天使は誰

衝動と散らばる感情

ー優大ー恐怖と怒り

怒りに任せて、車を走らせていた。

何であんな奴に優しくするの？
イライラする。もう何本目か分からない位、煙草を吸っている。


たどり着いた先は真希ちゃんと出会った時のあの場所。

海で色んな人と出会ったり、別れたり。


その時に感じた沢山の思いを海が見守ってくれるような気がして、つい来てしまう。


今の気持ちをどこかへ流してほしい。
もう2度と戻って来れないくらい遠くまで。

嫌な気持ちなど、忘れてしまえばいいはずなのに。心を乱す。


車を停めて海岸を歩く。
 
「……本当になんなんだよ！ 」


駄目だイライラが止まらない。

あいつがあっくんだなんて、思いたくないのに。真希ちゃんまで、あんなこと言い出すものだから。

ぼーっと砂浜を歩いて、考えていた。

戻ろうか迷ったけど、止めた。

あいつの顔なんて見たくない。

虚ろな目してたのに、真希ちゃんをはっきりと捉えてた。思い出しただけで恐怖が重くのしかかってくる。


風が強くて波が荒れてる。自分の気持ちみたいだと思った。


車に戻ってスマホを見ると、メッセージアプリから何件か来てた。


真希ちゃんからではなく、別の女の子だった。
少しでも期待してしまった自分が馬鹿らしい。

「優大さん あたしファンなんです！ 連絡先 他の人に教えてもらっちゃいました！ 仲良くしてください 大好きです」

文の最後にハートマークが付いていて吐き気がした。

誰だよ、連絡先勝手に教えた奴。バンドメンバーではないのは分かる。おそらく後輩。

この子に頼まれて鼻の下伸ばしてるような奴だ。 
多分、そいつは彼女と関係を持ちたくて教えたんだろう。

可愛いからって何でも許されると思ってるんだ。
そういうのは気に入らないし、嫌いな部類に入る。

許可なしに教えないでほしい。
僕にはプライバシーも何も無いのか。
こういうの迷惑でしかない。

それにこの子、ヤリたいのが見え見えじゃん。

いつもの調子だったら、誘いに乗っていた。
一夜限りのお付き合いって感じで。
今は違う、そんな気分になれない。

真希ちゃんが好きだから。

そのメッセージに返事を送り、しばらくしてまた車を走らせた。