推しカプの皇太子夫妻に挟まれ推し返されてしんどい

小島秋人

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第八話

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 「…で?言い分がお有りなら聞こうじゃありませんの?」
 「ショックだよ…まさかこんな場面に出会すなんて…」
 浮気現場押さえたみたいな空気やめろ。

 「こ・れ・が!浮気現場でなくて何だと言うの!」
 「けだもの!ど淫乱!でもそれはそれでちょっと興奮する!」
 「…取り敢えず二人で意思統一してくれ、混乱する」
 「殿下、割りと同意見ですけれど先ずはきちんと叱りませんと」
 「嫌な方向性で統一するんじゃねぇ」

 抑々は二人が神樹の森への訪問を希望した事に端を発する。不侵領域との境界を守護するドリアードは積極的に人と交流を持つ訳ではない。「それでも一言平素の御加護に御礼を」と言う二人に押し切られる形となった。御礼参りの間違いじゃねぇだろうな…

 「とんでもない誤解だよ、東方鎮護を担う人間の長に連なる者として当然の礼儀だよ」
 「私たちは誠実な心で聖域に出向いたと言うのにっ…!貴方はっ…!貴方と言う子はっ…!」
 保護者目線やめろ、こちとら再来年には二十歳だぞ。因みに国に依って成人の年齢は異なるが我が国では16と定められている。18なら独立して一家を構えてもおかしくはない年頃だ。

 「勿論貴方と聖下の関係は解っている心算でしたわ、でもっ…!でもそれはもう過去の話だとばかり思って居たのにっ…!」
 いや、其れに関しては俺もそう思ってた。
 「甘いねリズ…僕なんて此処に来る直前までユーリが見栄張ってる可能性に賭けてたからダメージ倍増だよ…」
 勝手に人を痛い童貞扱いしてんじゃねぇ。

 「兎に角!ちょっと目を話した隙に野外触手プレイに及んだ件に就いては正式に謝罪を要求しますわ!」
 もう少し言い方どうにかならんか。
 「羨ましい…!妬ましい…!」
 取り敢えずアレクはちょっと落ち着け、品位の急降下っぷりが軽く引く。
 「そんな!『王族と言っても人なんだから一緒の時くらいはお兄ちゃんで居てよ』って君が言ったんじゃないか!」
 「だから幼少期の言葉を引用するなら状況選べってぇ!」



 『ふたりは、この子のつがい、ね?』
 一頻り叫び合い、またも息切れた三者に大伯母が割って入った。

 「…いや「「そうです」」おい!」
 「何か文句がお有りかしら?」
 「実質的には二人の伴侶と言って差し支えないじゃないか」
 「神前で貞淑の誓い立てといてよくもいけしゃあしゃあと…」

 『そう…あなたたちがなの、ね』

 …ん?何か前から知ってる口振り?

 『このあいだ、言っていたもの、ね、いとしい人たちが、できた、って』



 ………んんんんん???

 「ちょっと待った!何それ!何それ!?全っ然身に覚えが無い!!!」
 『言った、わ、このあいだ、じゅうねんくらい、まえ?』
 「長命種の時間感覚ぅぅぅ!!!」
 不味い、非常に不味い、こんな言質取らせた日にゃあ揃って調子乗るに決まって…

 「…も、もうっ!男子たるもの自分の想いを妄りに吹聴するものではなくってよ?…ねぇ殿下?」
 「そ、そうだね…人伝に聞くと面と向かって言われるより却って照れくさいや…あはは」
 おいやめろ、マジでやめろ。気恥ずかしい空気感作るんじゃねぇ。弄り回された方が千倍マシだ。
 『産み、増え、育てる、種は多いほうが、いい、ね?』
 フォローになってねぇよ。種…せめて愛とか言ってくれんか。



 「…え!?産んでくれるの!?」
 「優しいツッコミで済ましてやるにも限度って物が有るぞ」
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