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56:次の夫
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「バトラルさまーーっ。ご懐妊おめでとうございますっ」
「キンデル。ありがとう。でも、廊下は走ったら危ないよ」
「はい! すみませんでした!!」
俺の目の前まで走ってきた美少年は、俺の世話係をしているキンデル・スタンだ。
バトラルの実家であるアール伯爵家にいた、ロータルという銀フレームの鬼畜が似合う執事の息子だ。実際ロータルが鬼畜なのかは定かではないが、どっちにしろ、キンデルはロータルとは親子と言うのが疑わしいほどに似ていない。そもそも、ロータルは黒髪だが、キンデルは柔らかい髪質の銀髪だ。緑の瞳が可愛らしい、ザ・受けという見た目である。俺よりも3つ年下なだけなのに、キンデルのキラキラした純粋な瞳を見ていると、もっと年下に感じるほどで、若干の居心地の悪さを感じる。
「まぁ、分かってくれたなら良いんだけどね」
実際、毎日廊下を走るなと言っているのに、毎回走ってくるキンデルが分かっているとは思えない。だが、キンデルの返事は一流である。
「はい! 心配してくださってありがとうございます! バトラル様に心配していただけるなんて僕、感激です!」
「そう、そう言ってもらえて僕も嬉しいよ」
「でも、この間クライブ殿下とのお子をご出産されたばかりなのに……。お体は大丈夫なのですか? 僕、心配です。やっぱり、不敬かもしれないけど、アルファとして妻のオメガの体を大事にできないのは、良くないと思うんです!!」
「クライブもバイロンも、僕を大事にしてくれてるよ」
むしろ、もう少し雑に扱われたいくらいだ。
クライブとの子を産んでからすぐ、俺はバイロンとの子供を身ごもった。
だから今朝だって、バイロンから身重の体だからという言い分で、そこまでしなくても良いだろうという世話をこれでもかというほどにされた。
バイロンは、甘やかしたいタイプ……、というか、介護したいタイプという言葉がぴったりなのだ。俺に用意されている執務室に入ると、キンデルも一緒に入ってきた。
「僕もあと3年経てば……」
キンデルが悔しそうに呟いた。
「そうだね」
キンデルが俺の世話係をしているのは、キンデルがいずれ俺の夫の1人になるのがほぼ決定しているからだ。ロータルが子爵家の次男で爵位を継いでいないし、その息子であるキンデルはさらに貴族とは呼べないらしいが、キンデルは特級アルファというやつらしい。特級アルファは、それなりに希少らしい上に、夫になるにしても結婚できる最低年齢に達する3年後なので、他の皇族や高位貴族のアルファや特級アルファが夫になった後になるので許されたそうだ。
けれども、正直に言ってキンデルのことは元気すぎてあまり得意ではない。
「皇太子妃殿下。こちらをご使用ください」
「ルカ、ありがとう」
「いえ」
ちょうど少し肌寒いなと思っているタイミングで横から、タオルケットを差し出してくれたのはルカ・ギルバー侯爵だ。かつて俺を西の国へ連れ去ろうと画策したジョーダンの弟である彼は、ジョーダンが突然のオメガ変異によってオメガ性に変わり、下位貴族へ嫁いだことによって、襲爵した若き侯爵だ。ゲームの知識で言えば、攻略対象者である。
宰相を目指せるほどに優秀らしく、今は文官として精進しているそうだ。
そしてその合間に、ジョーダンに代わり、俺の教育係を引き受けてくれている。
「ルカさんも特級アルファなのに、お兄さんのことがあって残念でしたね」
キンデルが純粋そうな声で嫌味とも取れる言葉を発した。ルカは何も悪いことはしていないのに、申し訳なさそうな顔をしている。
「兄があのようなことを犯してしまいましたので、当然の結果です。むしろ、こうして皇太子妃殿下の御前に居させてもらえるなど……感謝しております」
「そんな。謙りすぎだよ。あまり話したことはなかったけど、僕はもともと伯爵令息で、ルカよりも下の身分だし、気兼ねなく話して欲しい」
「それは致しかねます。以前の身分ではそうだったかもしれませんが、現在はボートルニア帝国皇太子妃殿下であらせられます。私などでは到底気兼ねなくなどできないほどに、尊いお方ですので」
気兼ねなくは素気無く断られてしまったが、俺の妄想は捗った。
だってそんな敬語で断られたら、めっちゃ敬語の鬼畜責め想像してしまうんですけど。
ああ、敬語の堅物が理性飛ばして俺を物みたいに扱うって、素敵すぎるだろう。いや、理性ありありで管理的なのも良いな。『まだイってはダメですよ。私が先にイってから射精を許可します』みたいな。最高。
兄の責任を取るような形で、ルカは今は夫候補ではないらしいが、妄想だったらいくらでも楽しめるので、俺はルカで本人には絶対に言えないような妄想を存分に楽しんでいた。
「キンデル。ありがとう。でも、廊下は走ったら危ないよ」
「はい! すみませんでした!!」
俺の目の前まで走ってきた美少年は、俺の世話係をしているキンデル・スタンだ。
バトラルの実家であるアール伯爵家にいた、ロータルという銀フレームの鬼畜が似合う執事の息子だ。実際ロータルが鬼畜なのかは定かではないが、どっちにしろ、キンデルはロータルとは親子と言うのが疑わしいほどに似ていない。そもそも、ロータルは黒髪だが、キンデルは柔らかい髪質の銀髪だ。緑の瞳が可愛らしい、ザ・受けという見た目である。俺よりも3つ年下なだけなのに、キンデルのキラキラした純粋な瞳を見ていると、もっと年下に感じるほどで、若干の居心地の悪さを感じる。
「まぁ、分かってくれたなら良いんだけどね」
実際、毎日廊下を走るなと言っているのに、毎回走ってくるキンデルが分かっているとは思えない。だが、キンデルの返事は一流である。
「はい! 心配してくださってありがとうございます! バトラル様に心配していただけるなんて僕、感激です!」
「そう、そう言ってもらえて僕も嬉しいよ」
「でも、この間クライブ殿下とのお子をご出産されたばかりなのに……。お体は大丈夫なのですか? 僕、心配です。やっぱり、不敬かもしれないけど、アルファとして妻のオメガの体を大事にできないのは、良くないと思うんです!!」
「クライブもバイロンも、僕を大事にしてくれてるよ」
むしろ、もう少し雑に扱われたいくらいだ。
クライブとの子を産んでからすぐ、俺はバイロンとの子供を身ごもった。
だから今朝だって、バイロンから身重の体だからという言い分で、そこまでしなくても良いだろうという世話をこれでもかというほどにされた。
バイロンは、甘やかしたいタイプ……、というか、介護したいタイプという言葉がぴったりなのだ。俺に用意されている執務室に入ると、キンデルも一緒に入ってきた。
「僕もあと3年経てば……」
キンデルが悔しそうに呟いた。
「そうだね」
キンデルが俺の世話係をしているのは、キンデルがいずれ俺の夫の1人になるのがほぼ決定しているからだ。ロータルが子爵家の次男で爵位を継いでいないし、その息子であるキンデルはさらに貴族とは呼べないらしいが、キンデルは特級アルファというやつらしい。特級アルファは、それなりに希少らしい上に、夫になるにしても結婚できる最低年齢に達する3年後なので、他の皇族や高位貴族のアルファや特級アルファが夫になった後になるので許されたそうだ。
けれども、正直に言ってキンデルのことは元気すぎてあまり得意ではない。
「皇太子妃殿下。こちらをご使用ください」
「ルカ、ありがとう」
「いえ」
ちょうど少し肌寒いなと思っているタイミングで横から、タオルケットを差し出してくれたのはルカ・ギルバー侯爵だ。かつて俺を西の国へ連れ去ろうと画策したジョーダンの弟である彼は、ジョーダンが突然のオメガ変異によってオメガ性に変わり、下位貴族へ嫁いだことによって、襲爵した若き侯爵だ。ゲームの知識で言えば、攻略対象者である。
宰相を目指せるほどに優秀らしく、今は文官として精進しているそうだ。
そしてその合間に、ジョーダンに代わり、俺の教育係を引き受けてくれている。
「ルカさんも特級アルファなのに、お兄さんのことがあって残念でしたね」
キンデルが純粋そうな声で嫌味とも取れる言葉を発した。ルカは何も悪いことはしていないのに、申し訳なさそうな顔をしている。
「兄があのようなことを犯してしまいましたので、当然の結果です。むしろ、こうして皇太子妃殿下の御前に居させてもらえるなど……感謝しております」
「そんな。謙りすぎだよ。あまり話したことはなかったけど、僕はもともと伯爵令息で、ルカよりも下の身分だし、気兼ねなく話して欲しい」
「それは致しかねます。以前の身分ではそうだったかもしれませんが、現在はボートルニア帝国皇太子妃殿下であらせられます。私などでは到底気兼ねなくなどできないほどに、尊いお方ですので」
気兼ねなくは素気無く断られてしまったが、俺の妄想は捗った。
だってそんな敬語で断られたら、めっちゃ敬語の鬼畜責め想像してしまうんですけど。
ああ、敬語の堅物が理性飛ばして俺を物みたいに扱うって、素敵すぎるだろう。いや、理性ありありで管理的なのも良いな。『まだイってはダメですよ。私が先にイってから射精を許可します』みたいな。最高。
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