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迅英さんの好きな人
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それから何度かおばさんの説得をしたけれど、僕が高校を卒業するまでにおばさんを説得することはできなかった。
迅英さんも迅英さんで僕のことを好きになってくれることもなく、僕だけが迅英さんに惚れたまま高校を卒業し、僕たちは結婚することになった。
でも僕はおばさんの家に住み始めてから薬を飲むのをやめたはずだから、薬は少しずつ抜けてきているはずだ。
薬が抜けたらきっと僕からするαが嫌がる匂いがなくなって、迅英さんだって僕を見てくれる日がくる。
そう信じていたこともあったけど、迅英さんに以前聞いた迅英さんの好きな子の話を聞いた時、僕は自分の思い上がりに気がついたんだ。
「橘さん、おばさんを説得することができなくてすみませんでした」
「いや、俺も説得することはできなかったんだ。仕方ない。だが、お願いがあるんだ」
「お願い……ですか?」
「ああ。俺は好きな子がいると言っただろ? その子と結婚後も付き合っていたいんだ」
「え」
「そして、番にはならないでおこう。そうした方が別れる時お互いに楽だろう?」
頭が真っ白になった。
迅英さんの中に、僕と一生を添い遂げると言う気持ちはない。
ただ、迅英さんの中で僕は好きな子との間を引きさく邪魔者で、いつか来る別れは決定事項なんだ。
それでも、僕は迅英さんの誠実さに感謝しなければならないんだ。
番にならなければこの先Ωの僕にも道がある。
迅英さんは僕が迅英さんのことを好きだなんて、かけらも気がついていない。
僕はその時覚悟した。
祖父が僕に盛っていた薬が僕から抜けるのがいつになるか分からない。
だけど、きっとそれが抜けたところで……迅英さんが僕に感じる匂いが変わったところで、僕が迅英さんの未来に描かれることはないのかもしれないと言うことを。
「俺の好きな子な。俺が他の人と結婚しても我慢すると言ってくれているんだ。3年間、海外で研修があるからそれまではって。あの子はΩで昔、暴漢に襲われたことがあってな。それを助けてくれた人たちを亡くしているんだ。その悲しみに暮れる彼を俺が守ってやらなければいけないと思っているんだ」
「暴漢に襲われた……? 助けた人が死んだ?」
それって、俺の両親の死に方と同じだ。
「ああ。菜月くんは俺が居なくても大丈夫だろう? 彼は守ってあげたくなるんだ」
「そう……ですか」
きっと違う。きっと両親が助けた男の子じゃないはずだ。
だってそうじゃなかったら、僕は……、両親が命をかけてまで助けた男の子の幸せを……壊してしまったかもしれなくなってしまうんだ。
迅英さんも迅英さんで僕のことを好きになってくれることもなく、僕だけが迅英さんに惚れたまま高校を卒業し、僕たちは結婚することになった。
でも僕はおばさんの家に住み始めてから薬を飲むのをやめたはずだから、薬は少しずつ抜けてきているはずだ。
薬が抜けたらきっと僕からするαが嫌がる匂いがなくなって、迅英さんだって僕を見てくれる日がくる。
そう信じていたこともあったけど、迅英さんに以前聞いた迅英さんの好きな子の話を聞いた時、僕は自分の思い上がりに気がついたんだ。
「橘さん、おばさんを説得することができなくてすみませんでした」
「いや、俺も説得することはできなかったんだ。仕方ない。だが、お願いがあるんだ」
「お願い……ですか?」
「ああ。俺は好きな子がいると言っただろ? その子と結婚後も付き合っていたいんだ」
「え」
「そして、番にはならないでおこう。そうした方が別れる時お互いに楽だろう?」
頭が真っ白になった。
迅英さんの中に、僕と一生を添い遂げると言う気持ちはない。
ただ、迅英さんの中で僕は好きな子との間を引きさく邪魔者で、いつか来る別れは決定事項なんだ。
それでも、僕は迅英さんの誠実さに感謝しなければならないんだ。
番にならなければこの先Ωの僕にも道がある。
迅英さんは僕が迅英さんのことを好きだなんて、かけらも気がついていない。
僕はその時覚悟した。
祖父が僕に盛っていた薬が僕から抜けるのがいつになるか分からない。
だけど、きっとそれが抜けたところで……迅英さんが僕に感じる匂いが変わったところで、僕が迅英さんの未来に描かれることはないのかもしれないと言うことを。
「俺の好きな子な。俺が他の人と結婚しても我慢すると言ってくれているんだ。3年間、海外で研修があるからそれまではって。あの子はΩで昔、暴漢に襲われたことがあってな。それを助けてくれた人たちを亡くしているんだ。その悲しみに暮れる彼を俺が守ってやらなければいけないと思っているんだ」
「暴漢に襲われた……? 助けた人が死んだ?」
それって、俺の両親の死に方と同じだ。
「ああ。菜月くんは俺が居なくても大丈夫だろう? 彼は守ってあげたくなるんだ」
「そう……ですか」
きっと違う。きっと両親が助けた男の子じゃないはずだ。
だってそうじゃなかったら、僕は……、両親が命をかけてまで助けた男の子の幸せを……壊してしまったかもしれなくなってしまうんだ。
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