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菫川ヒイロ

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同居人

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「ねえ、どうしてまだ居るの? 」


「どういう事? 」


 二人で食卓を囲みながら私聞くが彼にとっても難しい質問だったようだ。
 
 
「いや、おかしくない? ここ私の家なんだけど」


 そう言いながらも私の箸は止まらなかった。
 このカレイの煮つけがおいしい所為である。
 
 
「知ってる」


 知っているけど理解はしていないという事なのだろう。
 でも流石に他人を家に置いておくなんて事は出来ないのだ。
 
 
「うん、そうね。分かった。これを食べ終わったら出て行って」


 これだけの料理を作ってくれたのだから私も多少の譲歩はすべきだろう。
 だからこれが最大限の譲歩である。きっと昨日夜は何かがあったのだろうが、
 それはもう思い出せないし、思い出したくもないのだ私は。余計なモノまで思い
 出してしまいそうだから。
 
 
「それは困る。毎日料理も作るし、掃除も洗濯するからここに置いてください」


 彼は私にそんな事を懇願して来た。
 確かに料理はおいしい、朝食も美味しかった。家事を全部してくれるのであれば
 それはそれで有難いがこれから一緒にここで暮らすとなるとどうだろうか?
 彼をよーく見てみる。
 
 
 特に容姿に優れた所はないけれど、劣っている所もある訳ではない。
 食事をする所作も別に変ではないけれど、
 
 
「ねえ、お願いする時は食べるの止めよっか」


 こうして私達の共同生活が始まった。




 *****
 
 
 
 
 私も彼もお互いが努力をして来た結果なのだろう、上手く行っていたのだ。
 このおかしな共同生活は順調だった。だから少しばかり私は油断していたのだ。
 この関係がいつまでも続くようなそんな事を勝手に想像してしまっていた。
 でもそれは仕方がなかった。あれもこれもどれも楽しかったから。
 
 
「今日までありがとう、明日出て行くよ」


 その言葉に私の心臓は鷲掴みされた。
 何が? 何で? どうして? 私、何かしたっけ?
 そんな事を考えている自分が居た。
 こんな関係はいつか終わるに決まっていたのに……
 
 
 でも彼を留めるとして私には何がある?
 
 
 だから何も言えない。
 ただ言葉を飲み込む、料理と一緒に飲み込む。
 これが最後の晩餐だというのに、今日の料理は今まで一番おいしいんだもの。
 





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