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道視点:景品の辞退について
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「景品の辞退は、もうできないよ」
「え……なんでですか」
会長が言った言葉は理解できなかった。
「入寮者はもう決定していて、それに関する書類は提出されているからね」
「でも俺、ズルしてまでこの寮に入りたかったわけじゃない」
俺の言葉に、律葉も思うところがあったのか横から「そうだそうだ」と援護してくれた。
その律葉の行動に、会長は顔を引きつらせて、所在なさげに頬を掻いている。
「ズルって?」
「だって、俺より頑張ってボールを集めた人たちも、この寮が良かったかもしれないのに」
さっきも言ったことをもう一度繰り返すと、会長はしばらく考えるそぶりを見せてから「あはは」と声を上げて笑い出した。
先輩は横で困った顔をしているだけだし、律葉は会長の笑いに困惑している様子だ。
「つまり、道くんはこの寮が絶対にみんなが欲しがるような一等良い景品だと思っているわけだね?」
「実際そうでしょう」
胡乱に思いながらそう応えると、会長は首を竦めた。
「そんなことはないよ。もっと良い景品があったでしょう? 旅行券とか、遊園地の宿泊券付きのペアチケットだとか。まぁ、1位から3位を取った子達は、違うものを選んだけど。実際、第二希望まで含めて寮を選んだのは10位以内の1年生で律葉と道くんだけだったよ」
「うそ……」
あの景品の中だったら絶対に1DKの寮が一番人気だと思っていたのに、そんなことなかったということなのか。
「一番人気は遊園地のペアチケットだったよ。6位の子が貰った」
「そう、なんですね。あの、俺……勘違いして。すみません」
「ははは。良いんだよ。さ、じゃあ景品は受け取ってくれるね? あとは辰巳とゆっくり話し合うと良い。道くんが辰巳と隣の部屋を辞退するなんて言ったから放心して戻ってきてないしね」
「……はい」
横を見上げると、確かに先輩はショックそうな顔でただずんでいた。
「先輩、行こう?」
「……ああ」
まだ荷物を運んでいないので、今日は先輩の部屋に帰って食事を摂る。
だから、俺は先輩の手を引いて先輩の部屋まで帰った。
「先輩、ごめん。会長と一緒に何か手を回しただなんて思って……、グルなんて言っちゃって」
「いや……、俺の日頃の行いが悪いから、そんなこと気にするな」
「でも」
「正直、しつこくしすぎて嫌われたかと思った。だが、そうじゃないなら良い。引っ越しが楽しみだな?」
「……うん」
先輩はそう言って許してくれたけど、だからって俺が先輩を傷つけるような言葉を言ってしまったことがなくなったなんて思えるほど、人の心を知らないわけじゃない。
「あの、さ。お詫びって訳じゃないけど。その。俺にしてほしいことある?」
「だから、気にするなって。道は居てくれるだけで俺を癒してくれている」
「違う。俺がしたいの」
先輩はジッと俺を見つめた。
俺もそれに応えるようにジッと見つめ返すと、先輩が小さく息を吐いたのが分かった。
「分かった……じゃあ、普段しないようなセックスをしても良いか」
「え……」
想定外のお願いに即答できずにいる俺をよそに、先輩はもうその気になっているのか、目をぎらつかせていた。
「道が俺が望むことをしたいと、そう言ったんだ。良いんだよな?」
「え……、えっと。うん……もちろん」
困惑しながらも頷くと、先輩はそれはそれは嬉しそうに「そうか」と目を緩めた。
「え……なんでですか」
会長が言った言葉は理解できなかった。
「入寮者はもう決定していて、それに関する書類は提出されているからね」
「でも俺、ズルしてまでこの寮に入りたかったわけじゃない」
俺の言葉に、律葉も思うところがあったのか横から「そうだそうだ」と援護してくれた。
その律葉の行動に、会長は顔を引きつらせて、所在なさげに頬を掻いている。
「ズルって?」
「だって、俺より頑張ってボールを集めた人たちも、この寮が良かったかもしれないのに」
さっきも言ったことをもう一度繰り返すと、会長はしばらく考えるそぶりを見せてから「あはは」と声を上げて笑い出した。
先輩は横で困った顔をしているだけだし、律葉は会長の笑いに困惑している様子だ。
「つまり、道くんはこの寮が絶対にみんなが欲しがるような一等良い景品だと思っているわけだね?」
「実際そうでしょう」
胡乱に思いながらそう応えると、会長は首を竦めた。
「そんなことはないよ。もっと良い景品があったでしょう? 旅行券とか、遊園地の宿泊券付きのペアチケットだとか。まぁ、1位から3位を取った子達は、違うものを選んだけど。実際、第二希望まで含めて寮を選んだのは10位以内の1年生で律葉と道くんだけだったよ」
「うそ……」
あの景品の中だったら絶対に1DKの寮が一番人気だと思っていたのに、そんなことなかったということなのか。
「一番人気は遊園地のペアチケットだったよ。6位の子が貰った」
「そう、なんですね。あの、俺……勘違いして。すみません」
「ははは。良いんだよ。さ、じゃあ景品は受け取ってくれるね? あとは辰巳とゆっくり話し合うと良い。道くんが辰巳と隣の部屋を辞退するなんて言ったから放心して戻ってきてないしね」
「……はい」
横を見上げると、確かに先輩はショックそうな顔でただずんでいた。
「先輩、行こう?」
「……ああ」
まだ荷物を運んでいないので、今日は先輩の部屋に帰って食事を摂る。
だから、俺は先輩の手を引いて先輩の部屋まで帰った。
「先輩、ごめん。会長と一緒に何か手を回しただなんて思って……、グルなんて言っちゃって」
「いや……、俺の日頃の行いが悪いから、そんなこと気にするな」
「でも」
「正直、しつこくしすぎて嫌われたかと思った。だが、そうじゃないなら良い。引っ越しが楽しみだな?」
「……うん」
先輩はそう言って許してくれたけど、だからって俺が先輩を傷つけるような言葉を言ってしまったことがなくなったなんて思えるほど、人の心を知らないわけじゃない。
「あの、さ。お詫びって訳じゃないけど。その。俺にしてほしいことある?」
「だから、気にするなって。道は居てくれるだけで俺を癒してくれている」
「違う。俺がしたいの」
先輩はジッと俺を見つめた。
俺もそれに応えるようにジッと見つめ返すと、先輩が小さく息を吐いたのが分かった。
「分かった……じゃあ、普段しないようなセックスをしても良いか」
「え……」
想定外のお願いに即答できずにいる俺をよそに、先輩はもうその気になっているのか、目をぎらつかせていた。
「道が俺が望むことをしたいと、そう言ったんだ。良いんだよな?」
「え……、えっと。うん……もちろん」
困惑しながらも頷くと、先輩はそれはそれは嬉しそうに「そうか」と目を緩めた。
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