天使は誰

玄糸雨楽

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衝動と散らばる感情

ー真希ー重なる

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ハル君なんて、大嫌い。


私を本当に好きなら、なんで痛いことするの?

分からない。どうしても理解できない。

彼、前は酷い人じゃなかった。
好きだとはたまに言ってくれるものの、距離をいつも感じていた。 

それを寂しいというにはあまりにも味気ないような関係。私に対してそこまで関心が無いようにも見えたし、仕事を大事にしてるように見えた。

だから自然消滅したのかと思った。

でもハル君はそうじゃなかった。
忘れたんじゃなく、仕事が忙しかっただけなのかな?それで会えずにいた期間が長かったの?

彼の中では終わってなかったんだ。


「真希……ま、き……くっ、はっ」

あれ?様子がおかしい。呼吸が乱れてるように見える。

「はっ、はっ、」

過呼吸だ。凄く苦しそう。
 

助けたくなくてハル君から、更に離れようとしたら泣いてしまった。
瞳が私を見てるはずなのに虚ろで。

その虚ろさが悲しいのと同時に、思い出してしまった。

……藍来。

もしかして、藍来も苦しんでるのかな。

そうだとしたら、嫌。

私が過呼吸になった時、優しい言葉で落ち着かさせてくれたのを覚えてる。

目の前に居る彼が似てるとかじゃなく藍来にしか見えなくて。

助けるのか助けないか。どうしよう。

心がグラグラしてる。



「真希ちゃん! 大丈夫!? 」

部屋のドアが勢いよく開いた。優大君が慌てて私に近づいた。

「その首……お前!」

優大君がハル君に掴みかかった。私の首に付いた跡を見たんだ。


「待って、過呼吸なの」

「はっ。自業自得じゃん。このまま苦しんでれば」

優大君凄く意地悪な言い方。冷めた目付きで彼を見てる。ゾッとした。

「刺激しないで。過呼吸止まらなくなるから」

いつも優しいのに怖い顔をしているのは、きっと怒ってるんだ。


「お前なんて、真希ちゃんの近くに居るな。消えろ」

まるで別人みたい、声すらも冷たい。
知らないが優大君が目の前に居て、どうしたらいいのか分からない。

酷すぎる言葉だったのか、呼吸が激しくなった。
刺激したら良くない。この過呼吸は多分、精神的なもの。

「止めて。 優大君 」

「何で、こいつを庇う訳」

「ちが……苦しんでるから……」

「苦しめば良いんだよ。こんな最低な男、1度地獄を味わえば分かるようになる」

「それ以上言わないで」

「どうして、僕は悪くないよ」

「だって、藍来が……」

つい口にしてしまった言葉は取り返せない。
優大君が、びっくりした顔してる。目を見開いてた。

「あっくんが何」

「ハル君、なんか藍来みたいで……」

「止めろ!! 」

そんな大きい声初めて聞いた。私は怖くて泣いた。

沈黙の空間で過呼吸だけが聞こえる。



「……悪いけど帰る」
 
「え、帰るの?どうして?」

私を放っておくの?助けてくれない?

こんなことになって不安なのに。それなのに、居なくなってしまうの?


優大君が帰ろうとしたから、引き留めようとすると嫌がられた。こんなに嫌そうなの、見たくなかった。胸が痛い。

「こいつの味方なんかするなよ! 気分悪いから、帰る」

 「待って! 優大く……」

扉を強く閉める音が、怖くて。

彼の味方をしてる訳じゃないの。
苦しんでるから助けないといけないかもって。

私、こんな冷たい人を好きになったの?

過呼吸が治まってないのに彼が、泣いてる私の涙を拭ってくれた。

さっきまで酷かったのに。優しくしないで。

気持ちがめちゃくちゃになってる。おかしくなりそう。

私の方が取り乱してるものだから、彼が自分で過呼吸を落ち着かせようとしてる。


過呼吸。昔の嫌な記憶を思い出すと私もよくなってた。
確か息を吸いすぎて苦しくなったような気がする。

だから、ゆっくりはかないと呼吸が戻らなくなるって教わったっけ。

過呼吸ってなってる本人は苦しくてたまらないんだよね。この世の終わりが来たみたいな気持ちになる。
そういった不安が尚更、呼吸が激しくなる原因。

彼は私の言葉が凄くショックだったのかもしれない。言いすぎたのかな。

でもあんな風にされたら、怒りたくもなる。
とはいえ、感情的にならず話し合いが出来たら良かったのかも。


少しして元の呼吸の仕方になった。ハル君は落ち着いたかもだけど、私はまだ取り乱したまま。


彼が微笑んだ。何かを言いかけたような。 

でも、言いかけた後に表情が曇ってしまった。


どうしたものかと思ったら、ポケットから自分のスマホを出して震えながらも操作している。

必死に何か伝えようとしてる?

見せられた画面に私は

『声が出ない。どうしよう』

ショックで、どうしたらいいか考えられなくなった。


















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