32 / 43
30
しおりを挟む
千秋は、四宮の出社した気配を布団の中から感じ取り、もう一度目を瞑った。
千秋は体調を崩したわけではなかったので、元気いっぱいだと思っていたけれど、四宮の言う通り昨日の気疲れがあったようで、次に目が覚めたのは、11時過ぎだった。
目が覚めてから部屋のドアを開け、恐る恐る廊下を確認すると、今日は熊井は待機していなかったので、千秋はホッと胸を撫で下ろした。
なにせ、熊井は大切な主人である四宮の番だからと、四宮と一緒になって過保護に接してくるので、千秋がいくら屋敷の中でしか行動しないと言ってもいい顔はされなそうだからだ。
以前は草むしりをしによく行っていた中庭に出て伸びをする。
「んーっ。はぁ、気持ちいいなぁ」
昨日はあんなことがあったと言うのに、不思議と心は穏やかで、日の光を浴びて、やたらと健康的な気持ちになれた。
今日は庭の草むしりの従業員はいないらしく、1人で庭に出ていることを咎められることもなさそうだと呑気にあくびをして、ベンチに座った。
穏やかで心地のよい風が流れ、昼前まで寝ていたと言うのにウトウトと眠気を誘ってくる。
ふと屋敷の2階を見上げると、熊井が仕事をしているのが見えた。
従業員に指示を出しながら、自らもモップを手に持っている。
ーーここに1人で居るのが見つかったら、やっぱ怒られるよね。それにそろそろ昼ご飯だから熊井さんが部屋に来るかもしれないし
千秋は、日向ぼっこをやめて、先ほどとは違うルートで部屋に戻ることにした。
来た道を進めば熊井と鉢合わせしそうだからだ。
屋敷の入り口側にある階段に向かうために歩いていると、門の前で誰かが手招きをしているのが見えた。
近づいてみると、千秋が見たことのない青年だった。
「えっと、どなたですか?」
「今日からここで働くことになった酒井と申します。この門を開けていただけますか?」
青年は爽やかに笑った。
「分かりました。じゃあすぐに従業員を呼んできますね」
「え、ここを開けてくれるだけでいいんですよ。それから一緒に向かった方が早くありませんか?」
「そうなんですが、僕はここを開けられないんですよ」
「そこのボタンをポチッと押すだけです。お願いします」
これからここで働くと言うその青年に、こうもグイグイと来られ千秋は違和感を感じていた。
「いえ、すみません。すぐに誰か呼んできますので」
変に刺激するのも怖いと思い、千秋は屋敷を目指して走り出そうとした。
ガシャン!!!
後ろからすごい音が聞こえ、振り返ると青年が門の内側にいた。
「え」
門は格子状で人の通れる隙間などないし、高さも2メートルはあってそう簡単に入れるようなものじゃない。
ビー!! ビー!!
何かのシステムが侵入者を感知したのかアラームが鳴り響くと、青年は千秋を一瞬で縛り上げ門のスイッチを押して、門から堂々と出た。
「千秋様っ!!!」
アラームで駆けつけた熊井の声が聞こえ、我に帰った千秋も必死で抵抗した。
けれど、いくら抵抗してもびくともしない青年の腕は緩まず、車に押し込められしまい、熊井の声は聞こえなくなった。
千秋は体調を崩したわけではなかったので、元気いっぱいだと思っていたけれど、四宮の言う通り昨日の気疲れがあったようで、次に目が覚めたのは、11時過ぎだった。
目が覚めてから部屋のドアを開け、恐る恐る廊下を確認すると、今日は熊井は待機していなかったので、千秋はホッと胸を撫で下ろした。
なにせ、熊井は大切な主人である四宮の番だからと、四宮と一緒になって過保護に接してくるので、千秋がいくら屋敷の中でしか行動しないと言ってもいい顔はされなそうだからだ。
以前は草むしりをしによく行っていた中庭に出て伸びをする。
「んーっ。はぁ、気持ちいいなぁ」
昨日はあんなことがあったと言うのに、不思議と心は穏やかで、日の光を浴びて、やたらと健康的な気持ちになれた。
今日は庭の草むしりの従業員はいないらしく、1人で庭に出ていることを咎められることもなさそうだと呑気にあくびをして、ベンチに座った。
穏やかで心地のよい風が流れ、昼前まで寝ていたと言うのにウトウトと眠気を誘ってくる。
ふと屋敷の2階を見上げると、熊井が仕事をしているのが見えた。
従業員に指示を出しながら、自らもモップを手に持っている。
ーーここに1人で居るのが見つかったら、やっぱ怒られるよね。それにそろそろ昼ご飯だから熊井さんが部屋に来るかもしれないし
千秋は、日向ぼっこをやめて、先ほどとは違うルートで部屋に戻ることにした。
来た道を進めば熊井と鉢合わせしそうだからだ。
屋敷の入り口側にある階段に向かうために歩いていると、門の前で誰かが手招きをしているのが見えた。
近づいてみると、千秋が見たことのない青年だった。
「えっと、どなたですか?」
「今日からここで働くことになった酒井と申します。この門を開けていただけますか?」
青年は爽やかに笑った。
「分かりました。じゃあすぐに従業員を呼んできますね」
「え、ここを開けてくれるだけでいいんですよ。それから一緒に向かった方が早くありませんか?」
「そうなんですが、僕はここを開けられないんですよ」
「そこのボタンをポチッと押すだけです。お願いします」
これからここで働くと言うその青年に、こうもグイグイと来られ千秋は違和感を感じていた。
「いえ、すみません。すぐに誰か呼んできますので」
変に刺激するのも怖いと思い、千秋は屋敷を目指して走り出そうとした。
ガシャン!!!
後ろからすごい音が聞こえ、振り返ると青年が門の内側にいた。
「え」
門は格子状で人の通れる隙間などないし、高さも2メートルはあってそう簡単に入れるようなものじゃない。
ビー!! ビー!!
何かのシステムが侵入者を感知したのかアラームが鳴り響くと、青年は千秋を一瞬で縛り上げ門のスイッチを押して、門から堂々と出た。
「千秋様っ!!!」
アラームで駆けつけた熊井の声が聞こえ、我に帰った千秋も必死で抵抗した。
けれど、いくら抵抗してもびくともしない青年の腕は緩まず、車に押し込められしまい、熊井の声は聞こえなくなった。
90
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
【BL】声にできない恋
のらねことすていぬ
BL
<年上アルファ×オメガ>
オメガの浅葱(あさぎ)は、アルファである樋沼(ひぬま)の番で共に暮らしている。だけどそれは決して彼に愛されているからではなくて、彼の前の恋人を忘れるために番ったのだ。だけど浅葱は樋沼を好きになってしまっていて……。不器用な両片想いのお話。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
君に不幸あれ。
ぽぽ
BL
「全部、君のせいだから」
学校でも居場所がなく、家族に見捨てられた男子高校生の静。
生きる意味を失いかけた時に屋上で出会ったのは、太陽に眩しい青年、天輝玲だった。
静より一つ年上の玲の存在は、静の壊れかけていた心の唯一の救いだった。
静は玲のことを好きになり、静の告白をきっかけに二人は結ばれる。
しかしある日、玲の口から聞いた言葉が静の世界を一瞬で反転させる。
「好きになられるからあいつには近づかない方がいいよ。」
玲に対する感情は信頼から憎悪へと変わった。
それから十年後。
静は玲に復讐するために近づくが…
【完結】恋した君は別の誰かが好きだから
花村 ネズリ
BL
本編は完結しました。後日、おまけ&アフターストーリー随筆予定。
青春BLカップ31位。
BETありがとうございました。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
俺が好きになった人は、別の誰かが好きだからーー。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
二つの視点から見た、片思い恋愛模様。
じれきゅん
ギャップ攻め
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる