肉便器エンド!? それって最高じゃん

いちみやりょう

文字の大きさ
3 / 99

3:父親

しおりを挟む
「父上、お待たせして申し訳ございません。バトラルです」
「入れ」

扉の向こうから父親の返事が聞こえ、俺は礼儀作法にのっとって部屋の中に入った。

「失礼します」

父親の手には乗馬用の鞭が握られていた。
父親の見目はバトラルに似ている。バトラルと同じでハニーブロンドの髪にベビーブルーの瞳。まだ幼いバトラルより精悍な顔つきで、若い令嬢からも好かれそうだ。息子を虐待するような男だと、バレなければの話だが。

「こちらへ来なさい」
「……はい」

父親に呼ばれ、俺はもうすぐにでもその鞭で叩かれることを想像して、胸を高鳴らせながら、必死で表情を殺して父親のそばに近寄った。父親が俺の体を触った瞬間、期待と胸の高鳴りでビクリと体が震えた。

「昨日のことは反省したかな」
「はい」

昨日のことというのは何なのかわからないが、俺は即答で頷いた。

「反省しているなら、打たれる覚悟はもうできているということだね」
「……はい」

はぁ。今から打たれるのかと思うと興奮しすぎて息が上がりそうだ。
父親は何とか無表情を貫いて興奮を隠す俺を見て何を思っているのか俺の腕をとった。

「だが、震えているね」
「……嬉しいから、震えているのです。父上にこうして構っていただけて」

俺の言葉に、父親は驚いたように目を見開いた。

「……私に、構ってもらえて?」
「はい。僕にとって、父上は唯一の家族ですから……ですから」

父親の持つ鞭に目を向け、言外に早く俺を打てと伝えると、父親は鞭の持ち手をギュッと握った。期待から口角が上がりそうになるのを必死で抑えていると、父親から悲痛そうな呻き声が聞こえた。

「私が唯一の家族……。息子にこんなことをする私が、か?」
「こんなことなどではありません。打たれるのは僕の至らなさが原因です。父上は、至らぬ僕を、こうして父上の時間を割いてまで躾けてくださっているのですから」
「そんな……私は、そこまで……っ。すまない。すまなかったバトラル……。今日は……、やめておこうか。それよりも話を、しよう」

打っても良い、と言うか、打てと言っているのに、なぜ話をすることになるんだ。

「話ですか……? 一体何の」
「そうだな……。バトラルの好きなことを話そう。食べ物でも、趣味でも」

そんなことを言われて俺は激しく困った。俺にはバトラルとして生きた記憶はないし、あるのはゲーム情報系の雑誌やサイトに載っていたような内容だけだ。流石に悪役令息の食べ物の好みや趣味までは載っていなかった。

「バトラル?」
「ぁ……すみません。あの、すぐには思いつかなくて」
「いや。いいんだ。そう、だよな……。私こそ、今まですまなかった。謝って済むことではないが、昨日、お前の心の叫びを聞いた時、私は深く反省したんだ。私も子供の頃は自分が親になったらこんな教育はするものかと思っていたというのに……。バトラルもあんなに嫌がっていたのに、今日になったら全て諦めたように笑って、私に構われて嬉しいと、打って躾されて嬉しいなどと言われて……私は自分の教育のあり方を反省した。これからは二度とお前に手を上げないと誓う」
「え……?」

誤解です。それはもう凄まじいほどの誤解です。

俺は諦めたようになんて笑ってないし。ただ、期待から口角が上がりそうになるのを堪えていただけだ。
けれど父親の手が俺に伸びてきて、俺はとっさに目を瞑った。
だが一向に衝撃はこない。うっすら目を開けて確認すると、父親の手は俺の目の前で戸惑うように止まっていた。

「すぐには信用できないだろう。勝手なことを言うが、もしも、バトラルが許してくれるのなら、少しずつ普通の父親に……。バトラルと普通の親子になりたいと思っている」
「え、えっと」
「すぐに返事はしなくても良い。私は今までの自分を反省していることを行動でバトラルに示す。父親として認められなくても構わない。何年かかってでも、私はちゃんとしたバトラルの父親になるつもりだ」
「そ、うですか」

つまりは、俺のドM心の行き場は1つ無くなってしまったわけだ。
父親とは離れ、自室に戻りつつ俺は項垂れた。
バトラルは思いの丈を父親にぶつけたと言っていたけど、どんなことを言ったんだろう。
父親はバトラルの言葉でちゃんとバトラルを虐待していたことを反省したみたいだ。バトラルはもしかしたらあと1日我慢すれば父親と和解できたかもしれない。けれど、ドMでもなんでもないバトラルに、あと1日なんて耐えられなかったんだろうな。
しおりを挟む
感想 51

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話

八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。 古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。

寝てる間に××されてる!?

しづ未
BL
どこでも寝てしまう男子高校生が寝てる間に色々な被害に遭う話です。

シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました

無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。 前世持ちだが結局役に立たなかった。 そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。 そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。 目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。 …あれ? 僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?

なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?

詩河とんぼ
BL
 前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?

牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!

ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。 牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。 牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。 そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。 ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー 母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。 そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー 「え?僕のお乳が飲みたいの?」 「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」 「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」 そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー 昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!! 「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」 * 総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。 いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><) 誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

処理中です...