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37:バイロンの欲望
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「バトラルをどうして好きになったのか……か。そうだな……。歳が離れているのもあって最初はただ、弟か、むしろ息子のように思っていた。目を離せない、手のかかる可愛らしい年下の家族のような。だが、そうしてずっと見ていると実は芯が強く、優しい性格であることが分かってきて、無理をしすぎるところなどが心配になった」
「無理なんて」
「いや。バトラルは自分の体の限界を見極めるのが下手くそだろう。幼い頃は隠れて無理をしてよく倒れていた。その度に私や殿下がどれほど狼狽たか。そうやって自分を厳しすぎるほどに律するくせに、他人には甘い。いつか悪い大人に騙されて連れ去られてしまうのではないかと不安だった……」
自分の体の限界を見極めるのが下手くそというのは暴言のように感じたが、側から見たらそうなのだろう。だが実際は違う。俺は自分の限界を見極めた上で、それを突破するのが好きなのだ。
けれども、クライブやバイロンにいらぬ心配をかけていたことを言われれば、申し訳ない気持ちになった。
「でも、弟や息子のように思ってたなら、どうして、その」
どうして好きになったのかともう一度言うのがなぜだか恥ずかしくなって、言い淀むとそれがおかしかったのかバイロンが小さく笑った。
「弟や息子に向けないような欲望を持ってしまった。それに気がついた時、同時に、バトラルのことをそう言う意味で好きなのだと気がついた」
「弟や息子に向けないような欲望……?」
言葉を反芻し、その意味に考えついた時、俺は尻から胸にかけてギュンと何かが突き抜けた。
え、えっちすぎじゃないのか。俺のイメージしていたバイロンとはちょっと解釈違いで、けれども、その言葉のエロさに、ドキドキが止まらない。
それなのに、次のバイロンの言葉で一気に思考が停止した。
「……甘やかしたいんだ」
「え?」
「もちろん、弟などに向ける甘やかしたい願望ではない。手づから食事をさせたいし、トイレに行きたいのなら私がトイレまで運び世話をしたい。夜には膝の上で本を読み聞かせ、風呂も全て私が管理したい」
「…………へ?」
なんとも間抜けな声が出てしまったけれど、言われた言葉をもう一度思い返してみても、やっぱり「へ?」としか出てこない。
つまりどういうことだろう。
赤ちゃんプレイがしたいということだろうか。
その場合、赤ちゃん側をやりたいと思うのが一般的なように感じるが、そもそも赤ちゃんプレイ自体が一般的ではないような気がするので、やっぱりよく分からない。
いや、ちょっと待てよ。よくよく思い返してみれば、赤ちゃんプレイというよりも、介護と言う方が正しいのではないだろうか。
食事をさせてもらい、トイレも世話をされ、風呂も入れられる。まぁ、本を読み聞かせる部分は違うかもしれないが、字面的には圧倒的に介護の一言に尽きる。
「……やっぱり、気持ちが悪い、よな。忘れてくれ」
俺の態度が拒否に見えたのか、バイロンはシュンと肩を落とした。
「い、いや。そんなことないです。僕は」
人様の性癖をどうこう言えるような立場じゃないですから、なんて言えないよな。
「その。僕も同じようなものですから」
自分の言いたいことをマイルドに伝えると、バイロンはシュンとしていた目を輝かせた。
「バトラル……っ。そうだったのか。バトラルもそうだったのか! 良かった」
「え……いや」
「ありがとう。バトラル、番として受け入れてくれて。もしも、戦争が始まってしまっても、私が必ず守るから」
「……はい」
その後は、なんだか釈然としない気持ちで自宅に帰り、今日起こったあれこれを、頭から追い出すようにジョーダンから課された宿題に手をつけた。
「無理なんて」
「いや。バトラルは自分の体の限界を見極めるのが下手くそだろう。幼い頃は隠れて無理をしてよく倒れていた。その度に私や殿下がどれほど狼狽たか。そうやって自分を厳しすぎるほどに律するくせに、他人には甘い。いつか悪い大人に騙されて連れ去られてしまうのではないかと不安だった……」
自分の体の限界を見極めるのが下手くそというのは暴言のように感じたが、側から見たらそうなのだろう。だが実際は違う。俺は自分の限界を見極めた上で、それを突破するのが好きなのだ。
けれども、クライブやバイロンにいらぬ心配をかけていたことを言われれば、申し訳ない気持ちになった。
「でも、弟や息子のように思ってたなら、どうして、その」
どうして好きになったのかともう一度言うのがなぜだか恥ずかしくなって、言い淀むとそれがおかしかったのかバイロンが小さく笑った。
「弟や息子に向けないような欲望を持ってしまった。それに気がついた時、同時に、バトラルのことをそう言う意味で好きなのだと気がついた」
「弟や息子に向けないような欲望……?」
言葉を反芻し、その意味に考えついた時、俺は尻から胸にかけてギュンと何かが突き抜けた。
え、えっちすぎじゃないのか。俺のイメージしていたバイロンとはちょっと解釈違いで、けれども、その言葉のエロさに、ドキドキが止まらない。
それなのに、次のバイロンの言葉で一気に思考が停止した。
「……甘やかしたいんだ」
「え?」
「もちろん、弟などに向ける甘やかしたい願望ではない。手づから食事をさせたいし、トイレに行きたいのなら私がトイレまで運び世話をしたい。夜には膝の上で本を読み聞かせ、風呂も全て私が管理したい」
「…………へ?」
なんとも間抜けな声が出てしまったけれど、言われた言葉をもう一度思い返してみても、やっぱり「へ?」としか出てこない。
つまりどういうことだろう。
赤ちゃんプレイがしたいということだろうか。
その場合、赤ちゃん側をやりたいと思うのが一般的なように感じるが、そもそも赤ちゃんプレイ自体が一般的ではないような気がするので、やっぱりよく分からない。
いや、ちょっと待てよ。よくよく思い返してみれば、赤ちゃんプレイというよりも、介護と言う方が正しいのではないだろうか。
食事をさせてもらい、トイレも世話をされ、風呂も入れられる。まぁ、本を読み聞かせる部分は違うかもしれないが、字面的には圧倒的に介護の一言に尽きる。
「……やっぱり、気持ちが悪い、よな。忘れてくれ」
俺の態度が拒否に見えたのか、バイロンはシュンと肩を落とした。
「い、いや。そんなことないです。僕は」
人様の性癖をどうこう言えるような立場じゃないですから、なんて言えないよな。
「その。僕も同じようなものですから」
自分の言いたいことをマイルドに伝えると、バイロンはシュンとしていた目を輝かせた。
「バトラル……っ。そうだったのか。バトラルもそうだったのか! 良かった」
「え……いや」
「ありがとう。バトラル、番として受け入れてくれて。もしも、戦争が始まってしまっても、私が必ず守るから」
「……はい」
その後は、なんだか釈然としない気持ちで自宅に帰り、今日起こったあれこれを、頭から追い出すようにジョーダンから課された宿題に手をつけた。
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