器量なしのオメガの僕は

いちみやりょう

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千秋は、四宮の出社した気配を布団の中から感じ取り、もう一度目を瞑った。
千秋は体調を崩したわけではなかったので、元気いっぱいだと思っていたけれど、四宮の言う通り昨日の気疲れがあったようで、次に目が覚めたのは、11時過ぎだった。

目が覚めてから部屋のドアを開け、恐る恐る廊下を確認すると、今日は熊井は待機していなかったので、千秋はホッと胸を撫で下ろした。
なにせ、熊井は大切な主人である四宮の番だからと、四宮と一緒になって過保護に接してくるので、千秋がいくら屋敷の中でしか行動しないと言ってもいい顔はされなそうだからだ。

以前は草むしりをしによく行っていた中庭に出て伸びをする。

「んーっ。はぁ、気持ちいいなぁ」

昨日はあんなことがあったと言うのに、不思議と心は穏やかで、日の光を浴びて、やたらと健康的な気持ちになれた。
今日は庭の草むしりの従業員はいないらしく、1人で庭に出ていることを咎められることもなさそうだと呑気にあくびをして、ベンチに座った。
穏やかで心地のよい風が流れ、昼前まで寝ていたと言うのにウトウトと眠気を誘ってくる。

ふと屋敷の2階を見上げると、熊井が仕事をしているのが見えた。
従業員に指示を出しながら、自らもモップを手に持っている。

ーーここに1人で居るのが見つかったら、やっぱ怒られるよね。それにそろそろ昼ご飯だから熊井さんが部屋に来るかもしれないし

千秋は、日向ぼっこをやめて、先ほどとは違うルートで部屋に戻ることにした。
来た道を進めば熊井と鉢合わせしそうだからだ。

屋敷の入り口側にある階段に向かうために歩いていると、門の前で誰かが手招きをしているのが見えた。

近づいてみると、千秋が見たことのない青年だった。

「えっと、どなたですか?」
「今日からここで働くことになった酒井と申します。この門を開けていただけますか?」

青年は爽やかに笑った。

「分かりました。じゃあすぐに従業員を呼んできますね」
「え、ここを開けてくれるだけでいいんですよ。それから一緒に向かった方が早くありませんか?」
「そうなんですが、僕はここを開けられないんですよ」
「そこのボタンをポチッと押すだけです。お願いします」

これからここで働くと言うその青年に、こうもグイグイと来られ千秋は違和感を感じていた。

「いえ、すみません。すぐに誰か呼んできますので」

変に刺激するのも怖いと思い、千秋は屋敷を目指して走り出そうとした。

ガシャン!!!

後ろからすごい音が聞こえ、振り返ると青年が門の内側にいた。

「え」

門は格子状で人の通れる隙間などないし、高さも2メートルはあってそう簡単に入れるようなものじゃない。

ビー!! ビー!!

何かのシステムが侵入者を感知したのかアラームが鳴り響くと、青年は千秋を一瞬で縛り上げ門のスイッチを押して、門から堂々と出た。

「千秋様っ!!!」

アラームで駆けつけた熊井の声が聞こえ、我に帰った千秋も必死で抵抗した。
けれど、いくら抵抗してもびくともしない青年の腕は緩まず、車に押し込められしまい、熊井の声は聞こえなくなった。
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