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ーー僕が、晴臣や熊井さんの言うことを聞かずに1人でうろちょろしたからだ。ごめん、ごめんなさい……。
運ばれる間、千秋は心の中で何度も謝った。
「ついたぞ」
「ん゛っ」
体に巻きつけられた縄を持ち、乱雑に車を下ろされた場所は、追い出されたはずの石崎家の屋敷だった。
「昨日ぶりだなぁ、千秋」
「っ、父さん……なんでこんな事っ」
「昨日はずいぶんと苔にされたからな……。こういう事はなるべく早い方がいい。まずは聞こうか。あの、オメガ嫌いの噂がある四宮の息子に、どうやって取り入った?」
父親はニヤついた顔で縛られて身動きが取れない千秋を見下ろした。
「取り入ってなんか……それに、晴臣は別にオメガを嫌っていません」
「そうか。だが例えオメガを嫌っていないにしても、なぜ今まで番を作らなかった四宮の息子が、お前を番にする? 今更お前のような出来損ないのオメガを選ぶなんて変じゃないか。何か口外してはならないような弱みを握ってでもいるんじゃないのか? え?」
ニタニタと嬉しそうな笑顔をやめない父親に、千秋は薄気味悪さを感じていた。
ーー小さい頃はこの人に愛して欲しかった。けど、今はもう。
「晴臣に弱みなんて何もない。だけど、あったとして……例えそれを僕が知ってたとしても、あなたに教えることはないです」
「はっ。随分と生意気になったものだな。四宮の息子は出来損ないのオメガを甘やかすのが趣味らしい。だが、なぜお前の腹は膨らんでいない? その首の跡は、番になった証拠だろう?」
「……っ、これは」
「やはり、子も孕めないのか。お前はオメガとして出来損ないだ。そこまで出来損ないだったとはな」
その言葉は千秋の心臓に矢が刺さったように、痛んだ。
「なんだ。何も言い返せないということは、やはりお前自身もそう思っているのか。それに……その上、他の男に汚されたと知ったら、四宮の息子はお前のことをどう思うだろうな?」
「どういう……意味ですか」
部屋に先ほど千秋を拉致した青年含め、3人の男性が入ってきた。
「どういう意味も何も、今からお前は、こいつらとセックスするんだ」
「っ!? な、んの意味が……そんな、なんでこんなこと」
「お前のような出来損ないよりも、四宮の家には夏道が嫁いだ方が四宮の息子にとっても、石崎にとっても利があるだろう? いくら出来損ないのお前でもそれくらい分かるよな?」
「わかりません! 晴臣は、僕がいいと言ってくれました! 僕じゃなきゃだめだと……」
「ああ、今のお前のことをそう言っていたとしても、これから汚れるお前を四宮の息子は受け入れてくれるのか?」
「っ……嫌だ!! やめてください! お願い……お願いです。なぜ……なぜあなたは、あなた方は僕を愛してくれないんですか。兄のように」
「それはお前が一番よくわかっているだろう? お前は出来損ないだからだよ。何も価値などない。それを愛せなどと、そうする事に私たちに何の利がある」
「利……」
『俺は千秋の全部が好きなんだから、千秋はもう存在しているだけで俺に利があるんだよ』
昨日の四宮の言葉を思い出していた。
千秋は四宮に愛されて、本当に幸せだった。
「晴臣っ、晴臣ぃ……助けて、お願い。助けてっ」
こうなったのも、自分が四宮の言いつけを破り能天気にうろちょろした結果で、四宮を困らせてしまっているのに、また、四宮に助けを求めることしかできない自分の不甲斐なさに、涙が溢れた。
「無様だな。四宮の息子が、お前なんかを助けに来るわけがないだろう? ……やれ」
父親の冷たい声が響いた。
運ばれる間、千秋は心の中で何度も謝った。
「ついたぞ」
「ん゛っ」
体に巻きつけられた縄を持ち、乱雑に車を下ろされた場所は、追い出されたはずの石崎家の屋敷だった。
「昨日ぶりだなぁ、千秋」
「っ、父さん……なんでこんな事っ」
「昨日はずいぶんと苔にされたからな……。こういう事はなるべく早い方がいい。まずは聞こうか。あの、オメガ嫌いの噂がある四宮の息子に、どうやって取り入った?」
父親はニヤついた顔で縛られて身動きが取れない千秋を見下ろした。
「取り入ってなんか……それに、晴臣は別にオメガを嫌っていません」
「そうか。だが例えオメガを嫌っていないにしても、なぜ今まで番を作らなかった四宮の息子が、お前を番にする? 今更お前のような出来損ないのオメガを選ぶなんて変じゃないか。何か口外してはならないような弱みを握ってでもいるんじゃないのか? え?」
ニタニタと嬉しそうな笑顔をやめない父親に、千秋は薄気味悪さを感じていた。
ーー小さい頃はこの人に愛して欲しかった。けど、今はもう。
「晴臣に弱みなんて何もない。だけど、あったとして……例えそれを僕が知ってたとしても、あなたに教えることはないです」
「はっ。随分と生意気になったものだな。四宮の息子は出来損ないのオメガを甘やかすのが趣味らしい。だが、なぜお前の腹は膨らんでいない? その首の跡は、番になった証拠だろう?」
「……っ、これは」
「やはり、子も孕めないのか。お前はオメガとして出来損ないだ。そこまで出来損ないだったとはな」
その言葉は千秋の心臓に矢が刺さったように、痛んだ。
「なんだ。何も言い返せないということは、やはりお前自身もそう思っているのか。それに……その上、他の男に汚されたと知ったら、四宮の息子はお前のことをどう思うだろうな?」
「どういう……意味ですか」
部屋に先ほど千秋を拉致した青年含め、3人の男性が入ってきた。
「どういう意味も何も、今からお前は、こいつらとセックスするんだ」
「っ!? な、んの意味が……そんな、なんでこんなこと」
「お前のような出来損ないよりも、四宮の家には夏道が嫁いだ方が四宮の息子にとっても、石崎にとっても利があるだろう? いくら出来損ないのお前でもそれくらい分かるよな?」
「わかりません! 晴臣は、僕がいいと言ってくれました! 僕じゃなきゃだめだと……」
「ああ、今のお前のことをそう言っていたとしても、これから汚れるお前を四宮の息子は受け入れてくれるのか?」
「っ……嫌だ!! やめてください! お願い……お願いです。なぜ……なぜあなたは、あなた方は僕を愛してくれないんですか。兄のように」
「それはお前が一番よくわかっているだろう? お前は出来損ないだからだよ。何も価値などない。それを愛せなどと、そうする事に私たちに何の利がある」
「利……」
『俺は千秋の全部が好きなんだから、千秋はもう存在しているだけで俺に利があるんだよ』
昨日の四宮の言葉を思い出していた。
千秋は四宮に愛されて、本当に幸せだった。
「晴臣っ、晴臣ぃ……助けて、お願い。助けてっ」
こうなったのも、自分が四宮の言いつけを破り能天気にうろちょろした結果で、四宮を困らせてしまっているのに、また、四宮に助けを求めることしかできない自分の不甲斐なさに、涙が溢れた。
「無様だな。四宮の息子が、お前なんかを助けに来るわけがないだろう? ……やれ」
父親の冷たい声が響いた。
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