてもいいって思っているから。さっ、一緒に入ろう」
そう言われたのでゆっくりと目を開けたとき、僕は明日香に左手を掴まれて浴室へ連れて行かされる。
明日香の家の浴室はひさしぶりだな。懐かしいけれど、昔に比べると狭く思える。体が成長したからかな。
「さあ、つーちゃん。まずは髪を洗うからこの椅子に座ろうね」
まるで、僕が小さな子であるかのような言い方だな。
明日香の言うように鏡の前にある椅子に座ると、明日香はシャワーで僕の髪にお湯をかけていく。まあ、髪を洗ってもらっている間は目を瞑っておこう。
僕は久しぶりに明日香に髪を洗ってもらう。さすがに高校3年生だけあって昔に比べると格段に上手くなった。
「どうかな、つーちゃん」
「とても気持ちいいよ。上手になったね」
「ふふっ、ありがとう。小さい頃はめーちゃんと一緒に洗ったよね。力いっぱいに洗って、つーちゃんの髪で遊んで」
「そうだったね。でも、あのときは芽依が中心で、明日香は控え目だったよ」
「思い返せば、最初はめーちゃんがやって、私がそれを真似していたな。つーちゃんの髪、結構長かったから色々と遊べたんだよね」
「そうだったね。そんな芽依も今は高校生になって、明日香とは恋人だもんね。そう思うと何だか泣けてくるな……」
「つーちゃんったら、子供の成長に感激する親みたい」
ふふっ、と明日香の可愛らしい笑い声が浴室に響き渡る。目を開けて鏡越しに明日香のことを見ると、彼女は幸せそうな笑みを浮かべている。
「つーちゃん、そろそろシャワーで泡を落とすから目を瞑ってね」
「はーい」
僕が目を瞑るとシャワーで温かいお湯が掛けられる。今日も勉強して、お祭りのときに意外と歩いたからか……何だか眠くなってくる。
「ほーら、眠っちゃダメですよー」
「ごめん、気持ち良かったから」
「そういえば、髪で遊びすぎたから途中で寝たことがあったよね」
「そんなこともあったなぁ。あのときは何を言っても止めないだろうって思ったからね。特に芽依が」
そのときに、僕は何を言ってもダメなことや、諦めも肝心なときがあるいうことを知った気がするよ。
気付けば、シャワーの時間は終わってタオルで髪を拭いてもらっていた。今夜は何から何まで明日香にやってもらうことになっちゃうな。
「はい、これで髪は終わり。次は体を洗うよ!」
「ありがとう。でも、背中を流してくれるだけでいいよ。さすがに前までは……ね」
「うん、分かった。ええと……私のときも背中を流してくれれば十分だよ」
「了解
」
その一言を聞いて安心した。前の方もしっかりと洗ってほしいと言われたらどうしようかと思ったよ。特に胸とか。
明日香にボディータオルで背中を流してもらう。これも昔に比べると本当に上手になったと思う。
「つーちゃん、こんな感じの洗い方で大丈夫かな」
「うん、とても気持ちいいよ」
「良かった。旅行のときにもつーちゃんの背中を見たけれど、こうして間近で見て実際に洗ってみると、本当に大きくなったんだなって思うよ」
「小学6年生くらいのときから急に背が伸び始めたかな。中学のときは細かったけど、高校生になってバイトを始めてから筋肉がついたかな」
「つーちゃん、2年生までは結構バイトをやっていたもんね」
「うん。お金があって損はないし、シー・ブロッサムでの仕事は楽しかったからね。考えてみればバイトをすることで体力も筋肉もついたのかな。……あっ、そういえば、僕がモデルの例の絵はどんな感じ?」
「夏休みに入ってから制作のスピードも上がって順調だよ。これなら、コンクールへの提出期限までに完成すると思う」
「そうなんだ、良かった。明日香さえいいなら、コンクールに出品する前に一度、僕にその絵を見せてもらってもいいかな」
「もちろんだよ。さっちゃんやめーちゃんも一緒に」
順調に進んでいて制作できていて安心した。旅行で常盤さんと喧嘩したのを知ったとき、このままだとコンクールに向けた作品の制作に深刻な影響が出ると思ったから。ちなみに、あの喧嘩以降、常盤さんと特に仲が悪くなったようなことはないという。
「うん、背中はこのくらいで大丈夫かな」
「ありがとう、明日香。あとは僕がやるね」
僕は明日香からボディータオルを受け取って、体の前面と腕や足を洗っていく。その際に明日香の体がちらっと見えてしまうけど、あまり気にしてはいけない。
「体を洗い終わるまで、明日香は湯船に浸かっていてもいいんだよ」
「この後すぐに交代するんだからいいって。それに、いくらつーちゃんと2人だけでも、体をまともに洗っていない状態で湯船には入る気にはあまりなれないから」
「そっか。……何か、ごめん」
「ううん、気にしないで。むしろ、私のことを気遣ってくれて嬉しいから。それに、つーちゃんと一緒で緊張しているから、湯船に浸かった状態で体を洗っているつーちゃんのことを見ると興奮してすぐにのぼせちゃいそうで。だから、こうして後ろ姿を見て、たまに鏡越しにつーちゃんの顔を見るのが今の私にとってはちょうどいいの。お湯には浸かれないけど、幸せには浸れるっていうか」
えへへっ、と明日香は照れた様子で笑っている。こういった笑顔は昔と全然変わっていないな。そういうものが一つでもあると嬉しくもあり、安心もする。あと、この後一緒に湯船に浸かるだろうから、明日香がのぼせないように注意しておかないと。
「さてと、このくらいでいいかな」
「じゃあ、背中の泡は私が流しちゃうね」
「うん、ありがとう」
背中に付いているボディーソープの泡を明日香に流してもらうことに。何だか、できる限りのことを明日香にしてもらった感じだ。しかも、とても気持ち良かった。
僕は明日香のようにできるのだろうかと緊張と不安を抱きながら、彼女から受け取ったシャワーを使って泡を洗い流すのであった。
ただ、背後から聞こえる布の擦れる音や明日香の漏らす声が、興奮を掻き立てていく。
「つーちゃんと2人でお風呂に入るなんていつ以来だろうね」
「中学生以降では初めてかもしれないな」
「最低でもそのくらいは経っているよね。ひさしぶりだからか、とっても嬉しい」
そういえば、咲希が帰ってきてすぐに明日香が泊まりに来たとき、明日香は一緒にお風呂に入ろうかって言っていたな。
家に来てから明日香は「昔のように」とか「ひさしぶり」という言葉を何度も口にしている。毎日一緒に登校して、ずっと同じクラスなので彼女とは一緒に過ごしているように思っていたけど、案外そうではないのかもしれない。中学生になってからは、明日香は放課後やこうした長期休暇のときは部活中心の生活になっていて、小学生のときまでと比べると一緒に過ごす時間がかなり減っていた。
「つーちゃん、お風呂に入ったらさっそく髪と体を洗うね」
「明日香からでいいよ」
「そんなわけにはいかないよ。つーちゃんは恋人だけれど、お客様だし……それに、つーちゃんの髪と体をひさしぶりに洗いたいから」
「そういうことなら、お言葉に甘えさせてもらうね」
恋人になったんだし、明日香のやりたいことはできるだけ叶えさせたい。僕の髪や体を洗って少しでも元気になれるなら協力しようじゃないか。それに、高校生になった明日香が洗ってくれると、きっと気持ち良さそうだという期待もあって。
服を着替え終わり、タオルを腰に巻いて浴室の方に振り向くと、そこには後ろ姿だけれど生まれたままの姿の明日香がいて。思わず右手で両眼を覆う。
「どうしたの、つーちゃん」
「いや、何というか……条件反射って言えばいいのかな。裸の明日香を見たらまずいと思って」
「ふふっ、つーちゃんったらかわいい。10歳くらいまではめーちゃんと3人で一緒にお風呂に入るのも平気だったのにね。不思議だよね。高校3年になると緊張しちゃうなんて。これも恋人になったから……なのかな」
「それもあるだろうけど、咲希や常盤さん、鈴音さんだとしても緊張するよ。ただ、明日香だと恋人だからか特別緊張するかな」
理性が保てるかどうか心配だ。旅行で明日香の水着姿や、大浴場で湯船に浸かる姿を間近で見ているけど、その程度で慣れるわけがなく。
「……そっか。でも、つーちゃんになら見られてもいいって思っているから。さっ、一緒に入ろう」
そう言われたのでゆっくりと目を開けたとき、僕は明日香に左手を掴まれて浴室へ連れて行かされる。
明日香の家の浴室はひさしぶりだな。懐かしいけれど、昔に比べると狭く思える。体が成長したからかな。
「さあ、つーちゃん。まずは髪を洗うからこの椅子に座ろうね」
まるで、僕が小さな子であるかのような言い方だな。
明日香の言うように鏡の前にある椅子に座ると、明日香はシャワーで僕の髪にお湯をかけていく。まあ、髪を洗ってもらっている間は目を瞑っておこう。
僕は久しぶりに明日香に髪を洗ってもらう。さすがに高校3年生だけあって昔に比べると格段に上手くなった。
「どうかな、つーちゃん」
「とても気持ちいいよ。上手になったね」
「ふふっ、ありがとう。小さい頃はめーちゃんと一緒に洗ったよね。力いっぱいに洗って、つーちゃんの髪で遊んで」
「そうだったね。でも、あのときは芽依が中心で、明日香は控え目だったよ」
「思い返せば、最初はめーちゃんがやって、私がそれを真似していたな。つーちゃんの髪、結構長かったから色々と遊べたんだよね」
「そうだったね。そんな芽依も今は高校生になって、明日香とは恋人だもんね。そう思うと何だか泣けてくるな……」
「つーちゃんったら、子供の成長に感激する親みたい」
ふふっ、と明日香の可愛らしい笑い声が浴室に響き渡る。目を開けて鏡越しに明日香のことを見ると、彼女は幸せそうな笑みを浮かべている。
「つーちゃん、そろそろシャワーで泡を落とすから目を瞑ってね」
「はーい」
僕が目を瞑るとシャワーで温かいお湯が掛けられる。今日も勉強して、お祭りのときに意外と歩いたからか……何だか眠くなってくる。
「ほーら、眠っちゃダメですよー」
「ごめん、気持ち良かったから」
「そういえば、髪で遊びすぎたから途中で寝たことがあったよね」
「そんなこともあったなぁ。あのときは何を言っても止めないだろうって思ったからね。特に芽依が」
そのときに、僕は何を言ってもダメなことや、諦めも肝心なときがあるいうことを知った気がするよ。
気付けば、シャワーの時間は終わってタオルで髪を拭いてもらっていた。今夜は何から何まで明日香にやってもらうことになっちゃうな。
「はい、これで髪は終わり。次は体を洗うよ!」
「ありがとう。でも、背中を流してくれるだけでいいよ。さすがに前までは……ね」
「うん、分かった。ええと……私のときも背中を流してくれれば十分だよ」
「了解
」
その一言を聞いて安心した。前の方もしっかりと洗ってほしいと言われたらどうしようかと思ったよ。特に胸とか。
明日香にボディータオルで背中を流してもらう。これも昔に比べると本当に上手になったと思う。
「つーちゃん、こんな感じの洗い方で大丈夫かな」
「うん、とても気持ちいいよ」
「良かった。旅行のときにもつーちゃんの背中を見たけれど、こうして間近で見て実際に洗ってみると、本当に大きくなったんだなって思うよ」
「小学6年生くらいのときから急に背が伸び始めたかな。中学のときは細かったけど、高校生になってバイトを始めてから筋肉がついたかな」
「つーちゃん、2年生までは結構バイトをやっていたもんね」
「うん。お金があって損はないし、シー・ブロッサムでの仕事は楽しかったからね。考えてみればバイトをすることで体力も筋肉もついたのかな。……あっ、そういえば、僕がモデルの例の絵はどんな感じ?」
「夏休みに入ってから制作のスピードも上がって順調だよ。これなら、コンクールへの提出期限までに完成すると思う」
「そうなんだ、良かった。明日香さえいいなら、コンクールに出品する前に一度、僕にその絵を見せてもらってもいいかな」
「もちろんだよ。さっちゃんやめーちゃんも一緒に」
順調に進んでいて制作できていて安心した。旅行で常盤さんと喧嘩したのを知ったとき、このままだとコンクールに向けた作品の制作に深刻な影響が出ると思ったから。ちなみに、あの喧嘩以降、常盤さんと特に仲が悪くなったようなことはないという。
「うん、背中はこのくらいで大丈夫かな」
「ありがとう、明日香。あとは僕がやるね」
僕は明日香からボディータオルを受け取って、体の前面と腕や足を洗っていく。その際に明日香の体がちらっと見えてしまうけど、あまり気にしてはいけない。
「体を洗い終わるまで、明日香は湯船に浸かっていてもいいんだよ」
「この後すぐに交代するんだからいいって。それに、いくらつーちゃんと2人だけでも、体をまともに洗っていない状態で湯船には入る気にはあまりなれないから」
「そっか。……何か、ごめん」
「ううん、気にしないで。むしろ、私のことを気遣ってくれて嬉しいから。それに、つーちゃんと一緒で緊張しているから、湯船に浸かった状態で体を洗っているつーちゃんのことを見ると興奮してすぐにのぼせちゃいそうで。だから、こうして後ろ姿を見て、たまに鏡越しにつーちゃんの顔を見るのが今の私にとってはちょうどいいの。お湯には浸かれないけど、幸せには浸れるっていうか」
えへへっ、と明日香は照れた様子で笑っている。こういった笑顔は昔と全然変わっていないな。そういうものが一つでもあると嬉しくもあり、安心もする。あと、この後一緒に湯船に浸かるだろうから、明日香がのぼせないように注意しておかないと。
「さてと、このくらいでいいかな」
「じゃあ、背中の泡は私が流しちゃうね」
「うん、ありがとう」
背中に付いているボディーソープの泡を明日香に流してもらうことに。何だか、できる限りのことを明日香にしてもらった感じだ。しかも、とても気持ち良かった。
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