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36 完
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思う存分千景を堪能して、気がついたときには窓から陽が入り始めていた。
疲れてスヤスヤと寝息を立てる千景が愛おしい。
「千景、ごめんね」
眠る千景に謝った。
無理をさせてしまったこともだが、千景が望んだ訳でもない復讐を勝手に遂行したことに対しても。
「……んん、ふぇる……」
千景はまるで猫のように頬を触った私の手にすり寄って、ふふんと笑った。
これから先、私たちは千景の想像できる期間よりもはるかに長い一生を共にする。
その間にこの一連の私の行動がバレてしまうことのないように、慎重に行動しなければならない。万が一バレて私が嫌われることになってしまっては、千景が私と共に過ごすことにストレスがかかるかもしれないからだ。千景に余計なストレスはかけたくない。
だが、もちろん千景が私を嫌ったくらいで手放してやる優しさも持ち合わせていないから、復讐については極秘だ。
大切にされることのなかった千景の人生を、千景が生まれてからずっと横で見てきた。
私はずっと千景を甘やかしたいと思っていたけれど、結局今は千景に甘えてしまっている。
「んん……」
千景がモゾモゾと起きそうな雰囲気で体を動かし、うっすらと目を開けた。
「千景、もう少し寝ていていいよ」
「フェル……、おはよ。もう起きるよ」
「そうかい? 無理をさせてしまってごめんね」
「全然……。その、僕もフェルレントとするの、好きだから」
「っ」
寝起きの潤んだ瞳で上目遣い。
朝からこんなに可愛いことばかり言ってくれるから、私の自制心を試されているんじゃないかと思う時がある。
己の自制心をフル稼働させて千景の頬を撫でることで押し留めると、千景も徐に私の頬を撫でてくる。
「どうしたの?」
「ふふ。だってフェルレントがいっつも僕の頬を撫でるから、僕もお返し」
またふふんと満足そうに笑うのが愛おしくてたまらない。
「本当に、千景は私を甘やかすのがうまいね」
「えっ、そうかな。僕の方がいっつもフェルレントに甘やかされてると思うけど」
「私が? 甘やかせられているかな」
「うん。フェルレントは僕のこと甘やかすのがうまいよ。なんでも『いいよ』って言ってくれるし。好きとか愛してるっていつも伝えてくれるからフェルレントと居て不安に思ったこともないし」
「それは甘やかしかな」
「甘やかしだよ」
「そうか」
「ふふ。不満そう」
千景が楽しそうに笑った。
「不満ではないよ。なんでそんなに楽しそうなんだい?」
「だって、珍しくフェルレントが子供っぽいから」
「そうかな」
「うん。フェルレントの知らない顔を見られるのは、僕はとても嬉しいよ」
千景はここにきて6年と少ししか経っていなくても、今や2児の母で、最近見せてくれる表情や仕草は大人びている。それがどこか寂しくて、けれど頼もしくて。自分も父親としてしっかりしなければいけないと思うのだ。
○ ○ ○
■千景side
フェルレントは僕をどう甘やかすかで悩んでいるらしく、その姿がなんとも子供みたいで僕は可愛く思った。正確なフェルレントの年齢を聞いたことはなかったけれど、この世界で生きる生き物はかなり長生きで、フェルレントも例にもれず千景よりだいぶ年上であるだろうことは分かっている。だから、そんな可愛らしい姿を見せてもらえて僕はとても嬉しかった。
子供が2人も居るというのに、フェルレントみたいに大人になりきれずガキ臭い僕をフェルレントは常に甘やかすし、甘やかしている自覚がないのも少し面白かった。
まだマルクもルークも生まれる前、僕は体調を崩したことがあった。
当時の僕はフェルレントは仕事だから邪魔をしちゃいけないと体調不良を隠した。
けれどフェルレントはそれにすぐさま気が付いて、その日の仕事をリモートワークに切り替え、僕の隣にずっといてくれたのだ。書類をペラリペラリと静かにめくる音で安心してぐっすりと眠ることができた。アダンや他の使用人だったら一緒に居てくれたとしてもあそこまで安心できなかっただろうし、今でも時々思い出して嬉しくなってしまう。
それにこの辺りの看病では病人にバナナとか、りんごとかを混ぜたミックスジュースみたいなものを食べさせるのが普通らしいのに、フェルレントは僕に合わせておかゆを作らせて、それをふぅふぅしながら食べさせてくれた。
看病なんて病院でしかされたことがなかったから、風邪で体は辛かったけど僕は本当に幸せだなって心がポカポカした。
そんなことの積み重ねで、フェルレントはいつだって僕を自覚なく甘やかしてくれている。
それにいつも申し訳なさそうにされるけど、フェルレントが夜に暴走するのだって僕は嬉しく思ってる。だってあんなに僕を求めてくれる人はいなかったし、フェルレントの紳士の仮面が剥げるのは僕の前だけだって優越感もあるし。
生きている頃、僕が死んだら誰か悲しんでくれる人がいるのかと思っていた。
けど、今になってはそんなことどうだっていい。
僕と一緒に人生を共にしてくれるフェルレントがいる。
僕とフェルレントの宝物の、マルクレントとルークレントがいる。
そんな僕たちと共に過ごしてくれるアダンや他の使用人たちもいる。
この幸せな場所が僕は大好きだから、他のことなんてもう考えられない。
完
疲れてスヤスヤと寝息を立てる千景が愛おしい。
「千景、ごめんね」
眠る千景に謝った。
無理をさせてしまったこともだが、千景が望んだ訳でもない復讐を勝手に遂行したことに対しても。
「……んん、ふぇる……」
千景はまるで猫のように頬を触った私の手にすり寄って、ふふんと笑った。
これから先、私たちは千景の想像できる期間よりもはるかに長い一生を共にする。
その間にこの一連の私の行動がバレてしまうことのないように、慎重に行動しなければならない。万が一バレて私が嫌われることになってしまっては、千景が私と共に過ごすことにストレスがかかるかもしれないからだ。千景に余計なストレスはかけたくない。
だが、もちろん千景が私を嫌ったくらいで手放してやる優しさも持ち合わせていないから、復讐については極秘だ。
大切にされることのなかった千景の人生を、千景が生まれてからずっと横で見てきた。
私はずっと千景を甘やかしたいと思っていたけれど、結局今は千景に甘えてしまっている。
「んん……」
千景がモゾモゾと起きそうな雰囲気で体を動かし、うっすらと目を開けた。
「千景、もう少し寝ていていいよ」
「フェル……、おはよ。もう起きるよ」
「そうかい? 無理をさせてしまってごめんね」
「全然……。その、僕もフェルレントとするの、好きだから」
「っ」
寝起きの潤んだ瞳で上目遣い。
朝からこんなに可愛いことばかり言ってくれるから、私の自制心を試されているんじゃないかと思う時がある。
己の自制心をフル稼働させて千景の頬を撫でることで押し留めると、千景も徐に私の頬を撫でてくる。
「どうしたの?」
「ふふ。だってフェルレントがいっつも僕の頬を撫でるから、僕もお返し」
またふふんと満足そうに笑うのが愛おしくてたまらない。
「本当に、千景は私を甘やかすのがうまいね」
「えっ、そうかな。僕の方がいっつもフェルレントに甘やかされてると思うけど」
「私が? 甘やかせられているかな」
「うん。フェルレントは僕のこと甘やかすのがうまいよ。なんでも『いいよ』って言ってくれるし。好きとか愛してるっていつも伝えてくれるからフェルレントと居て不安に思ったこともないし」
「それは甘やかしかな」
「甘やかしだよ」
「そうか」
「ふふ。不満そう」
千景が楽しそうに笑った。
「不満ではないよ。なんでそんなに楽しそうなんだい?」
「だって、珍しくフェルレントが子供っぽいから」
「そうかな」
「うん。フェルレントの知らない顔を見られるのは、僕はとても嬉しいよ」
千景はここにきて6年と少ししか経っていなくても、今や2児の母で、最近見せてくれる表情や仕草は大人びている。それがどこか寂しくて、けれど頼もしくて。自分も父親としてしっかりしなければいけないと思うのだ。
○ ○ ○
■千景side
フェルレントは僕をどう甘やかすかで悩んでいるらしく、その姿がなんとも子供みたいで僕は可愛く思った。正確なフェルレントの年齢を聞いたことはなかったけれど、この世界で生きる生き物はかなり長生きで、フェルレントも例にもれず千景よりだいぶ年上であるだろうことは分かっている。だから、そんな可愛らしい姿を見せてもらえて僕はとても嬉しかった。
子供が2人も居るというのに、フェルレントみたいに大人になりきれずガキ臭い僕をフェルレントは常に甘やかすし、甘やかしている自覚がないのも少し面白かった。
まだマルクもルークも生まれる前、僕は体調を崩したことがあった。
当時の僕はフェルレントは仕事だから邪魔をしちゃいけないと体調不良を隠した。
けれどフェルレントはそれにすぐさま気が付いて、その日の仕事をリモートワークに切り替え、僕の隣にずっといてくれたのだ。書類をペラリペラリと静かにめくる音で安心してぐっすりと眠ることができた。アダンや他の使用人だったら一緒に居てくれたとしてもあそこまで安心できなかっただろうし、今でも時々思い出して嬉しくなってしまう。
それにこの辺りの看病では病人にバナナとか、りんごとかを混ぜたミックスジュースみたいなものを食べさせるのが普通らしいのに、フェルレントは僕に合わせておかゆを作らせて、それをふぅふぅしながら食べさせてくれた。
看病なんて病院でしかされたことがなかったから、風邪で体は辛かったけど僕は本当に幸せだなって心がポカポカした。
そんなことの積み重ねで、フェルレントはいつだって僕を自覚なく甘やかしてくれている。
それにいつも申し訳なさそうにされるけど、フェルレントが夜に暴走するのだって僕は嬉しく思ってる。だってあんなに僕を求めてくれる人はいなかったし、フェルレントの紳士の仮面が剥げるのは僕の前だけだって優越感もあるし。
生きている頃、僕が死んだら誰か悲しんでくれる人がいるのかと思っていた。
けど、今になってはそんなことどうだっていい。
僕と一緒に人生を共にしてくれるフェルレントがいる。
僕とフェルレントの宝物の、マルクレントとルークレントがいる。
そんな僕たちと共に過ごしてくれるアダンや他の使用人たちもいる。
この幸せな場所が僕は大好きだから、他のことなんてもう考えられない。
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