僕はあなたに捨てられる日が来ることを知っていながらそれでもあなたに恋してた

いちみやりょう

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ラット ※

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結婚式は行わなかった。
αから贈ってもらえるはずのチョーカーは自分のバイト代で購入した。
それから僕は迅英さんと2人、迅英さんの親戚が住まなくなった屋敷に住んでいる。
迅英さんが仕事をしている間に僕は家事を済ませてバイトに出かけ迅英さんが寝ている頃に家に帰る。そんな日々が続いた。
祖父に飲まされていた薬を摂取しなくなったからか僕のヒートは酷いものになった。
僕はその間は屋敷の地下にある隠し部屋に飲み物や迅英さんの脱いだ服などを運び込んで過ごしていた。
おそらく迅英さんはこの部屋の存在をしらない。
ドアさえしっかり閉めていれば僕がこの家にいることにすら気がつかないだろう。
迅英さんは僕に興味もないからヒートが来ていることもそれをどう処理しているかも知らないだろう。

3年間僕はここで耐え切って、そしたら離縁されて、その先は何をしようか。

どこか都会の方に出て一人暮らしでもしようか。

ヒートが終わりかけて朦朧とした意識の中、地下室の惨状を見て僕は現実逃避をしていた。
ぐちゃぐちゃの布団。
ぐちゃぐちゃの迅英さんの服。
1週間前に買いだめした飲むゼリー系栄養飲料の大量の殻。

体を洗って着替えないとと向かった洗面台で鏡に映った自分の顔は、昔祖父に連れて行かれて見たαに捨てられたΩ達とそっくりだ。

結婚してどのくらいの時が経ったろう。
僕たちはその間、どれくら話したかな。

体を洗った後地下の部屋に戻り掃除を始めた。

カチャ

後ろで物音がして振り返ると久しぶりに見る迅英さんがいた。
迅英さんにこの部屋の存在がバレた……。
今後ここでヒートを過ごすことはできない。
僕は真っ先にそう思った。

「あ……おかえりなさい」

迅英さんは無言でこちらを見つめてきた。


「あの……迅英……さん?」

迅英さんの息は荒く目は座ってる。
ラットだ。
Ωにヒートと呼ばれる発情期ががあるようにαにもラットと呼ばれる発情期がある。
定期的にくるヒートと違ってラットはどうしようもなく好きなΩがいた時に起こると言われていた。
迅英さんは無言で僕に近づいてきた。

「な、なんですか」

バリィ!!!

力任せに服を剥ぎ取られて僕はまた裸になった。
迅英さんの意識は戻らない。
ラット中のαはほとんど理性が効かないらしい。
このままここにいたら危険だ。

「……どこに、行く」

僕が入り口に走って向かおうとするとバシっと腕を捕まえられた。

「迅英さん……誰とお間違えになってるんです。僕は、あなたの好きな方ではありませんよ。僕は菜月です。あなたの嫌いな……気を取り戻してください!」
「ちっ」

迅英さんは舌打ちすると僕の体を後ろからベッドに押さえつけた。

「っあぁぁあああ!!!」

後ろから突然大きな塊がお尻の中に押し込まれた。

「なっ、ぁぁああ、ぁあああぁぁ」

僕の体はそれを受け入れるためにジュクジュクと蜜を溢れ出した。
迅英さんの体が僕に覆いかぶさって揺れている。
それに合わせてお尻の中のそれも出入りして、僕はそれが迅英さんのものだと気がついた。

してしまった。
迅英さんとしてしまった。

気持ちい。気持ちい。気持ちい。

頭がそれだけで埋まりそうになる。
首元のチョーカーを自ら取ってうなじを噛んでと懇願したくなる。
僕がヒートが終わった直後でよかった。
大好きな相手でも少しだけ冷静でいられた。

うなじを噛んで番になってしまったら、きっと後悔する。
僕はもちろん今よりも生きづらくなるし、迅英さんだって好きな子を裏切る行為になる。

「何を考えてる」

迅英さんが冷たい顔で僕を覗き込む。
ひっくり返されて、向き合った形の大勢に変えられた。

「なっ、にも!! んぁぁ、じんえいさんっ、う、やめ、ぁぁあ、んんぁ、やめてくださいっ」
「……うるさいな」
「ひゃ、んぁああ、ぁぁああぁぁ、あっ、ンァ、ンン」

迅英さんはよりいっそう抽刺を早くしてきた。

「これ……はずせ」

迅英さんは僕のチョーカーに指をかけてそう言った。

「だ、めです、ンァ、ぁあ、僕は、違うんぁぁああ、春樹くんじゃ、ないっ」

僕がそう言うと迅英さんは目を見開いた。

「お前、知ってたのか」
「……はい」

春樹とは僕の両親が命がけで救った男の子の名前で、迅英さんが好きな子の名前だ。
迅英さんの好きな子の名前が、違えばいいと何度も思った。
だけど、やっぱり同じだったらしい。
迅英さんが動きを止めて僕の顔を見た。

「なにがあったかは、お聞きしませんが、僕に当たるのはやめてください。αのあなたと違って、僕は番ってしまえば悲惨だ」
「っ、何が悲惨なんだ。俺と番うのが悲惨か」
「違う……違います。僕は、んぁぁぁああ、んぁや、やめっんぁぁくださ」

ラットが解けかけ理性を取り戻しつつあるように見えた迅英さんはまた動きを再開させた。
結局はいつまで犯されたのか途中で気を失ってしまっていてわからない。
ただ、目が覚めた時、枕元の時計はAM10時と表示していて、昨日いろんな液体でドロドロになっていた体はすっかりときれいになっていた。
ひとりぼっちで取り残されているはずだと思ったけど、隣にはまだ迅英さんが気持ちよさそうに寝ていた。
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