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俺の気持ち
しおりを挟むそうして委員長に先導させて俺は委員長の実家についた。
見ればなるほどと思うほど立派な門構えだった。
門は開いていて中からわらわらとチンピラが出てくる。
しかもバットや竹刀を持っていてやる気満々だ。
委員長は会長に怪我をさせないための保険なので奴らの前で委員長からネクタイを抜き取ってそいつで後ろでに縛り上げた。
痛がる委員長を見てチンピラたちはさらに戦闘体制だ。
「うぉおおおお!!!」
男たちの一人がバットを振りかざしながら向かってきたのを避け懐に入り込んで鳩尾に肘鉄を喰らわせた。
「う”っ」
「わぁぁああ!!」
「おおおおお!!!」
次々と襲いかかってくる敵を捌きながら流石に一人じゃ厳しい人数だなぁと思った。
そして、一人の敵を捌いている最中、横からきた敵が竹刀を振り上げているのを確認して「あ、こりゃ食らうな」と少し身構えた瞬間、そいつが吹っ飛んでいった。
「副会長……」
副会長が雄雄しい顔をしてそこに立っていた。
そしてその向こうから敵が副会長にバットを振り下ろすのを、俺は蹴りで阻止した。
「なぜここに」
「それは私のセリフです」
一言ずつ話しながらお互いに背中を預けて敵を倒していく。
「俺は、会長を助けにっ」
「それは私も、同じです!」
副会長が来てくれたことによって先の見えない敵の数がみるみるうちに減っていった。
やはり死角を潰せるのはいい。
背中側に圧倒的安心があった。
しばらくしてあらかたの敵は倒して俺と副会長だけが立っていた。
お互いに敵から奪ったバットや竹刀を持っていて、副会長は誰の血なのか分からないが服も顔も血だらけだ。多分俺もそうなのだろう。
目があって自然と笑い合った。
そうか。
副会長も喧嘩強かったんだな。
なんだかかなり嬉しく感じる。
俺たちは倒した敵と一緒に気絶して転がっていた委員長を抱え上げてさらに奥に進んだ。
「忠次……さん。よくここが分かったな」
「ふ。さんはいらないですよ。名前、覚えていてくださったんですね」
「まぁ。一応」
副会長は俺が話し方を変えてもいつも通りの対応をしてくれている。
もしかしたら俺の演技に気がついていたのかもしれないけが、俺は副会長の態度の変わらなさにひどく安心した。
「私がここに来れた理由ですが、少し実家を頼ってしまいました」
「実家?」
「私もね、実家はヤクザなんですよ。ただ私はあまり実家を頼りたくないので場所を突き止めてもらって、あとは一人で乗り込もうと……そうしたら先に榊くんがいた」
「ああ。実家がヤクザだから強いのか……と思ったけど、やっぱそれは忠次の努力のおかげか。こいつはそこらの老人より弱ぇし」
いまだ気絶している委員長を指してそう言うと副会長は肩を竦めて笑った。
「私は何も努力など。勉強はしてきましたが喧嘩は昔から全然ダメで。榊くんがいてくれて助かりました」
「俺も……忠次がいてよかった。なぁ俺が忠次って呼んでんだし、忠次も俺のこと下の名前で呼んでくれないか」
「凛太郎?」
「おう」
名前を呼ばれて心臓がギュッと掴まれたように感じた。
今まで他のやつに名前を呼ばれても何も感じなかったし、一緒にいて安心するとか、一緒に居たいとかそんなこと誰にも思ったことがなかったけど。
忠次に対してそんな風に思う理由はきっと。
そう。ずっとそんなわけないと思っていたけど。
これが恋なのだろう。
俺はその時やっと自分の気持ちを認識することができた。
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