天使は誰

玄糸雨楽

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完全崩壊

ー優大ー堕ちる 2

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真希ちゃんが男に抱かれていた。

僕以外の誰かを受け入れるだなんて。気持ち悪い。

その場で吐きそうになった。

でも、それ以上に怒りと悲しみの感情が襲ってきて、頭がおかしくなってしまいそう。

他の男とそういうことしてるんだ。 
嫌だ、嫌悪感しかない。


「なんで……? 」

思わず言葉にしてしまった。
 
扉を開けて真希ちゃんを見た。

酷く驚いてる。そんな顔するなよ。

「っ……ざけんなよ!! なんで他の男に抱かれてる訳!? 」

しかも相手は忍。意味が分からない。

「違うの。優大君、助け……」

「酷いよ。僕は真希ちゃんがそんな軽い子だと思わなかった」

「好きで抱かれてる訳じゃないの、お願いだから……」

覆いかぶさってた忍が起き上がり笑いながら言った。

「真希さんそりゃないですよ」

そうだよ、なんで断らないんだよ。そんな言い訳が通用するとでもいうのか。

「真希ちゃんは好きじゃなくてもヤレるんだ? 最低」

そう言うしかなかった。最低という言葉しか思いつかない。

「そんなこと言ったら、優大君だって私以外の女性と親密な関係になってるじゃないの」

そんな泣きながら言わないでほしい。
悲しいのは僕の方なのに。

「そんな顔されても、真希ちゃんのしたことは酷いことなんだよ。ちゃんと話がしたくて来たのに」


話なんてしたところで、きっと無駄。
彼女は他の男を選んだ。その事実は僕を酷く傷つけたんだ。

悲しすぎるくらい呆気ない。

真希ちゃんと一緒に居た心地良さや愛しさを残したまま、あまりに強い嫌悪感で心が塗りつぶされた。

簡単に諦めるのは、これ以上期待したくないから。
仲直りなんてしなくていい。

「別れよう。これ以上は何も話したくない。さよなら」

真希ちゃんが何か言ってるようだったけど、聞きたくなくてその場を立ち去った。


彼女は僕を心から好きではなかったんだろうか。
そんな風に思ってしまう。


いっそ知らん振りをして帰った方が良かったのかな。
でも、声を上げずにはいられなかったんだ。

そもそも僕が彩香ちゃんとスキャンダルにならなければ、まだ関係は続いていたはず。

結局は全部、僕のせいか。

愛想をつかされて忍の誘いにでも乗ったのか、それとも真希ちゃんから?

考えてもどうしようもないのにね。


僕は人に対して冷たくて、すぐに諦める。

芸能人になれたのは運が良かった以外にない。
普通じゃなくなっただけで、沢山のものが犠牲になった。

その中には大切にしていた人間関係だってあった。
裏切られるなんて慣れてる。

それなのに、何で?

真希ちゃんだけは変わらないままだって信じてた。

あの笑顔に嘘はないって。
 
こんな終わり方、悲しすぎるよ。

失っていいものなんて1つもない。
それなのに沢山無くなっていく。

真希ちゃん。君だけは大切でありたかった。

最後まで、残るものって一体何?

真希ちゃんなら、演じなくてもありのままで居させてくれる様な気がした。

諦めなければ彼女はずっと大切な存在であったのか。

簡単に諦めてしまう僕は、なんて弱いんだろう。

ここでもし、後悔しない選択肢が選べるなら。
今、彼女の所に戻るべきか。

無理だ。僕には出来ない。

真希ちゃんの顔をまともに見られる自信がない。

それにもう好きじゃないと言われるかもしれないし。

自分の弱さを恨んで泣きながら帰った。





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