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本編
第22話『斜陽』
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お昼ご飯をたくさん食べたので、午後も会長と一緒に俺の部屋でゆっくりと過ごすことに。胃が苦しかったのでベッドで横になっていると、会長がニコニコしながらずっと俺のことを見つめていた。
「何もせずに、俺のことをずっと見続けていたら飽きませんか?」
「全然飽きないよ。それに、色々と妄想してるから。キスやその先のこととか」
「……そうですか」
さすがは沙奈会長。それにしても、会長の妄想の中にいる俺、不憫だなぁ。
「沙奈会長はお腹大丈夫ですか? あの後、姉さんと一緒にパンケーキを1枚追加して食べていましたけど」
「うん、大丈夫だよ。もう1枚くらいは食べられると思う」
「……凄いですね」
姉さんも3枚目を食べ終わったときもにっこりと笑っていたし……やっぱり、3人の中では俺が最も小食なんだな。
「玲人君、私は夕方に帰るつもりだけれど、それまで何しよっか?」
「課題がなかったり、終わったりしていれば、音楽を聴きながら漫画を読むか、録画したドラマやアニメを観ていますけど」
「へえ、私もアニメは結構観るよ。録画したり、DVDをレンタルしたりして」
「そうなんですか。ちなみに、どんな作品が好きなんですか?」
「ええとね……」
沙奈会長に好きな作品名をいくつか教えてもらうけれど……どれも、ヒロインが主人公に溺愛している作品ばかりだった。その中には結ばれないことが分かり、ラストにヒロインが主人公を殺害してしまう作品もあって。ヒロインに自然と感情移入してしまうのだろうか。
胃の苦しみが大分収まってからは、録画してまだ観ていないアニメを一緒に観た。
「あぁ、面白かった」
「そうですね。まさか会長と一緒に観ることになるとは思いませんでした」
「私も玲人君と一緒に観るとは思わなかったよ。……さてと、もう夕方だから、そろそろ帰ろうかな」
「そうですか。途中まででも送りますよ」
「ありがとう。私の家、駅の先にあるから……駅の近くまで送ってもらおうかな」
「分かりました」
俺は沙奈会長のバッグを持って、一緒に月野駅まで向かう。
もしかしたら、途中の公園でアリスさんがいるかもしれないと思って、公園の中を見渡してみたけれど、今日も彼女の姿はなかった。
「なかなか会えませんね。向こうにも事情があったり、国に帰ったりしたのかもしれませんが」
「そうかもね。いつか会えればいいよ」
いつか会えればか。アリスさんが女性であることを知っているのに、沙奈会長がそう言うなんて。猫を通じて知り合った友達という俺の言葉を信じてくれているのかな。それとも、猫のように甘えさせてもらって自分の方が俺との仲が深いと余裕があるのか。
家を出発してから10分ちょっとで月野駅に辿り着いた。
「ここら辺でいいよ。荷物、持ってくれてありがとう」
「いえいえ」
「じゃあ、また明日ね。明日は朝の身だしなみチェックはないから、金曜日と同じくらいの時間に生徒会室に来てくれるかな」
「分かりました」
「じゃあね」
そう言って、沙奈会長は頬にキスをし、俺に手を振って俺の元を後にした。周りに人がいるっていうのに。
俺は家に向かって歩き出す。
私服で歩いているからか、いつもと景色が違って見える。俺のことを変な目でジロジロ見てくる人もいないし。髪を染めている大学生に見えるのかな。
私服を着ていれば何もなく、制服を着ているといけない人間のように見られるのもおかしい気がする。校則違反でもないのに……って、俺は今まで何度考えただろう。金髪でいる限り、変な目で見られることは仕方ないと諦めた方がいいのかも。
「もしかしたら、アリスさんいるかもな……」
さっき、会長と一緒に公園を通ったときはいなかったけれど、さっきよりも日が傾いてきたのでアリスさんがいるような気がしてきた。アリスさんといえば夕方、夕方といえばアリスさんと言っても過言ではない。
そんなことを考えながら公園に向かうと、
「あら、逢坂さん。こんにちは」
「こんにちは、アリスさん」
いつものベンチに座り、茶トラ猫を抱きしめているアリスさんがいた。予想通りというか何というか。
いつもの通りに俺はアリスさんの隣に座る。
「15分くらい前に会長と一緒にここを通ったときにはいなかったので、今日もアリスさんには会えないかと思いました。ふるさとの国に帰ったのかなって」
「ふふっ、そうでしたか。何日も会えませんでしたが、ずっと日本にいましたよ。用事が終わってつい数分前にここに来たんです」
「なるほど」
事前に会う約束をしていなければ、そう簡単には会えないか。
「会長さんと一緒にいたということは、もしかしてこの週末はずっと?」
「もしかして……なんです。昨日の朝に、突然、俺の家に会長が家にやってきたのが事の始まりでした。一緒に幼なじみのお見舞いに行き、喫茶店でお昼ご飯を食べ、家に帰ったら俺のアルバムを見て、さすがにお風呂には入りませんでしたが、一緒のベッドで寝ました……って、すみません。こんなに言ってしまって」
昨日のことを思い出したら、マシンガンのごとくアリスさんに言ってしまった。
「ふふっ、気にしないでください。次々とエピソードが出てくるので驚きましたけれど。今の話だけ聞くと、会長さんと付き合っているようにしか思えませんね」
アリスさんはクスクスと笑っている。夢に出てきた琴葉も言っていたけれど、恋人と一緒に過ごしたような週末だったな。
気付けば、さっきまでアリスさんに抱かれていた茶トラ猫が、俺の膝の上でのんびりとしていた。
「やっぱり、アリスさんもそう思ってしまいますか」
「今の話だけを聞けばですよ。あたしは前から会長さんのことを聞いていますから、きっと、あなたを好きすぎるが故に家まで来たんですよね」
「……多分そうだと思います。俺も誘いませんでしたし」
むしろ、自分のペースで過ごして、この1週間の疲れを取りたいと思っていたくらいだ。
「ふふっ、そうですか。でも、今の逢坂さんの顔を見ていると、会長さんと一緒に過ごしたのも悪くはないという感じですけど」
「まあ、そうですね」
甘えてきたり、ベッタリしてきたりしたときもあったけれど。前よりは会長のことが少し可愛く思えてきたかな。
「俺には甘えん坊な姉さんがいるので、会長が泊まりに来たことで姉が1人増えたような感覚でした。だから、悪くはなかったのかなって。むしろ、会長が側にいて良かったと思えるときもありました」
「そうでしたか。逢坂さん、会長さんの好感度が上がってきているのでは?」
「最初が悪すぎましたからね。それに比べたら、かなり上がっていますよ。何かされるかもしれないっていう不安はありますけど、頼りになりそうな先輩ですし、基本的にはいい人なんだろうなって思えるようになってきました」
「うなぎ登りではないですか」
「そう……ですね」
会長の行動に慣れ始めたことで、彼女の良さも見え始めてきたというのもありそうだ。それはそれで悲しいけれど。
「色々なことがあったけれど、楽しい週末を過ごすことができたのですね」
「……それなりに。アリスさんはどうだったんですか? この週末は」
「あたしも色々とありましたけど、親友と呼べる友人と楽しくお喋りすることもできたので、とてもいい週末になりました。それに、この公園で猫ちゃんを愛でて、逢坂さんとお喋りすることができましたから」
「そういう風に言われると、何だか嬉しいですね。俺も何日かぶりにアリスさんと話せて楽しいです」
「あたしにそんなことを言っていいんですか? 例の会長さんが嫉妬してしまうかもしれませんよ?」
アリスさんが単なる友人だと信じてくれているようだけれど、今のことを話したら彼女の言うように沙奈会長は……嫉妬するかもな。
「そうかもしれませんけど、楽しいと思う気持ちを口にすることっていいことだと思います。時には恥ずかしくて言えないかもしれませんが」
そう考えると、沙奈会長は凄い人だなと思う。喜怒哀楽、あらゆる気持ちを言葉や態度ではっきりと示してくるから。
「……逢坂さんって見た目とは違って、結構、気持ちをはっきりと言葉にするタイプなんですね」
「本音をぶつけないと自分勝手なことをしてくる人がいますからね。相手によりけりです」
「なるほど。その相手が誰なのかすぐに分かりました」
沙奈会長は別として、家族以外の人間には感情を出しているとは思っていないんだけどな。アリスさんには会長のことを色々と話したから、気持ちを出すタイプだと思われたのかもしれない。
「気持ちの話で思ったんですけど、感情の変化で体調が良くなったり、悪くなったりすることってあるんですかね? 実は今朝、会長の具合が悪かったんですけど、この猫みたいに甘えさせてほしいって頼まれたので、その通りにしたら急に体調が良くなったんです」
「なるほど。実際に精神的なことが原因で発症する病気はいくつもありますし、日本には病は気からという言葉もあるくらいですからね。逆に考えれば、不安や不満を解消したらある程度まで一気に回復することもあるんじゃないでしょうか」
「なるほど。そうも考えられますね」
やっぱり、俺に甘えたいという精神的な要因と、生徒会の仕事による疲れという肉体的な要因が合わさって今朝の体調不良に至ったのかな。
「ただ、今の話を聞いていると、今後も会長さんのことを気に掛けた方がいいかもしれませんね。いつ、体調を崩してしまうか分かりませんから。生徒会のお仕事の影響で、気付いたときにはとんでもない状況に陥ってしまっているかもしれませんし……」
優しい笑みを浮かべながら、アリスさんはそう言った。
しかし、今のアリスさんの言葉を聞いた瞬間、全身に悪寒が走った。もしかしたら、沙奈会長も琴葉と同じような状況になってしまうかもしれないと思って。
「そうですね。今朝、体調を崩したことは事実ですし、生徒会の庶務係として今後も会長のことを気に掛けていきたいと思います」
「それがいいかと思います。生徒会のお仕事、頑張ってくださいね」
「はい、ありがとうございます」
体調を崩しがちになったのは最近になってからそうだし、明日からも沙奈会長の様子を見守ることにしよう。あと、仕事をしっかりと覚えていかないと。アリスさんの顔を見ながらそう心に決めたのであった。
「何もせずに、俺のことをずっと見続けていたら飽きませんか?」
「全然飽きないよ。それに、色々と妄想してるから。キスやその先のこととか」
「……そうですか」
さすがは沙奈会長。それにしても、会長の妄想の中にいる俺、不憫だなぁ。
「沙奈会長はお腹大丈夫ですか? あの後、姉さんと一緒にパンケーキを1枚追加して食べていましたけど」
「うん、大丈夫だよ。もう1枚くらいは食べられると思う」
「……凄いですね」
姉さんも3枚目を食べ終わったときもにっこりと笑っていたし……やっぱり、3人の中では俺が最も小食なんだな。
「玲人君、私は夕方に帰るつもりだけれど、それまで何しよっか?」
「課題がなかったり、終わったりしていれば、音楽を聴きながら漫画を読むか、録画したドラマやアニメを観ていますけど」
「へえ、私もアニメは結構観るよ。録画したり、DVDをレンタルしたりして」
「そうなんですか。ちなみに、どんな作品が好きなんですか?」
「ええとね……」
沙奈会長に好きな作品名をいくつか教えてもらうけれど……どれも、ヒロインが主人公に溺愛している作品ばかりだった。その中には結ばれないことが分かり、ラストにヒロインが主人公を殺害してしまう作品もあって。ヒロインに自然と感情移入してしまうのだろうか。
胃の苦しみが大分収まってからは、録画してまだ観ていないアニメを一緒に観た。
「あぁ、面白かった」
「そうですね。まさか会長と一緒に観ることになるとは思いませんでした」
「私も玲人君と一緒に観るとは思わなかったよ。……さてと、もう夕方だから、そろそろ帰ろうかな」
「そうですか。途中まででも送りますよ」
「ありがとう。私の家、駅の先にあるから……駅の近くまで送ってもらおうかな」
「分かりました」
俺は沙奈会長のバッグを持って、一緒に月野駅まで向かう。
もしかしたら、途中の公園でアリスさんがいるかもしれないと思って、公園の中を見渡してみたけれど、今日も彼女の姿はなかった。
「なかなか会えませんね。向こうにも事情があったり、国に帰ったりしたのかもしれませんが」
「そうかもね。いつか会えればいいよ」
いつか会えればか。アリスさんが女性であることを知っているのに、沙奈会長がそう言うなんて。猫を通じて知り合った友達という俺の言葉を信じてくれているのかな。それとも、猫のように甘えさせてもらって自分の方が俺との仲が深いと余裕があるのか。
家を出発してから10分ちょっとで月野駅に辿り着いた。
「ここら辺でいいよ。荷物、持ってくれてありがとう」
「いえいえ」
「じゃあ、また明日ね。明日は朝の身だしなみチェックはないから、金曜日と同じくらいの時間に生徒会室に来てくれるかな」
「分かりました」
「じゃあね」
そう言って、沙奈会長は頬にキスをし、俺に手を振って俺の元を後にした。周りに人がいるっていうのに。
俺は家に向かって歩き出す。
私服で歩いているからか、いつもと景色が違って見える。俺のことを変な目でジロジロ見てくる人もいないし。髪を染めている大学生に見えるのかな。
私服を着ていれば何もなく、制服を着ているといけない人間のように見られるのもおかしい気がする。校則違反でもないのに……って、俺は今まで何度考えただろう。金髪でいる限り、変な目で見られることは仕方ないと諦めた方がいいのかも。
「もしかしたら、アリスさんいるかもな……」
さっき、会長と一緒に公園を通ったときはいなかったけれど、さっきよりも日が傾いてきたのでアリスさんがいるような気がしてきた。アリスさんといえば夕方、夕方といえばアリスさんと言っても過言ではない。
そんなことを考えながら公園に向かうと、
「あら、逢坂さん。こんにちは」
「こんにちは、アリスさん」
いつものベンチに座り、茶トラ猫を抱きしめているアリスさんがいた。予想通りというか何というか。
いつもの通りに俺はアリスさんの隣に座る。
「15分くらい前に会長と一緒にここを通ったときにはいなかったので、今日もアリスさんには会えないかと思いました。ふるさとの国に帰ったのかなって」
「ふふっ、そうでしたか。何日も会えませんでしたが、ずっと日本にいましたよ。用事が終わってつい数分前にここに来たんです」
「なるほど」
事前に会う約束をしていなければ、そう簡単には会えないか。
「会長さんと一緒にいたということは、もしかしてこの週末はずっと?」
「もしかして……なんです。昨日の朝に、突然、俺の家に会長が家にやってきたのが事の始まりでした。一緒に幼なじみのお見舞いに行き、喫茶店でお昼ご飯を食べ、家に帰ったら俺のアルバムを見て、さすがにお風呂には入りませんでしたが、一緒のベッドで寝ました……って、すみません。こんなに言ってしまって」
昨日のことを思い出したら、マシンガンのごとくアリスさんに言ってしまった。
「ふふっ、気にしないでください。次々とエピソードが出てくるので驚きましたけれど。今の話だけ聞くと、会長さんと付き合っているようにしか思えませんね」
アリスさんはクスクスと笑っている。夢に出てきた琴葉も言っていたけれど、恋人と一緒に過ごしたような週末だったな。
気付けば、さっきまでアリスさんに抱かれていた茶トラ猫が、俺の膝の上でのんびりとしていた。
「やっぱり、アリスさんもそう思ってしまいますか」
「今の話だけを聞けばですよ。あたしは前から会長さんのことを聞いていますから、きっと、あなたを好きすぎるが故に家まで来たんですよね」
「……多分そうだと思います。俺も誘いませんでしたし」
むしろ、自分のペースで過ごして、この1週間の疲れを取りたいと思っていたくらいだ。
「ふふっ、そうですか。でも、今の逢坂さんの顔を見ていると、会長さんと一緒に過ごしたのも悪くはないという感じですけど」
「まあ、そうですね」
甘えてきたり、ベッタリしてきたりしたときもあったけれど。前よりは会長のことが少し可愛く思えてきたかな。
「俺には甘えん坊な姉さんがいるので、会長が泊まりに来たことで姉が1人増えたような感覚でした。だから、悪くはなかったのかなって。むしろ、会長が側にいて良かったと思えるときもありました」
「そうでしたか。逢坂さん、会長さんの好感度が上がってきているのでは?」
「最初が悪すぎましたからね。それに比べたら、かなり上がっていますよ。何かされるかもしれないっていう不安はありますけど、頼りになりそうな先輩ですし、基本的にはいい人なんだろうなって思えるようになってきました」
「うなぎ登りではないですか」
「そう……ですね」
会長の行動に慣れ始めたことで、彼女の良さも見え始めてきたというのもありそうだ。それはそれで悲しいけれど。
「色々なことがあったけれど、楽しい週末を過ごすことができたのですね」
「……それなりに。アリスさんはどうだったんですか? この週末は」
「あたしも色々とありましたけど、親友と呼べる友人と楽しくお喋りすることもできたので、とてもいい週末になりました。それに、この公園で猫ちゃんを愛でて、逢坂さんとお喋りすることができましたから」
「そういう風に言われると、何だか嬉しいですね。俺も何日かぶりにアリスさんと話せて楽しいです」
「あたしにそんなことを言っていいんですか? 例の会長さんが嫉妬してしまうかもしれませんよ?」
アリスさんが単なる友人だと信じてくれているようだけれど、今のことを話したら彼女の言うように沙奈会長は……嫉妬するかもな。
「そうかもしれませんけど、楽しいと思う気持ちを口にすることっていいことだと思います。時には恥ずかしくて言えないかもしれませんが」
そう考えると、沙奈会長は凄い人だなと思う。喜怒哀楽、あらゆる気持ちを言葉や態度ではっきりと示してくるから。
「……逢坂さんって見た目とは違って、結構、気持ちをはっきりと言葉にするタイプなんですね」
「本音をぶつけないと自分勝手なことをしてくる人がいますからね。相手によりけりです」
「なるほど。その相手が誰なのかすぐに分かりました」
沙奈会長は別として、家族以外の人間には感情を出しているとは思っていないんだけどな。アリスさんには会長のことを色々と話したから、気持ちを出すタイプだと思われたのかもしれない。
「気持ちの話で思ったんですけど、感情の変化で体調が良くなったり、悪くなったりすることってあるんですかね? 実は今朝、会長の具合が悪かったんですけど、この猫みたいに甘えさせてほしいって頼まれたので、その通りにしたら急に体調が良くなったんです」
「なるほど。実際に精神的なことが原因で発症する病気はいくつもありますし、日本には病は気からという言葉もあるくらいですからね。逆に考えれば、不安や不満を解消したらある程度まで一気に回復することもあるんじゃないでしょうか」
「なるほど。そうも考えられますね」
やっぱり、俺に甘えたいという精神的な要因と、生徒会の仕事による疲れという肉体的な要因が合わさって今朝の体調不良に至ったのかな。
「ただ、今の話を聞いていると、今後も会長さんのことを気に掛けた方がいいかもしれませんね。いつ、体調を崩してしまうか分かりませんから。生徒会のお仕事の影響で、気付いたときにはとんでもない状況に陥ってしまっているかもしれませんし……」
優しい笑みを浮かべながら、アリスさんはそう言った。
しかし、今のアリスさんの言葉を聞いた瞬間、全身に悪寒が走った。もしかしたら、沙奈会長も琴葉と同じような状況になってしまうかもしれないと思って。
「そうですね。今朝、体調を崩したことは事実ですし、生徒会の庶務係として今後も会長のことを気に掛けていきたいと思います」
「それがいいかと思います。生徒会のお仕事、頑張ってくださいね」
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