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特別編
エピローグ『おもいで』
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5月7日、月曜日。
ゴールデンウィークも明けて、今日から再び学校生活が始まる。連休明けでいきなり5日間の学校というのはなかなかキツいものがあるけれど、学校に沙奈会長という恋人がいると思うと意外と頑張れそうだ。
旅行中に気になっていた僕の助けた猫は、登校するときにいつものベンチでのんびりとくつろいでいるところを確認した。
生徒会の朝のミーティングを早めに終わらせて、僕は教室でクラスメイトに旅行のお土産である温泉饅頭を渡した。中にはすぐに食べ、満足そうな笑顔でお礼を言ってくれる人もいた。旅行はどうだったのかと話しかけてくる人もいて。入学当初と比べて、クラスの雰囲気が柔らかくなった気がする。
ちなみに、朝礼が終わった直後に担任の松風先生へ温泉饅頭を渡したとき、先生から「旅行いいないいな」と何度も言われ、ほとんどのクラスメイトが爆笑する始末。暦的には連休とはいえ、先生は学校で仕事をしていたのかな? それとも、満足な休日を送ることができなかったのだろうか。訊いたら先生が落ち込みそうなので、敢えて何も訊かなかった。
入学当初と比べるとかなり優しいと思えてきた空気の中、僕は連休明けの授業を受けた。昨日までが夢のように楽しかったにも関わらず、あっという間に放課後になった。この調子なら五月病に罹ることもなさそうだ。
「玲人君、今日も生徒会の仕事を頑張ろうね!」
「そうですね、沙奈会長」
「連休明けにしてはそこまで多くなかったね、沙奈ちゃん。こういう内容なら、復習を兼ねて逢坂君に一部の仕事をやらせてみよっか」
「それがいいですね、樹里先輩。分からなかったら樹里先輩や私に訊いてね、玲人君」
「分かりました」
今日も生徒会の仕事を行なうことに。
沙奈会長と副会長さんが物凄くやる気になっているように見える。おそらく、仕事を終えたら旅行中に買ったお菓子を食べながら、副会長さんが旅行中に撮影した映像を観ることになっているからだろう。
僕も一部の仕事を任され、沙奈会長や副会長さんに質問していきながら何とか終わらせることができた。といっても、2人の仕事が早く終わったので、途中から2人に見守られながらやったんだけれど。
「玲人君、ちゃんとできたね。偉いよ。生徒会長且つ恋人の沙奈さんからご褒美だぞ!」
沙奈会長は僕にキスをする。ここは生徒会室だけれど、今日の仕事が全て終わったのでまあいいか。
「沙奈ちゃん、ずっと我慢していたんだね。思い返せば、放課後になってから逢坂君にベッタリくっついていなかったし」
「玲人君と恋人になりましたから、公私混同をしないように気を付けようと決めまして。ですから、仕事が終わるまでは玲人君にキスしないように心がけてます」
「おっ、いい心掛けだね、沙奈ちゃん」
副会長さんの言う通りだ。沙奈会長にしてみればかなり立派な心掛けじゃないだろうか。いつまで続くかは分からないけど。
「じゃあ、録画した旅行の映像を観よっか」
「そうですね、樹里先輩! 楽しみだね、玲人君!」
「楽しみではあるんですけど、色々と恥ずかしいところも撮影されていたと思うので不安です」
気付いたら副会長さんに録画されていた……というパターンが何度もあったし。いつでもここから逃げ出せるように準備しておくか。
「さっ、一緒に観ようね、玲人君」
そんな僕の考えを読んでいたのか、沙奈会長はしっかりと腕を絡ませてくる。旅行中は可愛いと思っていた笑みも、今は恐く感じる。
「それじゃ、再生始めるよ。初日の車の映像から流すね」
僕らは生徒会にあるテレビを使って、旅行のビデオを見始める。昨日ホテルで2人が買った温泉饅頭やゴーフレットを食べながら。
今日もたまにスマホで写真を眺めていたけれど、動画で見ると思い出が鮮明に蘇ってくるな。副会長さんの撮影の仕方が上手なためか見やすい映像だし。
「こうして映像を観ていると、もう一度旅行に行っているみたいだね」
「確かに」
沙奈会長達を観るのはいいけれど、自分の姿が映ると何だか恥ずかしいな。声もちょっと違って聞こえるし。それに、旅行中は思った以上に沙奈会長とくっついていたんだな。
「逢坂君。旅先でも沙奈ちゃんと仲睦まじく過ごしていたのね。いいなぁ、いいなぁ」
「ええ、それはもう楽しく幸せな……って、松風先生!」
気付けば、松風先生がゴーフレットを食べながら旅行のビデオを観ていた。
「仕事が一段落したからね。逢坂君達からお土産話を聞こうとここに来てみたの。あと、このぶどうのゴーフレット美味しいね!」
「ふふっ、それは良かったです。温泉饅頭も食べてくださいね」
「お言葉に甘えていただくよ、沙奈ちゃん。このお饅頭は朝にお逢坂君から土産でもらったんだけれど、とても美味しくて」
松風先生にも好評なようで良かった。
「それにしても、逢坂君達……楽しそうな旅行だね。本当にいいなぁ」
「楽しかったですよ。ちなみに、陽子先生はどんな休日を過ごしていたんですか?」
沙奈会長、はっきりとそれを訊いてしまうか。僕は敢えて訊かなかったのに。
「木曜日は疲れを取るためにぐっすり寝て、ダラダラ過ごしたわ。それで、金曜日から日曜日まではずっと録り溜めていたドラマやアニメをずっと観てた」
「……な、なるほど。お家の中でずっと過ごすのもいいと思いますよ」
僕もどっちかと言えばインドア派だし、松風先生の過ごした休日もなかなかいいなと思った。禁固生活を送っていた間に放送された作品の中で、気になってまだ観ていないものがいくつもあるし。
その後は松風先生も加えて4人で旅行のビデオを観ていく。旅行に行っていない人も観ているのでちょっと緊張する。
「へえ、逢坂君の寝顔って結構可愛いんだね!」
「陽子先生もそう思いますか? あと、私のカーディガンを抱きしめながら寝るなんて可愛いですよね」
「微笑ましいシーンね。いやぁ、我ながらいいところを撮った」
「へえ、逢坂君も泣くことがあるんだね」
「玲人君のこの姿を見たときは、思わず私も泣きそうになりました」
「なるほどね。……あと、酔っ払うと沙奈ちゃんってキス魔になるの?」
「キ、キス魔じゃないですよ! 玲人君だからキスとか口づけをするんですって! それに、玲人君と一緒にチョコを溶かしているのも酔っ払っているからです! 普段からはやってません!」
「あのときの沙奈ちゃん、逢坂君に甘えまくっていて可愛かったよ。こうして見てみると、面白い映像が多いね!」
恥ずかしい映像もたまにあるけど、副会長さんの言うとおり……見てみると面白い内容が結構多い。楽しかった旅行の映像だからなのかな。
「こうして見てみると、また一緒に旅行に行きたくなるね。玲人君」
「そうですね。今回のメンバーでもまた行きたいですし、沙奈会長と2人きりでも旅行に行ってみたいです」
僕がそう言うと、沙奈会長は笑顔で頷いた。
「うん、絶対に行こうね! じゃあ……その誓いのキスをして?」
「分かりました」
沙奈会長にキスをする。映像にも沙奈会長とのキスのシーンがあるけれど、実際にする方が断然いいな。
「玲人君、大好き!」
「唐突に言ってきますね。僕も沙奈会長のことが大好きですよ」
沙奈会長があのチケットをもらってこなければ。この生徒会室で旅行の提案をしなければ。きっと、こんなにも楽しいゴールデンウィークを過ごすことはなかったはずだ。本当に僕らをいい方向へと引っ張ってくれるパワーのある人だと思う。
きっと、この先も沙奈会長達と楽しい思い出をたくさん作り、それらを愛おしく思うのだろう。そんなことを思いつつ、僕は沙奈会長達と一緒に旅行の映像を楽しむのであった。
特別編 おわり
ゴールデンウィークも明けて、今日から再び学校生活が始まる。連休明けでいきなり5日間の学校というのはなかなかキツいものがあるけれど、学校に沙奈会長という恋人がいると思うと意外と頑張れそうだ。
旅行中に気になっていた僕の助けた猫は、登校するときにいつものベンチでのんびりとくつろいでいるところを確認した。
生徒会の朝のミーティングを早めに終わらせて、僕は教室でクラスメイトに旅行のお土産である温泉饅頭を渡した。中にはすぐに食べ、満足そうな笑顔でお礼を言ってくれる人もいた。旅行はどうだったのかと話しかけてくる人もいて。入学当初と比べて、クラスの雰囲気が柔らかくなった気がする。
ちなみに、朝礼が終わった直後に担任の松風先生へ温泉饅頭を渡したとき、先生から「旅行いいないいな」と何度も言われ、ほとんどのクラスメイトが爆笑する始末。暦的には連休とはいえ、先生は学校で仕事をしていたのかな? それとも、満足な休日を送ることができなかったのだろうか。訊いたら先生が落ち込みそうなので、敢えて何も訊かなかった。
入学当初と比べるとかなり優しいと思えてきた空気の中、僕は連休明けの授業を受けた。昨日までが夢のように楽しかったにも関わらず、あっという間に放課後になった。この調子なら五月病に罹ることもなさそうだ。
「玲人君、今日も生徒会の仕事を頑張ろうね!」
「そうですね、沙奈会長」
「連休明けにしてはそこまで多くなかったね、沙奈ちゃん。こういう内容なら、復習を兼ねて逢坂君に一部の仕事をやらせてみよっか」
「それがいいですね、樹里先輩。分からなかったら樹里先輩や私に訊いてね、玲人君」
「分かりました」
今日も生徒会の仕事を行なうことに。
沙奈会長と副会長さんが物凄くやる気になっているように見える。おそらく、仕事を終えたら旅行中に買ったお菓子を食べながら、副会長さんが旅行中に撮影した映像を観ることになっているからだろう。
僕も一部の仕事を任され、沙奈会長や副会長さんに質問していきながら何とか終わらせることができた。といっても、2人の仕事が早く終わったので、途中から2人に見守られながらやったんだけれど。
「玲人君、ちゃんとできたね。偉いよ。生徒会長且つ恋人の沙奈さんからご褒美だぞ!」
沙奈会長は僕にキスをする。ここは生徒会室だけれど、今日の仕事が全て終わったのでまあいいか。
「沙奈ちゃん、ずっと我慢していたんだね。思い返せば、放課後になってから逢坂君にベッタリくっついていなかったし」
「玲人君と恋人になりましたから、公私混同をしないように気を付けようと決めまして。ですから、仕事が終わるまでは玲人君にキスしないように心がけてます」
「おっ、いい心掛けだね、沙奈ちゃん」
副会長さんの言う通りだ。沙奈会長にしてみればかなり立派な心掛けじゃないだろうか。いつまで続くかは分からないけど。
「じゃあ、録画した旅行の映像を観よっか」
「そうですね、樹里先輩! 楽しみだね、玲人君!」
「楽しみではあるんですけど、色々と恥ずかしいところも撮影されていたと思うので不安です」
気付いたら副会長さんに録画されていた……というパターンが何度もあったし。いつでもここから逃げ出せるように準備しておくか。
「さっ、一緒に観ようね、玲人君」
そんな僕の考えを読んでいたのか、沙奈会長はしっかりと腕を絡ませてくる。旅行中は可愛いと思っていた笑みも、今は恐く感じる。
「それじゃ、再生始めるよ。初日の車の映像から流すね」
僕らは生徒会にあるテレビを使って、旅行のビデオを見始める。昨日ホテルで2人が買った温泉饅頭やゴーフレットを食べながら。
今日もたまにスマホで写真を眺めていたけれど、動画で見ると思い出が鮮明に蘇ってくるな。副会長さんの撮影の仕方が上手なためか見やすい映像だし。
「こうして映像を観ていると、もう一度旅行に行っているみたいだね」
「確かに」
沙奈会長達を観るのはいいけれど、自分の姿が映ると何だか恥ずかしいな。声もちょっと違って聞こえるし。それに、旅行中は思った以上に沙奈会長とくっついていたんだな。
「逢坂君。旅先でも沙奈ちゃんと仲睦まじく過ごしていたのね。いいなぁ、いいなぁ」
「ええ、それはもう楽しく幸せな……って、松風先生!」
気付けば、松風先生がゴーフレットを食べながら旅行のビデオを観ていた。
「仕事が一段落したからね。逢坂君達からお土産話を聞こうとここに来てみたの。あと、このぶどうのゴーフレット美味しいね!」
「ふふっ、それは良かったです。温泉饅頭も食べてくださいね」
「お言葉に甘えていただくよ、沙奈ちゃん。このお饅頭は朝にお逢坂君から土産でもらったんだけれど、とても美味しくて」
松風先生にも好評なようで良かった。
「それにしても、逢坂君達……楽しそうな旅行だね。本当にいいなぁ」
「楽しかったですよ。ちなみに、陽子先生はどんな休日を過ごしていたんですか?」
沙奈会長、はっきりとそれを訊いてしまうか。僕は敢えて訊かなかったのに。
「木曜日は疲れを取るためにぐっすり寝て、ダラダラ過ごしたわ。それで、金曜日から日曜日まではずっと録り溜めていたドラマやアニメをずっと観てた」
「……な、なるほど。お家の中でずっと過ごすのもいいと思いますよ」
僕もどっちかと言えばインドア派だし、松風先生の過ごした休日もなかなかいいなと思った。禁固生活を送っていた間に放送された作品の中で、気になってまだ観ていないものがいくつもあるし。
その後は松風先生も加えて4人で旅行のビデオを観ていく。旅行に行っていない人も観ているのでちょっと緊張する。
「へえ、逢坂君の寝顔って結構可愛いんだね!」
「陽子先生もそう思いますか? あと、私のカーディガンを抱きしめながら寝るなんて可愛いですよね」
「微笑ましいシーンね。いやぁ、我ながらいいところを撮った」
「へえ、逢坂君も泣くことがあるんだね」
「玲人君のこの姿を見たときは、思わず私も泣きそうになりました」
「なるほどね。……あと、酔っ払うと沙奈ちゃんってキス魔になるの?」
「キ、キス魔じゃないですよ! 玲人君だからキスとか口づけをするんですって! それに、玲人君と一緒にチョコを溶かしているのも酔っ払っているからです! 普段からはやってません!」
「あのときの沙奈ちゃん、逢坂君に甘えまくっていて可愛かったよ。こうして見てみると、面白い映像が多いね!」
恥ずかしい映像もたまにあるけど、副会長さんの言うとおり……見てみると面白い内容が結構多い。楽しかった旅行の映像だからなのかな。
「こうして見てみると、また一緒に旅行に行きたくなるね。玲人君」
「そうですね。今回のメンバーでもまた行きたいですし、沙奈会長と2人きりでも旅行に行ってみたいです」
僕がそう言うと、沙奈会長は笑顔で頷いた。
「うん、絶対に行こうね! じゃあ……その誓いのキスをして?」
「分かりました」
沙奈会長にキスをする。映像にも沙奈会長とのキスのシーンがあるけれど、実際にする方が断然いいな。
「玲人君、大好き!」
「唐突に言ってきますね。僕も沙奈会長のことが大好きですよ」
沙奈会長があのチケットをもらってこなければ。この生徒会室で旅行の提案をしなければ。きっと、こんなにも楽しいゴールデンウィークを過ごすことはなかったはずだ。本当に僕らをいい方向へと引っ張ってくれるパワーのある人だと思う。
きっと、この先も沙奈会長達と楽しい思い出をたくさん作り、それらを愛おしく思うのだろう。そんなことを思いつつ、僕は沙奈会長達と一緒に旅行の映像を楽しむのであった。
特別編 おわり
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