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しおりを挟む「あれ、こっちだっけ? 」
「ええ。まあ、そうね」
何故か私と同じ方向へ足を進める友達はいつも違う方向へ帰っていたはずだ。
それなのに私と同じ帰り道とはこれ如何に?
何か聞いてはいけない事情があったりするのかもと思うとそれ以上は無理だった。
そろそろ私の家だが謎の距離感で付いて来る彼女の事がだんだん怖くなって来た。
もしかすると私は彼女に何かされてしまうのだろうか? そんなのは嫌だった。
そもそも理由がまったく思いつかない。
「あっ」
だから私は走った。
走って、走って、走って家に着くとすぐにチャイムを連打して
ドアノブをガチャガチャと動かした。
「は~い。今開けますよ~」
母の呑気な声がして漸く開いたドア。
私はすぐに中に入るとドアを閉めた。
そしてやっと一息ついて落ち着く。
「どうしたの? 何かあった? 」
「変な人が居たから走って来たの。それだけよ」
「まあ、大変じゃない。大丈夫なの? どうしましょう。お父さんに教えてあげな
いといけないわね。帰って来る時危ないものね。どうしましょう」
母はこんな人なので私がしっかりしないといけない。
「お姉ちゃんお帰り~」
リビングに行くと歳の離れた弟が出迎えてくれた。
「ただいま。いい子にしてた? 」
「うん、してた。えらい? 」
「偉い、偉い」
私は可愛くて仕方が無い弟の頭を撫でてあげると、弟がはにかむ。
そして私は弟の為なら何でも出来ると思ってしまうのだ。
ピンポ~ン
チャイムが鳴ると母が無防備にドアを開けてしまう。
「は~い。どちら様? あら、ドリアナちゃんじゃない。よく来てくれたわね。
さあ上がって上がって、お茶の用意をしないとね」
「おじゃまします」
ドリアナがリビングに入って来て私は固まった。
どうしてこの子が! どうして母この女を我が家へ入れた?
不審人物がうろついているって私が教えたばかりなのに!
「あ、ドリアナ! 来てくれたの! 」
「ちょっ」
弟がドリアナを見ると駆け寄って行った。
「もちろん、約束しましたからね」
私にはこの状況がさっぱり理解出来なかった。
*****
「私、何も聞いてないんですけど! 」
「あれ~、おかしいな? 言って無かったけ? ドリアナちゃんがミーちゃんの
婚約者になったって。どうしてだろう? 」
私が文句を言っても母はこの調子である。
そもそもドリアナもどうして私に何も言わなかったのか?
「私はてっきり知っているものだと思ってたから……」
ドリアナが申し訳なさそうに言うが、本当にそう思っているのだろうか?
さっきから私のミーちゃんとの距離が近い気がする。
そもそも婚約者だからといって馴れ馴れしすぎはしないか?
ミーちゃんの横に座っていいのは私だけのはずなのだが?
それなのにどうしてアンタが私の場所に居るのか?
私はずっとその事でイライラしていた。
「おいしいね、ドリアナ? 」
「はい。クリームがついてしますよ」
ケーキのクリームがミーちゃんの柔らかい頬についてしまっていた。
そういう所は相変わらず可愛いみーちゃんである。
だから私がとってあげようとするより先にドリアナがクリームをとって、
あろうことかそのクリームを食べたのだ!
「ありがとう、ドリアナ」
ミーちゃんがお礼をいう。みーちゃんはそういう子だ。ちゃんとお礼の言える
とてもいい子なのだ。なのに、この女……ダメだ。絶対にダメだ!
このままでは私のミーちゃんが危ない!
その時、私の本能がカッキーン!と囁いた。
そして私は決めたのだ、この女からミーちゃんを守ると。
大切な弟の貞操は必ず私が守ってみせると!
応援ありがとうございます!
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