好きになるつもりなんてなかった

体育祭

そんな中、体育祭のシーズンになり俺も会長も忙し過ぎて会う時間も無くなってしまった。
いや、正確に言えば顔は合わせているんだ。
だって俺は会長の親衛隊長だし。
毎朝会長の登校の交通整理してるし。
相変わらずモテモテな姿に少しブルーな気持ちになる。
町田のこともまだ聞けてないしさ。

町田ってやつを３組まで見に行ったら和葉の言っていた通りめちゃくちゃ可愛かった。
俺と違って華奢で背も低めで女の子の格好をすれば女の子に見える可能性あんじゃね？　と思うくらい可愛かった。
戦意喪失とはこのことかと思うくらい可愛かった。

「はぁ～～」
「何？　なんかあったの？　あ、町田くん見に行った？　可愛かったろ？」
「うん。正直めちゃくちゃ可愛かったよ」
「好きになっちゃったか？」
「……和葉……お前そればっかか？」

ジトリと睨みつけると、和葉はえへへと誤魔化すように笑った。

「ま、何があったかは知らないけどさ、体育祭でいい結果出して今度こそいい景品貰おうよ！　今回の目玉は“外泊許可書付き有名遊園地のペアチケット”だよ！」
「体育祭にも景品あるんだ。よし！　じゃあそれ狙って頑張ろう！」
「おー！」

和葉は嬉しそうに拳を上げている。

まぁ正直町田くんのことは聞き出せていないし、会長とも忙しさですれ違っちゃってんるんだけど今はクヨクヨ考えてないで体育祭に集中しよう。
そんで遊園地のペアチケットをもぎ取って和葉とパーっと遊んでやるんだ！

そして体育祭では和葉に誘われて応援団をすることになった。
なんだかんだ他のクラスメートとも仲良くなったし、嬉しいことにあっちこっちから色々な競技に誘われて俺はその準備が本当に忙しい。
だからあっという間に体育祭当日になった。

様々な競技のほんの少しの空き時間に生徒会席の方を見ると、会長は生徒にいろいろ指示を出している最中だった。

やっぱ……かっこいいなぁ。

さっきもリレーで大活躍してたし。

あ……。

町田が会長の元まで走ってきてその腕に抱きついた。

その後すぐ俺は次の競技で町田と会長がどうなったのかは見れなかったけど、やっぱり噂通り距離近いなぁ。

やっぱ会長、俺に告白したの間違いだったと思ってるのかな……？

ってダメだダメだ。
今は競技に集中しろ龍介！
ネガティブになってんじゃねー。

その後の応援団の演舞の時は生徒会席の方は見ないようにした。